この記事の監修者
ヨコイ塗装 代表 横井隆之
愛知県で50年続く塗装店の2代目。200件以上の施工実績を持ち、著書に『外壁塗装の不都合な真実』『塗装方程式』『外壁塗装 工程別チェックポイント21』(Kindle)がある。見積もり診断サービス「ペンキのミカタ」を運営し、全国の施主に中立的なアドバイスを提供している。
👉 各メーカーの外壁材・保証の詳細は「ハウスメーカー別 外壁塗装メンテナンスガイド」をご覧ください。
はじめに
ハウスメーカーから外壁塗装の見積もりを受け取って、金額に驚いた経験はありませんか?
「250万円」「300万円」——。一般的な塗装業者の相場が100万〜150万円であることを考えると、同じ家の塗装なのに、なぜ2倍近い金額になるのか。当然の疑問です。
結論から言います。その差額の大半は「中間マージン」です。
ハウスメーカーの見積もりが高い理由は、塗料が特別に高品質だからでも、職人が特別に優秀だからでもありません。あなたが支払う300万円のうち、実際に壁を塗る職人と塗料に届く金額は半分以下。残りは、元請け→下請け→孫請けと流れる過程で、各段階の会社が抜く「管理費」「利益」「広告費」として消えていきます。
50年間、業界の内側から見てきた職人として、この記事では「なぜ高いのか」の構造を包み隠さず解説し、100万円以上安くしながら品質を落とさない方法をお伝えします。
→ ハウスメーカー別の外壁特性と保証構造の全体像は、ハウスメーカー別メンテナンスガイド|保証の真実と100万円節約する方法で詳しく解説しています。
300万円の内訳 — お金はどこに消えているのか
多重下請けの「4階層ピラミッド」
ハウスメーカーのリフォーム工事で、元請け企業の社員が刷毛を持って壁を塗ることは一切ありません。実態は以下のようなピラミッド構造です。
| 階層 | 誰が何をするか | 抜かれるマージン |
|---|---|---|
| Tier 1:HM本体・リフォーム子会社 | 顧客窓口、ブランド貸与、保証管理 | 25〜35% |
| Tier 2:地域指定工務店 | 現場監督、工程管理、職人手配 | 15〜25% |
| Tier 3:塗装施工店 | 実務部隊の編成、資材準備 | 10〜15% |
| Tier 4:塗装職人 | 実際に壁を塗る | 残り |
あなたが支払う300万円を、このピラミッドで追いかけてみましょう。
300万円 → Tier 1が約90万円を取る → 210万円 → Tier 2が約40万円を取る → 170万円 → Tier 3が約20万円を取る → 150万円が職人と材料費
つまり、300万円のうち、実際に「塗装の品質」を生む直接工事費は約150万円。半分です。
一方、地域の優良な塗装専門店に直接依頼した場合、Tier 1とTier 2が丸ごと消えます。同じ塗料、同じ職人レベルの工事が150万円前後で実現する。これが「同じ工事なのに半額」のカラクリです。
広告費・展示場維持費もあなたの塗装代に含まれている
ハウスメーカーはテレビCM、住宅展示場、カタログ、アフターサービス部隊、コールセンターなど、膨大な固定費を抱えています。これらは「販売費及び一般管理費(販管費)」として、リフォーム工事の単価に転嫁されます。
あなたは「塗装工事」の対価だけでなく、「ハウスメーカーの巨大な組織を維持するための会費」を工事費の中で支払っているのです。
「純正塗料」の正体 — 中身は市販品と同じ
OEM塗料という仕組み
「この外壁は特殊なので、当社の純正塗料でなければ対応できません」
ハウスメーカーの営業担当がよく使うフレーズです。しかし、「純正塗料」の実態を調べると、異なる事実が見えてきます。
ハウスメーカーが「オリジナル」として提案する塗料の多くは、日本ペイント・エスケー化研・関西ペイントといった大手塗料メーカーが製造を受託(OEM)し、ハウスメーカー専用のラベルを貼って供給しているものです。
| ハウスメーカー | 純正塗料名 | 製造元(推定) | 市販の同等品(推定) |
|---|---|---|---|
