「職人さんに話しかけるのは、迷惑じゃないかな…」
外壁塗装の工事中、多くの施主がこう感じています。職人が黙々と作業している姿を見ると、声をかけるのをためらってしまう。「素人が口を出すな」と思われそうで怖い。
しかし、遠慮は禁物です。
工事中に適切な質問をすることで、手抜きを防ぎ、仕上がりの満足度を高めることができます。職人も、関心を持ってくれる施主の工事は丁寧にやりたいと思うものです。
この記事では、塗装業50年の経験から、工事中に施主が業者に質問すべき5つのことと、聞き方のコツを解説します。
この記事で分かること
- なぜ工事中に質問することが大切なのか
- 質問すべき5つのポイント
- 職人に嫌がられない聞き方のコツ
- 質問するタイミング
- 質問しても答えてくれない場合の対処法
なぜ工事中に質問することが大切なのか
質問は「監視」ではなく「関心」
まず誤解を解いておきましょう。
工事中に質問することは、職人を監視することではありません。自分の家に関心を持つことです。
実は、多くの職人は「施主が何も聞いてこない」ことを不安に感じています。
「本当にこれでいいのかな?」「何か不満があるのかな?」
コミュニケーションがないと、こうした不安が生まれます。逆に、適度に質問や会話があると、職人も安心して作業に集中できるのです。
質問には「抑止力」がある
私の著書『外壁塗装の不都合な真実』でも触れていますが、質問をする施主の工事は、手抜きされにくいという傾向があります。
なぜなら、職人も人間だからです。
「この施主さんは、よく見ているな」「適当にやったら、すぐバレそうだな」
こう感じると、自然と丁寧な仕事をするようになります。これは「防犯カメラがあると犯罪が減る」のと同じ原理です。
「後から言う」より「工事中に言う」
不具合や疑問は、工事中に伝えるのがベストです。
完成後に「ここ、おかしいんじゃないですか?」と言っても、直すのは大変。足場を解体した後なら、再度足場を組み直す費用がかかることもあります。
工事中なら、その場で確認し、すぐに対応してもらえます。遠慮して黙っていると、結局損をするのは施主自身なのです。
質問すべき5つのポイント
質問1:「今日は何の作業をしていますか?」
最も基本的で、最も重要な質問です。
この質問をすることで、以下のことが分かります。
- 工程表通りに進んでいるか
- 今どの段階にいるのか
- 予定より早い・遅いのはなぜか
具体的な聞き方:
「おはようございます。今日はどんな作業をされるんですか?」
「昨日は下塗りをされていたと思うんですが、今日は何をされるんですか?」
注意点:
職人が「今日は中塗りです」と答えたら、工程表と照らし合わせてみましょう。工程表と違う場合は、「予定では〇〇だったと思うんですが、変更があったんですか?」と確認しましょう。
この質問で分かること:
- 工程の進捗状況
- 予定通りかどうか
- 職人が説明できるかどうか(できない場合は要注意)
質問2:「使っている塗料を見せてもらえますか?」
塗料の確認は、手抜き防止の基本です。
見積書に書いてある塗料と、実際に使われている塗料が違う…というトラブルは珍しくありません。塗料の缶を見せてもらうことで、契約通りの材料が使われているか確認できます。
具体的な聞き方:
「見積書に〇〇という塗料が書いてあったんですが、実際に使っているものを見せてもらってもいいですか?」
「今日使っている塗料、缶を見せていただけますか?写真を撮らせてもらってもいいですか?」
確認するポイント:
- 見積書に記載された製品名と一致しているか
- 下塗り・中塗り・上塗りで正しい塗料が使われているか
- 塗料の有効期限が切れていないか
この質問で分かること:
- 契約通りの塗料が使われているか
- 塗料の品質
- 業者の誠実さ
質問3:「乾燥時間はどれくらい取っていますか?」
乾燥時間の確認は、品質に直結する重要な質問です。
外壁塗装は「下塗り→中塗り→上塗り」と3回塗りますが、それぞれの間に乾燥時間(インターバル)が必要です。乾燥が不十分なまま次の塗料を重ねると、膨れや剥がれの原因になります。
具体的な聞き方:
「昨日下塗りをされていましたが、今日の中塗りまでどれくらい乾燥時間を取っているんですか?」
