この記事の監修者
ヨコイ塗装 代表 横井隆之
愛知県で50年続く塗装店の2代目。500件以上の施工実績を持ち、著書に『外壁塗装の不都合な真実』『塗装方程式』『外壁塗装 工程別チェックポイント21』(Kindle)がある。見積もり診断サービス「ペンキのミカタ」を運営し、全国の施主に中立的なアドバイスを提供している。
はじめに
「外壁塗装に補助金が使える」と聞いて自治体の窓口に問い合わせたら、「うちにはそんな制度ありません」と言われた——この経験をした方は少なくないはずです。
結論から言うと、2026年度の時点で外壁塗装「単独」に補助金を出している自治体は、全国でも極めて少数です。愛知県内では確認できたのはわずか4自治体。名古屋市、稲沢市、一宮市、清須市、あま市、北名古屋市にはありません。
ただし「使えない」で終わるのは早計です。国の制度(みらいエコ住宅2026事業)と自治体の制度をレイヤー状に重ねることで、最大100万円規模の支援を引き出す戦略が存在します。
この記事では、2026年度の自治体補助金の実態を正確に整理し、「使える人」と「使えない人」の境界線を明確にします。
なぜ「外壁塗装の補助金」で混乱が起きるのか?
ネット検索で「外壁塗装 補助金」と調べると、「最大100万円もらえる!」といった記事が大量に出てきます。しかし、その大半は国の制度(みらいエコ住宅2026事業)の話であり、自治体独自の補助金ではありません。
混乱の原因は3つあります。
1つ目は、国の制度と自治体の制度が区別されていないこと。 国の「みらいエコ住宅2026事業」は全国共通の制度ですが、自治体の補助金は市区町村ごとにバラバラです。両者をごちゃまぜにした記事が多いため、「自分の市で使える」と勘違いしてしまうのです。
2つ目は、「外壁塗装」の定義が曖昧なこと。 補助金の世界では、単なる塗り替え(維持管理)と断熱改修に伴う塗装(省エネ向上)はまったく別物です。後者は補助対象になりやすいですが、前者はほとんどの制度で対象外です。
3つ目は、紹介サイトの収益構造。 「補助金が使えますよ」→「うちで業者を紹介しますよ」という流れで紹介料を稼ぐポータルサイトにとって、「補助金はほぼ使えません」とは書けない事情があります。
この記事では、こうしたバイアスを排除し、2026年度の自治体補助金の実態をお伝えします。
愛知県内で外壁塗装に使える補助金【2026年度】
2026年度の愛知県内を徹底調査した結果、外壁塗装が補助対象として明確に確認できた自治体は以下の4つです。
犬山市:住宅リフォーム補助金
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象工事 | 外壁塗装、屋根塗装、敷地造成、門・塀・車庫の建設等 |
| 補助金額 | 対象工事費の5分の1 |
| 上限額 | 同居の場合:30万円 / 非同居(近居等):10万円 |
| 主な条件 | 申請者または配偶者が40歳以下、市内施工業者の利用、3年以上の居住意思 |
犬山市は「若者世帯の定住促進」という明確な目的で、外壁塗装を含む幅広いリフォームに補助を出しています。40歳以下の年齢制限がポイントです。
津島市:定住促進補助金(居住誘導区域リフォーム)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 居住誘導区域内の中古住宅を取得・賃借しリフォームする者 |
| 補助率 | リフォーム費用の45% |
| 上限額 | 取得の場合:100万円 / 賃借の場合:120万円 |
| 外壁塗装の扱い | 居住用部分のリフォームとして対象 |
