外壁塗装の見積書を見て、「塗料と塗装面積は分かるけど、それ以外の項目が妥当なのか判断できない」と感じていませんか?
外壁塗装の見積書、塗料だけ見てない?
実は、見積総額の40〜50%は塗料代「以外」の項目で構成されています。諸経費、足場、付帯部、コーキング――これらの"脇役"こそ、業者によって金額差が最も出やすい項目です。
この記事では、30坪2階建てのモデルケースを使い、見積書の脇役すべてに適正価格の物差しを当てます。
📋 この記事はCVピラー「見積書チェック完全ガイド(20項目)」のステップ4を深掘りした記事です。
「諸経費」の正体:何が含まれるべきか
見積書の最後に「諸経費 ○万円」と書かれていて、「何のお金?」と思った方は多いはずです。
諸経費に含まれるべき項目
諸経費とは、塗装作業そのもの以外にかかる「運営コスト」のことです。具体的には以下の項目が含まれます。
- 産業廃棄物処理費(旧塗膜の剥離物、使用済み養生材、空き缶)
- 石綿(アスベスト)事前調査費(2023年10月から義務化)
- 現場管理費(施工管理者の人件費・交通費)
- 車両費(資材運搬、職人の現場移動)
- 養生資材費(マスカー、マスキングテープ、ブルーシート)
- 安全対策費(安全帯、ヘルメット、安全標識)
- 保険料(賠償責任保険、労災上乗せ保険)
- 近隣挨拶・通知費用
諸経費の適正比率:10〜15%
総工事費に対する諸経費の比率で、見積書の健全さが分かります。
| 諸経費比率 | 判定 | 解説 |
|---|---|---|
| 5%未満 | ⚠️ 要注意 | 産廃処理費や石綿調査費が省略されている可能性。不法投棄リスクあり |
| 10〜15% | ✅ 適正 | 法定義務(石綿調査)と環境処理を含めた標準的な範囲 |
| 20%超 | ❓ 要確認 | 「何にいくらかかるか」の内訳説明を求めてください |
特に5%未満は危険です。2023年10月の法改正で、一定規模以上の改修工事では石綿事前調査が義務化されました。この費用だけで書面調査2〜5万円、目視調査3〜10万円、分析が必要な場合は1検体あたり1.5〜5万円かかります。諸経費が極端に安い見積書は、これらの法的義務を無視している可能性があります。
「諸経費一式」の危険性
「諸経費一式 5万円」のように内訳がない見積書は要注意です。何が含まれて何が含まれていないか分からないため、工事後に「産廃処理費は別料金です」と追加請求されるケースがあります。
業者に聞くセリフ:「諸経費の中に産廃処理と石綿調査は含まれていますか?」
足場費用:「足場代無料」は本当にお得か
足場の種類と費用
現在の住宅塗装で主流なのはビケ足場(くさび式足場)です。
| 足場の種類 | ㎡単価(設置+解体) | 特徴 |
|---|---|---|
| ビケ足場(くさび式) | 700〜1,000円/㎡ | 現在の主流。安定性が高い |
| 単管足場 | 500〜800円/㎡ | 安価だが作業性が低い |
| 単管ブラケット足場 | 600〜900円/㎡ | 単管の改良版 |
標準的なビケ足場の㎡単価は800円/㎡です。ここに飛散防止ネット(メッシュシート)が200〜300円/㎡加算されます。
30坪2階建ての足場費用
30坪2階建ての外壁を足場で囲む場合、足場の架面積は約180〜250㎡です。
- 足場設置+解体:800円 × 200㎡ = 16万円
- 飛散防止ネット:250円 × 200㎡ = 5万円
合計目安:15〜30万円
この差は建物の形状(凹凸が多い、3階建て、隣家との距離が近い)で変わります。
「足場代無料」の裏側
「足場代無料」を謳う業者がいますが、15〜30万円もの費用が本当に消えるわけがありません。
よくあるパターン:
- 塗装面積の㎡単価に足場費用を上乗せ(見えにくくする)
- 足場の安全性を落としている(飛散防止ネットの省略、低品質な足場材)
- 他の項目を「一式」にして、足場費用を吸収
見積書の総額で比較すれば、「足場代無料」の見積書が結局安くなっていないことに気づくはずです。
