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なぜ「外壁材」を知らずに塗装する業者が多いのか?サイディング・ALC・モルタル、素材を間違えると塗装は失敗する

この記事の監修者

ヨコイ塗装 代表 横井隆之

愛知県で50年続く塗装店の2代目。500件以上の施工実績を持ち、著書に『外壁塗装の不都合な真実』『塗装方程式』『外壁塗装 工程別チェックポイント21』(Kindle)がある。見積もり診断サービス「ペンキのミカタ」を運営し、全国の施主に中立的なアドバイスを提供している。

はじめに——「塗料の値段」より先に確認すべきこと

外壁塗装の見積もりを比べるとき、多くの方は「塗料のグレード」や「合計金額」に目が行きます。しかし、50年間500件以上の現場を見てきた私の結論はこうです。塗装の成否を分けるのは塗料の銘柄ではなく、「自宅の外壁材に対して正しい工法が選ばれているか」です。

日本の住宅の外壁材は、大きくサイディング・ALC・モルタルの3種類に分かれます。そして、この3つは劣化のメカニズムがまったく異なり、適切な下塗り材も、シーリングの処理方法も、必要な人工(にんく=工数)もすべて違います。

にもかかわらず、「どの外壁材でも同じ塗料で大丈夫です」と言い切る業者が後を絶ちません。その結果、塗装後1〜2年で塗膜がペリペリと剥がれ落ちる事故が全国で発生しています。

この記事では、3大外壁材それぞれの劣化の仕組み、正しい塗装仕様、そして人工理論に基づく適正な工数を解説します。これを読めば、手元の見積書が「あなたの家の外壁材に合った提案になっているか」を自分で判断できるようになります。

なぜ外壁材の種類で塗装の難易度がこれほど変わるのか?

日本の住宅外壁のシェア——あなたの家はどれ?

日本の戸建て住宅における外壁材のシェアは、窯業系サイディングが約70%と圧倒的です。金属サイディングの約9%を加えると、サイディング全体で約80%を占めています。かつて主流だったモルタル壁は約13%まで縮小し、ALCはヘーベルハウスなどの大手ハウスメーカーによる採用で数%のシェアを安定的に維持しています。

ここで知っておいてほしいのは、シェア80%のサイディングですら、「直貼り工法」と「通気工法」という2つの施工法で塗り方がまったく異なるということです。ましてALCやモルタルとなれば、塗料選定も下地処理も根本から変わります。

3大外壁材の基本構造と「弱点」の違い

【窯業系サイディング】

  • 主原料:セメント+繊維質
  • JIS規格:JIS A 5422
  • 最大の弱点:吸水→反り・凍害
  • シーリング依存度:高い
  • 標準塗装人工(30坪):15.5〜22人工

【ALC】

  • 主原料:珪石+セメント+石灰+アルミ粉末
  • JIS規格:JIS A 5416
  • 最大の弱点:吸水→鉄筋腐食→爆裂
  • シーリング依存度:極めて高い
  • 標準塗装人工(30坪):21.5〜30.5人工

【モルタル】

  • 主原料:砂+セメント
  • JIS規格:ー
  • 最大の弱点:柔軟性ゼロ→ひび割れ
  • シーリング依存度:低い
  • 標準塗装人工(30坪):14.5〜22.5人工

ALC住宅はサイディング住宅に比べて最大1.5倍の人工が必要です。見積金額が安いからと飛びつくと、その差は「工程の省略」で帳尻を合わせることになります。

サイディング外壁に塗装は本当に必要か?放置が招く反り・爆裂のメカニズムを解説 →

サイディング塗装の「2つの地雷」——直貼り工法と難付着ボード

直貼り工法の住宅は「塗ってはいけない」のか?

2001年以前に建てられた住宅の多くは「直貼り工法」で施工されています。これは防水紙の上に直接サイディングを貼り付ける工法で、壁体内部に空気層がありません。

問題は、壁の中の湿気の逃げ場がないことです。夏場になると、サイディング裏面に滞留した水蒸気が熱で膨張し、表面の塗膜を内側から押し上げます。これが塗装後に発生する「膨れ」や「剥離」の正体です。

2001年に日本窯業外装材協会(NYG)が「通気構法」を全国標準として統一して以降、新築では胴縁による15〜20mmの空気層が確保されるようになりました。しかし、それ以前の住宅がなくなるわけではありません。

直貼り住宅の塗装は「できない」わけではありませんが、透湿性の高い塗料を選ぶ、弾性塗料は絶対に使わない、といった制約を理解した上での仕様設計が不可欠です。「何でも塗れます」と言う業者には要注意です。

