横井隆之|塗装業50年・施工500件超・著書3冊
「ケレン作業」という言葉、見積書で見かけたことはありませんか?実はこのケレン作業、塗装品質を左右する最重要工程でありながら、最も手抜きされやすい工程でもあります。
塗ってしまえば見えなくなる——だからこそ、契約前に「ケレンの種類」と「人工数」を確認することが、あなたの家を守る最初の一手です。
この記事は「外壁塗装の手抜き工事を防ぐ施工チェック完全ガイド」の詳細記事です。ケレン作業の技術的な解説を深掘りします。
ケレン作業とは?外壁塗装における役割
ケレンとは、塗装前に行う下地処理の総称です。具体的には以下の作業を指します。
・サビ落とし(金属部分のサビを除去する)
・旧塗膜の剥がし(劣化して密着力を失った塗膜を除去する)
・目荒らし(表面に細かい傷をつけて塗料の密着性を高める)
・汚れの除去(チョーキング粉、カビ、藻の除去)
ケレンの語源は英語の「clean(クリーン)」とされ、文字通り「塗る前に表面をきれいにする」作業です。高圧洗浄と混同されがちですが、高圧洗浄は「水で洗う」作業、ケレンは「物理的に削る・磨く」作業であり、まったく別の工程です。
なぜケレンが塗装品質を決めるのか
どれだけ高い塗料を使っても、下地処理が不十分なら数年で剥がれます。逆に、ケレンをしっかり行えば、標準的なシリコン塗料でも15年以上持つことがあります。
これは品質公式「Q = Motivation × Technique × Time」の「Technique(技術)」に直結する要素です。ケレンの丁寧さは、そのまま塗膜の耐久性に比例します。
50年以上塗装業に携わってきた経験から断言しますが、「いい仕上がりかどうかは、塗料のグレードではなくケレンするかしないかにかかっている」——これが現場の真実です。
ケレン作業の4つの種類(1種〜4種ケレン)
ケレンは日本建築学会の規定で1種から4種に分類されています。数字が小さいほど強力な処理を行います。
1種ケレン:ブラスト処理
研磨材を高速で吹き付けて、サビや旧塗膜を完全に除去する方法です。橋梁やプラントなど大型構造物で使われ、一般住宅ではまず使いません。費用は非常に高額で、住宅の場合は他の方法で十分対応できます。
2種ケレン:電動工具で旧塗膜を全面除去
ディスクグラインダーやワイヤーブラシで旧塗膜とサビを全面的に除去します。サビの発生率が30%以上の鉄部に適用されます。住宅では手すりやシャッターボックスなど、鉄部の腐食がひどい場合に部分的に使われることがあります。
3種ケレン:電動工具で部分除去
活膜(まだ密着している塗膜)は残し、浮いている塗膜やサビだけを電動工具で除去します。サビの発生率が5〜30%の鉄部に適用。住宅塗装では、鉄部のサビが中程度の場合にこの方法が使われます。
4種ケレン:手作業での目荒らし・清掃
サンドペーパーやナイロンたわしで手作業にて表面を整えます。サビの発生率が5%以下の鉄部、および外壁・軒天・雨樋などの塗り替えで使われる最も一般的なケレンです。住宅塗装の8割以上がこの4種ケレンに該当します。
住宅塗装のほとんどは4種ケレンですが、鉄製の手すりや庇など、サビが目立つ箇所は3種ケレンが必要になります。見積書に「ケレン一式」としか書かれていない場合、3種と4種の使い分けが明確でない可能性があります。
ケレンが必要な箇所と目荒らしの基本
ケレン作業は外壁だけでなく、以下の「付帯部」で特に重要です。付帯部は外壁より先に劣化が進む箇所であり、ケレンの丁寧さが耐久性を大きく左右します。
・軒裏(軒天):湿気がこもりやすく、塗膜が剥がれやすい
・雨樋:塩ビ製はツルツルしており、目荒らし必須
・破風・鼻隠し:紫外線を直接受け、劣化が早い
・シャッターボックス・シャッター:鉄製のためサビが発生しやすい
・雨戸:アルミ製は目荒らし、鉄製はサビ取りが必要
・水切り:地面に近く、水はねでサビやすい
・換気扇フード・庇(ひさし):鉄製が多く、3種ケレンが必要な場合も
「目荒らし」とは何か
塩ビ製の雨樋やアルミ製の雨戸など、表面がツルツルした素材には「目荒らし」が必須です。あえて表面に細かい傷をつけることで、塗料が「食いつく」足がかりを作ります。これを「アンカー効果」と呼びます。
目荒らしを省略すると、塗装直後はきれいに見えても、1〜2年で指で触っただけで塗膜がペロッと剥がれる現象が起きます。
ケレンを省略された施工事例──その後どうなったか
私が他社施工の補修で実際に見てきた「ケレン省略」の被害事例を紹介します。
事例1:鉄部のサビ取りを省略→2年で塗膜が浮いた
築15年の住宅。前回の塗装から10年が経過し、ベランダ手すりのサビが進行していました。しかし業者はサビの上から直接塗装。2年後、塗膜の下でサビが広がり、手すり全体が茶色い塗膜の「浮き」で覆われました。再塗装ではなく手すりの交換が必要になり、費用は塗装の3倍以上に。
事例2:外壁の旧塗膜を剥がさず重ね塗り→3年で大面積剥離
チョーキング(白い粉が手につく状態)が激しい外壁に、ケレンなしで塗装。劣化した旧塗膜の上に新しい塗膜を重ねたため、旧塗膜ごと剥がれ落ちる「層間剥離」が3年で発生。結果的に全面やり直しとなり、最初の塗装費用が完全に無駄になりました。