津島市は補助率45%と非常に手厚い制度です。ただし、立地適正化計画に基づく「居住誘導区域内」であること、中古住宅の取得または賃借が前提という条件があります。
日進市:空家バンク成約促進リフォーム補助金
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象工事 | 外壁の塗装・張り替え、屋根の塗装・葺き替え、増改築、バリアフリー化等 |
| 補助金額 | 工事費用の2分の1以内 |
| 上限額 | 30万円 |
| 条件 | 空き家バンク経由で購入した住宅であること |
日進市は空き家対策が目的のため、空き家バンク経由の購入が条件です。一般的な持ち家のリフォームには使えません。
東栄町:住宅リフォーム補助事業
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象工事 | 外壁の塗り替え、屋根の塗り替え、壁紙の張り替え、防犯機能の付与等 |
| 補助金額 | 対象工事費の20% |
| 上限額 | 10万円 |
| 条件 | 工事費が10万円以上(税込)であること |
東栄町は条件が比較的シンプルですが、上限10万円と補助額は控えめです。
名古屋市・稲沢市ほか「塗装単独の補助がない」主要都市
愛知県内の主要都市では、2026年度時点で外壁塗装に使える独自補助金は確認できていません。
| 自治体 | 2026年度の状況 | 代替となる制度 |
|---|---|---|
| 名古屋市 | 塗装単独の補助なし | 住宅等の脱炭素化促進補助(エネファーム等3万円)、太陽光発電(最大30万円) |
| 稲沢市 | 塗装単独の補助なし | 住宅購入・耐震化支援(最大2,000万円)、省エネ機器設置 |
| 一宮市 | 塗装単独の補助なし | 住宅省エネ促進補助(窓断熱10万円)、瓦屋根耐風対策(最大55.2万円) |
| 清須市 | 塗装単独の補助なし | 地球温暖化対策設備設置(最大11.28万円)、耐震改修(最大130万円) |
| あま市 | 塗装単独の補助なし | 介護保険住宅改修、耐震改修 |
| 北名古屋市 | 塗装単独の補助なし | トイレ・風呂・キッチン改修補助、耐震改修 |
名古屋市については、2026年2月時点の最新情報でも「外壁塗装で使える助成金は存在しない」ことが明言されています。過去には遮熱塗装が脱炭素化促進補助の対象だった時期もありましたが、現在は太陽光発電・蓄電池・HEMS等の「創エネ・蓄エネ・省エネ設備」に予算が集中しています。
つまり、名古屋市・稲沢市を含む愛知県の多くの地域では、自治体の補助金で外壁塗装をカバーすることはできません。
全国の先進的な制度に学ぶ:東京都・横浜市の高額補助
全国を見渡すと、自治体独自の高額補助が存在する地域もあります。ただし、いずれも「断熱改修」が条件です。
| 都市 | 制度名 | 塗装の扱い | 補助上限 |
|---|---|---|---|
| 東京都 | 既存住宅の省エネ改修促進事業 | 断熱材設置を伴う外壁改修が前提 | 最大130万〜325万円 |
| 横浜市 | 木造住宅耐震改修促進事業 | 耐震工事に付随する場合 | 最大155万円 |
| 大阪市 | 住宅省エネ2026キャンペーン推奨 | 窓・断熱改修との併用 | 最大100万円(国費) |
| 福岡市 | みらいエコ住宅2026支援 | 外壁断熱改修を伴う場合 | 最大60万円 |
東京都の制度は突出していますが、2026年度から「金融機関発行の証明書」の提出が必須になるなど、事務手続きが厳格化されています。
共通するポイント:「塗り替え」だけでは対象にならない。断熱材の追加や窓の断熱改修が必須条件。
国の制度と自治体補助金の「併用」は可能か?
