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ALC外壁はなぜ「水」で壊れるのか?|60年持たせる築年数別メンテナンス戦略

ALC外壁が水で壊れる科学的メカニズムをトバモライト結晶の構造から解説。「60年持つ」の正しい意味と、築10年・20年・30年の最適メンテナンス判断フローを50年の現場経験から提示。

著者: 横井隆之

この記事の監修者

ヨコイ塗装 代表 横井隆之

愛知県で50年続く塗装店の2代目。500件以上の施工実績を持ち、著書に『外壁塗装の不都合な真実』『塗装方程式』『外壁塗装 工程別チェックポイント21』(Kindle)がある。見積もり診断サービス「ペンキのミカタ」を運営し、全国の施主に中立的なアドバイスを提供している。

ALC外壁の寿命は「60年」と言われます。しかしこの数字には重大な但し書きがあります。適切な防水メンテナンスを繰り返した場合に限る、という条件です。防水塗膜が切れた状態を放置すれば、ALCの実質寿命は20〜30年に急落します。その理由は、ALCという素材の「成り立ち」を知れば明白です。

ALCはなぜ「水」に弱いのか?——素材の成り立ちから理解する

「硬いスポンジ」の正体——トバモライト結晶

ALC(Autoclaved Lightweight aerated Concrete)は、直訳すると「高温高圧蒸気養生された軽量気泡コンクリート」です。珪石・セメント・生石灰を主原料とし、発泡剤としてアルミニウム粉末を混入して製造されます。

製造過程で起きる化学反応が、ALCの運命を決めています。アルミニウムが石灰と反応して水素ガスを発生させ、スラリー全体に無数の気泡が形成されます。この気泡を含んだ状態で、約180℃・10気圧のオートクレーブ(高温高圧蒸気養生缶)に入ると、原料中のシリカとカルシウムが水熱反応を起こし、「トバモライト結晶」という極めて安定した鉱物構造が生まれます。

この結晶構造こそが、ALCに耐火性・断熱性・軽量性という優れた性能を同時に与えている骨格です。

しかし、全容積の約80%を占める気泡構造は、外部からの水分浸入に対して致命的な弱点でもあります。

数字で見る「弱さ」——他の外壁材との比較

| 項目 | ALC | 窯業系サイディング | 普通コンクリート |

|:---|:---:|:---:|:---:|

| 絶乾密度 | 450〜550 kg/㎥ | 1,000〜1,800 kg/㎥ | 約2,400 kg/㎥ |

| 圧縮強度 | 3.0 N/㎟以上 | 10.0 N/㎟以上 | 21.0 N/㎟以上 |

| 熱伝導率 | 約0.17 W/m・K | 約0.3〜0.5 W/m・K | 約1.6 W/m・K |

| 吸水特性 | 極めて高い | 中程度 | 低い |

熱伝導率が普通コンクリートの約1/10——つまり断熱性能は約10倍。しかしその代償として、密度は1/4〜1/5しかなく、内部は空気の塊です。

ALCパネル単体には防水性能がありません。

工場出荷時は無塗装。建築現場での塗装工程により、初めて「防水服」を纏います。この防水塗膜が破綻した瞬間、ALCは巨大なスポンジとして機能し、毛細管現象によって雨水を内部深くまで引き込み始めます。

見逃される劣化サイン——チョーキングとエフロレッセンスの「決定的な違い」

ALC外壁の劣化を示すサインは2種類あります。この2つを混同すると、対応が遅れます。

サイン①:チョーキング(白亜化)——「まだ間に合う」のサイン

手で外壁を触ると白い粉が付く現象。紫外線が塗膜の樹脂を分解し、顔料(酸化チタン等)が粉末状になって表面に浮き出た状態です。

チョーキングは「塗膜の防水機能が低下し始めた」という警報です。しかし逆に言えば、この段階なら塗り替えだけで対応可能。ALCの基材はまだ健全です。

サイン②:エフロレッセンス(白華現象)——「すでに水が通り抜けている」のサイン

外壁の表面や目地周辺に白い結晶が析出する現象。これはチョーキングの「粉」とは全く異なるものです。

エフロレッセンスの正体は、ALC内部の可溶性成分(水酸化カルシウム等)が浸入した水に溶け出し、表面で乾燥して炭酸カルシウムの結晶として析出したもの。つまり「内部を水が通り抜けている」ことの物証です。

