外壁のクラック(ひび割れ)とは?
外壁に発生するひび割れを「クラック」と呼びます。
最初に断言します。すべてのクラックが危険なわけではありません。
クラックの深刻度は「種類」と「幅」で決まります。正しく判断できれば、焦る必要はありません。
この記事では、クラックの種類と深刻度の判定方法、放置リスク、そして業者選びのポイントまで解説します。
クラックが発生するメカニズム
外壁にクラックが発生する原因は、主に3つあります。
乾燥収縮
モルタルやコンクリートは、硬化する際に内部の水分が蒸発します。
水分が抜けると体積が減少(収縮)し、引っ張られる力でひび割れが発生します。これが最も一般的なクラックの原因です。
熱応力(サーマルサイクル)
外壁は日中の日射で膨張し、夜間に冷えて収縮します。
この膨張・収縮のサイクルが毎日繰り返されることで、材料の疲労が蓄積。やがてクラックとして現れます。
特に南面・西面は日射量が多く、温度変化が激しいため、クラックが発生しやすい傾向があります。
構造的な力
- 地震の揺れによる変形
- 強風による建物の振動
- 地盤の不同沈下による建物の歪み
これらの外力が加わると、外壁材が耐えきれずにクラックが発生します。
クラックの種類と判定基準
クラックは「幅」によって2種類に分類されます。
ヘアクラック(髪の毛クラック)
ヘアクラックは髪の毛のように細いひび割れです。すぐに修繕が必要ではありませんが、放置すると拡大する可能性があります。
構造クラック(貫通クラック)
構造クラックは、外壁材を貫通して下地や構造体に達している深いひび割れです。雨水が直接侵入し、鉄筋の腐食や木材の腐朽を引き起こす危険があります。
判定の境界値:0.3mm
建築業界では、0.3mmがクラック判定の共通基準です。
名刺の厚さは約0.2〜0.3mm。名刺が入るクラックは、構造クラックの可能性があります。
自分でできる深刻度判定(実践編)
名刺テスト
家にある名刺で、クラックの幅を簡単に判定できます。
- 名刺の角をクラックに当てる → 入らない → ヘアクラック(経過観察)
- 名刺の角をクラックに当てる → スッと入る → 構造クラック(要対応)
- 1円玉(約1.5mm)が入る → 重症(早急な補修が必要)
緊急度3段階判定
レベル1:経過観察(1〜3年以内に検討)
- ヘアクラック(0.3mm未満)のみ
- 数本程度で増えていない
- 他の症状(チョーキング等)なし
まだ焦る段階ではありません。次の塗り替え時にまとめて補修できます。
レベル2:要検討(1年以内に塗装推奨)
- 複数のヘアクラックが広範囲に発生
- チョーキングやシーリング劣化も併発
- クラックの本数が増えている傾向
複数の劣化サインが出ているため、早めの対応が望ましい状態です。
レベル3:緊急対応(早急に補修)
- 構造クラック(0.3mm以上)がある
- 横方向のクラック(雨水が溜まりやすい)
- 外壁材の浮き・剥がれを併発
- 室内に雨染みが出ている
この状態は放置厳禁です。早急に専門業者に相談してください。
クラックの「方向」で危険度が変わる
クラックは「幅」だけでなく「方向」も重要です。
縦クラック
雨水は重力で流れ落ちるため、縦方向のクラックは比較的水が入りにくいです。
ただし、毛細管現象によって少しずつ水を吸い込む可能性はあります。
横クラック(最も警戒すべき)
横方向のクラックは、雨水を「受け皿」のようにキャッチしてしまいます。
大量の水が壁内部に侵入し続けるため、構造材の腐朽リスクが格段に高まります。
横クラックは、幅0.3mm未満でも構造クラック並みの緊急度と考えてください。
斜めクラック
斜め方向のクラックは、地震のせん断力や地盤沈下が原因で発生することがあります。
特に、窓やドアの角から斜めに伸びているクラックは、構造体の歪みを示唆している可能性があり、注意が必要です。
外壁材別のクラック特性
モルタル外壁
モルタルは最もクラックが発生しやすい外壁材です。
- 乾燥収縮によるクラックが起きやすい
- 地震の揺れに追従しにくい
- 亀甲状(網目状)のクラックは乾燥収縮が原因
モルタル外壁の塗り替えには、クラックに追従する「弾性塗料」(微弾性・高弾性)の選択が重要です。
窯業系サイディング
サイディングボード自体は硬くて脆い素材です。
- 釘・ビス周りの放射状クラック(スタークラック):施工時の過度な締め付けが原因
- 寒冷地の凍害:ボード内部の水分が凍結・膨張してボロボロに
- 目地(シーリング)の劣化:ボードより先にシーリングが劣化することが多い
サイディングの場合、ボードのクラックよりシーリングの劣化に先に注意すべきケースが多いです。
ALC(軽量気泡コンクリート)
ALCは内部に無数の気泡を含む素材で、スポンジのように水を吸いやすい特性があります。
- クラックからの吸水で内部の鉄筋が錆びる
- 錆びた鉄筋が膨張→「爆裂現象」(内部から破壊)
ALCの0.3mm以上のクラックは、即時補修が必要です。
クラックを放置するとどうなる?