| 積水ハウス | フレアトーン | エスケー化研 | SKプレミアムマルチカラー等 |
| ヘーベルハウス | グランロック / デュラ光 | 日本ペイント等 | ダイヤモンドコート等 |
| 大和ハウス | DCウォール用塗料 | 日本ペイント等 | パーフェクトセラミックトップG等 |
| ミサワホーム | 各種純正塗料 | 関西ペイント等 | アレスダイナミック等 |
純正塗料が「悪い」わけではありません。問題は「性能に対して価格が不当に高い」ことです。
知識のある塗装専門業者が市販の最高級塗料を選定すれば、純正品と同等、あるいはそれ以上のスペックを、大幅に安いコストで実現できます。
→ 各メーカーの外壁材に適合する塗料の具体的な選び方は、積水ハウスガイド、
セキスイハイムガイドで詳しく解説しています。
「保証が切れますよ」の真実 — 恐怖の正体を分解する
保証を「人質」にした囲い込み戦略
ハウスメーカーのリフォームを選ぶ最大の動機であり、社外業者への依頼を躊躇させる最大の要因が「保証」です。
多くのハウスメーカーは、「10年〜15年ごとの有償メンテナンス工事を純正で実施すること」を条件に、構造躯体や防水の保証を20年・30年・最長60年まで延長するシステムを採用しています。
言い換えれば、「うちで工事しないと保証が切れますよ」ということ。これが施主を純正工事に縛り付ける最強のカードです。
冷静に計算してみる
具体的なジレンマを数字で見てみましょう。
| 選択肢 | 費用 | 保証 |
|---|---|---|
| A:純正工事 | 250万円 | 構造・防水保証が10年延長 |
| B:社外工事 | 130万円 | HM保証は打ち切り。施工店の工事保証5〜10年 |
| 差額 | 120万円 |
ここで冷静に考えるべきは、「築15年の家で、次の10年間に構造的な欠陥が発生する確率」と「その修理費用」です。
建築基準法と品確法のもとで建てられた大手HMの住宅が、築15〜25年の間に、施工不良以外の理由で構造崩壊を起こす確率は極めて低い。万が一、経年劣化による雨漏りが発生したとしても、部分修理費用が差額の120万円を超えるケースは稀です。
つまり差額120万円は、「発生確率の低いリスクに対する、極めて高額な保険料」です。
保証が切れても「すべて」が消えるわけではない
「他社で塗装すると保証が切れる」の正確な意味を確認してください。
| 項目 | 社外工事後の扱い |
|---|---|
| 外壁からの雨漏り | 対象外になる(外壁を触ったため) |
| 外壁材の変形・割れ | 対象外になる |
| 基礎の構造的欠陥 | 継続されることが多い(外壁工事と無関係のため) |
| 内装設備の不具合 | 継続されることが多い |
建物全体の保証が即座にゼロになるわけではありません。ただし、HM側が「社外業者の施工が原因の可能性がある」として免責を主張するリスクはあります。
保証を手放すべきケース、維持すべきケース
| あなたの状況 | 判断 |
|---|---|
| 5年以内に売却予定 | 純正維持。「全期間メーカー管理」は査定で有利 |
| 永住志向・売却予定なし | 社外検討。浮いた100万円を他に投資 |
| すでに築20年以上で保証切れ | 社外一択。縛りがないなら最適な業者を選ぶ |
| 雨漏り等の躯体問題が既にある | 純正維持。躯体起因なら保証で対応できる可能性 |
メーカー別の「高さ」の中身
積水ハウス
純正見積もり:30坪で130〜180万円、40坪で160〜220万円、50坪超で300万円〜
社外業者:同条件で100〜140万円前後
差額が生まれる特殊事情:ダインコンクリートの凹凸が深く、多彩模様塗装の再現に技術が必要。「フレアトーン」等の意匠性塗料を選ぶとさらに高騰。ガスケット(定型目地)の純正部材がメーカー経由でしか入手できないケースがある。
→ 詳しくは積水ハウスの外壁塗装ガイド
ヘーベルハウス
純正見積もり:30坪で200万円台がボリュームゾーン。最大300万円超