| | チョーキング | エフロレッセンス |

|:---|:---|:---|

| 見た目 | サラサラした白い粉 | 結晶状・ザラザラした白い塊 |

| 意味 | 塗膜の劣化(表面の問題) | 内部への浸水(構造の問題) |

| 緊急度 | ⚠️ 早めの塗り替え推奨 | 🔴 即座に専門家の診断が必要 |

| 触感 | 手に粉が付く | 爪で引っかくと硬い |

もうひとつの危険信号「粉化」:エフロレッセンスがさらに進行すると、ALCの結合材であるセメント成分が溶出し、手で触れると砂のように崩れる「粉化」が起こります。この段階ではパネルの強度そのものが低下しており、塗装だけでの対応はリスクが高い状態です。

「ALCは60年持つ」の正しい意味——パネル寿命と防水寿命の解離

「ALCは60年持つ」——この表現は正確ではありません。

正確には「適切な防水メンテナンスを繰り返すことで、パネルの構造的健全性を60年以上維持できる」です。

パネル寿命 ≠ 防水寿命

ALCの主成分であるトバモライト結晶は無機物であり、適切に乾燥状態が保たれれば半永久的な耐久性を持ちます。しかし、その「乾燥状態」を維持するための防水塗膜には、物理的な寿命が存在します。

| メンテナンス項目 | 周期 | 目的 |

|:---|:---:|:---|

| 外壁塗装(一般シリコン) | 10〜15年 | 表面の撥水・防水機能の回復 |

| 外壁塗装(高耐久フッ素/無機) | 20〜25年 | ライフサイクルコストの低減 |

| シーリング打ち替え | 10〜15年 | 目地からの直接浸水の防止 |

防水が切れた状態で放置すると、ALCの実質寿命は60年から20〜30年に急落します。 これは、後述する鉄筋腐食による内部崩壊が「パネルの強度的な死」を意味するからです。

防水が切れると何が起きるのか?——3段階の崩壊

ALCの劣化は「表層」→「内部浸水」→「構造破壊」の3段階で不可逆的に進行します。

第1段階:表層劣化(チョーキング→吸水開始)

紫外線による塗膜の樹脂分解が進行し、防水機能が失われます。ALCの多孔質構造が毛細管現象によって雨水を内部深くまで引き込む状態になります。

降雨後に外壁が「濡れ色」に変わるようになったら、吸水が始まっている証拠です。

第2段階:乾湿変動と凍害

吸水したALCは膨張し、乾燥すると収縮します。この「吸水膨張→乾燥収縮」の繰り返しが、内部に疲労破壊を蓄積させ、ヘアクラック(微細なひび割れ)を発生させます。

さらに冬季に気泡内の水分が凍結すると、体積が約9%膨張。この膨張圧が気泡の壁を物理的に破壊する「凍害」が発生します。一度凍害を受けた箇所は組織が脆弱になり、さらなる吸水を招く悪循環に陥ります。

第3段階:中性化→鉄筋腐食→爆裂(致命的)

ALCパネル内部には補強鉄筋が埋め込まれています。通常、ALCの強アルカリ性(pH12〜13)が鉄筋表面に不動態被膜を形成し、腐食から守っています。

しかし防水が切れて雨水とともに二酸化炭素が浸入すると、水酸化カルシウムが炭酸カルシウムに変化する「中性化」が加速します。多孔質のALCは密実なコンクリートよりガスの拡散速度が桁違いに速く、中性化の進行も急速です。

アルカリ性が失われた環境で水と酸素が供給されると、鉄筋は急速に腐食。サビは元の鉄の数倍に膨張し、ALC内部から強烈な圧力をかけます。その結果、表面が剥落する「爆裂(ポップアウト)」が発生します。