最も重要な戦略的論点です。
併用の原則
国の「みらいエコ住宅2026事業」と自治体の補助金は、原則として併用可能です。
| 条件 | 併用可否 |
|---|---|
| 国の制度(国費)+ 自治体の制度(地方単独費) | ○ 併用可能 |
| 国の制度(国費)+ 自治体の制度(国の交付金が原資) | ✕ 併用不可 |
| 同一工事経費への二重受給 | ✕ 禁止 |
つまり、自治体の補助金が「市町村の税金」を原資としている場合は併用可能。しかし「国の地方創生臨時交付金」などが使われている場合は完全に禁止されます。この区別は自治体の窓口で必ず確認してください。
最大化のモデルケース
犬山市在住・38歳の施主が窓の断熱改修+外壁塗装を同時施工する場合:
| 制度 | 補助額 |
|---|---|
| 先進的窓リノベ2026(国) | 最大100万円 |
| みらいエコ住宅2026(国) | 最大100万円 |
| 犬山市住宅リフォーム補助金 | 最大30万円(同居の場合) |
| **理論上の合計** | **最大230万円** |
ただし、同一経費への重複受給は禁止なので、実際には工事の内訳を分けて申請する必要があります。
「着工前申請」を破ったら1円ももらえない:補助金の5つの鉄則
補助金申請で最も多い失敗は「手続きミス」です。特に以下の5点は絶対に守ってください。
鉄則①:着工前に申請し、交付決定を待つ
足場の組み立てや高圧洗浄だけでも「工事開始」とみなされます。交付決定通知が届く前にこれらを行った時点で、補助金は全額不支給です。
鉄則②:施工前・施工中・施工後の写真を必ず撮る
2026年度は写真の要求がさらに厳格化しています。塗装工程(下塗り・中塗り・上塗り)の各段階を撮影し、断熱材の場合は厚みを測るメジャーが写った写真も必要です。
鉄則③:JIS規格適合の証明書を確保する
遮熱塗料を条件とする制度では、JIS K 5675(屋根用高日射反射率塗料)の適合証明やメーカー発行の性能証明書が必須です。空き缶のJISマーク写真を求められるケースもあります。
鉄則④:「登録事業者」かどうかを確認する
国の制度は「登録された支援事業者」が申請を行う必要があり、施主が自分でできません。一方、自治体の制度は施主自身が申請できるケースが多いです。業者に「窓リノベ事業者の登録はありますか?」と必ず確認してください。
鉄則⑤:予算消化のスピードを甘く見ない
人気制度は例年8月〜10月に予算が枯渇します。2025年度には名古屋市の太陽光関連補助金が8月12日に上限到達した実例があります。4月の受付開始と同時に申請できるよう、3月末までに見積もりを完了させてください。
人工理論から見た「補助金対応業者」の落とし穴
ここまで制度の話をしてきましたが、私が最も心配しているのは補助金を理由に工事品質が下がることです。
塗装方程式(品質 = モチベーション × 技術 × 時間)の「時間」、つまり人工(にんく)の視点で見ると、補助金対応業者には構造的なリスクがあります。
補助金対応は書類業務が膨大です。 事前申請、証拠写真の撮影・整理、実績報告書の作成——これらの事務作業に職人の時間が取られます。30坪の外壁塗装は通常12〜15人工が必要ですが、補助金対応の書類作業を含めると、現場の塗装作業に使える人工が実質的に削られる可能性があります。
特に「窓+断熱+外壁塗装のパッケージ工事」を1社でまとめて受注する業者は要注意です。多工種を同時に進行させるため、塗装工程に割ける人員と時間が圧縮されがちです。
確認すべき質問:
- 「外壁塗装の工程には何人の職人が何日入りますか?」(12人工以上が目安)
- 「補助金の書類作業は別の担当者がやりますか、それとも職人がやりますか?」
- 「塗装の乾燥時間(インターバル)は各工程で何時間確保しますか?」
人工理論の詳細については「人工(にんく)理論 完全講義」をご覧ください。
まとめ
2026年度の自治体補助金の実態を整理すると、以下のことが明確になりました。
外壁塗装「単独」で補助対象になる自治体は極めて少ない。 愛知県内では犬山市・津島市・日進市・東栄町の4自治体のみ。名古屋市をはじめとする主要都市には制度がありません。
国の制度と自治体の制度は「別レイヤー」で考える。 みらいエコ住宅2026事業を土台にし、そこに自治体の定住促進・耐震支援を重ねることで、最大100万円規模の支援を引き出せる可能性があります。
補助金は「もらえるかどうか」よりも「工事品質が下がらないか」が重要。 補助金申請の手間が、塗装工程の人工を削る原因にならないか——この視点を持つことが、補助金を活用しつつ失敗を防ぐ鍵です。
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