難付着サイディング——通常の塗料では2〜3年で剥がれる

2000年代以降に建てられた住宅では、表面に光触媒コート・フッ素コート・無機コートなどの高耐久コーティングが施された「難付着サイディング」が普及しています。ニチハの「プラチナコート」、ケイミューの「光セラ」「親水セラ」、旭トステムの「セルフッ素」などが代表的な製品です。

これらの外壁は「15〜20年色褪せない」という優れた初期性能を持ちますが、その代償として一般的な塗料が物理的に密着しません。表面エネルギーが極めて低いため、塗料が弾かれてしまうのです。

判別方法——あなたの家は難付着ボード?

  • ラッカーシンナーテスト:ラッカーシンナーをウエスに含ませて強く擦る。通常の塗膜なら色がウエスに移るが、難付着ボードはほとんど色が付かない
  • チョーキング確認:築10年以上なのに手で触っても白い粉がまったく付かない場合、高耐久コーティングが健在
  • 図面確認:新築時の設計図書・仕上げ表で外壁材の製品名を特定する

難付着サイディングには、日本ペイント「水性パーフェクトシーラー」、エスケー化研「水性ミラクシーラーエコ」、ロックペイント「ハイパーシーラーエポ」などの専用高密着プライマーが必須です。これを使わずに一般的なシーラーで塗ると、1〜2年で紙を剥がすように塗膜が剥がれます。

見積書チェックポイント:下塗りの欄に「専用プライマー」「密着強化プライマー」の記載があるか確認してください。「シーラー」としか書いていなければ、難付着ボードへの対策が取られていない可能性があります。

ALC外壁の塗装が「他と次元が違う」理由——防水が切れたら爆裂する

ALCの最大の弱点=「スポンジのような吸水性」

ALCは内部に無数の気泡を持つ軽量コンクリートです。断熱性と耐火性に優れますが、その気泡構造ゆえに吸水性が極めて高いという致命的な弱点があります。

ALC外壁の塗装は、美観の向上ではなく「完全な防水改修」です。防水塗膜が劣化した状態で放置すると、以下のプロセスで建物の構造を破壊します。

  1. 塗膜のチョーキング発生(防水機能の低下)
  2. 雨水がALC内部に浸入
  3. 内部の補強鉄筋に水分が到達
  4. 鉄筋が酸化→体積が数倍に膨張
  5. ALC表面が内側から押し出される→「爆裂」

冬場であれば、浸入した水分が凍結して膨張する「凍害」も加わります。一度爆裂が始まると部分補修では追いつかず、パネルそのものの交換が必要になります。

シーリングの総延長が「桁違い」——見積もりの盲点

ALC住宅の見積もりで最も注意すべきはシーリング工事の規模です。ALCは1枚のパネル幅が約600mmと小さく、サイディング(910mm〜)に比べてパネルの枚数、つまり目地の数が圧倒的に多くなります。

【サイディング住宅 vs ALC住宅のシーリング比較】

  • パネル標準幅:サイディング 910mm/455mm / ALC 600mm
  • 30坪住宅の目地延長:サイディング 約450〜600m / ALC 約900〜1,200m
  • シーリング費用目安:サイディング 約27〜72万円 / ALC 約54〜144万円

シーリングのm単価が800〜1,200円とすると、ALC住宅ではシーリング工事だけで50万〜100万円以上になることも珍しくありません。見積書にシーリングの延長m数が明記されていない場合、コストカットのために増し打ち(撤去せず上から塗るだけ)で済まされるリスクがあります。

ALC専用の下塗り材——一般シーラーでは吸い込みが止まらない

ALCは表面に小さな孔(巣穴)が多数あるため、サイディング用のサラサラしたシーラーでは吸い込みが止まらず、塗膜が形成されません。ALC塗装では「微弾性フィラー」と呼ばれる粘度の高い下塗り材を、砂骨ローラーで厚く塗り付けて巣穴を完全に塞ぐ必要があります。

