ALC住宅のシーリング目地は30坪で900〜1,200m。サイディングの2〜3倍です。打ち替えだけで20人工、費用50〜100万円。見積書に「シーリング150m」と書いてあったら、目地の85%が放置される計算です。
ALC塗装の8割は「目地」で決まる──30坪で目地1,000m、シーリングだけで20人工
ALCの目地はなぜこんなに多いのか──パネル幅600mmの物理
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ALCパネルの標準幅は600mm。窯業系サイディングの910mmと比べて約3分の2です。パネル1枚が小さい分、継ぎ目が増える。これが目地延長を2〜3倍に膨らませる物理的な理由です。
| 外壁材 | パネル標準幅 | 1坪あたりの目地延長 | 30坪住宅の総延長 |
|---|---|---|---|
| ALC | 600mm | 30〜40m | 900〜1,200m |
| 窯業系サイディング | 910mm | 15〜20m | 450〜600m |
目地は垂直方向だけではありません。1階と2階の接合部に水平目地が走り、窓やドアの四辺にもシーリングが必要です。建物の形状が複雑な場合、30坪でも1,500mを超えるケースが報告されています。
ALCの目地はサイディングの2〜3倍。これを「目地が多いです」の一言で済ませて、見積書には「シーリング一式」。施主はm数を知らないから、半分しか施工されなくても気づけない。
見積書のm数を自分で検算する──外壁面積×係数の簡易式
見積書のシーリング数量が妥当かどうか、施主が自分で検算する方法があります。
簡易計算式
推定シーリング延長 ≒ 外壁面積(㎡)× 係数K
係数Kの目安は以下の通りです。
| 係数K | 対象範囲 | 精度 |
|---|---|---|
| 1.5 | 垂直目地のみ(最低ライン) | 低い |
| 2.0 | 垂直+水平+サッシ周り | 標準 |
例えば外壁面積150㎡の場合、150×2.0=300m。これでも実際の目地延長の30〜33%にしかならない最低ラインです。
より正確な指標は「1坪あたり30〜40m」。30坪なら900〜1,200m。この数字を基準にしてください。
見積書のレッドライン
30坪のALC住宅で「シーリング150m」と書かれていたら、目地の15%しか計上されていません。「200m」でも20%。これは主要な目地だけの部分補修であり、全体の防水を担保するものではありません。
「シーリング一式」なら、まずm数を聞いてください。「300m」と答えたら、それでもまだ目地の30%。ALCの目地を知らない業者か、知っていて省略している業者のどちらかです。
なぜ「増し打ち」ではダメなのか──ALCの目地は動いている
ALCのシーリング工事で最もやってはいけないのが「増し打ち(既存の上から重ねて打つ)」です。
ALCパネルの目地は、温度変化や地震、微振動によって常に動いている「ワーキングジョイント」です。シーリング材がこの動きを吸収するためには、適切な幅と深さの比率(幅:深さ=2:1程度)が必要。増し打ちでは、既存の劣化したシーリング材の上から数ミリの薄い層しか形成できません。
この「薄打ち」状態では3つの問題が起きます。
1つ目は、柔軟性の不足。薄い層ではパネルの動きに追従できず、わずかな建物の揺れで破断します。
2つ目は、密着性の低下。既存シーリングの隙間に水分や汚れが蓄積しており、新旧材料の密着が極めて悪い。
3つ目は、「共剥がり」。ALCの表面強度はコンクリートより低いため、劣化した旧材とともに新材がパネル表面ごと剥がれる現象が起きます。
| 工法 | 耐用年数 | 防水信頼性 | 30坪目安費用※ |
|---|---|---|---|
| 打ち替え | 10〜15年 | ◎ | 50〜100万円 |
| 増し打ち | 2〜5年 | × | 25〜50万円 |
※ALC住宅は目地延長がサイディングの2〜3倍のため、一般的なサイディング相場(打ち替え16〜27万、増し打ち9〜18万)の約3倍が目安。