社外業者:70〜110万円。価格差が最も大きいメーカー
差額が生まれる特殊事情:ALCパネルの幅が狭く(600mm)、目地の総延長が一般住宅の2〜3倍。シーリング工事費が全体コストを押し上げる。60年点検システムの「保証の囲い込み」が最も強力。
→ 詳しくはヘーベルハウスの外壁塗装ガイド
セキスイハイム
純正見積もり:ガスケット全面交換+洗浄+足場で115万〜180万円
社外業者:73万〜125万円
差額が生まれる特殊事情:磁器タイル自体は塗装不要だが、ガスケット交換の純正部材がメーカー独占のケースが多い。「湿式変更(シーリング仕上げ)」で代替すればメーカー依存から脱却可能。
→ 詳しくはセキスイハイムの外壁メンテナンスガイド
ミサワホーム
純正見積もり:40坪でシリコン135〜155万円、高グレードで200万円近く
社外業者:40坪で100〜110万円
差額が生まれる特殊事情:PALC外壁はALCに近い特性。社外に切り替えるだけで30〜50万円のコストダウンが可能で、さらに塗料グレードを「シリコン→無機」にランクアップしてもなお純正のシリコン塗装より安いという逆転が起きる。
大和ハウス
純正見積もり:「防蟻処理」「屋根塗装」「バルコニー防水」をセットにした300万円超のパック提案が多い
差額が生まれる特殊事情:DXウォール(彫りの深い窯業系サイディング)は施工手間が増えるが、化学的な制約は少ない。セット提案を分解して個別に見積もりを取ることがコスト削減の第一歩。
「人工」で読み解く — 同じ300万円でも品質が違う理由
私の著書『塗装方程式』で提唱する品質の公式は、品質 = モチベーション × 技術 × 時間です。
ここで「時間」に注目してください。
HM経由300万円の場合
300万円のうち、末端の職人に届く金額は約150万円。ここから材料費を引くと、職人の人件費(=作業に使える時間)は限られます。
社外直接150万円の場合
150万円がほぼそのまま施工に使われます。材料費を引いた残りが職人の人件費。HM経由と同じ金額なのに、中間マージンがない分、より多くの時間を「丁寧な施工」に充てられる。
つまり、「高い=品質が良い」ではなく、「直接依頼の方が、同じ予算でより品質の高い施工ができる」というのが人工理論の結論です。
→ この考え方の詳細は人工(にんく)という視点で解説しています。
40坪の家で具体的にいくら違うのか
工事項目別の費用比較(延床40坪・外壁面積約160㎡)
| 工事項目 | HM純正 | 塗装専門店(自社施工) | 差額 |
|---|---|---|---|
| 足場+養生 | 25万〜35万円 | 15万〜20万円 | 約10〜15万円 |
| 高圧洗浄 | 3万〜5万円 | 2万〜3万円 | 約1〜2万円 |
| シーリング打替(200m想定) | 30万〜40万円 | 15万〜20万円 | 約15〜20万円 |
| 外壁塗装(シリコン〜ラジカル) | 80万〜100万円 | 50万〜60万円 | 約30〜40万円 |
| 諸経費・管理費 | 20万〜40万円 | 5万〜10万円 | 約15〜30万円 |
| 合計 | 158万〜220万円 | 87万〜113万円 | 約70〜100万円 |
差額70万〜100万円。軽自動車1台分です。
しかもこの差額は「品質の差」ではなく「流通経路の差」。同じ塗料、同じレベルの職人でこの差が生まれます。
→ 見積書の読み方がわからない場合は見積書の正しい読み方ガイドを参照してください。
100万円安くする5つのステップ
ステップ1:HMの見積もりを「基準仕様書」として使う
まずハウスメーカーから見積もりを取り、塗料グレード・平米数・工法・シーリング仕様を把握します。これがベンチマークになります。
ステップ2:同じ仕様で社外2〜3社に相見積もり
HMの見積もりに記載された仕様(例:「外壁シリコン塗装・シーリング打替え・足場架設」)と同条件で、地域の塗装専門店に見積もりを依頼します。
ステップ3:業者の「HM施工実績」を確認