事例3:雨樋の目荒らしを省略→1年で塗膜がペロペロに
塩ビ製の雨樋に目荒らしなしで塗装。1年も経たないうちに、触るだけで塗膜がめくれる状態に。目荒らしを省略すると、どんなに高い塗料を使っても密着しません。これは「下塗り材の相性」ではなく「物理的な密着力の不足」が原因です。
3つの事例に共通するのは、「塗装直後はどれもきれいに見えた」ということです。ケレンの手抜きは完成時に見抜けません。だからこそ、契約段階でケレンの内容を確認し、施工中の写真報告を求めることが重要なのです。
見積書でケレン作業を確認する3つのポイント
ポイント1:「ケレン一式」は要注意
見積書に「ケレン一式 ○○円」とだけ書かれている場合、3種ケレンと4種ケレンの使い分けが不明確です。付帯部ごとに「4種ケレン」「3種ケレン」と種別が明記されている見積書が信頼できます。
ポイント2:高圧洗浄とケレンが別工程で記載されているか
悪質な業者は「高圧洗浄=ケレン」として済ませることがあります。しかし高圧洗浄は「汚れを落とす」作業、ケレンは「旧塗膜を削る・磨く」作業です。見積書上で別の行に記載されていることを確認してください。
ポイント3:ケレンの人工数が明記されているか
30坪住宅の付帯部ケレンなら、4種ケレン中心で延べ2〜3人工が目安です。サビがひどい鉄部が多い場合は3〜4人工になることもあります。
業者に「ケレン作業に何人工かけますか?」と質問してみてください。具体的な人工数を即答できる業者は、現場の作業量を正確に把握している証拠です。
見積書のチェック項目全体については「見積書チェック完全ガイド」で20項目のリストを掲載しています。
契約書でケレンを指定する方法
見積書の確認だけでなく、契約書にもケレンの内容を明記してもらうと安心です。
契約書に入れてもらいたい文言(例)
「外壁・付帯部の塗装に先立ち、各部位の状態に応じてJASS 18に準じた3種または4種ケレンを実施すること。ケレン種別は見積書の内訳に従う。」
「ケレン作業の前後において写真記録を行い、施主に提出すること。」
写真記録の依頼が最大の防御策
ケレンは塗装後に見えなくなる工程です。作業前・作業後の写真を撮って共有してもらうよう依頼しましょう。良心的な業者であれば、むしろ喜んで対応してくれます。
写真を渋る業者は、見せられない理由があると考えてよいでしょう。
写真報告を契約条件にする具体的な方法は「下地処理の手抜き5パターン」で詳しく解説しています。
ケレンの手抜きを見抜く3つのサイン
サイン1:ケレン作業が半日〜1日で終わっている
30坪の住宅なら、付帯部のケレンだけで1.5〜2日かかるのが普通です。半日で終わっている場合は、作業を大幅に省略している可能性があります。
サイン2:高圧洗浄の翌日にすぐ塗装が始まっている
高圧洗浄→乾燥→ケレン→下塗り、という順序が正しい工程です。洗浄の翌日にいきなり下塗りが始まっている場合、ケレン作業をしていない可能性があります。工程表と照合して確認してください。
サイン3:金属部分にサビが残ったまま塗装されている
鉄部のケレンが不十分だと、サビの上から塗料を被せただけの状態になります。数ヶ月でサビ汁が流れ出し、茶色い筋が外壁に広がります。工事完了後の検査時に、金属部分をよく観察してください。
品質公式で見るケレン省略のダメージ
品質公式「Q = Motivation × Technique × Time」において、ケレン省略は「Technique(技術)」と「Time(時間)」の2変数を同時に毀損します。工程を省略する(Time↓)と同時に、正しい施工方法を実行しない(Technique↓)ため、品質への影響は掛け算で効いてきます。
コーキング工程の手抜きパターンについては「コーキング手抜き5パターン」も合わせてご確認ください。
まとめ:ケレンは塗装の「土台」──確認すべき3つのこと
ケレン作業は地味で目立たない工程ですが、塗装の耐久性を決める「土台」です。この記事のポイントを整理します。
1. ケレンの種類は1種〜4種。住宅塗装は4種が主体だが、鉄部のサビには3種が必要
2. 見積書で「ケレン一式」ではなく、種別・人工数が明記されているか確認する
3. 契約書にケレン種別と写真報告を明記してもらう
4. ケレン省略の被害は「塗装直後は見えない」——だから契約段階の確認が唯一の防御策
本物の職人は「塗るまでが勝負」と意識しています。ケレンを大切にする業者は、塗装全体の品質も高いのです。
施工品質のチェック方法を体系的に知りたい方は「手抜き防止チェック完全ガイド」をご覧ください。
施工管理アプリで、ケレンの「見える化」を
ケレン作業は塗装後に見えなくなるからこそ、リアルタイムの記録が重要です。ペンキのミカタの施工管理アプリなら、各工程の完了時にLINE通知が届き、写真報告がアプリ上で時系列に記録されます。
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