外壁塗装の見積書が「外壁塗装一式 ○○万円」としか書かれていなかったら、その見積書で契約してはいけません。一式表記には「追加請求」「工程省略」「比較不能」の3つのリスクがあり、あなたが損をする確率が格段に上がります。
この記事では、50年の現場経験から「一式の裏側で何が起きるか」を具体的に解説し、「正しい見積書はどんな形か」をお見せします。
「一式」見積もりの謎
この記事はCVピラー「見積書チェック完全ガイド(20項目)」のステップ1を深掘りした記事です。
「一式」の見積書には何が書かれていないのか
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まず、一式表記の見積書と、項目別見積書を並べてみましょう。
一式表記の見積書(悪い例)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 外壁塗装工事 一式 | ¥980,000 |
| 足場工事 一式 | ¥180,000 |
| 諸経費 一式 | ¥50,000 |
| 合計 | ¥1,210,000(税込) |
項目別見積書(良い例)
| 工程 | 仕様・数量 | 金額 |
|---|---|---|
| ビケ足場 設置・解体 | 220㎡ × ¥850 | ¥187,000 |
| 飛散防止メッシュシート | 220㎡ × ¥200 | ¥44,000 |
| 外壁高圧洗浄 | 130㎡ × ¥250 | ¥32,500 |
| ケレン(3種) | 130㎡ × ¥600 | ¥78,000 |
| クラック補修(Vカット) | 8箇所 × ¥2,500 | ¥20,000 |
| コーキング打ち替え | 120m × ¥1,000 | ¥120,000 |
| 下塗り(○○フィラー) | 130㎡ × ¥800 | ¥104,000 |
| 中塗り(○○シリコン) | 130㎡ × ¥1,200 | ¥156,000 |
| 上塗り(○○シリコン) | 130㎡ × ¥1,200 | ¥156,000 |
| 軒天 | 40㎡ × ¥1,200 | ¥48,000 |
| 破風板 | 30m × ¥900 | ¥27,000 |
| 雨樋 | 40m × ¥800 | ¥32,000 |
| 雨戸 | 6枚 × ¥3,000 | ¥18,000 |
| 養生材 | --- | ¥25,000 |
| 産廃処理費 | --- | ¥18,000 |
| 石綿事前調査 | --- | ¥30,000 |
| 車両・運搬費 | --- | ¥12,000 |
| 合計 | --- | ¥1,107,500(税込) |
同じような金額でも、中身がまったく違うことが分かりますか?
一式の見積書からは、塗る面積も、使う塗料も、何回塗るかも読み取れません。項目別なら、すべてが数字で見える。この「見える化」こそが、あなたを守る最大の武器です。
リスク1:追加請求の温床になる
一式表記の最大の問題は、「何が含まれていて、何が含まれていないか」が分からないこと。
これは契約後にこういう会話を生みます:
業者「コーキングの打ち替えは見積もりに含まれていません。追加で15万円かかります」
施主「でも一式って書いてあるじゃないですか?全部含まれているんじゃ…」
業者「一式はあくまで塗装工事の一式で、コーキングは別工事です」
こうなると、施主には反論する根拠がありません。一式の「一式」がどこからどこまでを指すのか、契約書のどこにも定義されていないからです。
『外壁塗装の不都合な真実』では、これを「ケーキ箱理論」と呼んでいます。一式の見積書は、中身が見えないケーキ箱と同じ。3,000円の箱を開けたら中にケーキが2切れしか入っていなかった——でも「ケーキ一式」と書いてあるから文句は言えない。
追加請求されやすい項目
一式表記の見積書で省かれやすい項目には傾向があります:
- コーキング(シーリング):サイディング住宅では必須なのに「塗装」に含まれていないとされるケース
- 付帯部塗装:軒天、破風、雨樋は「外壁塗装」に含まないと言われるケース
- 下地処理の一部:クラック補修、爆裂補修が「別途」とされるケース
- 石綿事前調査費:2023年に義務化されたが、古い見積もりテンプレートでは項目がないケース
- 高圧洗浄:まれに「洗浄は別料金」とする業者もいる
リスク2:工程の省略が見えなくなる
一式表記のもう一つの危険は、どの工程にいくらかかっているかが分からないため、省略されても気づけないこと。
項目別見積書なら:
- 下塗り:130㎡ × 800円 = 104,000円
- 中塗り:130㎡ × 1,200円 = 156,000円
- 上塗り:130㎡ × 1,200円 = 156,000円
→ 明らかに「3回塗り」を前提としていることが分かる。
一式見積書では「外壁塗装一式 98万円」としか書いてないので、2回塗りなのか3回塗りなのか、見積書からは判断できません。
人工理論で考える
1人工=職人1人が1日8時間作業する労働量です。
一式の見積書で「工期5日間、2人体制」と口頭で説明された場合:
5日 × 2人 = 延べ10人工
30坪の外壁塗装に最低20〜25人工が必要なので、10人工は半分以下。この人工数で「適正な3回塗り」は物理的に不可能です。
しかし一式表記だと、この「人工数の不足」が数字として見えない。項目別なら各工程の面積と単価から人工数を逆算できますが、一式では逆算のしようがないのです。
『塗装方程式 Q=M×T×T』の核心:品質=モチベーション×技術×時間。一式表記は「時間」の配分を隠してしまう見積書形式です。
