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A社90万円 vs B社70万円──2社の見積もりを「人工」で並べると見える20万円の正体

外壁塗装の相見積もり、A社90万円(22人工)とB社70万円(12人工)を工程別に分解。20万円の差は10人工分の品質差。人工で見積もりを横並びにする方法を解説。

著者: 横井隆之

外壁塗装の相見積もりを金額だけで比較するのは危険です。A社90万円とB社70万円、20万円の差は「10人工分の品質差」です。塗料でも保証でもなく、職人の作業日数=人工で横並びにすると、安い見積もりのどこが削られているかが一目でわかります。

A社90万円 vs B社70万円──人工で並べると見える20万円の正体


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相見積もりを取ったとき、多くの方がまず見るのは「総額」です。次に塗料のグレード、そして保証年数。実はこの3つの軸には、致命的な盲点があります。

1つ目の罠は、面積の算出基準が業者ごとに違うことです。A社が「外壁面積120㎡」で算出し、B社が「150㎡」で算出していたら、同じ塗料・同じ工法でも金額は当然違います。窓を差し引いているか、凹凸を考慮しているかで、面積は20〜30%も変わります。

2つ目の罠は、同じ「シリコン塗装」でも塗布量(缶数)が違うことです。メーカーのカタログには1㎡あたりの標準塗布量が明記されていますが、安い見積もりでは必要缶数を下回る量で計算されていることがあります。足りない分は水やシンナーで薄めて伸ばす——いわゆる「シャブ引き」です。

3つ目の罠は、「付帯部一式」の範囲が業者ごとに違うことです。雨戸、水切り、換気フード、シャッターボックス。A社は全部含み、B社は雨戸を除外している。でも見積書に「付帯部一式」とだけ書かれていれば、この差は見えません。

金額とグレードで並べて「安い方」を選ぶ——これはポータルサイトが最も望むユーザー行動です。 なぜなら、安い方が選ばれるほど成約率が上がり、紹介手数料が入る。ポータルのUIが「価格順」「ランキング」を強調するのは偶然ではありません。


2社の見積もりを「人工」で並べる方法

金額比較の罠を避けるための方法は、シンプルです。見積書から「人工」を逆算して、工程別に横並びにする。これだけで、20万円の差の正体が見えてきます。

ステップ①:見積書から人工を逆算する

見積書に「人工」と直接書いてある業者は稀です。代わりに「工期」と「職人数」から逆算します。

例えば、A社の見積書に「工期14日・職人2名体制」と書いてあれば、14日×2名ではなく、実稼働日数を確認します。足場の設置・解体は専門業者が行うため、塗装職人の実稼働は10〜11日程度。2名体制なら約22人工です。

B社が「工期7日・職人2名体制」なら、実稼働5〜6日×2名=約12人工。

工期も職人数も書いていない場合は、業者に直接聞いてください。「何日で、何人で作業しますか?」——この質問に即答できない業者は、工程設計をしていない可能性が高い。

ステップ②:適正人工テーブルで照合する

30坪サイディング住宅の場合、工程別の適正人工は以下の通りです。

工程適正人工A社(22人工)B社(12人工)
足場設置・解体4〜654
高圧洗浄111
シーリング打ち替え2〜430(増し打ち)
下地処理・養生2〜332
外壁塗装3回塗り6〜973
付帯部塗装3〜532
**合計****18〜28****22****12**

ステップ③:人工の「差」がどの工程で発生しているかを特定する

B社の10人工減の内訳を見てください。

シーリングが打ち替えではなく増し打ちで−3人工。外壁塗装の塗り回数が実質短縮されて−4人工。付帯部と下地処理の省略で−3人工。

B社の12人工で30坪を仕上げるには、職人が毎日8時間フル稼働しても15日かかる計算です。しかしB社の工期は7日。ということは、どこかの工程が物理的に省略されている。 この計算は誰でもできます。


A社90万円 vs B社70万円──20万円の差を分解する

では実際に、2社の見積もりの中身を分解してみます。

A社 90万円の内訳:

項目金額
足場18万円
高圧洗浄3万円
シーリング打ち替え18万円
下地処理・養生6万円
外壁塗装3回(シリコン)30万円
付帯部塗装8万円
諸経費7万円
**合計****90万円**

B社 70万円の内訳:

項目金額
足場15万円
高圧洗浄3万円
シーリング増し打ち5万円
下地処理・養生4万円
外壁塗装3回(シリコン)28万円
付帯部塗装8万円
諸経費7万円
**合計****70万円**

20万円の差の最大要因は、シーリングの工法差です。打ち替え18万円と増し打ち5万円の差が13万円。下地処理の省略で2万円、足場の簡易化で3万円、外壁塗装の塗布量差で2万円。

ここが最も重要なポイントです。B社の増し打ちは既存シーリングの上に2mm程度を重ねるだけ。サイディングの目地幅12mmに対して2mmでは、5年後にひび割れて再工事が必要になります。その再工事費用は50〜80万円。

