ホーム/コラム/雨が10日続きました。外壁塗装をそのまま再開していいですか?

雨が10日続きました。外壁塗装をそのまま再開していいですか?

湿度88%の朝、2液の下塗り材を混ぜたあとで気づき、1回分を捨てました。塗り重ね間隔の上限は製品ごとに16時間〜7日と幅があり、気温でも変わります。雨で止まった工事を再開する前に、施主が聞ける3つの質問をメーカー公表値だけで組み立てます。

著者: 横井隆之

「雨が続いて現場がほとんど止まりました。天気が戻ったので、来週から再開します」——業者からこう連絡が来たとき、施主の側で判断できることは、ふつうほとんどありません。雨が上がったのだから再開して当然、と思うのが自然です。

ただ、塗料メーカーの標準施工仕様には、前の工程を塗ってから次を塗るまでに空けてよい時間の「上限」が書かれています。最低何時間空けるかという下限はよく知られていますが、上限があることはあまり知られていません。雨で工程が長く空いたとき、判断の分かれ目になるのはこの上限のほうです。

この記事は、業者を責めるためのものではありません。まず、書いている本人が同じ雨のなかで材料を1回分だめにした話から始めます。

① 2026年9月15日 8時33分、25.2℃・湿度88%

2026年9月、愛知県内の現場は雨が続き、塗装工程はほぼ止まりました。運営者自身の現場です。

9月15日の朝、外壁1階部分の下塗りに入るつもりで材料を用意しました。使ったのは弱溶剤2液の下塗り材(日本ペイント「ファインパーフェクトシーラー」)で、主剤と硬化剤を5:1で混ぜるものです。硬化剤2.5kgを計量して、混ぜました。

混ぜたあとで温湿度計を見ました。8時33分、気温25.2℃、湿度88%。

この日は塗れません。日本ペイントは公式のよくあるご質問で「気温5℃以上、湿度85%未満の気象条件の下で塗装可能です。」と公表しています。88%は、その外側です。

2液の塗料は、混ぜたら戻せません。この製品の可使時間はメーカー公表値で23℃・6時間。使う先がなければ捨てるしかなく、混ぜた分をそのまま廃棄しました。

順番を間違えた、というだけの話です。缶を開ける前に温湿度計を見ていれば、材料は残っていました。温湿度計は毎回の写真に写していたのに、その数字を「塗る前の判断」には使えていなかった。記録を取っていることと、記録を判断に使えていることは、別だったわけです。

材料の缶と温湿度計、計量用のはかり、袋から出す前の新品ローラーを並べて撮った現場の記録写真。温湿度計は8時33分・気温25.2℃・湿度88%を表示している。
2026年9月15日 8時33分、25.2℃・湿度88%。混ぜてから気づいた。

湿度を毎回見ている職人は、正直なところ多くありません。責める話ではなく、見ていなければ気づきようがない、という構造の話です。以下は、その「見ていれば分かる数字」を、施主の側から聞き出すための記事です。

② 再開の前に、業者に聞く3つの質問

質問1「前の工程を塗り終えたのは何日ですか。使った材料の商品名も教えてください」

日付だけでは足りません。あとで説明するとおり、空けてよい日数の上限は製品ごとに違うため、商品名がないと上限が分からないからです。

  • 数字が返る回答の例:「9月◯日の午後に下塗りを終えました。材料は△△です」
  • 確かめようがない回答の例:「先週です」「いつもの下塗り材です」

質問2「今日の気温と湿度は、何度・何%ですか」

再開日そのものの条件です。メーカーは気温と湿度で施工の可否を明記しています。感覚ではなく、現場で測った数字を聞きます。①で書いたとおり、これは測っていなければ答えられず、測っていても見る順番を間違えれば意味がありません。

  • 数字が返る回答の例:「今朝8時で18℃・72%でした。写真も撮ってあります」
  • 確かめようがない回答の例:「今日はもう乾いてますから大丈夫です」

質問3「中断前の工程と、再開日の記録写真はありますか」

1と2の答えをあとから確かめられる形で残っているか、という質問です。塗ってしまえば下の層は見えません。見えなくなる前の写真だけが証拠になります。

  • 数字が返る回答の例:「工程ごとに、材料の缶と温湿度計を一緒に撮っています。お渡しできます」
  • 確かめようがない回答の例:「写真は撮っていませんが、間違いありません」

この3問は、業者を試すための質問ではありません。3つとも、記録している現場なら5分で答えられる内容です。

③ 上限は「何日」ではなく「製品ごと」に決まっている

「何日空いたらやり直し」という一律の日数は存在しません。上限は製品ごとに書かれていて、同じ製品でも気温で変わります。メーカーが公表している実例を並べます。

  • 弱溶剤2液の下塗り材(日本ペイント「ファインパーフェクトシーラー」・①で使ったもの):塗り重ね乾燥 4時間以上7日以内(5〜10℃・23℃・30℃いずれも)。可使時間は23℃で6時間
  • 水性2液反応硬化形の下塗り材(プレマテックス「無機有機ハイブリッドEPO[水性タイプ]」):上塗りが水性なら4時間以上7日以内、上塗りが弱溶剤なら16時間以上7日以内(23℃)
  • ひび割れ抑制用のシーラー(プレマテックス「クラロックシーラー」):4時間以上16時間以内(23℃)。仕様書には「必ずクラロックシーラーを塗布した当日中に下塗材を施工してください」と書かれています
  • 屋根用の上塗り(日本ペイント「ファインパーフェクトベスト」):23℃で3時間以上7日以内、5〜10℃で6時間以上7日以内、30℃では2時間以上5日以内

