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外壁塗装の見積書は「金額」で比べるな|人工で読む適正価格の判断基準

この記事の監修者

ヨコイ塗装 代表 横井隆之

愛知県で50年続く塗装店の2代目。500件以上の施工実績を持ち、著書に『外壁塗装の不都合な真実』『塗装方程式』『外壁塗装 工程別チェックポイント21』(Kindle)がある。見積もり診断サービス「ペンキのミカタ」を運営し、全国の施主に中立的なアドバイスを提供している。

はじめに

外壁塗装の見積書を「金額の安さ」だけで選ぶと、3年後に塗膜が剥がれる手抜き工事をつかまされるリスクがあります。見積書で本当に比べるべきは「金額」ではなく「人工(にんく)」——つまり職人がどれだけの時間と手間をかけて施工するかです。

「2〜3社から見積もりを取ったけど、金額がバラバラで何が正しいかわからない」

この悩みを持つ方は非常に多いです。実際、国民生活センターへの外壁塗装関連の相談は年間約19,000件にのぼり、その多くが「見積もりの不透明さ」に起因しています。

問題の根本は、外壁塗装に「定価」が存在しないことです。同じ家でも業者によって50万〜200万円の幅が出ることは珍しくありません。大手ポータルサイトは「30坪なら相場は60万〜120万円」と教えてくれますが、その幅の中で自分の見積もりが「高いのか安いのか」「品質を犠牲にしていないか」を判断する基準は示してくれません。

この記事では、50年の塗装経験と500件以上の見積書を見てきた立場から、見積書を「人工」で読む方法をお伝えします。読み終える頃には、手元の見積書が「適正か」「危険か」を自分で判断できるようになっているはずです。

見積書に「一式」と書いてあったら何を疑うべきか?

見積書を開いて最初に確認すべきは、「一式」表記がどこに使われているかです。

「外壁塗装一式 80万円」——こう書かれた見積書を受け取った経験はありませんか? 結論から言えば、主要工事が「一式」だけで済まされている見積書は、内訳を隠している可能性があります。建設業法第20条でも、見積書には工事の種類ごとに材料費・労務費などの内訳を明示することが求められています。

ただし、すべての「一式」が悪いわけではありません。

「一式」がOKなケース

養生(ビニール・テープ)や諸経費のように、細かく単価を分けても意味が薄い項目は「一式」で問題ありません。足場の運搬費なども一式表記が一般的です。

「一式」がNGなケース

下地処理、シーリング(コーキング)工事、塗装工事の本体——これらが「一式○○万円」で済まされている場合は要注意です。なぜなら、これらの工程は使用する材料の種類・数量・塗り回数によって原価が大きく変わるからです。内訳がなければ、手抜きされても検証のしようがありません。

見積書の「一式」表記について詳しく知りたい方は、「外壁塗装の見積書「一式」は危険?項目別OK・NG判定表と業者への質問5選」で、工程ごとのOK/NG判定基準を解説しています。また、建設業法の観点からの解説は「「一式○○円」の見積書は危険!建設業法から学ぶ正しい見積書の見方」をご覧ください。

30坪の外壁塗装に必要な「人工数」はいくつか?

金額の前に、まず「この工事にどれだけの手間がかかるか」を知りましょう。私たち塗装職人が使う「人工(にんく)」という単位が、そのための最も正確な物差しです。

人工(にんく)とは、職人1人が1日(約8時間)働く作業量のこと。

たとえば「15人工」と書かれていれば、職人1人なら15日間、2人なら約8日間かかる計算です。

30坪・2階建て住宅の標準人工数

一般的な30坪の2階建て住宅(外壁面積約120㎡)で、外壁塗装に必要な延べ人工数の目安は次の通りです。

工程人工数の目安
足場架設・解体2〜3人工
高圧洗浄1人工
養生1〜1.5人工
下地処理(クラック補修・ケレン)2〜3人工
シーリング打ち替え2〜3人工
下塗り1.5〜2人工
中塗り1.5〜2人工
上塗り1.5〜2人工
付帯部塗装(軒天・雨樋等)2〜3人工
検査・手直し・清掃1人工
合計16〜22人工

この「16〜22人工」が基準です。外壁の状態が悪ければ下地処理の人工が増えますし、ダインコンクリートのような凹凸の深い外壁材では通常の1.5倍の塗装人工が必要になります。

