ヨコイ塗装 代表 横井隆之 愛知県で50年続く塗装店の2代目。200件以上の施工実績を持ち、著書に『外壁塗装の不都合な真実』『塗装方程式』『外壁塗装 工程別チェックポイント21』(Kindle)がある。見積もり診断サービス「ペンキのミカタ」を運営し、全国の施主に中立的なアドバイスを提供している。
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はじめに
「積水ハウスで建てた家の外壁塗装、メーカーに見積もりを取ったら200万円超え。地元の業者は100万円台。この差は何なのか?」
築10〜15年を迎えたハウスメーカー住宅のオーナーから、こうした相談が後を絶ちません。
結論から言えば、ハウスメーカーの見積もりが高いのは事実です。ただし、それが「ぼったくり」なのか「正当な理由があるのか」は、人工(にんく)という視点で見なければ判断できません。
この記事では、50年の現場経験をもとに、積水ハウス・ヘーベルハウス・セキスイハイムなど主要ハウスメーカーの外壁塗装について、「なぜ高いのか」「一般業者でも大丈夫なのか」「適正価格はいくらなのか」を、中立的な立場から徹底解説します。
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なぜハウスメーカーの塗り替え見積もりは「相場の2倍」になるのか?
中間マージンの構造を暴く
ハウスメーカーの塗り替え見積もりが高い最大の理由は、中間マージン(管理費)が30〜40%乗っているからです。
私の著書『外壁塗装の不都合な真実』でも触れていますが、ハウスメーカーのリフォーム部門は自社で職人を抱えていません。実際の工事は下請けの塗装業者が行います。
つまり、こういう構造です:
【一般塗装業者の場合】
- 実際の工事費:100万円
- HM管理費:なし
- 施主の支払い:100万円
【ハウスメーカー経由の場合】
- 実際の工事費:100万円
- HM管理費(30〜40%):30〜40万円
- 施主の支払い:130〜140万円
同じ職人が、同じ材料で、同じ工事をしても、ハウスメーカーを通すだけで30〜40万円高くなる。これがハウスメーカー見積もりの正体です。
ポータルサイトの「相場100〜150万円」は何の基準にもならない
「でも、ネットで調べたら30坪の相場は100〜150万円って書いてあった」
その「相場」は何の基準にもなりません。なぜなら、ポータルサイトの相場は工事の中身(人工)を無視した金額の平均だからです。
30坪の家を塗り替えるのに必要な適正人工は延べ25人工前後。これより大幅に少ない人工で済ませている「安い見積もり」は、手抜きのリスクがあります。
→ 見積もりの人工を逆算する方法は人工理論完全講義で解説しています。
「うちの壁は特殊だから一般業者では無理」は本当か?
結論:パーフェクトシーラーを使えば、基本どの素材でも塗れる
ハウスメーカーの営業担当は、よくこう言います。
「うちの外壁材は特殊なので、一般の業者さんでは対応できません」
これは半分ウソです。
確かに、積水ハウスの「ダインコンクリート」やヘーベルハウスの「ALCパネル」、セキスイハイムの「磁器タイル」は、それぞれ特徴のある外壁材です。
しかし、日本ペイントの「ファインパーフェクトシーラー」をはじめとする難付着対応プライマーを使えば、基本的にどの素材でも塗装可能です。
【外壁材と対応可能な下塗り材】
- ダインコンクリート(積水ハウス):ファインパーフェクトシーラー、エポキシ系シーラー
- ALCパネル(ヘーベルハウス):浸透性シーラー+透湿フィラー
- 磁器タイル(セキスイハイム):塗装不要(目地シーリングのみ)
- 窯業系サイディング(各社):カチオンシーラー、難付着対応プライマー
「特殊だから無理」というのは、技術的な問題ではなく、囲い込みのための営業トークです。
→ 難付着サイディングへの対処法は難付着サイディングの見分け方と塗装方法で詳しく解説しています。
本当に注意すべきは「素材の特殊さ」ではなく「人工の違い」
ただし、「どの業者でも同じ品質で塗れる」とは言っていません。
ハウスメーカーの外壁材は、一般的な窯業系サイディングに比べて必要な人工が多いものがあります。
【外壁材別の必要人工(通常サイディング比)】