上限が「16時間」の材料もあれば「7日」の材料もあり、気温が30℃なら7日が5日に縮む製品もあります。つまり、雨で10日空いたという事実だけでは、上限を超えたかどうかは判定できません。判定できるのは、使った製品名・その仕様書の上限・実際の経過日数、この3つが揃ったときだけです。だから質問1で商品名まで聞きます。

ここに可使時間という別の時計も動いています。2液の材料は混ぜた時点から時間が始まり、①の製品なら23℃で6時間。混ぜてから条件を確認しても、間に合いません。確認は缶を開ける前です。

もし上限を超えていた場合、その工事はメーカーの標準施工仕様の範囲から外れます。範囲から外れたときにどうするか(そのまま上塗りしてよいのか、下塗りからやり直すのか、目荒らしなどの処置を挟むのか)を決めるのはメーカーであって、現場の判断ではありません。仕様書には「工程間の間隔時間は仕様を厳守し、降雨後は下地や主剤の乾燥時間を確認してから塗装してください」と明記されています。

ですから、上限を超えていたと分かったときの4つ目の質問は「メーカーに確認していただけますか」です。「確認したら、こう言われました」と返ってくれば、それは判断材料になります。

④ 上限の内側でも、下地が乾いていなければ塗れない

日数が上限の内側に収まっていても、それだけでは足りません。再開日そのものの条件と、下地が乾いているかどうかが別にあります。

気温と湿度

塗れる日かどうかは、気温と湿度で決まります。自分が使った材料のメーカーは、一行でこう書いています。

  • 「気温5℃以上、湿度85%未満の気象条件の下で塗装可能です。」(日本ペイント)

他社も同じ線を引いています。プレマテックスは、気温5℃以下・湿度85%RH以上・結露が出そうなとき・降雨が予想されるときのいずれかに当たれば施工を避けるように、と書いています。菊水化学工業もほぼ同じです。製品によってはもっと厳しく、湿度75%RH以上で不可のものもあります。85%という線は、どこか一社の都合ではありません。出所は記事末尾にまとめました。

雨上がりの日は、気温が戻っていても湿度が85%を超えていることがあります。①の日も気温は25.2℃で、気温だけ見れば何の問題もありませんでした。「晴れたかどうか」でも「暖かいかどうか」でもなく、湿度が何%かで決まります。

下地の含水率

下地が水を含んだままだと、上に塗った塗膜が水分に押されて膨れたり剥がれたりします。この「どのくらい乾いていれば塗ってよいか」にも公表値があります。ただし、下地の種類で数字がまったく違うので、混ぜてはいけません。

  • 「セメント質下地は、表面の含水率が10%以下(pH10以下)になるまで放置してください」(プレマテックス)

モルタルやコンクリートなど、セメント質の下地の話です。菊水化学工業も同じ10%以下・pH10以下を書いています。

窯業系サイディングは、目盛りが別になります。業界団体は、30%以下なら塗装可能、30〜50%は塗装できてもはく離・ふくれ・反り・収縮のリスクあり、50%超は勧めない、としています(窯業系サイディング材メンテナンス技術研究所)。

10%と30%は測っている対象も目盛りも違います。セメント質下地の10%という数字を、窯業系サイディングにそのまま当てはめないでください。自分の家の外壁がどちらなのかを先に確認する必要があります。

どこを測るかも、先に決めておく必要があります。運営者が次の現場から測るつもりでいるのは3か所です。①ベランダに面した外壁、②ベランダの内側(腰壁や床の立ち上がり)、③北面の1階部分。

ベランダまわりは雨がよく当たり、劣化も早い場所です。だからこそ、ちゃんと乾いているかどうかの確認が要ります。北面の1階は、単純に乾きが遅い。この3点は、雨のあとに最後まで水が残る側だという理由で選んでいます。

測る場所を毎回同じにしておくと、前の現場や前の工程と数字を並べられます。その日の勘で当てる場所を変えてしまうと、数字は残っても比べられません。

正直に書いておきます。運営者は含水計を持っていますが、次の現場から計測を始めるところで、自分で測った実測値はまだ1件もありません。①の日も、記録できたのは気温と湿度までで、含水率は残っていません。この章の数字はすべてメーカーと業界団体の公表値です。自分の現場の実測値が出たら、この記事に追記します。