「この塗料、乾燥にどれくらい時間がかかるものなんですか?」
乾燥時間の目安:
- 一般的な塗料:3〜7時間以上
- 冬場・曇天:より長め(1日以上)
- 理想:「1日1工程」(下塗り・中塗り・上塗りを別の日に行う)
この質問で分かること:
- 乾燥時間が守られているか
- 職人が塗料の特性を理解しているか
- 工期を急いでいないか
要注意パターン:
- 「すぐ乾くから大丈夫」と軽く答える
- 同じ日に下塗り→中塗り→上塗りを全部やる
- 「乾燥時間?気にしなくていいですよ」と答える
質問4:「雨の日はどうしますか?」
天候対応の確認は、職人の姿勢が分かる質問です。
塗装工事は天候に大きく左右されます。雨の日や湿度が高い日に塗装すると、塗膜がしっかり乾かず、剥がれやムラの原因になります。
具体的な聞き方:
「明日、雨の予報が出ていますが、作業はどうされますか?」
「もし工事中に雨が降ってきたら、どう対応されるんですか?」
良い回答の例:
- 「雨の日は作業を中止して、乾燥を待ちます」
- 「湿度85%以上、気温5℃以下では塗装しません」
- 「天気予報を見て、工程を調整します」
悪い回答の例:
- 「多少の雨なら大丈夫ですよ」
- 「今日中に終わらせたいので、やっちゃいます」
- 「乾燥が遅くなるだけで、問題ないですよ」
この質問で分かること:
- 品質を重視しているか
- スピード優先ではないか
- 誠実な対応ができるか
職人の本音:
実は、下請け職人は「スピード重視」になりがちです。なぜなら、1日でも早く終わらせて次の現場に行きたいから。しかし、品質を重視する職人は、天候を理由にきちんと中止し、工程を調整してくれます。
質問5:「気になる箇所があるんですが、見てもらえますか?」
不安や疑問は、その場で伝えるのが鉄則です。
工事中に「あれ、ここ大丈夫かな?」と思ったら、遠慮せずに聞きましょう。完成後に言うより、工事中に言う方が、職人も対応しやすいです。
具体的な聞き方:
「ここの塗りムラが気になるんですが、これは後で直りますか?」
「この部分、塗り残しに見えるんですが、確認してもらえますか?」
「ひび割れがあった箇所、ちゃんと補修されているか見せてもらえますか?」
伝えるときのポイント:
- 責めるような言い方をしない
- 「気になる」「教えてほしい」というスタンスで
- 具体的な場所を指して伝える
この質問で分かること:
- 職人の対応力
- 説明能力
- 指摘への姿勢
職人の反応で分かること:
- 良い反応:丁寧に説明してくれる、すぐに確認してくれる
- 悪い反応:面倒くさそうにする、「大丈夫です」としか言わない
職人に嫌がられない聞き方のコツ
コツ1:挨拶から始める
質問の前に、まず挨拶をしましょう。
「おはようございます」「お疲れ様です」
たったこれだけで、職人の印象は大きく変わります。挨拶もなしに「これ、どうなってるんですか?」と聞くと、尋問のように感じられてしまいます。
コツ2:「教えてください」のスタンスで
質問は「監視」ではなく「関心」だと伝わるように、「教えてください」というスタンスで聞きましょう。
× 「ちゃんとやってるんですか?」
○ 「どんな作業をされているのか、教えてもらえますか?」
× 「乾燥時間、足りないんじゃないですか?」
○ 「乾燥時間ってどれくらい取るものなんですか?」
コツ3:感謝を伝える
質問に答えてもらったら、感謝を伝えましょう。
「ありがとうございます。よく分かりました」「説明いただいて、安心しました」
感謝を伝えると、職人も「また聞かれても答えよう」と思ってくれます。
コツ4:差し入れを持っていく
質問のついでに、差し入れを持っていくのも効果的です。
- 夏:冷たいお茶、スポーツドリンク
- 冬:温かいコーヒー、お茶
- 通年:お菓子、おにぎり
差し入れがあると、自然と会話が生まれます。「暑い中、ありがとうございます」と言いながら差し入れを渡せば、質問もしやすくなります。
注意:
差し入れは「義務」ではありません。無理にする必要はありませんが、コミュニケーションのきっかけとしては有効です。
コツ5:タイミングを選ぶ
質問するタイミングも大切です。
良いタイミング:
- 朝、作業開始前