爆裂が起きた箇所は通常の塗装では修復不能な構造的欠陥です。

劣化プロセスの各段階における具体的な補修方法と単価は、ALC外壁の塗装|見積もりで確認すべきチェックポイントで詳しく解説しています。ヘーベルハウスオーナーの方はヘーベルハウス専用ガイドもご確認ください。

ALCの「関節」——シーリングが最大の浸水経路である理由

ALCはパネルを繋ぎ合わせる「乾式工法」で施工されるため、目地の総延長が他の外壁材と比較して極めて長くなります。ここがALCメンテナンスにおける最大の急所です。

シーリング総延長はサイディングの約2倍

| 項目 | ALC(30坪目安) | 窯業系サイディング(30坪目安) |

|:---|:---:|:---:|

| 目地構造 | 縦目地+横目地(格子状) | 縦目地が中心 |

| シーリング総延長 | 約900〜1,200m | 約450〜600m |

| 打ち替え概算費用 | 約63万〜144万円 | 約31万〜72万円 |

ALCの目地は単なる隙間埋めではなく、地震時の揺れを吸収する「ワーキングジョイント」の役割を持ちます。シーリングが硬化・破断すると、雨水がパネルの小口(側面)から直接吸い込まれます。

パネル表面は塗装で守られていても、目地の破断ひとつでALCは内部から破壊されていきます。

一液型ではALCの動きに追従できない

ALCのメンテナンスにおいては、現場で硬化剤を混合する「二液型ポリウレタン」または「二液型変成シリコン」の使用が推奨されます。安価な一液型材料では、ALCの大きなパネル間の動きに追従できず、短期間で剥離を起こすリスクが高くなります。

シーリング打ち替えの技術的な詳細はALC外壁の見積もりチェックポイントで解説しています。

ALC専用の塗装仕様——「シーラーだけ」は禁物

ALC塗装における最大の技術的ポイントは「吸い込みの制御」です。一般的なシーラー(浸透性下塗り材)をALCに使うと、微細な気泡にシーラーが吸い込まれてしまい、表面に防水膜を形成できません。

微弾性フィラーが果たす3つの役割

ALCの下塗りには、厚みを持たせることができる「微弾性フィラー」が必須です。

① 巣穴の目潰し:ALC特有の無数の気泡痕を埋め、表面を滑らかにする

② 弾性機能:ゴムのような伸縮性でALCの微細な動きやクラックをカバーする

③ 付着性の確保:多孔質なALC表面と上塗り塗料を強固に接着させる

主要メーカーの推奨ALC塗装仕様

| メーカー | 下塗り(フィラー) | 推奨上塗り | 特徴 |

|:---|:---|:---|:---|

| 日本ペイント | パーフェクトフィラー | パーフェクトトップ / ファインシリコンフレッシュII | ラジカル制御技術で塗膜分解を長期抑制 |

| エスケー化研 | 水性ソフトサーフSG | エスケープレミアムシリコン / 水性セラタイトF | 下地調整・下塗り・中塗り3機能を1材で兼備 |

| 関西ペイント | アレスホルダーGII | アレスダイナミックTOP / セラMシリコンIII | 充填性が高く、古いALCの荒れた表面も平滑化 |

見積書に下塗り材の製品名が記載されていない場合は、必ず確認してください。 「シーラー」と書かれていたら、ALCに対する理解が不十分な可能性があります。

築年数別メンテナンス戦略——いつ・何をすべきか

ALCの最適メンテナンスは、築年数によって内容も予算配分も大きく変わります。

築10年前後:最初の塗装タイミング

判断基準:チョーキングが発生しているかどうか。

手で外壁を触って白い粉が付いたら、防水機能は低下し始めています。この段階なら、シリコン塗料以上のグレードで塗り替えれば、基材へのダメージはほぼゼロです。

ポイント:初回塗装の品質がその後30年のコストを左右します。安価な塗料で済ませると10年後に再塗装が必要になり、高耐久塗料を選べば次の塗り替えを15〜20年後まで延ばせます。

