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仕上がり不満とクレームの正しい伝え方|やり直しを勝ち取る交渉術

著者: 横井隆之

この記事の監修者

ヨコイ塗装 代表 横井隆之

愛知県で50年続く塗装店の2代目。200件以上の施工実績を持ち、著書に『外壁塗装の不都合な真実』『塗装方程式』『外壁塗装 工程別チェックポイント21』(Kindle)がある。見積もり診断サービス「ペンキのミカタ」を運営し、全国の施主に中立的なアドバイスを提供している。

はじめに:クレームは「権利の行使」である

「塗装が終わったけど、なんか思っていたのと違う…」
「ムラがあるように見えるけど、これで完成?」
「業者に言ったら逆ギレされた」

こうした相談を受けるたびに、私は心が痛みます。

まず最初にお伝えしたいことがあります。

不具合を指摘することは「クレーマー」ではありません。契約に基づく正当な権利の行使です。

2020年の民法改正により、施主には「契約不適合責任」に基づく強力な権利が認められています。しかし、多くの方がその権利を知らないまま、業者の言いなりになって泣き寝入りしています。

本記事では、業者との交渉で主導権を握るための具体的なスクリプトを提供します。

私は著書『塗装方程式』で、品質 = モチベーション × 技術 × 時間という公式を提唱しています。

交渉においても「感情」ではなく「論理」で勝負することが重要です。この記事を読めば、あなたも冷静に、しかし毅然とした態度で交渉できるようになります。

仕上がり不満の「線引き」:クレームすべきか否か

クレームすべきケース

症状判定理由
塗り残しがある🔴 クレーム必須明らかな施工不良
塗料が窓ガラスに飛散している🔴 クレーム必須養生不足による過失
塗膜が剥がれている🔴 クレーム必須下地処理または乾燥時間の問題
明らかなムラ・ダレがある🔴 クレーム必須技術不足または手抜き
契約と違う塗料が使われた🔴 クレーム必須契約違反
約束した工程が省略された🔴 クレーム必須契約違反

クレームが難しいケース

症状判定理由
色見本と実際の色が違って見える🟡 要確認面積効果により大面積では明るく見える
艶の具合がイメージと違う🟡 要確認事前の説明・合意内容による
隣家より早く色褪せた気がする🟡 要確認塗料グレード・方角・日照条件による

重要:判断に迷ったら、まず証拠を残してから専門家に相談してください。

クレームを伝える前の準備:証拠が全て

証拠収集チェックリスト

交渉の成否は「証拠」で決まります。感情論では業者に勝てません。

証拠の種類収集方法重要度
写真不具合箇所を複数角度から撮影。日付入り
契約書塗料名、塗装回数、工期が明記されているか
見積書「一式」ではなく詳細な内訳があるか
工程表各工程の日程と実際の作業日を照合
やり取りの記録メール、LINE、録音(※後述)
出荷証明書塗料の使用量を証明

写真撮影のコツ

1. 全体像:建物全体を撮影し、不具合箇所の位置を示す

2. 中景:不具合箇所を含む壁面全体

3. 近景:不具合箇所のアップ(スケールを当てると効果的)

4. 日時:撮影日時が記録される設定にする

5. 複数角度:光の当たり方で見え方が変わるため

録音は合法か?

結論:自分が当事者である会話の録音は、相手の同意なく行っても違法ではありません。

ただし、以下の点に注意してください。

・録音自体は違法ではないが、無断録音を公開すると問題になる場合がある

・裁判では証拠として認められるケースが多い

・録音していることを相手に伝えると、言動が慎重になる効果もある

クレームの正しい伝え方:5つのポイント

ポイント1:感情的にならない

NG例:「こんなひどい仕上がりは初めて見た!詐欺だ!」

OK例:「仕上がりについて確認させていただきたい点があります」

感情的になると、業者に「クレーマー扱い」する口実を与えます。冷静に、事実だけを伝えましょう。

ポイント2:書面で記録を残す

口頭での交渉は「言った・言わない」の水掛け論になりがちです。

推奨:メールまたは内容証明郵便で要望を伝える

【書面の例】
件名:外壁塗装工事の仕上がりに関する確認のお願い

〇〇建設株式会社 御中

貴社に施工いただいた外壁塗装工事(契約日:〇年〇月〇日)について、以下の点を確認させていただきたく、ご連絡いたします。

【確認事項】
1. 北面2階部分に塗り残しと思われる箇所があります(写真添付)
2. 契約書記載の塗料(〇〇社製△△)が使用されたか確認したい
3. 上記について、〇月〇日までにご回答をお願いいたします

