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築10年の定期点検で「外壁塗装が必要」と言われたら|焦る前に確認すべき7つの判断基準

この記事の監修者

ヨコイ塗装 代表 横井隆之

愛知県で50年続く塗装店の2代目。200件以上の施工実績を持ち、著書に『外壁塗装の不都合な真実』『塗装方程式』『外壁塗装 工程別チェックポイント21』(Kindle)がある。見積もり診断サービス「ペンキのミカタ」を運営し、全国の施主に中立的なアドバイスを提供している。

はじめに

「10年点検に来ました。外壁の塗装が必要です。このまま放置すると保証が切れますよ」

ハウスメーカーの点検担当者からこう言われたとき、あなたの頭の中にはおそらく2つの感情が渦巻いているはずです。

ひとつは「やっぱり来たか」という覚悟。もうひとつは「本当に今、必要なの?」という疑問。

そして見積書を見た瞬間、3つ目の感情が加わります。「…200万円?」

私のもとには、まさにこの状況で相談される方が毎月何人もいらっしゃいます。50年間、現場で外壁を塗り続けてきた職人として断言しますが、その見積書にサインするのは、この記事を読み終えてからでも遅くありません。

「即決しないと雨漏りする」と言われましたか? 大丈夫です。雨漏りしていない家が、明日突然壊れることはありません。数ヶ月の検討期間は十分に取れます。

この記事では、築10年の定期点検で「塗装が必要」と言われた際に、パニックに陥ることなく冷静に判断するための7つの基準を、劣化の科学・保証制度の実態・市場価格の最新動向という3つの視点からお伝えします。

「築10年」がメーカーにとって特別な理由 — 品確法の期限切れ

まず知っておいていただきたいのは、なぜハウスメーカーが「10年」というタイミングで有償メンテナンスを強く推奨するのか、その構造的な理由です。

品確法の「10年保証」は法律の強制規定

住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)により、新築住宅には引き渡しから10年間、構造耐力上主要な部分(基礎・柱・梁)と雨水の浸入を防止する部分(屋根防水・外壁・サッシ回り)に対する瑕疵担保責任が売主に課されています。

この10年間は法律による保護ですから、ハウスメーカーが独自の約款で短縮したり、不当な免責事項を設けたりすることはできません。つまり築10年までは、何もしなくてもあなたの家は法律で守られているのです。

11年目からは「メーカーの任意ルール」に変わる

問題はここからです。

品確法の義務期間が終わった11年目以降、ハウスメーカーが掲げる「20年保証」「30年保証」は、あくまでメーカー独自の延長サービスに過ぎません。その延長条件はメーカーが自由に設定できます。

ほとんどのハウスメーカーが設定している条件はこうです。

「10年目の定期点検で、メーカーが必要と判断した有償メンテナンス工事を、メーカー指定の施工会社で実施すること」

つまり「保証を延長したければ、私たちに高額な工事を発注してください」ということ。「保証」という名の「囲い込み」が、このタイミングで始まるのです。

「保証が切れますよ」は恐怖訴求(フィアー・アピール)

ハウスメーカーの点検担当者が「ここで断れば保証が全部切れますよ」と言った場合、それは正確ではありません。

品確法に基づく10年間の法的保護は既に満了しています。

11年目以降のメーカー独自保証については、確かに延長されなくなる可能性があります。しかし外壁塗装を他社で行ったからといって、構造躯体に関するメーカーの責任まで消滅するわけではありません。免責となるのは「他社施工部分に起因する不具合」に限られます。

この「保証が切れる恐怖」を冷静に分析することが、合理的な判断の第一歩です。

→ 保証制度の詳しい仕組みは、ハウスメーカー別メンテナンスガイド|保証の真実と100万円節約する方法で解説しています。

自分でできるセルフ診断 — 本当に「今」塗装が必要なのか?

