チョーキング現象とは?
外壁を手で触ったとき、白い粉が手につく——この現象を「チョーキング」と呼びます。
チョーキングは、塗膜の表面が粉状に崩れている状態です。汚れではありません。塗膜そのものが分解しているのです。
塗料は「樹脂」と「顔料」で構成されています。樹脂が紫外線によって分解されると、中に含まれていた顔料(白い粉の正体)が表面に浮き出てきます。これがチョーキング現象のメカニズムです。
チョーキングは「塗膜が崩壊し始めているSOS」です。
なぜチョーキングが起きるのか?
紫外線による樹脂の分解
塗膜を形成する樹脂は、紫外線のエネルギーを受け続けることで、分子レベルで結合が切れていきます。
特に影響が大きいのは、1日を通して直射日光を浴び続ける南面と西面です。同じ家でも、北面より南面の方がチョーキングの進行が2〜3年早いことも珍しくありません。
白い顔料のパラドックス
塗料を白くするために使われる顔料「酸化チタン」には、実は光触媒作用があります。紫外線を受けると活性酸素を発生させ、塗膜の樹脂を分解してしまうのです。
白くするための顔料が、塗膜を劣化させる原因にもなる——これが「酸化チタンのパラドックス」です。
近年は、この光触媒作用を抑制した「ラジカル制御型塗料」が登場し、チョーキングの進行を遅らせることが可能になっています。
前回の塗装品質がチョーキングの速さを左右する
同じ塗料を使っても、チョーキングの発生時期は家によって大きく異なります。
その差を生むのは「前回の塗装品質」です。
塗装品質の公式
私が50年の経験から導き出した「塗装品質の公式」があります。
品質 = 職人のやる気 × 技術と塗料 × 作業時間
この3つの要素のうち、どれか1つでも欠けると、塗料本来の性能は発揮されません。
同じ塗料でも「人工(にんく)」で寿命が変わる
建設業界では、作業量を「人工(にんく)」という単位で表します。1人の職人が1日働くと「1人工」です。
30坪の住宅で適正な外壁塗装を行う場合、20〜25人工が目安です。
「3日で終わる塗装」と「20日かける塗装」では、塗膜の密着度も耐久性もまったく違います。
前回の塗装が短工期だった場合、塗料の耐用年数より早くチョーキングが始まる可能性があります。
下請け構造と品質の関係
なぜ人工が削られるのでしょうか?
その大きな原因が、建設業界の「下請け構造」です。
元請けが100万円で受注した工事が、2次下請けに回ると60万円。職人にやる気があっても、物理的に時間をかけられない環境に置かれるのです。
下地処理の手抜きがチョーキングを早める
「塗装は塗るまでの下地処理が命」
これは私が50年間、信条としてきた言葉です。
下地処理の手抜きは、上に塗ってしまえば分かりません。しかし、その影響は数年後に必ず現れます。
- 高圧洗浄が不十分:汚れの上から塗装→密着不良→早期剥離・チョーキング
- ケレン作業の省略:旧塗膜との密着が弱い→塗膜が浮く
- 下塗りの希釈しすぎ:塗膜が薄い→保護機能が低下
チョーキングの緊急度判定(3段階)
チョーキングには段階があります。緊急度を正しく判断することが大切です。
レベル1:初期警戒
- 指先にうっすら粉がつく程度
- 外壁の色はまだ鮮やか
- 防水機能はまだ残っている
対応目安:1〜3年以内に塗装を検討開始
まだ焦る段階ではありませんが、業者選びを始めておくと余裕を持って進められます。
レベル2:劣化進行
- 手のひらが真っ白になる
- 外壁の色褪せが目立つ
- 防水機能が大幅に低下
対応目安:1年以内の塗装を推奨
外壁材が雨水を吸い始めている可能性があります。できるだけ早く対応しましょう。
レベル3:機能不全
- 触れずとも粉が飛散している
- クラック(ひび割れ)や剥がれも併発
- 苔・カビが発生している
対応目安:早急に対応が必要
放置すると外壁材自体の交換が必要になる可能性があります。
チョーキングを放置するとどうなる?
チョーキングを放置すると、問題は「塗膜の劣化」から「外壁材の劣化」へと進行します。
外壁材が雨水を吸い始める
塗膜の防水機能が失われると、外壁材が直接雨水にさらされます。
- サイディング:内部に水が浸透し、冬季に凍結膨張→素材が破壊(凍害)
- ALC:吸水性が高く、内部で凍結すると爆裂の恐れ
- モルタル:クラックから水が侵入し、下地の腐食につながる
二次被害の連鎖
- カビ・藻が発生→さらに水分を保持→劣化が加速
- 雨水が壁体内に侵入→断熱材が濡れる→断熱性能低下
- 最悪の場合、構造材(柱・土台)の腐食
修繕費の膨張
チョーキングの段階で対応すれば、最も費用を抑えられます。
自分でできるチョーキング確認方法
チョーキングは専門家でなくても確認できます。
基本の確認方法
- 手のひらで外壁を軽くこする:強くこすりすぎると汚れと見分けがつかなくなる
- 南面と北面で比較する:南面の方が先に劣化する
- 離れた場所でも同じ粉がつくか確認:1カ所だけなら汚れの可能性も
- 写真を撮って記録しておく:業者に相談する際に役立つ
追加チェック:親水化テスト
外壁に水をかけたとき、色が濃くなる箇所はありますか?