- 休憩中
- 作業終了後
避けるべきタイミング:
- 塗装作業中(塗りながらだと手が止まる)
- 高所作業中(危険)
- 急いでいるとき
質問するタイミング
工程ごとの確認ポイント
工事の進行に合わせて、確認すべきポイントが変わります。
毎日確認したいこと
毎日、以下の点を確認・質問するのがおすすめです。
- 今日の作業内容:「今日は何をされますか?」
- 昨日の作業結果:「昨日の〇〇、うまくいきましたか?」
- 明日の予定:「明日はどんな作業になりますか?」
これを習慣にするだけで、工事の進捗を把握でき、問題の早期発見にもつながります。
質問しても答えてくれない場合の対処法
職人が答えてくれないパターン
残念ながら、質問しても答えてくれない職人もいます。
パターン1:面倒くさそうにする
「忙しいんで…」「後で」と言って、逃げる。
パターン2:曖昧にしか答えない
「大丈夫ですよ」「問題ないです」としか言わない。
パターン3:逆ギレする
「素人が口出すな」「任せてくれ」と不機嫌になる。
対処法
まずは担当者(営業・現場監督)に連絡しましょう。
職人に直接聞いても答えてくれない場合は、契約した会社の担当者に連絡します。
「職人さんに〇〇を聞いたんですが、よく分からなかったので、教えてもらえますか?」
このとき、職人を責める言い方は避けましょう。「職人さんが答えてくれない」と言うと、職人との関係が悪くなる可能性があります。
それでも解決しない場合は、書面で記録
質問した内容、回答(または回答がなかったこと)を記録しておきましょう。後々、トラブルになった際の証拠になります。
よくある質問(FAQ)
Q. 毎日質問するのは、やりすぎですか?
A. やりすぎではありません。むしろ、毎日「今日は何をされますか?」と聞くだけでも、職人との信頼関係が築けます。ただし、作業の邪魔にならないタイミングを選びましょう。
Q. 職人ではなく、営業担当に聞いた方がいいですか?
A. 両方に聞くのがベストです。技術的なこと(塗料、乾燥時間など)は職人に、契約内容や工程の変更は営業担当に聞くと良いでしょう。
Q. 質問したら、職人の機嫌が悪くなりました…
A. 質問の仕方を見直してみましょう。「監視している」と感じさせる聞き方ではなく、「教えてほしい」「関心がある」というスタンスで聞くと、職人も答えやすくなります。それでも機嫌が悪い場合は、担当者に相談しましょう。
Q. 専門用語が分からなくて、質問できません…
A. 分からないことを聞くのも、立派な質問です。「シーラーって何ですか?」「フィラーと何が違うんですか?」と聞いて大丈夫。良い職人は、専門用語を分かりやすく説明してくれます。
Q. 工事中、不在のことが多いのですが…
A. LINE通知や写真報告をお願いしましょう。または、施工管理アプリを活用すると、外出先からでも工事の進捗を確認できます。帰宅後に「今日の作業、写真を見ました」と伝えるだけでも、職人は「見られている」と意識します。
まとめ:遠慮せず、関心を持って質問しよう
工事中に業者に質問することは、「監視」ではなく「関心」です。
質問すべき5つのポイント:
- 今日は何の作業をしていますか?
- 使っている塗料を見せてもらえますか?
- 乾燥時間はどれくらい取っていますか?
- 雨の日はどうしますか?
- 気になる箇所があるんですが、見てもらえますか?
聞き方のコツ:
- 挨拶から始める
- 「教えてください」のスタンスで
- 感謝を伝える
- タイミングを選ぶ
遠慮して黙っていると、結局損をするのは施主自身です。適度な質問は、手抜き防止と品質向上につながります。
「職人さんに話しかけるのは迷惑かな…」と思う必要はありません。あなたの家です。関心を持って、遠慮せず質問しましょう。
施工管理アプリで質問・確認を効率化
施工管理アプリを使えば、工事中の確認がもっと簡単になります。
- 毎日の作業内容がLINEで届く
- 工程ごとの写真記録
- 気になる点をチャットで質問
- 外出先からでも進捗確認
「職人に直接聞くのは苦手…」という方も、アプリ経由なら気軽に質問できます。
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