外壁塗装の見積書を受け取ったとき、多くの方がまず目にするのは「合計金額」でしょう。100万円なのか、180万円なのか。その数字の大きさに、一喜一憂してしまう気持ちはよく分かります。
外壁塗装の見積書の見方を動画で解説
しかし、私は愛知県で50年続く塗装店の2代目として、数えきれないほどの見積書を見てきました。そして断言します。見積書で最も大切なのは、金額ではありません。「職人がどれだけの時間をかけて塗るか」が読み取れるかどうかです。
本記事では、他のサイトでは語られない「人工(にんく)理論」と「塗装方程式」をもとに、あなたの見積書がまともな工事を約束しているかどうかを見抜く7つのチェックポイントを解説します。ぜひ、お手元の見積書を横に置きながらお読みください。
1. 見積書は「金額」ではなく「職人の時間」を見る
なぜ金額だけでは判断できないのか
同じ30坪の住宅に対して、A社は90万円、B社は150万円の見積もりを出してきたとします。多くの方は「A社のほうが安くてお得だ」と考えるでしょう。
ここで考えてほしいのは、その差額の60万円はどこから生まれているのかということです。
塗装工事の原価の大半は「人件費」と「材料費」です。塗料のグレードが同じなら、材料費に大きな差は出ません。つまり、安い見積もりとは「職人の作業時間を削っている」か「中間マージンがない」かのどちらかです。
前者であれば、それは手抜き工事への入口です。
「人工(にんく)」という職人の単位を知る
塗装業界には「人工(にんく)」という単位があります。職人1人が1日作業する量を「1人工」と呼びます。
この人工という考え方こそ、見積書の裏側を読み解く最強のツールです。
見積書を受け取ったら、業者にこう聞いてみてください。
「この工事、全部で何人工ぐらいかかりますか?」
もし「人工」という言葉が通じにくければ、こう言い換えても大丈夫です。
「職人さん1人でやったら、何日ぐらいかかりますか?」
「10日」と言われれば10人工、「2人で7日」と言われれば14人工です。この数字が、次に説明する「適正人工数」と大きくかけ離れていないかを確認してください。
2.「人工(にんく)」から逆算する品質の裏付け
30坪住宅に必要な人工数の目安
一般的な30坪(塗装面積 約120〜150㎡)の住宅を、標準的なシリコン塗料で外壁塗装する場合に必要な人工数の目安は以下のとおりです。
足場の組立・解体:2.0〜3.0人工(メッシュシートの設置含む。安全確保に最低2〜3名) 高圧洗浄:1.0人工(苔・汚れ・チョーキング粉の徹底除去。乾燥時間も必要) 下地処理・養生:2.0〜4.0人工(クラック補修、ケレン、窓や設備の保護。この丁寧さが塗装の寿命を決める) シーリング工事:2.0〜4.0人工(既存撤去と新規打ち替え。乾燥に3〜7日必要) 外壁塗装(3回塗り):4.0〜6.0人工(下塗り・中塗り・上塗り。1日1工程が乾燥の鉄則) 付帯部塗装・検査:1.0〜3.0人工(雨樋・軒天・破風など細部と最終検査) ─────────────── 合計:12〜21人工
つまり、30坪の外壁塗装をまともにやろうとすると、最低でも12人工、丁寧にやれば20人工以上が必要ということです。
工期が短すぎる見積もりは要注意
もし見積書に「工期7日間」と書かれていたら、警戒してください。
外壁塗装には「乾燥」という避けて通れない化学的プロセスがあります。下塗りと中塗りの間、中塗りと上塗りの間には、それぞれ最低でも数時間〜1日の乾燥時間が必要です。
大人数を投入しても、下塗り・中塗り・上塗りを同じ日に行うことは物理的に不可能です。
私の著書でも繰り返し伝えていますが、30坪のモルタル外壁なら10〜12日、サイディングでシーリング工事が入る場合は12〜14日が目安です。「5日で終わります」という業者には、なぜそんなに短いのかを必ず確認してください。
逆に、20日前後かけて丁寧に施工する業者は、品質を重視している証拠です。
3. 塗装方程式「品質=モチベーション×技術×時間」
プロが現場で見つけた法則
私が長年の現場経験から導き出した公式があります。
品質 = モチベーション × 技術 × 時間
この方程式は掛け算です。どれか1つがゼロなら、品質もゼロになります。
いくら腕のいい職人でも、元請けに買い叩かれてまともな報酬を受け取れなければ、「丁寧に塗ろう」という気持ちは薄れます。いくら時間があっても、会社から「3日で終わらせろ」と言われれば、手を抜かざるを得ません。
安すぎる見積もりの正体は、多くの場合「モチベーション」か「時間」が犠牲になっていることです。
4.「一式」表記は中身を必ず確認する
見積書に「外壁塗装 一式 ○○万円」と書かれていたら注意が必要です。
「一式」表記の問題は、何が含まれていて何が省略されているのかが分からないこと。良い見積書は、塗料のメーカー名と製品名、塗装面積、各工程の単価と数量、足場・高圧洗浄・養生・シーリングなどが個別に明記されています。
「一式の内訳を教えてください」と遠慮なく聞きましょう。
5. 塗料の缶数で手抜きを見抜く
見積書に塗料名が記載されていたら、メーカーのカタログで「規定塗布量」を確認してみてください。
たとえば塗装面積150㎡の外壁に、1㎡あたり0.15kgの塗料で2回塗りを行う場合、必要な塗料は45kgです。1缶15kg入りなら、最低でも3缶が現場に届いていなければ計算が合いません。
「使用する塗料は何缶ですか?」と聞いてみてください。この質問に即答できる業者は、きちんと計算して見積もりを作っています。
6. シーリングは「打ち替え」か「増し打ち」かを確認
サイディング外壁の場合、目地のシーリング工事は塗装と同じくらい重要です。
打ち替え:古いシーリングを撤去して新しく充填する。正しい施工。 増し打ち:古いシーリングの上から新しいものを重ねるだけ。密着不良のリスクが高い。
見積書に「シーリング 一式」とだけ書かれている場合は、打ち替えなのか増し打ちなのか、メートル数はいくらか、使用材料は何かを必ず確認してください。
7. 中間マージンの構造を理解する
ハウスメーカーや大手リフォーム会社を経由すると、工事代金の30〜50%が中間マージンとして差し引かれます。150万円支払っても、実際に現場の塗装に使われるのは75万〜100万円程度ということがあり得るのです。
「実際に施工するのは御社の職人さんですか?下請けに出しますか?」この質問への回答で、中間マージンの有無がおおよそ分かります。
まとめ:見積書は「職人の心意気」を映す鏡
見積書の本質は、金額ではありません。その裏側にある「人工」——つまり職人がどれだけの時間と手間をかけてくれるか——を読み取ることです。
12〜21人工の作業量が確保されているか。乾燥時間を含めた現実的な工期になっているか。「品質=モチベーション×技術×時間」のどれかがゼロになっていないか。
これらを確認できれば、あなたはもう見積書に惑わされることはありません。
見積書を見ても判断に迷ったら、第三者によるセカンドオピニオンという選択肢があります。お手元の見積書を職人の目線でチェックする診断サービスを、3,000円で提供しています。
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