なお、本件については写真および契約書を保管しております。

〇〇〇〇(施主名)
連絡先:〇〇〇-〇〇〇〇

ポイント3:具体的な「要求」を明確にする

「なんとかしてほしい」では交渉になりません。

具体的な要求の例

・「北面の塗り残し箇所を再塗装してください」

・「出荷証明書を提出してください」

・「やり直しが無理なら、工事代金の〇%を減額してください」

ポイント4:回答期限を設定する

「ご検討ください」では、いつまでも返事が来ません。

必ず期限を設定する:「〇月〇日までにご回答をお願いいたします」

期限を過ぎても回答がない場合は、「〇月〇日にご連絡しましたが、回答期限を過ぎましたので、改めてご連絡いたします」と再度書面で送付します。

ポイント5:代金の「留保」を検討する

工事代金を全額支払ってしまうと、業者の対応が鈍くなることがあります。

代金留保の方法

・契約時:支払い条件を「着工時30%、中間30%、完了後40%」などに設定

・不具合発覚時:「不具合が解消されるまで、残金の支払いを留保します」と書面で通知

注意:正当な理由なく支払いを拒否すると、逆に債務不履行になる可能性があります。必ず「不具合の解消」を条件として明示してください。

ケーススタディ:業者の反論 vs 法的正解

実際の交渉で業者がよく使う「言い訳」と、それに対する法的に正しい反論を紹介します。

ケース1:「これが標準的な仕上がりです」

業者の反論

「塗装というのはこういうものです。多少のムラは職人の手作業なので避けられません」

法的正解

✅ 「契約書に記載された塗料メーカーの施工基準では、目視で確認できるムラは不良とされています。メーカーに確認していただけますか?」

解説

塗料メーカーは施工基準を定めています。「職人の腕だから仕方ない」は通用しません。メーカーの基準を根拠に交渉しましょう。

ケース2:「もう材料を発注してしまったのでやり直しは無理です」

業者の反論

「やり直すとなると、また材料を発注しないといけない。その費用は誰が持つんですか?」

法的正解

✅ 「契約不適合責任に基づき、追完(修補)を請求します。修補にかかる費用は、不適合を生じさせた貴社の負担となります」

解説

民法第562条(買主の追完請求権)により、契約内容に適合しない場合、追完(修補・やり直し)を無償で請求できます。業者の費用負担を理由に拒否することはできません。

ケース3:「契約書にはそこまで細かく書いていない」

業者の反論

「契約書には『シリコン塗装』としか書いていません。3回塗りとは書いていないので、2回塗りで問題ありません」

法的正解

✅ 「塗料メーカーの仕様書では3回塗りが標準です。業界の取引慣行上、シリコン塗装といえば3回塗りを意味します。2回塗りは契約不適合に該当します」

解説

契約書に明記されていなくても、「取引慣行」や「業界標準」に照らして判断されます。「一般的にそうするもの」であれば、契約内容に含まれるとみなされます。

ケース4:「保証期間は1年なので、対応できません」

業者の反論

「工事から1年3ヶ月経っています。保証期間は1年ですので、有償での対応となります」

法的正解

✅ 「民法上の契約不適合責任の期間は、『不適合を知ってから1年以内』に通知すればよいとされています。施工不良を認識したのは先月ですので、通知義務は果たしています」

解説

業者の「保証」と民法上の「契約不適合責任」は別物です。

項目業者の保証契約不適合責任(民法)
根拠業者が任意で定める民法第562条〜第564条
期間業者が定める(1年など)不適合を知ってから1年以内に通知
時効-引渡しから10年(改正民法)
効力業者の裁量法的拘束力あり

業者の保証期間が過ぎていても、民法上の権利は残っている可能性があります。

ケース5:「天候が悪かったので仕方ない」

業者の反論

「工事期間中に雨が多くて、乾燥時間が十分に取れなかったんです。天候は誰のせいでもありません」

法的正解

✅ 「天候を理由に品質を落とすことは認められません。雨天時は工事を中断し、適切な乾燥時間を確保するのがプロの対応です。工期延長の相談もありませんでした」

解説

悪天候は「不可抗力」ではありません。プロの業者は天候を考慮して工程を組みます。雨天時に無理に施工したのは業者の判断であり、その責任は業者が負います。

ケース6:「素人にはわからないでしょうが、これが普通です」

業者の反論

「塗装のことは素人にはわからないでしょうが、職人から見ればこれで十分な仕上がりです」

法的正解

✅ 「私は素人ですが、契約書と見積書に基づいて施工されたかどうかは確認できます。第三者の専門家(建築士・塗装診断士)に診断を依頼することも検討しています」

解説

「素人にはわからない」は、業者が最もよく使う逃げ口上です。しかし、契約内容との適合性は専門知識がなくても判断できます。また、第三者の専門家の存在をほのめかすことで、業者の態度が変わることも多いです。