人工数から適正工期を逆算する

職人2人体制なら、16〜22人工の工事は実働8〜11日が標準です。ここに天候による休工日を加えると、着工から完了まで2〜3週間が妥当な工期になります。

もし業者が「1週間で終わります」と言ってきたら? 計算が合いません。2人体制で5日間なら10人工。30坪の住宅を10人工で仕上げるには、何かの工程を省略するか、乾燥時間を無視するしかありません。

ここで重要なのは、私が提唱する塗装方程式です。

品質 = モチベーション × 技術 × 時間

技術がどれだけ高くても、時間が不足すれば品質は下がります。「安くて早い」は塗装工事では両立しないのです。

外壁面積の自分での測定方法は「外壁塗装の面積計算|自分でできる3つの測定方法と簡易早見表」で解説しています。人工の概念についてもっと深く知りたい方は「外壁塗装は「人工」で見抜く|見積もり比較の新常識」をお読みください。

人工理論の全体像は「外壁塗装の「適正価格」は存在しない?50年の現場が辿り着いた人工理論」で詳しく解説しています。

見積書の「5大チェックポイント」とは?

金額の大小ではなく、以下の5点を確認してください。これだけで見積書の信頼度はかなり判断できます。

チェック1:塗料の「商品名」と「メーカー名」が書かれているか

「シリコン塗料」とだけ書かれた見積書は不十分です。「日本ペイント パーフェクトトップ」のように、メーカー名と商品名が明記されていなければ、施工時にどの塗料が使われたか検証できません。

チェック2:塗り回数が「3回」と明記されているか

外壁塗装の基本は下塗り・中塗り・上塗りの3回塗りです。「2回塗り」と書かれていたら、下塗りが省略されている可能性があります。下塗りは接着剤の役割を果たすため、省略すると塗膜が1〜2年で剥がれます。

チェック3:数量の根拠(㎡数)が記載されているか

「外壁塗装 120㎡ × 2,800円 = 336,000円」のように、面積と単価の掛け算になっていることが重要です。「塗装一式 336,000円」では、面積を水増しされても値引きされても気づけません。

チェック4:下地処理の内容と範囲が具体的か

「下地処理一式 50,000円」ではなく、「クラック補修 Vカット+シーリング充填 15箇所」「ケレン(2種) 120㎡」のように、何をどの範囲で行うかが書かれているべきです。下地処理は手抜きが最も起こりやすい工程です。

チェック5:保証の対象と条件が明確か

「10年保証」とだけ書かれていても、何が対象で、何が免責なのかが不明なら意味がありません。保証書のサンプルを事前に見せてもらい、「塗膜の剥離・膨れ・著しい色褪せ」が含まれているか確認しましょう。

見積書の具体的な見方は「外壁塗装の見積書の見方|50年のプロが教える7つのチェックポイント」でさらに詳しく解説しています。見積もり段階での品質チェックについては「外壁塗装の品質チェックリスト|見積もり段階で見抜く7つのポイント」もあわせてご覧ください。

「安い見積もり」の裏側で何が起きているのか?

3社から見積もりを取って、1社だけ極端に安い。「お得だ」と思う前に、その差額の正体を理解してください。

塗装工事の原価構造

外壁塗装100万円の工事の場合、おおまかな原価構造は以下の通りです。

内訳割合金額目安
人件費(職人の日当)30〜40%30〜40万円
材料費(塗料・シーリング等)15〜20%15〜20万円
足場費15〜20%15〜20万円
経費(車両・保険・消耗品)10〜15%10〜15万円
利益15〜20%15〜20万円

ここで注目すべきは、人件費が最大の割合を占めるという事実です。

業者が利益を確保しながら価格を下げるには、以下のどれかを削るしかありません:

  1. 人件費を削る → 人工数を減らす(=工程省略・乾燥時間短縮)
  2. 材料費を削る → 安い塗料に変更 or 塗料を薄める
  3. 足場費を削る → 「足場代無料」で見せかけ、他項目に上乗せ

つまり、見積もりが安い=どこかが削られているのです。問題は「どこが削られたか」が見積書からは見えないこと。だからこそ「人工数」で確認する必要があります。

「100万円のうち職人にいくら届くのか」という構造は「外壁塗装100万円のうち職人に届くのはいくら?」で具体的に解説しています。「足場代無料」の仕組みは「「足場代無料」のカラクリを暴く!」をご覧ください。塗料グレードごとの原価比較は「塗料グレード別「原価」徹底比較」、原価構造の全体像は「外壁塗装の「原価」完全公開!」で詳しく解説しています。

3社の見積もりを正しく比較する方法とは?

