一括見積もりポータルサイトは「無料で複数社の見積もりが取れる」便利なサービスだ。しかし「無料」のサービスには、必ず収益源がある。その収益源が、あなたの工事費用と品質にどう影響するかを、中立的な立場で解説する。
一括見積もりポータル5社のビジネスモデル
まず事実を整理する。主要5サイトの収益構造はこうなっている。
- サイト:ヌリカエ/運営会社:Speee(東証スタンダード)/収益源:紹介+成約手数料/手数料の目安:約1万円/件+工事費の10〜20%
- サイト:リショップナビ/運営会社:じげん(東証プライム)/収益源:紹介+成約手数料/手数料の目安:同等
- サイト:くらしのマーケット/運営会社:みんなのマーケット/収益源:予約手数料/手数料の目安:売上の20%(税込22%)
- サイト:外壁塗装コンシェルジュ/運営会社:非公開/収益源:成約手数料/手数料の目安:15%+税
- サイト:外壁塗装ジャーナル/運営会社:アステックペイント/収益源:自社塗料販売+業者紹介/手数料の目安:塗料販売利益
100万円の外壁塗装工事をポータル経由で契約した場合、15〜22万円がプラットフォームに流れる。
この手数料は業者が支払うが、業者のコスト構造に組み込まれるため、最終的には施主が負担しているのと同じだ。
紹介手数料はどこに転嫁されるのか?
業者がポータルに15〜22万円を支払う場合、そのコストを吸収する方法は3つしかない。
転嫁パターン1:見積もり単価を上げる
最も分かりやすいパターン。ポータル経由の見積もりには、手数料分が上乗せされる。同じ業者に直接依頼した場合より10〜20%高くなる。
転嫁パターン2:人工(にんく)を圧縮する
見積もり金額は同じだが、作業時間を短縮して利益を確保する。30坪の住宅で本来20〜25人工が必要なところを、15人工程度に圧縮する。
『塗装方程式』ではこう指摘している。
「大手リフォーム会社や集客専門の業者が多額の広告費や営業コストをかけている場合、その費用を回収するために施工単価を下げたり工事件数を増やす必要があり、1件あたりの現場にかける日数を短縮する圧力が生じます。」
ポータルの手数料は、まさにこの「集客コスト」にあたる。
転嫁パターン3:材料費を削る
塗料のグレードを下げる、希釈率を規定以上にする、下塗り材を省略するなど。『外壁塗装の不都合な真実』が指摘する「塗料を規定以上に薄めて使う手抜き」が起こりやすくなる。
ポータルが「構造的に書けない」3つのこと
これは批判ではなく、ビジネスモデル上の構造的制約だ。
1. 「見積もりを独立した第三者に有料で診断してもらうべき」
ポータルのビジネスモデルは「消費者に見積もり依頼をさせる」ことで成立している。消費者が見積もりを取った後に「第三者に診断してもらいましょう」と書くのは、自社の存在意義を否定することになる。
2. 「紹介手数料が施主の工事費に転嫁されている」
これを明示するポータルサイトは一つもない。消費者に「無料」を強調する以上、その「無料の代償」を正直に書くことはできない。
3. 「ポータルを使わずに直接業者に依頼した方が安い場合がある」
これはポータルの存在意義そのものの否定になる。しかし事実として、地域の専門業者に直接依頼すれば手数料分のコストが発生しない。
「業者比較シート」で見る——ポータルが比較しない項目
著書に付属する「業者比較シート」では、業者選びで本当に比較すべき項目を整理している。
- 比較項目:価格/ポータルが提供する情報:○ 見積金額の比較/本当に必要な情報:人工数と㎡単価の内訳比較
- 比較項目:施工者/ポータルが提供する情報:△ 会社名のみ/本当に必要な情報:自社職人か下請けか。職人の経験年数
- 比較項目:材料/ポータルが提供する情報:△ 塗料名のみ/本当に必要な情報:メーカー名・製品名・希釈率・耐用年数
