この記事の監修者
ヨコイ塗装 代表 横井隆之
愛知県で50年続く塗装店の2代目。200件以上の施工実績を持ち、著書に『外壁塗装の不都合な真実』『塗装方程式』『外壁塗装 工程別チェックポイント21』(Kindle)がある。見積もり診断サービス「ペンキのミカタ」を運営し、全国の施主に中立的なアドバイスを提供している。
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はじめに
「10年保証だから安心ですね」
外壁塗装の契約で、この言葉に安堵した方は多いのではないでしょうか。
しかし、200件以上の現場を経験してきた立場から断言します。「10年保証」という言葉の響きに安心して、その中身を確認しない施主が、最もトラブルに遭いやすいのです。
私の著書『外壁塗装の不都合な真実』でも詳しく解説していますが、保証書には「免責事項」という名の法的抜け穴が存在します。多くの消費者は、この抜け穴の存在すら知らないまま契約に至っています。
この記事では、外壁塗装の保証制度に潜む5つの罠を徹底解説します。契約前にこれを知っているかどうかで、10年後の結果が大きく変わります。
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保証の3層構造を理解する
まず、外壁塗装における「保証」は単一のものではないことを理解してください。責任の所在によって大きく3つの層に分かれます。
1. 製品保証(メーカー保証)
日本ペイント、関西ペイント、エスケー化研といった大手塗料メーカーが発行する保証です。
対象:塗料そのものに製造上の欠陥があった場合(未開封で凝固していた等)
限界:メーカーは「施工品質」には関与しません。塗装の不具合の9割は「施工ミス」に起因すると言われていますが、メーカー保証はこれを一切カバーしません。また、補償範囲は「代替塗料の提供」に留まり、
再塗装にかかる人件費や足場代(工事費の7〜8割)は補償されないのが通例です。
2. 施工保証(自社保証)
塗装業者が独自に発行する「工事に対する保証」です。消費者が目にする「10年保証」の99%はこの施工保証を指します。
対象:施工不良による塗膜の剥がれ、膨れなど
リスク:この保証の価値は、発行元である塗装業者の「存続」と「誠実さ」に完全に依存します。資本金数百万円の零細企業が発行する10年保証は、その企業が10年後に倒産していれば
紙切れ同然となります。
3. 第三者保証(リフォーム瑕疵保険)
国土交通省が指定する住宅瑕疵担保責任保険法人(JIOなど)が引き受ける保険です。
仕組み:第三者の建築士が施工中または完了後に検査を行い、合格した場合にのみ保険が付保されます。
メリット:万が一施工店が倒産しても、保険法人から補修費用が支払われます。これが唯一の「倒産リスクをヘッジする」公的な仕組みです。
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【罠その1】オリジナル塗料とOEMの不透明性
「当社独自の開発塗料なので、他社には真似できない高品質・長寿命を実現しました。だから30年の保証が付けられます」
訪問販売のリフォーム営業で頻出するこのセールストークには、極めて高いリスクが潜んでいます。
オリジナル塗料の正体
いわゆる「オリジナル塗料」の正体は、その大半が大手塗料メーカーの既存製品のラベルを貼り替えただけのOEM製品です。
中身は一般的なシリコン塗料やフッ素塗料であることが多いですが、製品名を変更することで、消費者がインターネットで市場価格を検索することを不可能にしています。
「孤立する保証」のリスク
オリジナル塗料の最大のリスクは、保証が販売会社一社に紐付いてしまう点にあります。
通常の塗料の場合:施工店が倒産しても、別の業者が同じ塗料を取り寄せて補修することが可能
オリジナル塗料の場合:「その会社しか扱っていない」ため、販売会社が倒産したり事業撤退した瞬間、メンテナンス材料が入手不可能になる
| 比較項目 | 大手メーカー汎用塗料 | オリジナル(OEM)塗料 |
|---|---|---|
| 価格透明性 | 高い(相場検索可能) | 低い(独占価格) |
| 施工実績 | 豊富(数十年のデータあり) | 少ない(理論値頼み) |
| 供給安定性 | どの業者でも入手可能 | 特定業者のみ取り扱い |
| 倒産時のリスク | 他社でメンテナンス可能 | 材料入手不可で詰む |
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【罠その2】免責事項という名の法的抜け穴
保証書を受け取った際、消費者の多くは「保証期間(年数)」に目を奪われます。しかし、法的に最も重要なのは「免責事項(保証の対象外となるケース)」の項目です。
「ヘアクラック」の定義闘争
外壁(特にモルタルやコンクリート)における最大の懸念はひび割れ(クラック)です。しかし、多くの保証書では「ヘアクラックは保証対象外」と明記されています。
問題は「ヘアクラックの定義」です。
- 一般的な定義:幅0.3mm未満の微細なひび割れ