これは外壁材が水を吸っているサイン。塗膜の防水機能が失われている証拠です。
汚れとの見分け方
- 汚れ:特定の場所(排気口周り、窓下など)に集中
- チョーキング:壁面全体で均一に粉がつく
判断に迷ったら、複数の場所で確認してみてください。
チョーキングが出たら「焦らず、でも放置せず」
やってはいけないこと
- 訪問販売業者に即決しない:「無料で点検します」は要注意
- 「今日契約すれば○万円引き」に乗らない:冷静な判断を妨げる手口
- 不安を煽る業者を信用しない:「このままでは家が傾く」などの脅し文句
チョーキングは確かに塗り替えのサインですが、今日明日で家が壊れるわけではありません。焦らず、じっくり業者を選びましょう。
やるべきこと
- 複数社から見積もりを取る(最低3社が理想)
- 見積書の「工期」を確認する(極端に短くないか)
- 「何人工かける予定ですか?」と質問する
- 第三者の意見(セカンドオピニオン)を聞く
次の塗装で失敗しないための業者選び
チョーキングをきっかけに塗り替えるなら、次こそは「長持ちする塗装」を依頼したいところです。
以下の質問を業者に投げかけてみてください。
施工体制を確認する質問
「職人さんは自社職人ですか?下請けの職人ですか?」
中間マージンが大きいと、現場で汗をかく職人には報酬が届きません。結果的に施工の質が落ちたり、モチベーション低下につながります。
「実際に塗装するのはどの会社・誰ですか?地元の職人さんですか?」
遠方から来る職人は、移動コストを取り戻すために工程を詰め込みがちです。地元の職人は地域の評判を大切にするため、丁寧な対応が期待できます。
「現場で実際に作業する職人さんと話せますか?」
下請けの職人はクレームが起きても元請けが代弁してくれるので、品質責任を背負っていないことがあります。元請けとしてやっている職人は品質を重視します。
工期・工程を確認する質問
「今回の見積もりで、何日くらいの工期が想定されていますか?」
予算がギリギリだと「仕上げること」が優先され、「仕上がりの美しさ」や「細部の丁寧さ」は犠牲になりがちです。30坪で10〜14日が標準的な工期です。
「高圧洗浄だけでなく、クラック補修やケレン作業は行われますか?」
塗装工事の"仕上がり"と"持ち"を決めるのは塗る前の下地処理。どんなに良い塗料を使っても、下地が適切でなければ数年で剥がれます。
「雨や高湿度の日は、作業をどう判断されていますか?」
すぐに作業を止めてくれる職人が良い職人です。下請け職人はスピード重視で、多少の雨では強引に塗ってしまうことがあります。
会社の体制を確認する質問
「足場は自社で保有していますか?レンタルですか?」
自社で足場を保有している業者はスケジュール調整に柔軟です。「もう1日乾燥させたい」という判断ができる余裕が生まれます。
「施工会社はどこに拠点がありますか?現場まで何分かかりますか?」
住まいから近い施工会社はトラブル時にすぐ来てくれます。遠方の会社は移動コストを取り戻すため、段取りが詰まりがちです。
塗料グレード別の耐用年数
次の塗装で使う塗料によって、チョーキングが始まるまでの期間が変わります。
現役塗装業者の視点:
チョーキング抑制を重視するならラジカル制御型がおすすめです。シリコンと同等の価格帯で、耐用年数が3〜5年長くなります。
ただし、耐用年数は目安です。「何人工かけた工事か」で実際の寿命は変わります。
まとめ:チョーキングは「塗膜のSOS」
この記事のポイント
- チョーキングは「塗膜が崩壊し始めているサイン」
- 進行速度は前回の塗装品質(人工数)で決まる
- 緊急度は3段階。レベル2以上なら1年以内の対応を推奨
- 放置すると修繕費が指数関数的に増大する
- 業者選びでは「工期」「人工数」「施工体制」を確認
- 次の塗装は「時間をかけた丁寧な工事」を依頼する
チョーキングは「焦る必要はないが、放置してはいけない」サインです。
この機会に複数社から見積もりを取り、じっくり比較検討してください。
見積もりを取ったけど、この金額は適正?
「見積書をもらったけど、工期が妥当か分からない」
「人工数が書いてないけど、これで大丈夫?」
「前回の塗装が何人工だったか知りたい」
そんな方のために、50年の塗装経験を持つ現役職人が見積書を診断するサービスを提供しています。
診断では以下をチェックします:
- 人工数の妥当性(工期と品質のバランス)
- 工程の漏れ(必要な作業が含まれているか)
- 塗料と価格のバランス(グレードに見合った価格か)
- 施工体制のリスク(下請け構造の有無)
契約前に、第三者の目でチェックしましょう。
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