ヘーベルハウスの場合は例外があります。新築時のシーリングが深く高品質なため、1回目のメンテナンス(築10〜15年)では増し打ちを容認するスケジュールが提示されています。ただしこれは「ヘーベルハウスの新築品質が前提」であり、他のALC住宅に一般化できるものではありません。
ALCの見積書に「増し打ち」と書いてあったら、それは「唯一の防水層を手抜きする」と言っているのと同じ。ALCには二次防水(防水シート)がない。目地のシーリングだけが雨水を止めている。
二次防水がない──ALCで雨漏りが致命的な理由
ここがALC住宅の最も重要な構造的特徴であり、サイディング住宅との決定的な違いです。
窯業系サイディング工法では、外壁材の裏側に透湿防水シートが施工されています。シーリングが劣化しても、防水シートが最後の砦として雨水の侵入を防ぐ二重防水構造です。
ALCパネル工法は違います。パネルを直接骨組みに固定し、目地のシーリングと表面の塗膜だけで防水を完結させる「一次防水依存型」の構造です。シーリングが破断すれば、雨水は直接室内側に浸入します。
雨漏りリスクが高い3箇所
サッシとALCの境界線。 ALCパネルとアルミサッシは熱膨張率が異なるため、この目地に最も負荷がかかります。破断すれば、毛細管現象で室内側の石膏ボード裏まで水が浸入します。
パネルの横目地。 階層の境目などに走る水平目地に水が溜まりやすく、シーリングが劣化していると重力に逆らって内部へ水が吸い込まれます。
入隅・出隅のひび割れ。 建物の角は振動の影響を受けやすく、シーリングの破断やパネル自体の亀裂が発生しやすい部分です。
凍害→爆裂のメカニズム
ALC内部に浸入した水分が冬場に凍結すると、約9%の体積膨張が起きます。この膨張圧がALCの微細な気泡壁を内側から破壊する「凍害」を引き起こします。特に水分を多く含む北面の壁や日陰の部分では、凍結と融解のサイクルが加速し、数年でパネルの剥離を招きます。
さらに深刻なのが、内部鉄筋の酸化です。ALCのアルカリ性が中性化すると、補強用の鉄筋が錆び始めます。錆の体積は元の鉄の約6倍。凍害で脆弱化したALC内部でこの膨張が起きると、表面のコンクリートが押し出されるように剥落する「爆裂」が発生します。
爆裂が起きたパネルは塗装では修復できません。パネル交換または大規模な断面修復が必要です。費用は1箇所3〜8万円、パネル交換なら30〜60万円。雨漏りが内部構造にまで達していれば100万円を超えることもあります。
サイディングの雨漏りは防水シートが最後の砦。ALCの雨漏りには砦がない。だからALCのシーリングは「手を抜いていい工程」ではなく「最も手を抜いてはいけない工程」。この違いを説明しない業者は、ALCを塗った経験がない。
シーリング打ち替えだけで20人工──ALC住宅の工期の現実
シーリング打ち替えは、①既存材の撤去、②目地の清掃、③養生テープ貼り、④プライマー塗布、⑤シーリング材の充填、⑥ヘラでの仕上げ、⑦養生剥がし──7つの工程を経る手間のかかる作業です。
熟練職人がALCの深い目地を1日に施工できる打ち替え距離は、40〜60m程度が限界です。
30坪ALC住宅(目地1,000mと仮定)の場合。
1,000m ÷ 50m/日 = 20人工
2人体制でも10日間。シーリング工程だけでこれだけかかります。
全体工期のシミュレーション
| 工程 | 人工 |
|---|---|
| 足場・養生 | 4 |
| 高圧洗浄 | 2 |
| シーリング打ち替え | 20 |
| 下塗り・中・上塗り | 7 |
| 合計 | 33 |
④ピラーで示した「ALC 21人工」との差について補足します。ピラーの数字はシーリング工事を8人工(部分打ち替え+増し打ち混在)で計上した標準値です。全目地の打ち替えを前提にすると+12人工、合計33人工が必要になります。
全体工期10日の見積もり→シーリングに割ける日数は2〜3日→1日50mとして100〜150m→目地1,000mの10〜15%しか打ち替えられない。残りの85%は放置か増し打ち。
下塗り材とシーリング材の選定──ALCに最適な製品