⑤ 「記録がある業者」と「記録がない業者」の差

ここまでの3つの質問に、数字で答えられる業者と、答えられない業者がいます。この差を「誠実さの差」だと書くのは、正しくないと考えています。

記録を取っていない業者が嘘をついているとは限りません。長くやっている職人の「今日は塗れる」という判断は、実際よく当たります。問題は、それが当たっているかどうかを、施主の側から確かめる方法がないことです。差は誠実さではなく、あとから確かめられるかどうかにあります。

そして、記録があっても足りないことがあります。①のとおり、こちらは毎回の写真に温湿度計を写していながら、材料を1回分だめにしました。記録は残っていたのに、混ぜる前にその数字を見ていなかったからです。記録は、残すためではなく、その場の判断に使うためにあります。

ここには費用の話も混じります。雨で10日止まっても、その10日分の人工が増えるわけではありません。作業した分だけ発生するので、待っている日は消費されないからです。工期が延びることと、費用が増えることは、本来べつの話です。ただし、上限を超えて下塗りからやり直すことになれば、その再施工の分は実際に増えます。「上限を超えたかどうか」は、品質の話であると同時に、お金の話でもあります。

だからこそ、再開の前に聞いておく価値があります。塗ってしまえば、下の層は見えなくなります。

まとめ:再開の前に聞く3問

  • 前の工程を塗り終えたのは何日ですか。使った材料の商品名も教えてください
  • 今日の気温と湿度は、何度・何%ですか
  • 中断前の工程と、再開日の記録写真はありますか

3つとも、記録している現場なら5分で答えられます。答えが数字で返ってきたら、そのまま進めて構いません。返ってこなかったときは、④の条件(気温5℃以上・湿度85%未満・下地が乾いているか)を、その場で一緒に確認してもらうところから始めてください。

そのまま送れる文面

聞きづらいときは、以下をそのままコピーして送ってください。3つとも、責める言い方にはなっていません。工事を止めるための質問ではなく、進めてよいことを確認するための質問です。

お世話になっております。工事の再開について、3点だけ教えてください。
1. 下塗りから何日空いていますか。使った材料の商品名もあわせて教えていただけますか。
2. 今日の気温と湿度はいくつでしたか。
3. 温湿度計と缶が写った写真はありますか。
お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします。

返ってきた数字は、③の上限表と④の条件に当てはめれば、施主の側でそのまま読めます。日数が上限の内側で、湿度が85%未満なら、再開して構いません。どちらかが外れていたときだけ、4つ目の「メーカーに確認していただけますか」に進みます。

出典

  • 日本ペイント株式会社「冬場の寒いときや、夏場の暑いときに外壁や屋根を塗装しても問題ないですか?」よくあるご質問 https://www.nipponpaint.co.jp/support/faq/8/ /2026年9月18日取得
  • 日本ペイント株式会社「ファインパーフェクトシーラー透明・ホワイト」製品ページ https://www.nipponpaint.co.jp/products/building/177/ /2026年9月18日取得
  • 日本ペイント株式会社「ファインパーフェクトベスト」製品ページ https://www.nipponpaint.co.jp/products/building/82/ /2026年9月18日取得
  • プレマテックス株式会社「下塗り材 標準施工仕様」(2024年8月版 PDF)https://www.prematex.co.jp/cms/wp-content/uploads/2024/08/undercoating_spec.pdf /2026年9月18日取得
  • 菊水化学工業株式会社「【M】水系共通 施工上の注意事項」(2019年5月 PDF)https://www.kikusui-chem.co.jp/pdf/products/etc/download_m.pdf /2026年9月18日取得
  • 窯業系サイディング材メンテナンス技術研究所「外壁通気構法を知らない塗装会社増えています!!」https://www.siding.or.jp/outerwall-caution/464720.php /2026年9月18日取得

乾燥時間は目安であり、使用量・通風・湿度・素地の状態によって異なります(日本ペイント 前掲)。実際の判断は、その現場で使った製品の仕様書が唯一の基準です。①の実測値は2026年9月15日8時33分の現場記録(温湿度計の表示)によります。

この記事の著者

横井隆之

横井隆之

ヨコイ塗装 代表 / 外壁塗装コンサルタント

業界経験 25著書 3

愛知県丹羽郡扶桑町でヨコイ塗装を経営。施工歴25年・250件超の施工実績を持つ外壁塗装の専門家。著書3冊(外壁塗装の品質公式・外壁塗装の不都合な真実・外壁塗装 工程別チェックポイント21)。独自理論「塗装方程式」の提唱者。施主の立場に立った公正なアドバイスを提供し、YouTube、ココナラ、MOSHなど複数のプラットフォームでセカンドオピニオンサービスを展開中。

プロフィールを見る →

施工中の不安、AIが24時間サポート

21工程チェックリスト × リアルタイム相談

「今の工程は正しい?」「この仕上がりは大丈夫?」施工中の疑問をAI現場監督に即相談。手抜き工事を未然に防ぎます。

AI現場監督を見る

※ 営業目的の連絡は一切いたしません

プロが使う人工数比較シートを無料プレゼント

見積書の「人工数」を比較して、手抜き業者を見抜く

※ 個人情報は厳重に管理し、第三者に提供することはありません