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外壁材で変わる適正人工──サイディング15人工、ALC21人工。素材を知らない業者に塗らせてはいけない

窯業系サイディング15人工、モルタル18人工、ALC21人工──外壁材が違えば適正人工も下塗り材も全く異なる。30坪住宅の素材別人工テーブルと見積書チェック法を、塗装歴50年の専門家が解説。

著者: 横井隆之

外壁材が違えば、適正人工も下塗り材も全く異なります。窯業系サイディング15人工、モルタル18人工、ALC21人工。あなたの家の外壁材を知らずに出された見積もりは、素材に合わない施工を「正しい手順」で行う——最も危険な手抜きです。

サイディング15人工、ALC21人工|外壁材を知らない業者に塗らせるな


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外壁塗装を考えるとき、最初にすべきことは見積もりを取ることではありません。自分の家の外壁材を正確に知ることです。

国内の戸建住宅における外壁材のシェアは、窯業系サイディングが約80%と圧倒的です。モルタルが約10%、金属サイディングは増加傾向、ALCは高価格帯住宅に一定のシェア。しかし実際には、自分の家の外壁材を正確に言える施主は少数派です。

外壁材を見分ける方法は3つあります。

判別法①:目地のパターンを見る

外壁材目地の特徴
窯業系サイディング縦方向に約3m間隔で明確なシーリング目地
ALC縦横に多数の目地が入り、格子状に見える
モルタル目地なし。壁面がシームレス
金属サイディング目地が隠れているか、非常に目立たない

窯業系サイディングの「約3m間隔」には理由があります。サイディングボードの標準的な長さが3,030mmだからです。3mごとに縦の目地が入っていれば、まずサイディングと判断できます。

判別法②:壁を軽く叩く

窯業系サイディングとモルタルはどちらもセメント系ですが、音が違います。サイディングは「コンコン」という鈍い音。モルタルは「ゴツゴツ」というさらに重い音。金属サイディングは明らかに高い金属音。ALCはコンクリートの一種ですが内部に気泡を含んでいるため、見かけの重厚感に対して音は軽めです。

判別法③:窓サッシの奥まり具合を確認する

これが最も簡単な判別法です。窓の枠が壁面からどれくらい奥まっているかを見てください。サイディングは厚さ14〜18mm程度なので、窓と壁がほぼ面一です。ALCは35〜75mmあるため、窓が壁面から明らかに奥まって見えます。

自分の家の外壁材がわからないまま見積もりを取り、金額だけで比較する。これが外壁塗装トラブルの入口です。ポータルは「まず見積もりを」と促しますが、正しい順番は「まず素材を知ること」です。


外壁材別「適正人工テーブル」──同じ30坪でも6人工の差がつく

外壁材が特定できたら、次は「あなたの家にはどれくらいの人工が必要か」を知る番です。

同じ30坪住宅でも、外壁材によって適正人工はこれだけ変わります。

工程窯業系サイディングモルタルALC金属サイディング
足場・養生4444
高圧洗浄・ケレン2223(錆対応)
シーリング/補修34(クラック補修)8(目地3倍)2
下塗り・中・上塗り68(凹凸で吸い込み大)7(厚膜必要)5(平滑)
**合計****15****18****21****14**

ALCが+6人工になる最大の理由は、目地のシーリングです。窯業系サイディングの目地総延長は約150m前後ですが、ALCはパネルが小さいため、360m以上に達することがあります。シーリングの撤去・養生・充填にかかる時間が、単純に倍以上。これは職人の技術や速さの問題ではなく、素材の物理的な特性が要求する作業量です。

モルタルが+3人工になる理由は2つ。1つはクラック(ひび割れ)の補修。Uカット補修や樹脂注入は手間がかかります。もう1つは凹凸仕上げ(リシン、スタッコ等)の塗料の吸い込み。平滑なサイディングに比べて塗料の消費量が多く、塗布作業そのものに時間がかかるためです。

金属サイディングは表面が平滑で吸い込みがほとんどないため、塗料の伸びが良い。ただし、錆が発生している場合はケレン作業に多大な時間を要するため、マイナス分は相殺されます。

ALCの家に15人工の見積もりを出す業者は、サイディングの家と同じ工数で塗ろうとしている。目地のシーリングだけで+5人工必要なのに。この6人工の差は「手抜き」ではなく「素材を知らない」。どちらにしても結果は同じです。