水の侵入と構造劣化
- 防水紙への到達:雨水がクラックから侵入し、防水紙まで到達
- 断熱材のカビ:湿気を吸った断熱材にカビが発生
- 構造材の腐朽:柱・梁などの木材が腐る
鉄筋の腐食と爆裂
コンクリートやALCの内部に入った水は、鉄筋を錆びさせます。
錆びた鉄筋は体積が約2.5倍に膨張し、コンクリートを内側から破壊します。これが「爆裂現象」です。
シロアリ被害
- クラックがシロアリの侵入経路になる
- 湿潤環境は腐朽菌とシロアリの好物
- 乾いたクラックでも「蟻道」として利用される
修繕費の膨張
クラックの段階で対応すれば、最も費用を抑えられます。
前回の塗装品質がクラックを招く
クラックが早期に発生する原因の多くは、前回の塗装工事にあります。
塗装品質の公式
品質 = 職人のやる気 × 技術と塗料 × 作業時間
この3つのうち、どれか1つでも欠けると、クラックの早期発生につながります。
クラックが早期発生する原因
- 既存クラックを埋めずに上から塗装(下地処理の手抜き)
- 乾燥時間不足(1日で下塗り〜上塗りを強行)
- 塗料の過度な希釈(規定より薄めて塗る)
- モルタル外壁に硬い塗料を使用(弾性塗料を使うべき)
下請け構造の影響
下請けの階層が深くなるほど、職人は「ここは下地補修すべき」と思っても、時間とコストの制約で対応できなくなります。
「上に塗ってしまえばわからない」施工が横行し、結果として数年でクラックが再発します。
「塗装は塗るまでの下地処理が命」
これは私が50年間、信条としてきた言葉です。
ケレン作業の手抜き、クラック補修の省略——これらは上に塗ってしまえば見えません。しかし、数年後には必ず問題として現れます。
クラック補修の方法
被覆工法(フィラー)
シール工法
Uカット/Vカット工法
低圧樹脂注入工法
業者選びで確認すべき質問
クラック補修を含む塗装工事を依頼する際、以下の質問を業者に投げかけてください。
下地処理の確認
「高圧洗浄だけでなく、クラック補修やケレン作業は行われますか?どれくらいの時間をかけますか?」
塗装業界は「グレーゾーン」が大きい業界です。特に下地処理にかける時間は職人ごとに幅があります。
塗装工事の"仕上がり"と"持ち"を決めるのは、塗る前の下地処理。どんなに良い塗料を使っても、下地が適切でなければ数年で剥がれます。
作業時間の確認
「今回の見積もりで、何日くらいの工期が想定されていますか?」
30坪の住宅で適正な工期は10〜14日、人工数は20〜25人工が目安です。
極端に短い工期(5日以下など)は、下地処理が省略されている可能性があります。
職人の確認
「職人さんは自社職人ですか?下請けの職人ですか?現場で実際に作業する職人さんと話せますか?」
元請けとして施工する職人は品質を重視します。下請けの職人はスピード重視になりがちで、品質責任を背負っていないケースもあります。
天候不良時の対応
「雨や高湿度の日は、作業をどう判断されていますか?」
すぐに作業を止めてくれる職人が良い職人です。壁面が濡れていると、塗料の剥がれにつながります。
塗料の確認(モルタル外壁の場合)
「モルタル外壁には弾性塗料を使いますか?」
クラックが多いモルタル外壁には、ひび割れに追従する弾性塗料が有効です。ただし「弾性」にも微弾性〜高弾性まで種類があるので、確認しましょう。
足場と地域
「足場は自社保有ですか?施工会社の拠点はどこですか?」
自社で足場を保有している業者はスケジュール調整に柔軟です。また、地元の業者は評判を大切にするため、丁寧な対応が期待できます。
DIY補修の限界と注意点
- DIY可能:ヘアクラック(0.3mm未満)で手の届く範囲
- DIYリスク:構造クラックの表面だけ塞ぐと内部腐食を加速
- 高所作業は転落事故のリスク
- 補修跡が目立つ(プロのような仕上げは困難)
DIYは応急処置と割り切り、根本的な補修はプロに任せることをおすすめします。
まとめ:クラックは「種類」と「幅」で判断
この記事のポイント
- すべてのクラックが危険ではない。まず種類と幅を確認
- 名刺テストで0.3mmを判定。入らなければヘアクラック
- 横クラックは幅に関わらず要注意(雨水をキャッチしてしまう)
- 構造クラック(0.3mm以上)は放置厳禁
- 前回の塗装品質(人工数・下地処理)がクラック発生時期を左右
- 次の塗装では「下地処理に時間をかける業者」を選ぶ
クラックは「すぐに家が壊れる」サインではありませんが、放置すれば修繕費が膨れ上がります。
種類と幅を正しく判断し、適切なタイミングで対応しましょう。
見積もりのクラック補修、この内容で大丈夫?
「見積もりを取ったけど、クラック補修の項目がよくわからない」
「この補修方法で本当に大丈夫?」
「工期が短すぎる気がする…」
そんな方のために、50年の塗装経験を持つ現役職人が見積書を診断するサービスを提供しています。
診断では以下をチェックします:
- クラック補修方法の妥当性(症状に合った工法か)
- 工期と人工数のバランス(下地処理に十分な時間があるか)
- 塗料の選択(モルタルに弾性塗料を使っているか)
- 施工体制(下請け構造のリスク)
契約前に、第三者の目でチェックしましょう。
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