代表的な製品は、エスケー化研「ソフトサーフSG」、日本ペイント「パーフェクトフィラー」、関西ペイント「アレスホルダーGII」などです。

見積書チェックポイント:ALC住宅なのに下塗りが「シーラー」と記載されていたら要注意。「微弾性フィラー」「サーフ」の記載があるか確認してください。

ALC外壁が水で壊れるメカニズムと築年数別メンテナンス戦略を解説 →

モルタル外壁——「ひび割れは宿命」だが、補修方法で雲泥の差

クラックの種類を間違えると、塗装後すぐに再発する

モルタル外壁にひび割れは付きものですが、すべてのひび割れが同じ危険度ではありません。補修方法は、クラックの「幅」で明確に分かれます。

【クラックの種類と補修方法】

  • ヘアクラック(0.3mm未満):乾燥収縮が原因 → 微弾性フィラーで充填
  • 構造クラック(0.3mm以上):地盤沈下・構造の動きが原因 → Uカット(Vカット)シーリング
  • 開口部クラック(0.3mm以上・斜め方向):窓角部への応力集中が原因 → Uカットシーリング+補強

Uカット工法とは、サンダーでひび割れ部分を意図的にV字型(またはU字型)に広げ、プライマーを塗布してからシーリング材を充填し、さらに樹脂モルタルで平滑に仕上げる工法です。

多くの不適切な施工で見られるのが、構造クラックに対して「シーリングを指で擦り込むだけ」で済ませるケースです。擦り込みでは接着面積が極めて小さいため、建物の動きで数ヶ月以内に同じ場所でひび割れが再発します。

弾性塗料はモルタル外壁「だけ」に使う

モルタルは常に微細な動きを繰り返しているため、硬い塗料(通常のシリコンやフッ素)を塗ると、下地のひび割れに追従できず塗膜まで一緒に割れます。そこで推奨されるのが、伸び縮みする性質を持つ「弾性塗料」です。

ただし注意すべき点があります。弾性塗料はモルタル外壁専用であり、サイディングには使ってはいけません。サイディングは蓄熱性が高いため、弾性塗料を塗ると夏場に塗膜が軟化して膨れを起こします。

仕上げ材で塗装の手間が変わる——ジョリパットは特に注意

モルタル外壁は表面仕上げのバリエーションが多く、それぞれ固有の注意点があります。

  • ジョリパット:通気性を重視した素材のため、艶ありの弾性塗料を塗ると内部の湿気で膨れが発生。メンテナンスには「ジョリパットフレッシュ」「アートフレッシュ」など専用の艶消し塗料を使用するのが鉄則
  • リシン・スタッコ:表面の凹凸が大きく吸い込みが激しいため、通常の1.5〜2倍の塗料量が必要。下塗りに「浸透型シーラー」をたっぷり染み込ませて下地を固める工程が重要

シーリング(コーキング)工事——「最も手抜きされやすい工程」の真実

打ち替えと増し打ち——その見積書、本当に撤去してくれる?

外壁のシーリング工事には、古いシーリングを全て撤去して新しく充填する「打ち替え」と、古いシーリングの上に重ねて塗る「増し打ち」があります。

原則として、サイディングの縦目地やALCの主目地は「打ち替え」が必要です。増し打ちでは古いシーリングとの接着が弱く、新しいシーリングの厚みも確保できないため、耐久年数が大幅に短くなります。

増し打ちが許容されるのは、カッターを入れると内部の防水テープを傷つける恐れがある「サッシ周り」や「入隅部分」に限られます。

しかし、シーリングの撤去は手間のかかる作業です。100mあたり約0.5〜1.0人工の労力が必要で、30坪住宅のサイディング(目地延長450〜600m)で3〜5人工、ALC(900〜1,200m)では6〜10人工にもなります。安価な見積もりを出す業者は、この撤去工程を省いて「増し打ち」で済ませようとすることが非常に多いのです。

ノンブリードタイプを選ばないと真っ黒に汚れる

シーリング材選びでもう一つ重要なのが「ノンブリード(NB)タイプ」の選択です。安価なシーリング材には柔軟性を出すための「可塑剤」が含まれており、これが塗膜を透過して表面に染み出し、埃を吸着して目地が真っ黒に汚れます(ブリード現象)。

外壁塗装では、必ず「変性シリコンNB」や「ウレタンNB」を指定してください。高耐久タイプ(例:オートンイクシード=期待耐久15〜20年)を選べば、塗膜の寿命に近いサイクルでメンテナンスが可能になります。

人工理論で見る——外壁材別の「適正工数」と手抜きの見破り方

ここまで解説してきたように、外壁材によって必要な工程も手間も大きく異なります。私が著書『塗装方程式』で提唱する塗装方程式(品質 = モチベーション × 技術 × 時間)において、「時間」の部分を数値化したものが人工(にんく)理論です。