契約不適合責任に基づく4つの権利

2020年の民法改正により、施主には以下の4つの権利が認められています。

権利内容根拠条文
①追完請求権やり直し・修補を請求できる民法第562条
②代金減額請求権やり直しが不可能な場合、代金の減額を請求できる民法第563条
③損害賠償請求権不適合により生じた損害の賠償を請求できる民法第564条
④契約解除権重大な不適合の場合、契約を解除できる民法第564条

権利行使の順序

1. まずは①追完請求:やり直しを求める

2. 応じない場合は②代金減額:「やり直しが無理なら減額を」

3. それでも解決しなければ③損害賠償:専門家に相談

4. 重大な問題の場合は④契約解除:弁護士に相談

交渉が決裂したら:次のステップ

ステップ1:第三者機関に相談

窓口電話番号対応内容
消費者ホットライン188契約トラブル全般、クーリングオフ相談
住まいるダイヤル0570-016-100技術的な相談、見積もりの適正性

ステップ2:内容証明郵便の送付

交渉が難航する場合、内容証明郵便で正式に要求を伝えます。

内容証明郵便には以下の効果があります:

・「いつ、どのような内容の書面を送ったか」が公的に証明される

・業者に対して「本気である」という意思表示になる

・裁判になった場合の証拠になる

ステップ3:ADR(裁判外紛争解決手続)

住宅リフォーム・紛争処理支援センターでは、ADR(裁判外紛争解決手続)を利用できます。

・費用:1万円程度

・期間:2〜3ヶ月程度

・特徴:裁判より簡易で、専門家が調停してくれる

ステップ4:少額訴訟

請求額が60万円以下の場合、少額訴訟を利用できます。

・費用:数千円(印紙代)

・期間:原則1日で判決

・特徴:弁護士なしでも本人訴訟が可能

ステップ5:通常訴訟

請求額が60万円を超える場合、または複雑な争いの場合は、弁護士に相談して通常訴訟を検討します。

施工管理アプリで「証拠」を残す

トラブル予防の最善策

クレーム交渉で最も重要なのは「証拠」です。しかし、トラブルが起きてから証拠を集めるのは困難です。

最善の対策は、工事中から記録を残しておくことです。

当社の施工管理アプリ

私が開発した「施工管理アプリ」では、21工程の進捗をスマホで記録できます。

・工程ごとの写真が自動で時系列整理

・乾燥時間の自動計算・通知

・職人との直接コミュニケーション

・すべてのやり取りが記録として残る

施工管理アプリの詳細はこちら

まとめ:交渉の鉄則

5つの鉄則

1. 証拠を先に集める:写真、契約書、やり取りの記録

2. 感情的にならない:事実だけを冷静に伝える

3. 書面で記録を残す:口頭交渉は避ける

4. 具体的な要求と期限を設定:「なんとかして」では交渉にならない

5. 法的権利を知る:契約不適合責任の4つの権利

業者の「言い訳」に負けない

業者の言い訳あなたの反論
「これが標準」メーカー基準を根拠に
「材料費がかかる」契約不適合責任で無償修補
「契約書に書いていない」取引慣行・業界標準を根拠に
「保証期間が過ぎた」民法上の権利は別
「天候のせい」プロなら工程調整すべき
「素人にはわからない」第三者専門家に依頼する

あなたは「クレーマー」ではありません。契約に基づく正当な権利を行使しているだけです。

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この記事の著者

横井隆之

横井隆之

ヨコイ塗装 代表 / 外壁塗装コンサルタント

業界経験 50著書 3

愛知県扶桑町でヨコイ塗装を経営。塗装業界50年以上の経験と500件を超える施工実績を持つ外壁塗装の専門家。施主の立場に立った公正なアドバイスを提供し、YouTube、ココナラ、MOSHなど複数のプラットフォームでセカンドオピニオンサービスを展開中。

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