「安い」B社を選んだ結果、10年トータルでは120〜150万円。A社を選んでいれば90万円で済んでいた。 20万円を「節約」した代償は、30〜60万円の追加出費です。


「3社から見積もりを取りましょう」の先にある本当の問題

「相見積もりは3社から」——ネットで検索すれば、どの記事にもこう書いてあります。しかし、本当に難しいのは「取ること」ではなく「並べた後にどう判断するか」です。

問題の1つ目は、各社の劣化診断が異なることです。A社は「シーリング全面打ち替え必要」と診断し、B社は「増し打ちで十分」と診断する。補修範囲が違うのだから、金額が揃わないのは当然です。金額だけで比較すると、丁寧に診断したA社が「高い業者」に見えてしまう。

2つ目は、条件を揃えると「金額」しか見る場所がなくなることです。同じ塗料、同じ面積、同じ工程で揃えたら、差は数万円。その数万円の差をどう判断するか、ほとんどの記事は教えてくれません。

3つ目は、結局「人柄」で選んでしまうことです。営業マンの熱意、レスポンスの速さ、話しやすさ。大切な要素ではありますが、品質の担保にはなりません。

人工で並べれば、この問題を突破できます。劣化診断の違いを超えて、「この業者は何人工分の作業を約束しているか」という一点で横串比較ができる。人工は業者の感覚や営業トークではなく、物理的な事実だからです。

相見積もりの本当の問題は、「取ること」ではなく「並べた後の物差しがないこと」です。 金額・塗料・保証の3軸は業者が見せたい情報。人工は業者が隠したい情報。 だから人工で並べると真実が見える。

手元の見積書に不安があれば「見積書チェック完全ガイド【20項目】」で人工理論に基づく判定ができます。


見積もり金額の30〜50%は「人件費」——この事実を知れば比較軸が変わる

外壁塗装の総額のうち、30〜50%は人件費(手間賃)です。この事実を知ると、見積もりの見方が根本から変わります。

職人の日当相場は18,000〜25,000円。A社90万円の場合、人件費枠は約40万円。22人工×1.8万円=39.6万円。十分に確保されています。

B社70万円の場合、材料費・足場代・諸経費を差し引くと、人件費に回せるのは約22万円。12人工×1.8万円=21.6万円。これは30坪住宅を「丁寧に」塗装するための最低ラインを下回っています。

さらに見落としてはいけないのが、業者の利益構造です。大手ハウスメーカー経由なら、同じ施工内容でも30〜50%の中間マージンが発生します。120万円の施工に対して180万円を払う——この構造は業界では常態化しています。

ポータルサイト経由の見積もりにも10〜15%の紹介手数料が含まれます。90万円の見積もりなら9〜13.5万円。この手数料は「施工」には1円も使われない。業者はその分の利益を取り戻すために、人工を削る。これがポータルモデルの構造的矛盾です。

直接契約の地元塗装店であれば、中間マージンがない分、同じ金額でもより多くの人工を確保できます。 あるいは同じ人工数でも、金額を抑えることができる。「どこに頼むか」の前に「見積もりの何%が実際の施工に使われるか」を考えることが、賢い比較の第一歩です。


人工理論で見ると|2社の見積もりを「時間」で翻訳する

ここで塗装方程式 Q=M×T×T に立ち返ります。

品質(Q)を決める3つの変数のうち、M(モチベーション)は会ってみないとわからない。T(技術)は資格や実績で推測するしかない。しかしT(時間=人工)だけは、見積書から逆算できます。

A社22人工は、職人があなたの家に費やす時間の総量が176時間ということです。B社12人工は96時間。80時間の差。

この80時間の中に、シーリングの打ち替え、丁寧なケレン、十分な乾燥時間、部位別の下塗り材選定——つまり「見えなくなる工程」への誠実さが詰まっています。

金額ではなく人工で見る。「いくらか」ではなく「何時間か」で見る。その物差しが人工理論です。

人工理論の全体像は「人工理論完全講義」で詳しく解説しています。


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この記事の監修者

横井隆之|愛知県で50年続く塗装店「ヨコイ塗装」2代目。施工実績500件以上。

著書:

  • 『外壁塗装の不都合な真実』
  • 『塗装方程式』
  • 『外壁塗装 工程別チェックポイント21』

この記事の著者

横井隆之

横井隆之

ヨコイ塗装 代表 / 外壁塗装コンサルタント

業界経験 50著書 3

愛知県扶桑町でヨコイ塗装を経営。塗装業界50年以上の経験と500件を超える施工実績を持つ外壁塗装の専門家。施主の立場に立った公正なアドバイスを提供し、YouTube、ココナラ、MOSHなど複数のプラットフォームでセカンドオピニオンサービスを展開中。

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