30坪住宅の外壁材別・標準人工数をまとめると、以下のようになります。

【サイディング住宅の標準人工数】

  • 足場架設・解体:2.0〜3.0人工
  • 高圧洗浄:1.0人工
  • シーリング撤去・打ち替え:3.0〜5.0人工
  • 養生:2.0〜3.0人工
  • 下塗り:1.5〜2.0人工
  • 中塗り・上塗り:3.0〜4.0人工
  • 付帯部塗装:3.0〜4.0人工
  • 合計:15.5〜22.0人工

【ALC住宅の標準人工数】

  • 足場架設・解体:2.5〜3.5人工
  • 高圧洗浄:1.5人工
  • シーリング撤去・打ち替え:6.0〜10.0人工
  • 養生:2.5〜3.5人工
  • 下塗り:2.5〜3.5人工
  • 中塗り・上塗り:3.5〜4.5人工
  • 付帯部塗装:3.0〜4.0人工
  • 合計:21.5〜30.5人工

【モルタル住宅の標準人工数】

  • 足場架設・解体:2.0〜3.0人工
  • 高圧洗浄:1.0人工
  • 下地補修(クラック等):2.0〜5.0人工
  • 養生:2.0〜3.0人工
  • 下塗り:1.5〜2.5人工
  • 中塗り・上塗り:3.0〜4.0人工
  • 付帯部塗装:3.0〜4.0人工
  • 合計:14.5〜22.5人工

特に注目すべきはALC住宅のシーリング工程(6〜10人工)です。サイディングの2倍近い工数が必要であり、ここを「増し打ちで済ませる」と4〜8人工が丸々削れます。見積金額が安い理由の多くは、この人工カットに隠されています。

あなたの見積書を確認してください。工期(延べ日数)から逆算して、上記の人工数と大きく乖離していないか。特にALC住宅で「10日以内に終わります」と言う業者は、シーリングの全撤去打ち替えが物理的に不可能なスケジュールを提示している可能性があります。

外壁材ごとの塗料相性マップ——下塗り材の選択が成否を分ける

塗装の成功は、外壁材と塗料の「マッチング」で決まります。特に重要なのが、上塗り塗料ではなく下塗り材(シーラー・フィラー・プライマー)の選定です。

【下塗り材の種類と適合外壁材】

  • シーラー:水のようにサラサラ。下地に浸透して固める → サイディング(劣化少)、リシン仕上げモルタル
  • フィラー(微弾性フィラー):クリーム状で厚みが付く。巣穴や段差を埋める → ALC(必須)、モルタル、劣化したサイディング
  • プライマー(高密着プライマー):特殊コーティング面への密着に特化 → 難付着サイディング(必須)、鉄部

主要メーカーの推奨仕様

  • 日本ペイント:サイディング→「パーフェクトサーフ」(隠蔽性が高く中塗りの手間を軽減)、ALC→「パーフェクトフィラー」
  • 関西ペイント:「アレスダイナミックプラサフ」(湿潤面でも施工可能、天候に左右されにくい)、ALC→「アレスホルダーGII」
  • エスケー化研:ALC→「ソフトサーフSG」、難付着→「水性ミラクシーラーエコ」

見積書チェックポイント:下塗りの欄に「シーラー」としか書いていない場合、ALC住宅なら吸い込みが止まらないリスクが、難付着サイディングなら剥離のリスクがあります。外壁材に応じた適切な下塗り材が指定されているか、必ず確認してください。

下塗り材が効く科学的メカニズムと見積書の缶数検算法を解説 →

まとめ——あなたの家の外壁材に合った施工を見抜く4つのチェックポイント

  1. 調査の深度:業者がラッカーシンナーテストやスコープ調査を行ったか。「どの外壁材でもこの塗料で大丈夫」と言う業者は、難付着サイディングの剥離事故を起こすリスクが高い
  2. 数量の根拠:見積書にシーリングの延長m数が正しく算出されているか。特にALC住宅では、この数字が見積額の妥当性を測る最大の指標になる
  3. 工法への理解:2001年以前の住宅に対して「直貼り工法」のリスクを説明しているか。モルタルのクラックに対して「Uカット工法」を提案しているか
  4. 人工の妥当性:30坪の住宅で「5日で終わります」という業者は、乾燥時間を無視した無理な塗り重ねや、シーリング撤去の省略を行っている可能性が極めて高い

外壁塗装は、一度施工すれば下地の処理跡も塗った回数も見えなくなる「見えない工事」です。だからこそ、塗る前に「自分の家の外壁材は何か」「その素材に合った仕様になっているか」を確認することが、失敗を防ぐ最も確実な方法です。

見積書の内容に少しでも不安を感じたら、第三者の目でチェックを受けることをお勧めします。

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