単に安いだけの業者は危険です。あなたのハウスメーカーの外壁材を施工した実績があるかを必ず確認。施工中の写真(養生・下地処理の様子)がブログ等に掲載されているかがポイントです。
ステップ4:「踏み絵」質問で技術力を確認
各メーカーの外壁材には固有の技術的注意点があります。
| あなたの家 | 質問 | 合格回答 |
|---|---|---|
| 積水ハウス | ガスケットのブリード対策は? | 「ブリードオフプライマーで処理します」 |
| ヘーベルハウス | ALC外壁の塗料選定基準は? | 「透湿性のある水性塗料を使います」 |
| セキスイハイム | ガスケット交換は乾式?湿式? | 「状態に応じて使い分けます」 |
| 難付着サイディング | 下塗り材は何を使う? | 「専用の2液エポキシシーラーです」 |
→ 各メーカー別の踏み絵質問の詳細は、積水ハウスガイド、
セキスイハイムガイドをご参照ください。
ステップ5:浮いたお金の使い道を決めておく
「100万円安くなった」で終わらせず、その資金を内装リフォーム、防災設備、修繕積立金に回す計画を立てておくと、家全体の資産価値向上につながります。
→ 業者選定の詳しい基準は良い業者の見分け方ガイドで解説しています。
よくある質問
Q. 社外業者に頼んだら、HMに出入り禁止にされませんか?
HMの点検サービスは「有償サービス」であり、外壁塗装の依頼先とは法的に無関係です。ただし、外壁保証の延長条件を満たさなくなるため、外壁に関する保証は打ち切られる可能性が高いです。構造躯体の定期点検は別途申し込める場合があります。
Q. HMに値引き交渉はできますか?
「他社では同等の無機塗料で○○万円の提案が出ている」と伝えれば、ある程度の歩み寄りは期待できます。ただし、構造的なマージン(組織維持費)が存在するため、社外業者並みの価格にはなりません。10〜20%程度の値引きが交渉の現実的なラインです。
Q. 純正塗料でないと本当に問題が起きますか?
純正塗料が唯一の選択肢であるケースは極めて稀です。大手塗料メーカーの汎用品には、ALC対応(透湿型)、難付着対応(専用シーラー)など、HMの外壁材に適合する製品が多数あります。重要なのは「純正かどうか」ではなく、「外壁材の特性を理解した上で適切な塗料を選定しているか」です。
まとめ — HM見積もりが高い3つの理由と対策
高い理由
| # | 理由 | 施主への影響 |
|---|---|---|
| 1 | 多重下請け構造(4階層のマージン) | 支払額の半分以上が中間コスト |
| 2 | OEM塗料のブランド料(中身は汎用品) | 同じ性能の塗料が市販品なら半額以下 |
| 3 | 保証の囲い込み(延長保証を人質に) | 「高額な保険料」として差額を支払う構造 |
対策
| ステップ | やること |
|---|---|
| ① | HM見積もりを「基準仕様書」として取得 |
| ② | 同じ仕様で社外2〜3社に相見積もり |
| ③ | HM施工実績の有無を確認 |
| ④ | 踏み絵質問で技術力を検証 |
| ⑤ | 浮いた100万円の使い道を計画 |
コスト判断の分岐点
| あなたの状況 | 推奨 | 理由 |
|---|---|---|
| 売却予定あり | 純正継続 | 「全期間メーカー管理」が査定に有利 |
| 永住志向 | 社外検討 | 差額100万円を他の資産価値向上に投資 |
| 築20年超・保証切れ | 社外一択 | 縛りなし。最適な業者を自由に選べる |
「高い=安心」ではありません。「何に対してお金を払っているか」を理解することが、最も安心な選択につながります。
「この見積もり、本当に適正?」と感じたら、見積もり診断サービスをご利用ください。HMの見積もりと社外見積もりの両方を、50年の経験を持つ職人の目で比較診断いたします。
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この記事の解説動画
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