訪問販売業者の外壁塗装見積もりには、共通する「型」がある。50年の現場経験で数百枚の訪問販売見積もりを見てきた私(横井)が、プロの目線で「どこがおかしいか」を5つのパターンに整理した。手元に訪問販売の見積書がある方は、照らし合わせてほしい。
訪問販売の見積もりが高い「構造的理由」
まず前提を理解してほしい。訪問販売業者の見積もりが高いのは、ぼったくりだけが理由ではない。ビジネスモデル自体に高コスト構造が組み込まれている。
訪問販売業者の費用構造:
- 営業人件費:飛び込み営業の歩合給・固定給。営業1人あたり月額30〜50万円
- 契約率:訪問100件に対して契約1〜3件。99件分の営業コストを契約者が負担する
- 広告・車両費:チラシ・ユニフォーム・営業車両
- 利益率:30〜50%を確保(地域専門業者の15〜25%に対して高い)
つまり150万円の見積もりのうち、実際の施工に使われるのは75〜105万円。残りの45〜75万円は営業コストと利益だ。
パターン1:足場代の過大計上
訪問販売の見積書でまず見るべきは足場代だ。
相場は㎡あたり600〜1,000円。30坪(外壁面積約130〜150㎡)の住宅なら足場面積は約200〜250㎡で、12万〜25万円が適正範囲。
訪問販売業者の見積書では、足場代が30〜40万円、ひどい場合は「足場代一式50万円」と書かれていることがある。㎡数が書かれていなければ、検証のしようがない。
さらに悪質なのは「足場代サービス」のトークだ。
「近くで工事しています。今契約をすればその足場を使えるので、割引価格で工事ができますよ。」(『外壁塗装の不都合な真実』より)
足場代をサービスする業者は、その分を他の項目に上乗せしているだけだ。足場代が消えた見積書は、合計金額は同じでも中身の検証ができなくなる。
パターン2:「オリジナル塗料」の正体
訪問販売業者がよく使うのが「当社オリジナル塗料」だ。
『外壁塗装の不都合な真実』にはこう書いてある。
「『一般のものより優れた自社開発の塗料があるから安くできる』と、セールスしてくる訪問営業の会社があります。自社開発を謳っているこうした会社の塗料は、ほとんどの場合がOEM商品で、『自社開発』とは言えないものだったりします。」
OEM(他社製造の受託商品)自体は悪くない。問題は以下の2点だ。
- 性能の検証ができない。日本ペイントやエスケー化研の製品なら、メーカーのカタログで耐用年数・塗布量・希釈率を確認できる。「オリジナル塗料」ではそれができない
- 価格の比較ができない。市場に流通していないため、相場が存在しない。業者の言い値がすべてになる
見積書に日本ペイント・エスケー化研・関西ペイント・アステックペイントなどの大手メーカー名と製品名が書かれていなければ、「なぜその塗料を選んだのか」を質問してほしい。
パターン3:下地処理の不記載または「一式」
訪問販売業者の見積書で最も危険なのが、下地処理の扱いだ。
まともな見積書であれば、下地処理は以下のように分けて記載される:
- 高圧洗浄:㎡数×単価
- ケレン(錆・旧塗膜除去):範囲と方法
- クラック補修:箇所数と補修方法
- コーキング打替え/増し打ち:m数×単価
訪問販売の見積書では、これらが「下地処理一式」や「洗浄・下地処理含む」とだけ書かれていることが多い。あるいは、下地処理の項目自体がないこともある。
消費生活センターに寄せられた事例がある。
「訪問販売業者と70万円で外壁塗装工事の契約をした。ところが、十分な汚れ落としもせず、いきなり塗装をするという手抜き工事をしていた。工事の半年後にペロリと塗装がはがれた。」(『外壁塗装の不都合な真実』事例1より)
この事例の本質は、見積書に下地処理の明記がなかったから、省略されたことに気づけなかったことだ。
『外壁塗装 工程別チェックポイント21』では、見積書で「シーリング一式」という記載も要注意だと指摘している。正しい見積書には「打ち替えか打ち増しかの明記」「メートル数と単価」「使用材料名」が記載される。30坪のサイディング住宅で200m前後の目地があり、「一式」で安価な場合は打ち増しで済まされる可能性がある。
パターン4:不安を煽る「割増工事」の提案
訪問販売業者の見積書には、本来不要な項目が入っていることがある。
- 「外壁シーラー特別処理」(通常の下塗りと同じ)
- 「防カビ特殊コーティング」(一般的な塗料に防カビ機能は含まれている)
- 「耐震補強コーキング」(コーキングに耐震効果はない)
これらは名前を変えた「水増し」だ。聞き慣れない項目名があったら、「それは具体的に何の作業で、省いたらどうなるのですか?」と聞いてほしい。まともな業者なら説明できるが、訪問販売業者は「これがないと大変なことになります」としか答えられないことが多い。
パターン5:「今日契約」を迫る工期と金額
『外壁塗装の不都合な真実』はこう警告する。
「特に不安を煽るような業者には、注意です。自分の都合の良いタイミングで契約をすることが、良い塗装工事にするためには必ず必要です。」
訪問販売業者が「今日中に契約してくれれば30万円引き」と言うのは、他社と比較されたくないからだ。比較されれば、見積もりの異常さが露呈する。
「今日中」を断ったら態度が変わる業者は、最初から信用に値しない。
「塗装方程式」で見る訪問販売業者の構造的問題
品質 = 職人のモチベーション × 技術と塗料 × 作業時間
訪問販売業者の構造では、この3要素すべてが削られる。
- モチベーション:訪問販売業者は営業会社であり、施工は下請けに出すことが多い。『外壁塗装の不都合な真実』が指摘する通り、「こういった業者はとにかく利益重視で、安価な材料を使ったり工程を省いたりして、少しでも安く抑えようとします」
- 技術と塗料:オリジナル塗料の使用、希釈率の改ざんで塗料の性能が発揮されない
- 作業時間:営業コストを回収するために工期を圧縮。人工数が適正値を大幅に下回る
人工(にんく)で訪問販売の見積もりを検証する
30坪の住宅の外壁塗装に必要な人工は20〜25人工。
訪問販売業者の見積もり150万円の場合:
- 営業コスト+利益:45〜75万円
- 材料費:20〜30万円
- 足場代:20〜25万円
- 施工に回せる金額:20〜65万円
施工費20万円の場合、職人日当2万円で10人工。20〜25人工が必要なのに10人工では、確実に工程が省略される。
一方、地域の専門業者に直接依頼した場合の100万円の見積もりなら:
- 利益:15〜25万円
- 材料費:25〜30万円
- 足場代:15〜20万円
- 施工費:25〜45万円 → 12〜22人工
同じ住宅で、訪問販売業者は10人工、地域専門業者は12〜22人工。この差が品質の差になる。
訪問販売の見積書を受け取ったときにやるべき3つのこと
- 絶対にその場で契約しない。クーリングオフ(8日間)の権利があるが、そもそも契約しないのが最善
- 地域の専門業者2〜3社から相見積もりを取る。比較すれば、訪問販売の見積もりの異常さが数字で分かる
- 第三者に見積書を見てもらう。比較だけでは「どちらが適正か」の判断は難しい。
訪問販売業者の見積書が手元にあるなら、ペンキのミカタのセカンドオピニオン(¥3,000)で項目ごとにチェックできる。工事の紹介は一切行わないため、中立な立場で「この見積もりのどこがおかしいか」を指摘する。
この記事は、横井隆之の著書『塗装方程式』『外壁塗装の不都合な真実』『外壁塗装 工程別チェックポイント21』に基づいています。
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