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「モニター価格で半額」は本当か?|50年の職人が暴く二重価格表示の見抜き方

「今日契約すればモニター価格で半額」という提案は本当にお得なのか?塗装方程式と人工計算で、大幅値引きが数学的に不可能である理由を解説します。

「近くで工事をするので、モニターになっていただければ半額にします」

訪問販売でこんな提案を受けた経験はありませんか?「半額」と聞けば誰でも心が動きます。しかし、塗装歴50年・500件以上の現場を見てきた私から言わせてもらえば、高品質な工事を維持したままの半額オファーは、数学的に不可能です。

この記事では、「モニター価格」や「キャンペーン半額」の経済的な嘘を、原価構造と塗装方程式の観点から徹底的に暴きます。

「半額」が不可能な理由を原価構造から証明する

まず、外壁塗装工事の費用がどう構成されているか整理しましょう。

一般的な戸建て住宅(延床30坪、塗装面積約120㎡)の場合、費用構成はおおよそ以下の比率に収束します。

【費用構成の内訳】

  • 人件費(労務費):40〜45% — 職人の日当、社会保険料、移動経費
  • 材料費:20% — 塗料、シーリング材、養生材
  • 足場工事費:15〜20% — 部材リース料、鳶職人の人件費
  • 一般管理費・利益:20% — 営業経費、事務経費、純利益

これを総額120万円(適正相場)の工事で計算してみます。

【適正価格120万円の内訳】

  • 人件費:約54万円
  • 材料費:約24万円
  • 足場費:約18万円
  • 利益・経費:約24万円
  • 直接工事原価(人件費+材料費+足場)= 96万円

仮に業者が利益と経費24万円を完全にゼロにしても、原価だけで96万円かかります。つまり「半額の60万円」は、原価を36万円も下回る赤字受注です。

営利企業が1件あたり36万円の損失を出してまで「モニター」を募集する理由があるでしょうか?答えはノーです。

「半額」を実現するための3つの不正操作

では、60万円で請け負う業者は何をしているのか。答えは以下の3つのいずれかです。

1. 材料費の不正削減

  • 規定以上の希釈(水増し)
  • 3回塗りを2回に減らす
  • シリコン塗料と偽ってアクリル塗料を使用

2. 人件費の不正削減

  • 熟練工ではなくアルバイトを使用
  • 工期を半分に短縮(乾燥時間を無視)

3. 当初価格の架空設定

  • 本来60万円相当の粗悪な工事内容に対し、見せかけの定価を120万円と偽装

つまり「半額」は、最初から適正相場だったものを、架空の高値と比較して安く見せているだけなのです。

塗装方程式で「半額工事」の結末を予測する

私が著書『塗装方程式』で提唱している公式があります。

品質 = 職人のやる気 × 技術 × 時間

この方程式で「半額工事」を分析してみましょう。

やる気(モチベーション)

半額で受注した工事は、下請けに流れる段階でさらにマージンを抜かれます。最終的に現場に立つ職人に残る工賃は雀の涙です。適正な報酬がなければ、職人のモチベーションは維持できません。中間マージンの構造を理解すれば、安すぎる見積もりが職人のやる気を削ぐ構造が見えてきます。

技術

安い工賃では熟練職人は請けません。結果として、経験の浅い職人やアルバイトが現場に入ります。

時間

工期を半分に詰めれば人件費は削減できます。しかし、乾燥時間の無視は「膨れ」「剥がれ」を必然的に引き起こします。

3つの変数のうち、どれか1つでもゼロに近づけば、品質はゼロに収束します。半額工事は、この方程式を必ず崩壊させるのです。

「人工」で見抜く適正価格の計算方法

見積書を見るとき、最も信頼できる指標は「人工(にんく)」です。人工とは「職人1人が1日かけて行う作業量」のこと。

【適正な人工数の目安(延床30坪の場合)】

  • 足場架設・解体:2〜3人工
  • 高圧洗浄:1人工
  • 養生:1〜2人工
  • 下地処理・補修:1〜2人工
  • 下塗り:1〜2人工
  • 中塗り・上塗り:2〜3人工
  • 付帯部塗装:2〜3人工
  • 合計:10〜16人工

職人の日当相場が18,000〜25,000円とすると、人件費だけで18万〜40万円が必要です。

「半額」を謳う業者の見積書を人工の視点で分析すると、適正な人工数を確保できていないことがすぐに分かります。

「足場代無料」のカラクリ

「モニター価格」と並んで多いのが「足場代無料」という甘言です。

足場架設は国家資格を持つ鳶職人が行う高度な作業であり、30坪の住宅で15万〜25万円が適正費用です。これが「無料」になることはあり得ません。

実態は費用の付け替え(クロス・サブシディ)です。

  • 塗装単価の水増し:2,500円/㎡ → 3,500円/㎡
  • 諸経費の肥大化:数万円 → 数十万円
  • 付帯工事費の高額化

「足場代無料」の見積書と「足場代有料」の適正業者の見積書を比較すると、総額は変わらないか、むしろ「無料」の方が割高になっていることがほとんどです。

二重価格表示は景品表示法違反の可能性

「定価200万円 → モニター価格100万円」という表示は、景品表示法における「二重価格表示」の規制対象となります。

消費者庁のガイドラインでは、比較対照価格として「通常価格」を表示する場合、過去8週間のうち4週間以上、その価格で実際に販売した実績が必要とされています。

訪問販売業者が提示する「定価」に、この販売実績があるケースは極めて稀です。実績のない「架空の定価」との比較は、有利誤認表示として行政処分の対象となります。

良い業者の見分け方

モニター商法に騙されないためのチェックポイントをまとめます。

【危険信号(1つでも当てはまれば要注意)】

  • 「今日契約すれば」と即決を迫る
  • 「この地域限定○棟」と希少性を強調
  • 「近くで工事をするから安くなる」
  • 見積書が「一式」表記で内訳がない
  • オリジナル塗料を提案してくる

【安心できる業者の特徴】

  • 内訳が詳細に記載された見積書
  • 大手メーカー(日本ペイント、関西ペイント、エスケー化研)の塗料を使用
  • 相見積もりを歓迎する姿勢
  • 点検商法のような不安煽りをしない

まとめ:適正価格を知ることが最大の防御

外壁塗装の適正相場(延床30坪・シリコン塗料)は80万〜110万円です。

「定価200万円から半額で100万円」という提案を受けたら、その100万円は「特別に安い」のではなく「ごく普通の相場通り」であることを思い出してください。

見積書の内容に不安がある方は、見積書診断サービスで第三者の目からチェックを受けることをおすすめします。塗装方程式と人工の視点から、その見積もりが適正かどうかを判断いたします。

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