- ダインコンクリート:1.3〜1.5倍(凹凸が深く、塗り込みに時間がかかる)
- ALCパネル:1.2〜1.3倍(目地シーリング+下塗り2回が必要)
- 磁器タイル:本体は塗装不要。目地のみ
「一般業者に頼んだら安くなった」という場合、その業者が適正な人工を確保しているかどうかが品質の分かれ目になります。
【実例分析】積水ハウス・ダインコンクリートの適正コストを人工で逆算する
ダインコンクリートの特徴と塗装の難しさ
積水ハウスの代表的な外壁材「ダインコンクリート」は、深い凹凸パターンが特徴です。この凹凸が塗装を難しくしています。
ダインコンクリート塗装の3つの急所
- 凹凸の奥まで塗り込む必要がある → 通常の1.3〜1.5倍の人工
- ガスケット(乾式目地)のブリード対策 → 専用プライマー(ブリードオフ等)が必須
- 難付着コーティング → 一般シーラーでは密着しない
30坪の積水ハウスを適正に塗り替えるのに必要な人工数
一般的な30坪のサイディング住宅なら、適正人工は25人工前後です。しかし、ダインコンクリートの積水ハウスでは、30〜35人工が必要になります。
【工程別人工数の比較】
一般サイディングの場合(合計25人工):
- 足場設置・解体:2人工
- 高圧洗浄:1人工
- 養生:2人工
- 下地処理・補修:2人工
- 下塗り:3人工
- 中塗り:3人工
- 上塗り:3人工
- 付帯部塗装:6人工
- その他・管理:3人工
ダインコンクリートの場合(合計29.5〜35人工):
- 足場設置・解体:2人工
- 高圧洗浄:1.5人工(凹凸の奥まで)
- 養生:2人工
- 下地処理・補修:3人工(ガスケット処理含む)
- 下塗り:4人工(凹凸への塗り込み)
- 中塗り:4人工
- 上塗り:4人工
- 付帯部塗装:6人工
- その他・管理:3人工
人工から逆算する適正価格
職人の日当を2.5万円として計算すると:
- 一般サイディング:25人工 × 2.5万円 = 62.5万円(人件費)
- ダインコンクリート:32人工 × 2.5万円 = 80万円(人件費)
これに材料費(15〜20万円)、足場代(15〜20万円)、諸経費を加えると:
【適正価格の比較】
一般サイディング(約110万円):
- 人件費:62.5万円
- 材料費:15万円
- 足場代:18万円
- 諸経費(15%):15万円
ダインコンクリート(約135万円):
- 人件費:80万円
- 材料費:18万円
- 足場代:18万円
- 諸経費(15%):18万円
ダインコンクリートの適正価格は、一般サイディングより20〜30万円高くなるのが「正しい」のです。
逆に言えば、ダインコンクリートを100万円以下で提示する業者は、人工を削っている可能性があります。
主要ハウスメーカー5社 — 外壁材の特徴と塗り替え時の急所
積水ハウス(ダインコンクリート・エコルデック)
- 外壁材:ダインコンクリート(陶版外壁)、エコルデック
- 特徴:深い凹凸パターン、タフクリア-30コーティング
- 塗装の急所:難付着対策、ガスケットのブリード対策、透湿性確保
- 必要人工:通常の1.3〜1.5倍
ヘーベルハウス(ALCパネル)
- 外壁材:軽量気泡コンクリート(ALC)
- 特徴:多孔質で吸水性が高い、目地シーリングが命
- 塗装の急所:防水が9割。塗膜より目地シーリングが重要
- 必要人工:通常の1.2〜1.3倍(下塗り2回必須)
セキスイハイム(磁器タイル・ハイドロテクト)
- 外壁材:磁器タイル、ハイドロテクトタイル
- 特徴:「メンテナンスフリー」を謳う光触媒コーティング
- 塗装の急所:タイル本体は塗装不要。目地シーリングの打ち替えのみ
「塗装が必要」という業者は疑う
ダイワハウス(XEVOシリーズ)
- 外壁材:窯業系サイディング、DXウォール
- 特徴:シリーズによって外壁材が異なる
- 塗装の急所:難付着コーティングの有無を事前確認
- 必要人工:通常〜1.2倍
トヨタホーム・パナソニックホームズ
- 外壁材:窯業系サイディング、ALCパネル(パナ)
- 特徴:鉄骨系ハウスメーカー共通の注意点
- 塗装の急所:鉄骨の錆び対策、換気口周りの処理
HM提携業者 vs 一般塗装業者 — 人工で比較すると何が見えるか?