「相見積もりは3社が基本」とよく言われますが、金額を並べて一番安い業者を選ぶのは最悪の比較方法です。

金額比較の落とし穴

A社B社C社
85万円110万円150万円

この表を見て「A社がお得」と判断する方が多いのですが、こう並べ替えるとどうでしょう。

項目A社B社C社
金額85万円110万円150万円
延べ人工数12人工18人工22人工
工期7日12日14日
塗料シリコン(1液)シリコン(2液)フッ素(2液)
下地処理一式項目別記載項目別記載
保証口頭のみ5年10年

A社の85万円は12人工。30坪の住宅を12人工で仕上げるには、標準の16〜22人工から4〜10人工が不足しています。何かの工程を省略するか、乾燥時間を短縮しなければ不可能な数字です。

一方B社は18人工で110万円。1人工あたり約6.1万円。C社は22人工で150万円、1人工あたり約6.8万円。この2社は人工単価もほぼ妥当で、差は塗料グレードと保証年数の違いです。

人工で比較する手順

  1. 各社の見積書から「工期」と「職人数」を確認する
  2. 工期 × 職人数 = 延べ人工数を計算する
  3. 自宅の標準人工数(30坪なら16〜22人工)と比較する
  4. 標準より大幅に少ない見積もりは「なぜ少なくて済むのか」を質問する

下地処理工程ごとの人工数比較については「下地処理工程の人工数比較シート」(無料PDF)を用意しています。相見積もりの取り方と組み合わせ戦略は「外壁塗装の相見積もりは「3社」が正解」、人工での比較方法は「外壁塗装の相見積もり|「人工」で比較すれば品質が見える」で詳しく解説しています。

それでも見積書の判断に迷ったらどうするか?

ここまで読んで、「一式表記がないか確認した」「人工数を逆算してみた」「5大チェックポイントを当てはめた」。それでも判断に迷う場合があります。

それは正常な反応です。なぜなら、見積書の妥当性を最終的に判断するには、その外壁材に対する施工経験が必要だからです。たとえばダインコンクリートの凹凸に適した下塗り材を知っているか、ALCパネルの防水層がどの程度劣化しているかを見積書の記載から推測できるか——これは施主には難しい判断です。

セルフチェック → セカンドオピニオン

私が推奨するのは、以下の2段階のアプローチです。

ステップ1:セルフチェック

この記事の5大チェックポイントと人工数の逆算で、明らかに問題のある見積書は自分で排除できます。「一式だらけ」「人工が少なすぎ」「塗料名不明」——これらに該当する見積書は、業者に質問するか、候補から外しましょう。

ステップ2:セカンドオピニオン

セルフチェックを通過した見積書でも、「この単価は妥当か」「この下地処理で十分か」といった専門的な判断は難しいものです。そのために存在するのが、第三者による見積書診断——セカンドオピニオンです。

セカンドオピニオンは相見積もりとは違います。相見積もりは「別の業者の見積もりを追加する」ことですが、セカンドオピニオンは「今ある見積書を専門家の目でチェックする」ことです。業者を紹介するわけではなく、手元の見積書の妥当性を中立的に評価します。

大手一括見積もりサイトの多くは業者紹介の手数料で運営されているため、「見積もりの不正追求」や「人工が足りない」とは言えない構造的な限界があります。その空白地帯を埋めるのが、紹介手数料をもらわない独立したセカンドオピニオンサービスです。

セカンドオピニオンの詳細は以下の記事で解説しています:

まとめ:見積書を「人工」で読む6つのステップ

外壁塗装の見積書で確認すべきことを改めて整理します。

  1. 「一式」表記の確認 — 主要工事が一式だけなら、内訳の開示を求める
  2. 人工数の逆算 — 工期 × 職人数 = 延べ人工が16〜22人工(30坪目安)の範囲か
  3. 5大チェックポイント — 塗料名・塗り回数・数量根拠・下地処理内容・保証条件
  4. 原価構造の理解 — 安い見積もりは人件費(=人工)が削られている可能性
  5. 金額ではなく人工で比較 — 同じ条件で人工単価を算出して比較する
  6. 迷ったらセカンドオピニオン — 専門家の中立的な診断で最終判断

著書『外壁塗装の不都合な真実』でも書きましたが、外壁塗装の品質を最終的に決めるのは「職人がどれだけの時間をかけたか」です。見積書の金額は結果にすぎません。その金額を生み出す「人工」に目を向けることが、100万円を超える工事を失敗しないための第一歩です。

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