築20年前後:シーリング全面打ち替えの分岐点

判断基準:シーリングの硬化・破断が始まっているかどうか。

築20年前後は、2回目の塗装(1回目に一般シリコンを使った場合)、または1回目に高耐久塗料を選んだ場合は点検のタイミングです。

最重要判断:シーリングの状態です。部分補修で済む段階なのか、全面打ち替えが必要なのか。ALCのシーリング総延長は900〜1,200mに及ぶため、全面打ち替えだけで60万〜140万円のコストが発生します。だからこそ塗料とシーリングの寿命を同期させる選択が、ライフサイクルコストの最適化に直結します。

築30年前後:大規模修繕の「山場」

判断基準:エフロレッセンスや粉化が発生していないか。爆裂の兆候はないか。

30年目は、塗膜の下に隠れた微細な爆裂やクラックを徹底的に洗い出し、防水システムを刷新する必要がある時期です。

注意:ヘーベルハウスの場合、30年目に旭化成リフォームの有償メンテナンスを受けると保証が60年まで延長されます。費用は45坪程度で約400万円。地元の優良業者であれば250万〜300万円で施工可能なケースがありますが、保証の失効というトレードオフが発生します。この判断はヘーベルハウス専用ガイドで詳しく解説しています。

人工理論で見る「ALC塗装の適正コスト」

ALC外壁の塗装は、サイディング住宅より多くの人工(にんく)を必要とします。その理由は明確です。

① シーリング工期が長い:総延長900〜1,200mの目地処理に3〜5日を要する

② 塗料消費量が多い:多孔質ゆえに規定の膜厚を確保するための塗料量が増える

③ 乾燥管理が厳格:微弾性フィラーの厚塗り後、次工程までの乾燥時間を厳格に管理する必要がある

30坪ALC住宅の標準人工数

| 工程 | 人工数(目安) |

|:---|:---:|

| 足場架け払い | 2〜3人工 |

| 高圧洗浄 + 乾燥管理 | 1〜1.5人工 |

| シーリング打ち替え(目地約1,000m) | 5〜8人工 |

| 下塗り(微弾性フィラー) | 2〜3人工 |

| 中塗り | 1.5〜2人工 |

| 上塗り | 1.5〜2人工 |

| 養生・付帯塗装 | 2〜3人工 |

| 合計 | 15〜22.5人工 |

サイディング住宅の12〜18人工と比較して、ALC住宅は3〜5人工多く必要です。この差はほぼシーリング工事の延長差から来ています。

「10人工でALC全部やります」という見積もりが出てきたら——確実にどこかの工程が省略されています。塗装方程式(品質=モチベーション×技術×時間)の「時間」が欠落した工事は、どんなに腕の良い職人でも品質を維持できません。

人工理論の詳しい解説は「人工(にんく)理論で見積もりを見抜く」をご覧ください。

まとめ:ALCは「優秀だが手のかかる素材」

ALCは、耐火性・断熱性・軽量性を高い次元で両立させた優れた建材です。しかしその性能は、すべて「乾燥状態を維持する」という前提の上に成り立っています。

「60年持つ」は「60年間防水し続ける」の意味。防水が切れれば寿命は20〜30年に急落する

チョーキング=「まだ間に合う」。エフロレッセンス=「すでに水が通り抜けている」。この2つの違いを知っているだけで、対応の速度が変わる

シーラーではなくフィラー。ALCの吸い込みを止められない下塗りは、塗装そのものを無意味にする

シーリング総延長はサイディングの約2倍。目地を制するものがALCメンテナンスを制する

築10年・20年・30年で必要な工事内容は全く違う。適切なタイミングの投資が、長期的な総コストを最小化する

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この記事の著者

横井隆之

横井隆之

ヨコイ塗装 代表 / 外壁塗装コンサルタント

業界経験 50著書 3

愛知県扶桑町でヨコイ塗装を経営。塗装業界50年以上の経験と500件を超える施工実績を持つ外壁塗装の専門家。施主の立場に立った公正なアドバイスを提供し、YouTube、ココナラ、MOSHなど複数のプラットフォームでセカンドオピニオンサービスを展開中。

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