同じ積水ハウスの見積もりで「人工数」を比較した結果
ある積水ハウスオーナーが、HM提携業者と地元の塗装専門店の両方から見積もりを取りました。
【HM提携業者の場合】
- 見積もり金額:180万円
- 工期:14日間
- 職人数:2〜3名
- 推定人工:28〜35人工
【地元塗装店の場合】
- 見積もり金額:120万円
- 工期:12日間
- 職人数:2名
- 推定人工:24人工
一見、地元塗装店の方が安くてお得に見えます。
しかし、人工で見ると問題が見えてきます。ダインコンクリートには最低30人工が必要なのに、24人工では足りない可能性があります。
品質差は「認定の差」ではなく「人工の差」
「HM認定業者だから品質が高い」というのは幻想です。
認定があっても、人工(時間)が足りなければ品質は下がります。私の著書『塗装方程式』で定義した通り、品質 = モチベーション × 技術 × 時間です。
どれだけ腕の良い職人でも、時間が足りなければ品質は落ちる。HM認定業者であっても、下請け構造の中で「早く終わらせろ」という圧力がかかれば、人工は削られます。
HM認定業者の意味と限界
HM認定業者のメリットは以下の2点です:
- ハウスメーカーの図面・仕様書にアクセスできる(外壁材の正確な情報が得られる)
- トラブル時にハウスメーカーが窓口になる(クレーム対応が楽)
しかし、これらは「技術的に優れている」ことの証明ではありません。認定があっても人工が足りなければ意味がないのです。
HM保証が切れたら損をする?保証切れ後の最適メンテナンス戦略
保証の落とし穴
ハウスメーカーの保証には、よく読むと厳しい条件があります:
- 「自然劣化」は対象外(塗膜の経年劣化はほぼ保証されない)
- 定期点検を受け続けることが条件(点検を飛ばすと保証失効)
- 他社でメンテナンスすると保証失効
つまり、「保証があるから安心」と思っていても、実際に保証が使えるケースは限られています。
「保証が切れても家は壊れない」という不都合な真実
ハウスメーカーの営業は「保証が切れると大変なことになる」と脅してきます。
しかし、冷静に考えてください。保証が切れたら家が壊れるなら、日本中の中古住宅は全滅しているはずです。
積水ハウスやヘーベルハウスの躯体は、60年以上持つ設計です。外壁塗装は「保護層」であって、塗膜が劣化しても即座に躯体がダメになるわけではありません。
大切なのは、保証の有無ではなく、適切なタイミングで適切な工事をすることです。
保証切れ後に適正コストで塗り替える3ステップ
ステップ1:自分の家の外壁材を正確に知る
ハウスメーカーの仕様書(竣工図書)を確認し、外壁材の正確な名称と特性を把握する。
ステップ2:見積もりの「人工」を確認する
総額ではなく、工期と職人数から「人工」を逆算する。ダインコンクリートなら30人工以上が目安。
ステップ3:第三者の意見を聞く
ハウスメーカーの見積もりを、利害関係のない第三者に見てもらう。
「手元のHM見積もり、人工から逆算して適正か診断します」 — 見積もり診断サービスをご利用ください。
まとめ
ハウスメーカーの外壁塗装で失敗しないために、覚えておくべきポイントをまとめます。
HM見積もりが高い理由
- 中間マージン(管理費)が30〜40%乗っている
- 同じ工事でも、HMを通すだけで30〜40万円高くなる
「特殊だから一般業者では無理」はウソ
- パーフェクトシーラー等の難付着対応プライマーを使えば、基本どの素材でも塗れる
- 本当に注意すべきは「素材の特殊さ」ではなく「必要な人工の違い」
適正価格の判断基準
- ダインコンクリートは通常の1.3〜1.5倍の人工が必要
- 30坪の積水ハウスなら、30〜35人工 = 適正価格130〜150万円が目安
- 100万円以下の見積もりは、人工を削っている可能性あり
業者選びのポイント
- HM認定の有無より「人工が確保されているか」が重要
- 品質 = モチベーション × 技術 × 時間
- 時間(人工)が足りなければ、認定があっても品質は落ちる
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