- 業者の抗弁:「このひび割れはヘアクラックに該当するため、保証対象外です」
消費者の目には明らかに美観を損なうひび割れであっても、業者が定めた数値基準に達していなければ、門前払いとなるケースが多発しています。
「構造体の挙動」による責任転嫁
さらに強力な免責条項が「下地・構造・躯体の変形・挙動に起因する不具合」です。
業者のロジック:「塗膜は厚さわずか数十ミクロンの樹脂の膜です。建物自体が地震や地盤沈下で動いた場合、塗膜が追従しきれずに割れるのは物理的に当然。これは建物の動きが原因なので免責です」
実態:適切な弾性塗料を選定し、下地処理を十分に行えば防げたはずのひび割れであっても、業者はこの条項を盾に責任を回避できます。
保証書の実態
冷徹に見れば、多くの保証書がカバーしているのは「晴天の無風状態で、建物が微動だにしなかった場合に、勝手に塗装が剥がれ落ちる」という、極めて稀な事象に限られている可能性があります。
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【罠その3】付帯部における保証期間の「二重基準」
「外壁塗装10年保証」というパッケージ契約を結んでも、その保証が家全体に適用されるわけではありません。
外壁と付帯部の決定的差異
住宅の外装は、壁面だけでなく、雨樋(塩ビ・スチール)、破風板(木部・ケイカル板)、軒天、鉄部(水切り・霧除け)などの「付帯部」で構成されています。
| 部位 | 一般的な保証期間 | 劣化要因 |
|---|---|---|
| 外壁 | 7年〜10年 | 紫外線、雨 |
| 屋根 | 5年〜7年 | 激しい紫外線、熱 |
| 鉄部 | 1年〜3年 | 錆、熱膨張による剥離 |
| 木部 | 1年〜3年 | 伸縮、反り、内部からの水分 |
| シーリング | 1年〜5年 | 可塑剤の気化、硬化、破断 |
資産価値への影響
罠は、「外壁10年保証」という大見出しの陰で、付帯部の保証が「1年」や「免責(保証なし)」に設定されていることです。
もし3年後に破風板(木部)の塗装がボロボロに剥がれた場合、外壁が綺麗でも家全体の外観は著しく損なわれます。これを補修するには、再び足場を組む必要があり、数十万円の出費となります。
対策:契約前に必ず「部位ごとの保証期間一覧」を確認すること。
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【罠その4】耐久年数と保証期間の意図的な混同
リフォーム営業の現場では、「耐久年数(期待耐用年数)」と「保証期間」という二つの異なる概念が、意図的に混同されて語られることが多いです。
「30年持ちます」の嘘
「この塗料は30年の耐久性があります。だから30年保証します」というセールストークは、現代の有機化学の常識からすれば疑わしいものです。
現在流通している最高グレードの無機塗料やフッ素塗料であっても、期待耐用年数は20〜25年程度が限界とされます。30年という数字は、実験室環境での促進試験の結果を単純計算したものであり、実際の建物が晒される酸性雨、振動、塩害、凍結融解のサイクルを考慮していない場合がほとんどです。
「美観」は保証されない
さらに重要なのは、「保証される状態」の定義です。
塗料の劣化には段階があります。
- 艶引け・変退色:表面の艶がなくなり、色が褪せる
- チョーキング:樹脂が分解され、顔料が粉状になって浮き出る
- クラック・剥離:塗膜が割れ、素地から剥がれる
多くの保証書において、保証の対象となるのは最終段階である「著しい剥離・膨れ」のみです。
つまり、5年で色が完全に褪せてしまい、手で触ると真っ白になるほどチョーキングが起きていても、塗膜が「剥がれて」いなければ、保証対象外となる可能性が高いのです。
塗料グレード別・適正保証期間の目安
| 塗料グレード | 期待耐用年数 | 適正な施工保証期間 |
|---|---|---|
| ウレタン | 8〜10年 | 3〜5年 |
| シリコン | 10〜15年 | 7〜10年 |
| フッ素 | 15〜20年 | 10年 |
| 無機 | 20〜25年 | 10〜12年 |
これを超える期間(例:シリコンで15年保証)は、集客のための誇大広告である可能性が高いです。
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【罠その5】業者の倒産リスクと第三者保証の欠如
「10年保証」の最大の脆弱性は、保証の履行義務を負う業者が10年後に存在しているかどうかが不確定である点にあります。
リフォーム業界の代謝率
建設業界、特に住宅リフォーム分野は「多産多死」の業界です。訪問販売主体のリフォーム会社は、行政処分や悪評逃れのために短期間で法人を解散・再設立(いわゆる「看板替え」)を繰り返すケースもあります。
業者が消滅すれば、その業者が発行した「自社保証書」は法的効力を失います。どれほど手厚い文言が並んでいても、請求先が存在しなければ無意味です。
唯一の解決策:リフォーム瑕疵保険
この「倒産リスク」をヘッジする唯一の公的な仕組みが「リフォーム瑕疵保険」です。