ハウスメーカーの指摘を鵜呑みにする前に、あなた自身の目と手で確認できることがあります。以下の4項目をチェックしてみてください。

判断基準①:チョーキングテスト(指触診断)

晴れた日に外壁の表面を指で軽くこすってみてください。白い粉が指に付着する現象をチョーキング(白亜化)といいます。

これは塗膜の樹脂が紫外線によって分解され、顔料(酸化チタン)が表面に露出した状態です。塗膜内部では、紫外線を吸収した酸化チタンが「ラジカル」と呼ばれる反応性の高い分子を生成し、樹脂のポリマー鎖を化学的に切断しています。つまり塗膜の防水バリアが分子レベルで崩壊している証拠です。

緊急度の判断:

チョーキングの程度状態緊急度
指にうっすら白い粉がつく初期段階。まだ防水性は一部残っている低〜中(1〜2年以内に検討)
指に明確に白い粉がつく防水機能が大幅に低下中(1年以内に計画を)
壁に手をつくと手形が残るほど防水機能はほぼ喪失高(早急に対応が必要)

築10年のシリコン塗装であれば、初期〜中程度のチョーキングが発生していることが多いです。「粉がついた=今すぐ塗装しないと崩壊する」ではありません。ここを冷静に見極めることが重要です。

判断基準②:シーリング(コーキング)の目視チェック

窯業系サイディングの住宅であれば、シーリングの状態確認は塗装以上に重要です。

シーリング材には柔軟性を維持するための「可塑剤」が含まれていますが、経年によってこの可塑剤が表面に移行し揮散します。可塑剤を失ったシーリングは硬化・収縮し、やがて2つの破壊モードのどちらかに至ります。

界面剥離(接着破壊):シーリングとサイディングの接着面が剥がれ、隙間が生じる。ここから雨水が直接侵入する。

凝集破壊:シーリング材の中央部が裂ける。材料自体の強度限界を超えた状態。

緊急度の判断:

シーリングの状態見た目緊急度
表面に細かいひびがある硬化の初期段階
ボードとの境目に隙間がある界面剥離が始まっている
真ん中で裂けて中の下地が見える凝集破壊。雨水浸入のリスク大最高(最優先で対応)

特にサイディングの断面(小口)は防水塗装が施されていないことがほとんどです。シーリングの破断で露出した小口から雨水を吸い上げると、ボード自体が反り返ったり崩壊したりする深刻な被害につながります。この修理はサイディング張り替え(数百万円規模)となるため、シーリング劣化の放置は最もハイリスクです。

判断基準③:クラック(ひび割れ)の分類

モルタル壁やコンクリート壁に見られるひび割れは、幅と深さで深刻度が大きく異なります。

ヘアクラック(幅0.3mm未満):塗膜の経年硬化による表面的なひび割れ。ほとんどの場合、直ちに構造への影響はありません。次回の塗り替えまで経過観察でOKです。

構造クラック(幅0.3mm以上):基材に達しているひび割れ。雨水の浸入経路となり、内部の金属を錆びさせたり、木造では柱や梁の腐朽やシロアリを誘引したりします。特に窓枠の四隅(開口部周辺)は応力が集中しやすく、構造クラックが発生しやすい要注意箇所です。

判断のコツ:名刺の角をひび割れに当ててみてください。名刺が入らない程度の幅なら、おおむね0.3mm未満のヘアクラック。入るようなら構造クラックの可能性があり、専門家の診断を受けることをお勧めします。

判断基準④:北面の藻・カビ・苔

北側や風通しの悪い壁面に藻やカビ、苔が広がっていませんか?

これらは単なる美観の問題ではありません。常に湿気を保持するスポンジのような役割を果たし、塗膜の劣化を加速させます。一部の菌類は酸性物質を放出し、セメント系基材を化学的に侵食することもあります。

高圧洗浄で除去は可能ですが、防水機能が低下している証拠でもあります。広範囲に発生している場合は、防藻・防カビ性能を持つ塗料での再塗装のサインと考えてください。

「4つのセルフ診断」の総合判定表

上記4項目を確認した結果を、以下の表に当てはめてみてください。

総合判定あなたの外壁の状態推奨アクション
A:余裕ありチョーキング軽微、シーリング健全、クラックなし1〜3年以内に計画すれば十分。焦る必要なし
B:計画段階チョーキング中程度、シーリングに細かいひび1年以内に相見積もりを取り、業者選定に入る
C:早期対応シーリング剥離あり、構造クラックあり半年以内に着工が望ましい。ただし即決は不要
D:緊急雨漏り兆候、サイディングの反り、室内にシミ速やかに複数業者の診断を受ける(それでも即決は避ける)

