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「火災保険で外壁塗装が0円」は詐欺の入り口|共犯者にならないための完全防衛ガイド

「火災保険を使えば自己負担ゼロ」という勧誘は詐欺の入り口です。経年劣化を風災と偽る手口、消費者が共犯者になるリスク、30〜50%の手数料の実態を塗装歴50年の職人が解説。

「火災保険を使えば、外壁塗装が実質0円でできますよ」

この言葉を聞いたことがある方、要注意です。

これは詐欺の入り口です。

しかも恐ろしいのは、知らないうちにあなた自身が詐欺の「共犯者」になってしまうリスクがあること。

塗装歴50年、500件以上の現場を見てきた私が断言します。経年劣化による外壁の傷みを「火災保険で直す」ことは、法的にも倫理的にも絶対にやってはいけないことです。

この記事では、火災保険詐欺の手口、なぜあなたが共犯者になるのか、そして身を守るための具体的な方法を徹底解説します。

「火災保険で0円」という甘い言葉の裏側

急増するトラブル:相談件数は2.4倍に

国民生活センターへの火災保険関連の相談は、2022年度の約8,000件から2024年度には約1.9万件へと2.4倍に急増しています。

特に台風シーズン後に勧誘が増加する傾向があり、「近所で工事をしている」「屋根の無料点検をしている」という口実で接近してくる業者が後を絶ちません。

なぜこの手口が成立するのか

この詐欺が成り立つ背景には、情報の非対称性があります。

消費者悪質業者
火災保険の補償内容を正確に把握していない保険の仕組みを熟知している
「火災保険は火事の時だけ」と思っている「使わないと損」と煽る方法を知っている
経年劣化と風災の違いがわからない経年劣化を風災に見せかける手口を持っている

彼らは「火災保険は火事だけじゃない」「使わないと損ですよ」という言葉で心理的ハードルを下げ、本来は補償対象外の経年劣化を、保険金請求の対象であるかのように誤認させます。

火災保険詐欺の典型的な手口5パターン

【手口①】訪問販売からの点検商法

「近所で工事をしているので挨拶に来ました」
「屋根の無料点検を行っています」

こうした口実で接近し、屋根に上がって「台風の影響で壊れている」と虚偽の報告をする。実際には経年劣化による損傷や、業者が自ら破損させた箇所を撮影していることもあります。

→ 詳しくは「点検商法2025年最新手口と撃退法」をご覧ください。

【手口②】「申請代行」という名の中間搾取

「保険金の申請は私たちが代行します」
「成功報酬なのでリスクはありません」

一見親切に見えますが、その報酬率は保険金の30〜50%。100万円の保険金が下りても、50万円は手数料として取られます。

【手口③】高額な違約金条項

契約書の小さな文字に「保険金が支払われた後に工事をキャンセルする場合、保険金の40〜50%を違約金として支払う」と書かれているケースがあります。

「やはり地元の工務店に頼みたい」と言っても、この条項を盾に高額な金銭を要求されます。

【手口④】虚偽の事故日申告

保険金請求権は原則として事故発生から3年で時効となります。

業者はこの期間制限をくぐり抜けるため、実際には何年も前の損傷であっても「先日の台風で壊れたことにして申請しましょう」と、虚偽の日付での請求を指南します。

【手口⑤】見積もりの水増し

保険契約によっては「損害額が20万円を超えないと保険金が支払われない」という条件があります。

業者はこの基準をクリアするために、修理見積もりを水増しして作成することが常態化しています。

なぜあなたも「共犯者」になってしまうのか

詐欺罪の構成要件

火災保険金を騙し取る行為は、刑法第246条の詐欺罪に該当します。詐欺罪は10年以下の懲役という重罪です。

そして極めて重要な点は、業者だけでなく、申請を行った住宅所有者(あなた)自身も詐欺罪に問われる可能性があるということ。

「知らなかった」は通用しない

保険契約の当事者はあくまで住宅所有者であり、保険金請求書に署名・捺印するのも所有者です。

業者が「うまいこと書いておきますから」と言ったとしても、所有者がその内容が虚偽であることを認識しながら請求を行えば、詐欺の正犯、あるいは共同正犯となります。

「業者がやったことだから知らなかった」という弁明は、申請書類への自署がある以上、容易には認められません

民事上のペナルティも甚大

刑事罰に至らなくても、以下のリスクがあります。

リスク内容
保険契約の解除不正請求を行った契約者との保険契約を即座に解除される
保険金の返還請求過去に支払われた保険金の全額返還を求められる
ブラックリスト登録他社の火災保険にも加入できなくなる
住宅ローン契約違反火災保険未加入状態となり、銀行との契約違反になる可能性

「風災」と「経年劣化」の決定的な違い

火災保険で補償される「風災」の条件

火災保険で風災が認められるには、以下の厳格な要件を満たす必要があります。

  1. 偶発性:突発的かつ偶発的な事故であること
  2. 直接的な因果関係:「いつ」「どの災害で」損害が発生したか特定できること
  3. 期間制限:事故発生から3年以内であること