仕組み
- 施工業者が保険法人(JIO等)と契約し、保険料を支払って加入
- 工事中または完了後に、保険法人から派遣された建築士が現場を検査
- 瑕疵が見つかった際、施工業者が倒産していても、発注者は保険法人に直接保険金を請求可能
支払額:補修費用の80%〜100%(免責金額10万円が差し引かれるケースが一般的)
業者が保険加入を嫌がる理由
これほど強力な消費者保護制度であるにもかかわらず、多くの業者は瑕疵保険の利用に消極的です。
- コスト:保険料や検査手数料がかかる(数万円〜十数万円)
- 手間:申請書類の作成や、検査の日程調整が必要
- 自信のなさ:第三者のプロの検査員に見られると、手抜き工事が発覚する恐れがある
「うちは自社保証がしっかりしているから、保険なんて無駄なお金を払う必要はありませんよ」という業者の言葉は、リスクを消費者に丸投げしているに等しいのです。
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契約前のチェックリスト
以上の分析に基づき、契約前に確認すべきチェックリストを提示します。
業者選定時の確認事項
| 確認項目 | 理想的な回答 | 危険な回答 |
|---|---|---|
| 塗料の種類 | 大手メーカー品(製品名・品番が明確) | オリジナル塗料、OEM品 |
| 保証の種類 | 自社保証 + リフォーム瑕疵保険 | 自社保証のみ |
| 免責事項 | 具体的な数値基準の説明がある | 「一般的な免責です」と詳細説明を避ける |
| 付帯部の保証 | 部位ごとに年数が明記されている | 「全部10年です」(口約束) |
保証書受領時のチェック
- □ 発行元の社判、代表者印が押されているか
- □ 起算日が「完工日」になっているか(「契約日」ではないか)
- □ 宛名(施主の名前と物件住所)が正しいか
- □ 外壁だけでなく、付帯部の保証内容が記載されているか
- □ 免責事項の内容を理解しているか
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人工(にんく)の視点から見る「保証」の本質
ここまで読んで、「じゃあ保証なんて意味がないのか」と思われた方もいるかもしれません。
私は「塗装方程式」という考え方を提唱しています。
品質 = モチベーション × 技術 × 時間
保証は、この公式の「結果」に対する保険です。しかし、本当に大切なのは「結果を出すためのプロセス」です。
人工(にんく)の視点で見積もりを評価すれば、その業者が「十分な時間をかけて丁寧な施工ができるか」が分かります。十分な人工数が確保されている見積もりであれば、そもそも保証を使う事態になりにくいのです。
保証の長さよりも、施工品質を担保する仕組みを重視してください。
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人工(にんく)理論の視点
「保証10年」の裏側を人工理論で見ると、さらなる落とし穴が見えてきます。長期保証をつけるにはコストがかかります。保険料や積立金として数万円〜10万円程度。この費用を見積もりに上乗せする良心的な業者もいますが、人工を削って捻出する業者もいます。保証10年でも、施工時の人工が不足していれば3年で剥がれます。しかし保証の免責条項に「経年劣化」が含まれていると、補償されません。保証の長さより、投入人工数の方が品質を保証します。
人工理論の詳しい解説は「人工(にんく)理論 完全講義」をご覧ください。
まとめ
外壁塗装における「10年保証」は、決して万能の盾ではありません。それは、複雑な免責事項と商習慣の上に成り立つ、極めて限定的な約束に過ぎません。
消費者が損をしないために最も重要なことは、保証の年数そのものを比較することではなく、「その保証が実行される確実性」を評価することです。
「30年保証」「オリジナル塗料」「今なら足場代無料」といった甘い言葉は、多くの場合、リスクを隠蔽するための煙幕です。
本質的なリスク管理とは、以下の3点に集約されます。
- トラックレコードのある塗料を選ぶ:大手メーカーのシリコン・フッ素塗料を選び、カタログ通りの仕様で施工させること
- 第三者を介在させる:リフォーム瑕疵保険への加入を条件とし、プロの検査員の目を光らせること
- 書類を精査する:契約書と保証書の「免責事項」と「付帯部条件」を、署名前に一言一句確認すること
この記事が、あなたの外壁塗装契約を成功に導く一助となれば幸いです。
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関連リンク
- 人工(にんく)理論 完全講義|原価から適正品質を見極める →
- 外壁塗装 契約後にやることリスト →
- 見積書の読み方|一式表記の危険性 →
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この記事の解説動画
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