重要なポイント:「C」や「D」の状態であっても、ハウスメーカーの見積もりにその場でサインする必要はありません。

「家族と相談します」「相見積もりを取ります」と言って見積書を持ち帰る。これが鉄則です。

ハウスメーカーの見積もりは「なぜ高い」のか — 人工で読み解く

判断基準⑤:見積もり金額の構造を理解する

ハウスメーカーの塗装見積もりは、一般の専門業者と比較して30〜50%、場合によっては2倍近く高いことが常態化しています。

この差は「施工品質の違い」ではなく、流通構造の違いです。

ハウスメーカーが直接壁を塗ることはありません。リフォーム部門が元請けとなり、下請け工務店に発注し、さらに塗装専門業者へ再発注される。この重層構造の各段階でマージンが上乗せされます。

ここで私が著書『塗装方程式』で提唱している品質の公式を思い出してください。

品質 = モチベーション × 技術 × 時間

200万円の見積もりでも、末端の職人に届くのは100万円前後。しかし専門業者に直接依頼した130万円の工事なら、同じ金額がほぼそのまま施工に使われます。どちらが「品質を生む時間」を確保できるかは明らかです。

人工(にんく)という視点で計算すれば、200万円のHM見積もりにどれだけの「作業時間」が含まれているか、具体的に検証できます。

判断基準⑥:見積書の「透明性」で業者の姿勢を見極める

見積書が手元にあるなら、以下のチェックポイントを確認してください。

□ 塗装面積は図面から算出されているか?

「建坪×係数」のどんぶり勘定ではなく、開口部(窓・玄関ドア)を差し引いた実塗装面積が記載されているか。開口部を引かない見積もりは、実質的に単価を2〜3割水増ししているのと同じです。

□ 塗料名・メーカー名が具体的に書かれているか?

「シリコン塗料」ではなく「日本ペイント パーフェクトトップ ND-102」のように、製品名と色番号が明記されているか。

□ 工程が「3回塗り」と明記されているか?

下塗り・中塗り・上塗りの3回塗りが基本です。各工程間の乾燥時間(インターバル)についての言及があれば、品質意識の高い業者と判断できます。

□ シーリングは「打ち替え」か「増し打ち」か記載があるか?

「シーリング工事一式」としか書かれていない場合は要注意。サイディングの目地は原則「打ち替え」(既存撤去→新規充填)が必須です。「増し打ち」(既存の上から薄く被せる)では数年で切れてしまいます。

→ 見積書の詳しい読み方は見積書の正しい読み方ガイドを参照してください。

2025〜2026年の相場感と「先送りリスク」

判断基準⑦:今の相場を知り、「いつ塗るか」を決める

「もう少し安くなってから…」と先送りする方が少なくありませんが、2025年以降の建設業界ではその判断が裏目に出る可能性が高いです。

建設業界は構造的なコスト上昇局面にあります。2024年4月から適用された建設業の残業規制(いわゆる「2024年問題」)により、工期が延び、人件費単価が上昇。加えて原油価格や円安による塗料・資材の値上がりも続いています。

30坪住宅の2025〜2026年の適正相場

塗料グレード外壁のみ(万円)外壁+屋根(万円)耐用年数
シリコン60〜9080〜12510〜13年
ラジカル制御型65〜9590〜13512〜15年
フッ素80〜110110〜16015〜20年
無機ハイブリッド90〜120120〜17020〜25年

2025年現在、最もコスパが高いのは「ラジカル制御型塗料」です。シリコンと同等の価格帯でありながら、フッ素に迫る耐久性(12〜15年)を実現しています。特段の理由がなければ、第一選択肢とすべき標準仕様です。

ハウスメーカーの見積もりがこの相場の1.5倍以上であれば、中間マージンが過大である可能性が高いと言えます。

「先送り」と「前倒し」どちらが得か?