「足場代無料」の見積書を受け取った方は → 見積書の危険信号15パターン
付帯部8部位の単価表:見積書と照合してください
外壁と屋根以外の細かい部分が「付帯部」です。見積書で最も確認が漏れやすく、かつ業者による価格差が大きい項目です。
部位別の適正単価
| 部位 | 単位 | 最低 | 標準 | 上限 | 補足 |
|---|---|---|---|---|---|
| 軒天(のきてん) | ㎡ | 800円 | 1,500円 | 2,500円 | ケイカル板は塗装、合板は張替え検討 |
| 破風板(はふいた) | m | 800円 | 1,200円 | 2,200円 | 木製は劣化が早い。板金カバー工法も選択肢 |
| 雨樋(あまどい) | m | 600円 | 1,000円 | 1,800円 | 塩ビ製は塗装効果が薄い。交換との比較を |
| 雨戸(あまど) | 枚 | 2,000円 | 4,000円 | 8,000円 | ケレン+錆止め+上塗りの3工程が基本 |
| 水切り | m | 600円 | 900円 | 1,400円 | 板金製は錆止め必須 |
| 換気フード | 箇所 | 1,500円 | 2,500円 | 4,000円 | 樹脂製は劣化していれば交換のほうが安い |
| 幕板(まくいた) | m | 800円 | 1,200円 | 2,000円 | サイディング住宅に多い。コーキング処理も要確認 |
| 霧除け庇(きりよけひさし) | 箇所 | 2,000円 | 3,500円 | 6,000円 | 板金部の錆・穴あきは板金修理が先 |
素材別の注意点
付帯部は「とにかく塗ればいい」わけではありません。素材によって適切な工法が異なります。
- 鉄部(雨戸・水切り・手摺り):ケレン(錆落とし)→ 錆止め塗料 → 上塗り2回。ケレンの省略は1〜2年で錆が再発します
- 木部(破風板・鼻隠し):浸透型塗料が基本。造膜型は剥離しやすい。劣化がひどければ板金カバーまたは交換
- 樹脂部(雨樋・換気フード):塗装しても耐久性は限定的。劣化が進んでいれば交換のほうがコストパフォーマンスが良い
見積書で確認すべきこと:「付帯部が一式ではなく、8部位が個別に記載されていますか?」
個別記載がない見積書は → 「一式」表記に潜む3つのリスク
コーキング(シーリング):見積書で見落とされがちな大物
サイディング外壁の住宅では、コーキングの費用が10〜18万円と見積総額の10%前後を占めます。にもかかわらず「一式」で済まされがちな項目です。
打ち替えと増し打ちの違い
| 工法 | m単価 | 内容 | 耐久年数目安 |
|---|---|---|---|
| 打ち替え | 700〜1,200円/m | 既存のコーキングを撤去→新規充填 | 7〜10年 |
| 増し打ち | 300〜600円/m | 既存の上に重ね塗り | 3〜5年 |
打ち替えが原則です。増し打ちは既存コーキングとの密着が弱く、短期間で剥離するリスクがあります。
30坪の場合のコーキング数量
サイディング住宅(30坪)のコーキング総延長は120〜150mが目安です。
- 打ち替えの場合:900円 × 135m = 約12万円
- 増し打ちの場合:450円 × 135m = 約6万円
差額は約6万円。この差額を惜しんで増し打ちにすると、数年後に再施工が必要になり、結局足場代を含めて高くつきます。
見積書で確認すべきこと:「コーキングは打ち替えですか?増し打ちですか?使用するシーリング材のメーカーと品番は?」
ベランダ防水:知らないと損する2つの選択肢
ベランダ・バルコニーの防水は、外壁塗装と同時施工すると足場代を共有できるため、検討する価値があります。
| 工法 | ㎡単価 | 耐久年数 | 適用ケース |
|---|---|---|---|
| トップコート塗り替え | 5,000〜8,000円/㎡ | 3〜5年 | FRP防水層が健全な場合の定期メンテナンス |
| FRP防水やり直し | 28,000〜35,000円/㎡ | 10〜15年 | 防水層に亀裂・膨れがある場合 |