リスク3:他社との比較が不可能になる
相見積もりを取る意味は「比較して適正な業者を選ぶ」こと。しかし一式表記の見積書は比較の対象になりません。
比較できる例(項目別同士)
| 項目 | A社 | B社 |
|---|---|---|
| 外壁下塗り㎡単価 | 800円 | 750円 |
| 外壁中塗り㎡単価 | 1,200円 | 1,400円 |
| コーキング m単価 | 1,000円 | 900円 |
| → 差額の理由 | 塗料グレードの違い | 使用材料の違い |
→ 項目ごとに比較できるので、「なぜ高いか/安いか」の理由が分かる。
比較できない例(一式同士)
| 項目 | A社 | B社 |
|---|---|---|
| 外壁塗装一式 | 98万円 | 75万円 |
| → 差額の理由 | 不明 | 不明 |
→ 23万円の差が「品質の差」なのか「利益の差」なのか判別不能。
大手ポータルは「3社から見積もりを取りましょう」と勧めますが、3社とも一式で出してきたら、比較のしようがありません。相見積もりの前提は「項目別」です。
一式表記=悪徳ではない。ただし確認が必要
ここで重要な注意点があります。一式表記の見積書を出す業者がすべて悪徳業者というわけではありません。
小規模な地元の塗装店では、昔から一式で見積もりを出す慣習が残っているケースがあります。特に職人気質の親方が直接見積もりを作る場合、細かい項目別の書式に慣れていないこともあります。
問題は、一式の裏側を聞いたときの反応です:
安心できる反応
- 「内訳はこうなっています」と口頭でも具体的に答えられる
- 「項目別に書き直しましょうか?」と対応してくれる
- 工期と職人数を明確に教えてくれる
注意すべき反応
- 「うちはずっと一式でやっているから」と聞く耳を持たない
- 「他社と比較するなら一式のほうが分かりやすい」と論点をすり替える
- 内訳を聞くと不機嫌になる、または曖昧に答える
「一式」の見積書をもらったら、こう聞いてください
業者に内訳を依頼するときの具体的なセリフをお伝えします。そのまま使えます。
セリフ1(基本)
「見積書をいただきありがとうございます。比較検討のために、可能であれば工程ごとの内訳と、使用塗料のメーカー名・品番も教えていただけますか?」
セリフ2(断られた場合)
「内訳がないと他社さんとの比較ができないので、検討が進められないんです。項目ごとの㎡単価と数量だけでも出していただけると助かります」
セリフ3(それでも出ない場合)
「では、少なくとも以下の5点だけ教えてください。①塗装面積 ②使用塗料のメーカー名 ③塗り回数 ④工期(日数) ⑤職人の人数」
この5点が分かれば、人工数を逆算して適正な工事ができるかどうかを判断できます。
見積書の基本的な読み方から学びたい方は → 見積書の見方|9つの項目を読み解く
人工理論で見ると
定義: 1人工=職人1人が1日8時間作業する労働量
一式表記の本質的問題: 一式表記は「金額」だけを提示して「時間(人工)」を隠す。塗装品質は時間に依存するため、時間が見えない見積書では品質の予測ができない。
判定方法: 一式表記でも「工期×職人数=延べ人工」を計算できれば、最低基準(30坪で20〜25人工)との照合は可能。この情報すら出さない業者は要注意。
人工理論の全体像は「人工理論完全講義」で詳しく解説しています。
よくある質問
Q. リフォーム会社の見積もりは一式が多いけど、塗装専門店も一式で出す?
塗装専門店でも一式で出すケースはあります。ただし、塗装専門店は自社施工が基本なので、聞けば内訳を答えられることが多い。リフォーム会社の場合、下請けに丸投げするため自社で内訳を把握していないケースがあり、その場合は一式にならざるを得ない——という構造的な問題があります。
Q. 一式の見積書で既に契約してしまった。どうすればいい?
契約書の内容を確認してください。「追加工事は別途」の条項がある場合、追加請求される可能性があります。施工前であれば、業者に内訳の提出を改めて依頼し、「この金額に含まれる工事範囲」を書面で確認しておくことが重要です。施工開始前の書面確認は、後のトラブル防止に直結します。
Q. 一式でも安ければいいのでは?
安さの「根拠」が分からないのが問題です。一式80万円と一式120万円の差が「利益率の違い」なのか「工程の省略」なのか判別できない。項目別なら「この業者は下地処理が手厚い分、高い」と納得できますが、一式では納得材料がありません。
まとめ:一式表記の見積書を受け取ったらやるべき3つのこと
①業者に内訳を依頼する
上で紹介したセリフをそのまま使ってください。出せない業者は選択肢から外すことも検討を。
②最低5点を確認する
塗装面積、使用塗料のメーカー名、塗り回数、工期、職人数。これが分かれば人工数の逆算ができます。
③第三者にチェックしてもらう
内訳が出ても、それが適正かどうかは素人には判断しにくい。500円のAI診断で、項目の過不足と人工数の妥当性を即チェックできます。
見積書の写真をアップロードするだけ。AIが項目の過不足を即チェック。
見積書チェックの全体像はこちら → 見積書チェック完全ガイド(20項目)
著者: 横井卓也|愛知県で50年続く塗装店「ヨコイ塗装」2代目。施工実績500件以上。著書に『外壁塗装の不都合な真実』『塗装方程式 Q=M×T×T』『工程別チェックポイント21』がある。
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