外壁塗装の相場は年間数パーセントのペースで上昇を続けており、2026年には2020年頃と比べて15〜20%程度高くなる見通しです。

一方で、劣化を放置すると下地補修の費用が加算されます。特にシーリングの破断を放置してサイディングが反り始めると、張り替えに200〜300万円。塗装で済んでいた修繕が、取り返しのつかないコストに膨れ上がります。

結論:「今すぐ」は不要だが、「先送り」もリスク。半年〜1年以内の計画的な実施が最も経済合理的です。

即決する前にやるべき3ステップ

築10年の定期点検で見積もりを提示されたら、以下の手順で進めてください。

ステップ1:見積書を持ち帰る(当日)

「家族と相談します」「相見積もりを取りたい」と伝えるだけです。真っ当な業者であれば、数百万円の契約に検討時間を与えるのは当然のことです。「今日中に決めないと保証が切れる」「キャンペーンは今日まで」と即決を迫る場合は、むしろ警戒信号です。

ステップ2:相見積もりを取る(1〜2ヶ月)

ハウスメーカーの見積もりに加え、異なる業態から最低3社の見積もりを取ってください。

業態特徴価格帯の傾向
ハウスメーカー保証延長可。安心感あり高(マージン大)
大手リフォーム会社対応力あり。ブランド力中〜高
地元の塗装専門店自社施工。技術力重視適正(中間マージン少)

比較すべきは金額だけではありません。面積算出の根拠、塗料の具体的な製品名、シーリング工法の指定、工期と工程表の現実性。同じ条件で比較して初めて、各社の「本気度」が見えてきます。

→ 業者選定の具体的な基準は良い業者の見分け方ガイドで詳しく解説しています。

ステップ3:セカンドオピニオンを受ける

見積書の金額が妥当かどうか、自分だけでは判断しきれない場合は、利害関係のない第三者に相談するのが最も確実です。

私が運営する「ペンキのミカタ」は、施工を請け負わない完全中立のセカンドオピニオンサービスです。見積書をお送りいただければ、50年の現場経験に基づいて、塗料選定・面積算出・シーリング工法・人工配分の妥当性を診断します。

「ハウスメーカーの見積もりが230万円。専門業者は130万円。でもHMは"うちの壁は特殊だから"と言う。どちらを信じればいいのか分からない」

こうしたご相談が最も多いパターンです。壁が特殊なのは事実でも、だからハウスメーカーにしか頼めないわけではない。その判断材料を提供するのが、セカンドオピニオンの役割です。

まとめ:「焦りの即決」から「知識の自衛」へ

築10年の定期点検は、あなたの家と向き合う大切な機会です。ハウスメーカーの指摘そのものは、嘘ではありません。10年経てば外壁は確実に劣化しています。

しかし、「劣化している事実」と「ハウスメーカーに高額な工事を即決で発注すべきこと」は全く別の話です。

この記事でお伝えした7つの判断基準を改めて整理します。

#判断基準あなたがやること
チョーキングテスト指で触って粉の程度を確認
シーリングの目視チェックひび割れ・剥離の有無を確認
クラックの分類名刺テストで幅を確認
藻・カビ・苔の範囲北面を中心に広がりを確認
見積もり金額の構造理解人工と中間マージンの比率を確認
見積書の透明性面積・塗料名・工法の記載を確認
市場相場との比較最新の適正価格と照合

この7つを確認した上で、最後に自分自身に問いかけてください。

「あと何年、この家に住むのか?」

永住するなら高耐久塗料(フッ素・無機)でトータルコストを下げる。10年以内に転売予定ならシリコンで初期費用を抑える。この「ライフプランとの照合」が、最も合理的な判断基準です。

万が一、すでに契約してしまった場合

訪問販売や自宅での契約の場合、特定商取引法に基づくクーリング・オフ制度が使えます。契約書面を受け取った日から8日以内であれば、工事が始まっていても無条件で解除可能。違約金も発生しません。手続きは内容証明郵便で行うのが最も確実です。

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