- 比較項目:品質管理/ポータルが提供する情報:× ほぼなし/本当に必要な情報:下地処理の方法、乾燥時間の確保
- 比較項目:コミュニケーション/ポータルが提供する情報:× ほぼなし/本当に必要な情報:施工管理アプリの有無、職人と直接話せるか
- 比較項目:アフター/ポータルが提供する情報:△ 保証年数のみ/本当に必要な情報:保証の対象範囲、クレーム対応の実績
ポータルが提供するのは「見積金額と会社名」だけだ。外壁塗装の品質を左右する施工者の質、材料の詳細、品質管理の体制は比較できない。
「塗装方程式」で見るポータルの限界
品質 = 職人のモチベーション × 技術と塗料 × 作業時間
ポータルが比較するのは「金額」だけだ。この式の3つの要素のうち、金額に直接見えるのは「技術と塗料」の材料費部分と「作業時間」の人件費部分だけ。しかも「一式」見積もりでは、これすら見えない。
モチベーションはポータルでは比較不能だ。
『工程別チェックポイント21』ではこう書いている。
「見積もり時に見落とされがちなのが『時間』の要素です。品質は作業時間に比例します。いくら腕の良い職人でも、会社から『3日で終わらせろ』と言われれば、手を抜かざるを得ません。問題は、その職人を雇っている会社の経営体質にあるのです。」
『塗装方程式』の第1章は「職人のやる気(モチベーション)」に1章分を割いている。自社職人か下請けか、雇用形態はどうか、教育制度はあるか——これらは見積もり金額には表れないが、品質を最も左右する要素だ。
「下請けとして働く職人:元請け業者の下で指示を受けて動きます。請負金額が低い場合や工期が短い場合、スピード重視になりがちで丁寧な仕事をしにくいことがあります。」(『塗装方程式』より)
人工(にんく)で検証——ポータル経由と直接依頼の差
30坪の住宅、外壁塗装の適正価格を100万円とする。
ポータル経由の場合(100万円の見積もり):
- ポータル手数料:15〜22万円
- 材料費:20〜25万円
- 足場代:15〜20万円
- 経費・利益:10〜15万円
- 施工に回せる人件費:18〜40万円 → 9〜20人工
直接依頼の場合(100万円の見積もり):
- ポータル手数料:0円
- 材料費:25〜30万円
- 足場代:15〜20万円
- 経費・利益:15〜25万円
- 施工に回せる人件費:25〜45万円 → 12〜22人工
同じ100万円でも、施工に使える人工数にこれだけの差が出る。ポータル手数料の15〜22万円は、そのまま「現場から消える作業時間」になる。
ポータルを使うなら、こう使う
ポータルが無用だと言っているわけではない。使い方の問題だ。
- 「業者を知る手段」として使う。ポータル経由で2〜3社の名前を把握したら、そこから直接連絡を取り直す。ポータルを通さなければ手数料は発生しない
- ポータルの見積もりだけで判断しない。ポータル経由の見積もり+地域専門業者の見積もりを両方取り、内訳を比較する
- 金額だけで比較しない。「業者比較シート」の項目(施工者の質、材料詳細、品質管理体制)を確認する
ポータルでも直接依頼でも、最後に必要なこと
複数の見積もりを取っても、「どの見積もりが適正か」を素人が判断するのは難しい。
『塗装方程式』が示す「品質 = モチベーション × 技術 × 時間」の3要素を見積書から読み取るには、現場経験が必要だ。
手元に複数の見積もりがあるが判断に迷っている方は、ペンキのミカタのセカンドオピニオン(¥3,000)で第三者チェックを受けられる。工事の紹介は一切行わないため、「この見積もりのどこが適正で、どこがおかしいか」を中立に診断する。
この記事は、横井隆之の著書『塗装方程式』『外壁塗装の不都合な真実』『外壁塗装 工程別チェックポイント21』および「業者比較シート」に基づいています。
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