見積書で確認すべきこと:「ベランダ防水は見積もりに含まれていますか?含まれていない場合、現状の防水層の状態は確認されましたか?」
人工理論で見ると:なぜ"脇役"の省略が致命的なのか
ここまで読んで、「付帯部やコーキングの費用がこんなにかかるのか」と驚いた方もいるでしょう。
実は、30坪の外壁塗装に必要な延べ人工(にんく)のうち、塗装作業そのものは約半分です。残りの半分は、足場の設置・解体、高圧洗浄、下地処理、コーキング、付帯部の塗装に使われます。
見積書の"脇役"が安すぎるということは、これらの作業に割く人工(=時間)が足りないということ。つまり、手抜きのリスクが高まります。
塗装方程式 Q = M × T × T(品質 = モチベーション × 技術 × 時間)でいえば、時間(T)が不足する見積書は、どれだけ技術のある職人でも品質を維持できません。
人工理論で見積書全体の妥当性を判断する方法 → 人工理論の全体像を詳しく学ぶ
30坪モデルケース:シリコン塗装の総額構成
最後に、すべての項目を合わせた30坪2階建てのモデルケースを示します。自分の見積書と照合してみてください。
| 項目 | 金額目安 | 総額に占める割合 |
|---|---|---|
| 足場+飛散防止ネット | 18〜25万円 | 16〜21% |
| 高圧洗浄 | 3〜5万円 | 3〜4% |
| 下地処理(ケレン・補修) | 3〜8万円 | 3〜7% |
| コーキング打ち替え | 10〜18万円 | 9〜15% |
| 外壁塗装(シリコン・3回塗り) | 35〜50万円 | 32〜42% |
| 付帯部塗装(8部位) | 10〜20万円 | 9〜17% |
| 諸経費(産廃・石綿調査含む) | 8〜15万円 | 7〜13% |
| 合計 | 約110〜120万円(税込) | 100% |
外壁塗装の費用は「塗料代」だけではありません。むしろ塗料代が占めるのは全体の3〜4割。残りの6割を構成する"脇役"が適正に見積もられているかどうかが、工事品質を左右します。
見積書照合チェックリスト10項目
見積書を手元に置いて、一つずつ確認してください。
- □ 諸経費が総額の10〜15%に収まっているか
- □ 諸経費の内訳に「産廃処理費」が含まれているか
- □ 石綿事前調査費の項目があるか(2023年義務化)
- □ 足場はビケ足場(くさび式)で、㎡単価800円前後か
- □ 「足場代無料」になっていないか(なっていれば総額比較を)
- □ 付帯部が8部位別に個別記載されているか(「一式」ではないか)
- □ コーキングは「打ち替え」か(「増し打ち」になっていないか)
- □ コーキングの使用材料(メーカー名・品番)が明記されているか
- □ ベランダ防水の要否が確認されているか
- □ 塗装以外(鉄部ケレン・木部処理等)の工法が具体的に記載されているか
その見積書、"脇役"まで適正ですか?
見積書の写真をアップロードするだけ。AIが諸経費・足場・付帯部の過不足を即チェック。
📋 見積書チェックの全体像はこちら → 見積書チェック完全ガイド(20項目)
この記事の監修者
横井隆之|愛知県で50年続く塗装店「ヨコイ塗装」2代目。施工実績500件以上。
著書:
- 『外壁塗装の不都合な真実』
- 『塗装方程式 Q=M×T×T』
- 『外壁塗装 工程別チェックポイント21』
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この記事の著者
横井隆之
ヨコイ塗装 代表 / 外壁塗装コンサルタント
愛知県扶桑町でヨコイ塗装を経営。塗装業界50年以上の経験と500件を超える施工実績を持つ外壁塗装の専門家。施主の立場に立った公正なアドバイスを提供し、YouTube、ココナラ、MOSHなど複数のプラットフォームでセカンドオピニオンサービスを展開中。
プロフィールを見る →HM見積もりの「高い理由」、分解できます
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