外壁材別の劣化パターン──素材ごとの「時限爆弾」を知る

外壁材ごとに、起きやすい劣化と「放置した場合の最悪のシナリオ」は全く異なります。

窯業系サイディング:直貼り工法の膨れ

窯業系サイディングの塗装で最も恐ろしい失敗は、「直貼り工法」の住宅に透湿性の低い塗料を塗ってしまうことです。

2000年以前に建てられた住宅は、サイディングの裏側に通気層がない「直貼り工法」の可能性があります。この工法では、壁体内部の湿気が外へ逃げようとするとき、サイディングを透過して表面に向かいます。ここに透湿性の低い塗料——例えば弾性塗料——を塗ってしまうと、水蒸気が塗膜を押し上げ、大規模な膨れや剥離を引き起こします。

直貼りか通気工法かを確認するには、窓サッシ周りの隙間にものさしを差し込んでみてください。サイディングの裏に1〜2cmの空間があれば通気工法。なければ直貼りの可能性が高い。

直貼りサイディングに弾性塗料を塗った結果、2年で全面膨れ。「保証します」と言った業者は倒産。これは業者が悪いだけではなく、直貼りに弾性塗料がNGだという知識がなかったから起きた事故です。

直貼りサイディングの科学的メカニズム・診断方法・改修戦略の詳細は「直貼りサイディングに塗装すると膨れる──水蒸気1,700倍膨張の科学と、あなたの家の確認方法」で解説しています。

モルタル:クラックの種類を見分ける

モルタル外壁の最大の敵は「ひび割れ(クラック)」。継ぎ目がないからこそ、建物の動きや乾燥収縮のストレスがすべてクラックとして表面化します。

ヘアークラック(幅0.3mm未満)は塗膜の劣化によるもので、緊急性は低い。しかし、構造クラック(幅0.3mm以上)は下地にまで達しています。雨水の侵入路となり、内部の鉄筋を錆びさせる「爆裂現象」の原因。名刺の角が入るかどうかで判断できます。

ALC:吸水と凍害──唯一の防水層はシーリング

ALCは高性能な建材ですが、水に対して極めて脆い「多孔質構造」です。防水塗装が切れると、内部にまで水が浸透。冬場に水分が凍結すると、内部から膨張して破壊される「凍害」が起きます。

さらに重要な点があります。ALCには「二次防水(防水シート)」がない構造が多い。つまり、目地のシーリングが唯一の防水層です。

ALCの塗装見積もりで「シーリング増し打ち」と書いてあったら、それは「唯一の防水層を手抜きする」と言っているのと同じです。

ALC住宅のシーリング工事の詳細──目地のm数検算・打ち替えの人工・製品選定は「ALC塗装の8割は「目地」で決まる──30坪で目地1,000m、シーリングだけで20人工の現実」で解説しています。


外壁材×下塗り材の正解表──間違った組み合わせは「正しい手順の手抜き」

「適切な下塗り材を選びましょう」——ネットの記事はここで終わります。しかし、施主が本当に必要な情報は「具体的に何を塗るのが正解か」です。

外壁材正しい下塗り材代表製品間違えた場合
窯業系サイディング浸透型エポキシシーラー / サーフェイサーパーフェクトサーフ(日本ペイント)吸い込み過多→艶引け
難付着サイディング高密着プライマープレミアムSDプラス(SK化研)数年で広範囲剥離
モルタル微弾性フィラー / カチオン系シーラー水性ミラクシーラーエコ(SK化研)クラック再発→雨水侵入
ALC厚膜型フィラー水性ソフトサーフエポ(SK化研)吸水→凍害→爆裂
金属サイディングエポキシ樹脂錆止め1液ハイポンファインデクロ(日本ペイント)サビ再発→塗膜浮き

この表を手元の見積書と照合してください。見積書に書かれた下塗り材が、あなたの家の外壁材に合っているかどうかが一目でわかります。

なお、外壁以外の付帯部(破風・軒天・雨樋・鉄部)にはそれぞれ別の下塗り材が必要です。部位別の下塗り指定については「下塗り材が1種類の見積書は、なぜ3年で剥がれるのか」で詳しく解説しています。

窯業系サイディングに微弾性フィラーを塗る業者、ALCにシーラー1回の業者。素材を理解していない施工は「正しい手順の手抜き」。30万円高いフッ素を選んでも、下塗りが間違っていれば3万円のシリコンと同じ寿命です。


見積書チェック──「わが家の外壁材」に合っているかを3点で確認

自分の外壁材がわかったら、手元の見積書を3つの視点でチェックしてください。

チェック①:面積(㎡)の妥当性

30坪住宅の標準的な外壁面積は120〜150㎡です。200㎡を超えている場合、窓などの開口部が差し引かれていない可能性があります。

ALCの場合は、シーリングの数量も確認してください。300m以上計上されているか。150m程度であれば、必要な目地の半分も見落とされています。

チェック②:下塗り材の製品名が素材に合っているか

前述のH2-4の表と照合するだけです。見積書に製品名がなく「シーラー一式」とだけ書かれていたら、それ自体が問題です。「一式表記」の見積書で具体的にどの工程が省略されるかは「見積書の『一式』表記に隠れる3〜5人工の消失」で詳しく解説しています。