ALCの塗装は、仕上げ塗料のグレード以上に、下塗り材とシーリング材の選定で成否が決まります。
下塗り材:厚膜フィラーが必須
ALC表面には製造過程で生じる無数の「巣穴(ピンホール)」があります。これを埋めずに上塗りすると、ピンホールから水が浸入する。
推奨製品は、アステックペイントの「エピテックフィラーAEⅡ」。水性形1液エポキシ系の下地調整材で、高粘度の厚膜形成によってALCの巣穴を完全に塞ぎます。エポキシ樹脂の付着力で脆弱なALC表面を補強しつつ、乾燥後も柔軟性を維持してパネルの挙動に追従します。
通常のシーラー1回塗りでは、ALCの巣穴は塞がりません。
シーリング材:ノンブリード型が鉄則
ALCのシーリング材に求められるのは、低モジュラス(低い応力でよく伸びる)とノンブリード(塗料を汚染しない)の2つです。
ノンブリード型ウレタン系は柔軟性が高く、塗装との密着性に優れるALC塗装の標準選択肢。ただし紫外線に弱いため、必ず上塗り塗装で保護が必要です。
高耐久変性シリコンとして、オート化学工業の「オートンイクシード」は耐用20年以上。ALCの膨大な目地延長を考えると、メンテナンス回数を減らすこの選択は経済的に合理的です。
ヘーベルハウスのメンテナンス費用──30年で300〜400万円の現実
ALC住宅の代名詞であるヘーベルハウスは、メーカー独自のメンテナンスサイクルを設定しています。
| 経過年数 | メンテナンス内容 | 30坪の費用目安 |
|---|---|---|
| 10〜15年 | 塗装+シーリング(増し打ち・部分補修) | 110〜150万円 |
| 20〜30年 | 塗装+シーリング(全打ち替え)+屋根防水 | 180〜250万円 |
30年で合計300〜400万円。この数字を知った上で、10年目のメンテナンスでどのグレードの塗料を選ぶかが戦略になります。
標準的なシリコン塗料(耐用10年)なら30年で3回の工事。高耐久の無機塗料(耐用20年)なら2回で済む可能性がある。高額な足場代とシーリング費用を1回分削減できることを考えると、初回に少し高い塗料を選ぶ方がトータルで安くなるケースがあります。
ALC住宅のメンテナンス費用を圧縮するもう一つの方法が補助金です。詳細は「2026年、塗装単独では補助金ゼロ──窓×給湯器との同時施工で27万円を取り戻す具体的パズル」をご覧ください。
人工理論で見ると|ALCの「目地m数」が人工を決める
塗装方程式 Q=M×T×T のT(時間=人工)は、ALC住宅の場合「目地の延長メートル数」で物理的に決まります。
サイディング住宅なら15人工。ALC住宅で全目地を打ち替えるなら33人工。この18人工の差のほとんどはシーリング工事です。塗装技術の差ではなく、「目地の量」が決めるコスト。
だからALCの見積もりで人工が少ないということは、目地を省略しているということ。逆に言えば、目地のm数と人工を正確に計上している見積書は、ALCを理解している業者の証拠です。
「自分のALC住宅の目地m数を知る→適正人工を知る→見積書のm数と人工を検証する」。この順番を守るだけで、手抜き工事を見抜けます。
人工理論の全体像は「人工理論完全講義」で詳しく解説しています。
あなたのALC住宅、見積書のm数は足りていますか?
手元の見積書のシーリング数量を見てください。30坪のALC住宅なら、900〜1,200mが妥当な目地延長です。
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※中立性を保つため、愛知県内の方へはサービスを提供しておりません。
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著者: 横井隆之|愛知県で50年続く塗装店「ヨコイ塗装」2代目。施工実績500件以上。著書に『外壁塗装の不都合な真実』『塗装方程式』『外壁塗装 工程別チェックポイント21』がある。
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