経年劣化は補償対象外

以下の症状は、すべて経年劣化であり、保険適用外です。

症状原因保険適用
チョーキング(白い粉)紫外線による塗膜の分解
ヘアクラック(微細なひび)乾燥収縮・熱膨張の繰り返し
サビ・腐食雨水と酸素による酸化反応
色あせ・退色紫外線による色素の分解
屋根瓦のズレ漆喰の経年劣化

外壁塗装の劣化は、台風が来たからといって一様に発生するものではありません。

にもかかわらず、業者は「これも台風の塩害だ」「風で揺れてひびが入った」などと強引にこじつけ、経年劣化を風災として申請させようとします。

保険会社の鑑定人は見抜く

プロの目は欺けない

保険会社は、不審な請求があった場合、損害保険登録鑑定人を派遣して調査を行います。

鑑定人は建築と保険のプロフェッショナルであり、以下の点を厳しくチェックします。

チェック項目見抜くポイント
破断面の状態断面に苔や汚れがあれば、割れてから長期間経過している証拠
物理的整合性傷の位置や形状が飛来物の軌道と矛盾していないか
人為的痕跡ハンマーで叩いたような不自然な打撃痕がないか

業者が「絶対にばれない」と言っても、プロの鑑定人の目は欺けません

否認された場合の最悪シナリオ

調査の結果、経年劣化や虚偽申請と判断されれば、保険金は一切支払われません(否認)

その場合、あなたは「保険金が出なかったのに、業者から申請代行手数料だけ請求される」という最悪の事態に陥ります。

詐欺業者の収益モデル:30〜50%の手数料

「完全成功報酬」の罠

彼らの多くは「完全成功報酬なのでリスクゼロ」と謳いますが、その報酬率は保険金の30〜50%です。

具体例:

屋根修理に本来100万円かかるとします。

  1. 業者が100万円の保険金を請求
  2. 満額(100万円)が下りる
  3. 業者が50%(50万円)を手数料として徴収
  4. 手元には50万円しか残らない
  5. 本来の修理(100万円)は不可能

結果として、以下のいずれかの選択を迫られます。

  • 手出し費用を払う(「0円」の話が嘘に)
  • 修理の質を落とす(安価な手抜き工事)
  • 修理をしない(住宅の劣化が進行)

非弁活動の可能性

多くの申請サポート業者は「保険会社との交渉を代行する」と謳いますが、これは弁護士法第72条(非弁活動の禁止)に違反する可能性が高いです。

弁護士でない者が、報酬を得る目的で他人の法律事務を行うことは法律で禁じられています。

被害に遭わないための3つの鉄則

【鉄則①】「無料」の言葉を疑う

「火災保険で自己負担ゼロ」という勧誘は、詐欺の入り口と認識してください。

世の中に「絶対に通る保険申請」は存在しません。

【鉄則②】その場で契約しない

訪問販売での契約は即決せず、必ず以下の対応を。

  • 「家族と相談します」と言って帰ってもらう
  • 名刺をもらい、会社の所在地や建設業許可の有無を調べる
  • 国土交通省の「住まい再建事業者検索サイト」で業者を確認

【鉄則③】保険会社に直接連絡する

申請サポート業者を介さず、自分が加入している損害保険会社または代理店の事故受付窓口に直接電話してください。

「業者から台風被害だと言われたが、見てほしい」と伝えれば、保険会社が鑑定人を派遣し、公正な判断を下してくれます。

もし契約してしまったら

クーリングオフの活用

訪問販売による契約は、法定書面を受け取った日から8日以内であれば、無条件で契約を解除できます。

書面に不備(クーリング・オフの記載がない、担当者名がないなど)があれば、8日が経過した後でもクーリング・オフが可能です。

→ 詳しくは「クーリングオフ完全ガイド」をご覧ください。

相談窓口一覧

窓口電話番号内容
消費者ホットライン188(いやや)最寄りの消費生活センターに転送
住まいるダイヤル0570-016-100建築士による技術的相談
警察相談専用電話#9110詐欺の疑いがある場合
保険金詐欺ホットライン0120-271-824不正請求の情報提供

「人工」の視点で考える:なぜ詐欺業者は品質を保証できないのか

塗装方程式を思い出してください。

品質 = モチベーション × 技術 × 時間

保険金の30〜50%を手数料として抜かれた残りの予算で、まともな工事ができるでしょうか?

100万円の工事予算が50万円になれば、人工(職人の労働時間)を削るしかありません

  • 下地処理を省略する
  • 乾燥時間を守らない
  • 塗料を薄める

結果として、数年後に剥がれや膨れが発生し、もう一度塗り直しが必要になる。その時には詐欺業者は連絡が取れなくなっている——。

これが「火災保険で0円」の本当の結末です。

まとめ:うまい話には裏がある

「火災保険を使えば実質0円」という言葉は、詐欺への招待状です。

覚えておいてください。

  1. 経年劣化は火災保険の対象外
  2. 虚偽申請はあなた自身が詐欺の共犯者になる
  3. 30〜50%の手数料では、まともな工事はできない
  4. 「絶対にばれない」は嘘——鑑定人は見抜く

外壁塗装は、正しい業者に、正しい価格で依頼するのが最も安全で、結果的に最も経済的です。

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