チェック③:工期と人工の整合性

本記事の適正人工テーブルと照合してください。

ALC住宅で「工期10日・職人2名」→ 20人工 → 適正(21人工の目安に近い)。

ALC住宅で「工期7日・職人2名」→ 14人工 → 6人工不足 → シーリングか塗り工程が削られている。

見積書の人工をさらに詳しく検証する方法は「見積書の人工診断ガイド」で解説しています。

手元の見積書に不安があれば「見積書チェック完全ガイド【20項目】」で人工理論に基づく判定ができます。


2026年「窓リノベ必須化」──塗装単独では補助金が出ない時代の戦略

2026年以降、外壁塗装の経済環境が大きく変わります。

国の補助金制度は「省エネ性能の向上」にさらに傾斜し、外壁塗装単独では補助金の対象外になる方向です。単なる見た目の塗り替えは、断熱性能の向上とみなされないためです。

補助金を受けるための条件は、「窓(開口部)の断熱改修」との組み合わせ。内窓の設置や窓の交換を同時に行うことで、初めて外壁塗装部分にも支援が受けられる道が開けます。

外壁材による有利・不利もあります。ALCは元々の断熱性能が高いため、窓改修と組み合わせることでZEHレベルの断熱基準を達成しやすく、高額な補助区分に該当する可能性が高まります。一方、サイディングやモルタルは、カバー工法(断熱材追加)を採用しないと外壁部分での補助加算は難しい。ただし、遮熱塗料の使用により自治体独自の補助金が対象になるケースはあります。

賢いメンテナンス戦略としては2つの選択肢があります。

戦略A:内窓設置(小規模)+高効率給湯器の更新+外壁塗装。

これで補助金の最低ラインをクリアしつつ、全体のコストを数万円〜十数万円軽減する方法です。

戦略B:外壁の断熱改修(カバー工法)+窓交換。

築年数の古い住宅で、最大100万円規模の補助金獲得を目指す方法です。

2026年以降、「今すぐ塗り替えましょう」は施主にとって損になる可能性があります。窓リノベと同時施工すれば補助金が出るのに、塗装だけ先にやってしまうと補助金の条件を満たせない。この事実を塗装業者もポータルも教えてくれません。なぜなら、「待ちましょう」は営業にならないからです。

2026年度の補助金制度の詳細──制度名・金額・シミュレーション・タイミング戦略は「2026年、塗装単独では補助金ゼロ──窓×給湯器との同時施工で27万円を取り戻す具体的パズル」で解説しています。


人工理論で見ると|外壁材の違いは「時間の違い」

塗装方程式 Q=M×T×T のT(時間=人工)は、外壁材によって物理的に決まります。

サイディング15人工とALC21人工の差は、職人の技術や怠慢の問題ではありません。目地の長さ、吸い込みの量、ケレンの必要性——これらは素材の物理特性が要求するものです。

だから、外壁材を無視して出された見積もりは、原理的に不正確です。サイディングの家にALCの人工で見積もれば割高になり、ALCの家にサイディングの人工で見積もれば手抜きになる。

正しい順番は「自分の素材を知る→適正人工を知る→見積もりを検証する」。この順番を逆にするから、金額だけで選んで後悔することになります。

人工理論の全体像は「人工理論完全講義」で詳しく解説しています。


あなたの家の外壁材、見積もりは素材に合っていますか?

手元の見積書が「わが家の外壁材」に合っているかどうか。AI見積もり診断でチェックできます。

外壁材の写真と見積書をアップロードするだけ。素材を特定し、素材別の適正人工テーブルと照合します。「ALCなのに15人工の見積もり」「サイディングなのにフィラーの下塗り」——素材と見積もりの不整合を発見します。

500円で、素材を知らない業者に塗らせるリスクを消します。

※中立性を保つため、愛知県内の方へはサービスを提供しておりません。

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この記事の監修者

横井隆之|愛知県で50年続く塗装店「ヨコイ塗装」2代目。施工実績500件以上。

著書:

  • 『外壁塗装の不都合な真実』
  • 『塗装方程式』
  • 『外壁塗装 工程別チェックポイント21』

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この記事の著者

横井隆之

横井隆之

ヨコイ塗装 代表 / 外壁塗装コンサルタント

業界経験 50著書 3

愛知県扶桑町でヨコイ塗装を経営。塗装業界50年以上の経験と500件を超える施工実績を持つ外壁塗装の専門家。施主の立場に立った公正なアドバイスを提供し、YouTube、ココナラ、MOSHなど複数のプラットフォームでセカンドオピニオンサービスを展開中。

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