ホーム/コラム/ハウスメーカーの外壁に塗れない塗料がある|「難付着サイディング」の見分け方と正しい下塗り材

ハウスメーカーの外壁に塗れない塗料がある|「難付着サイディング」の見分け方と正しい下塗り材

この記事の監修者

ヨコイ塗装 代表 横井隆之

愛知県で50年続く塗装店の2代目。200件以上の施工実績を持ち、著書に『外壁塗装の不都合な真実』『塗装方程式』『外壁塗装 工程別チェックポイント21』(Kindle)がある。見積もり診断サービス「ペンキのミカタ」を運営し、全国の施主に中立的なアドバイスを提供している。

はじめに

塗装してから1年で、壁紙を剥がすように塗膜がベロリとめくれる。

これは作り話ではありません。ハウスメーカーの住宅で実際に多発している施工事故です。

原因は「難付着サイディング」。2000年代以降に建てられたハウスメーカーの住宅に広く使われている外壁材で、光触媒・無機コート・フッ素コートといった特殊な表面処理が施されています。この処理が「汚れを寄せ付けない」のと同時に、「塗料の密着も拒絶する」という皮肉な問題を引き起こしています。

怖いのは、施工直後は美しく仕上がること。業者も施主も「うまくいった」と思い込み、数ヶ月〜1年後に突然、塗膜がシート状に剥がれ始める。リカバリーには全面剥離してやり直すしかなく、最初の工事費以上の費用がかかります。

50年間塗装業界にいて、この問題で泣く施主を何人も見てきました。しかし、正しい知識さえあれば100%防げる事故です。この記事では「あなたの家が難付着かどうか」の見分け方から、「どの下塗り材を使えば安全か」まで、完全に解説します。

→ ハウスメーカー全体の保証構造と費用の仕組みは、ハウスメーカー別メンテナンスガイド|保証の真実と100万円節約する方法で解説しています。

「難付着サイディング」とは何か

名前の由来 — 高機能が仇になる

「難付着サイディング」は特定の商品名ではありません。窯業系サイディングの表面に特殊コーティングが施され、再塗装時に塗料が密着しにくくなった外壁材の総称です。

新築時は「30年メンテナンスフリー」「セルフクリーニング機能」として販売された高機能外壁材。ところが、汚れを弾く機能が、リフォーム時の塗料も弾いてしまうのです。

3つのタイプと危険度

難付着サイディングは、表面処理の違いで3つに分類されます。

タイプ主な技術仕組み危険度
光触媒系酸化チタン(TiO₂)紫外線で有機物を分解+超親水性★★★ 最も危険。塗膜の樹脂そのものを分解する
無機系シロキサン結合(Si-O-Si)ガラスのように硬く、溶剤で溶けない★★☆ 従来の「溶かして密着」が通用しない
フッ素系C-F結合(炭素-フッ素)テフロン加工と同原理。水も油も弾く★★☆ 表面張力が極端に低く、塗料が濡れ広がらない

最も怖いのは光触媒系です。 光触媒の酸化分解力が、新しく塗った塗膜の樹脂成分を界面から攻撃します。施工直後は密着しているように見えても、時間をかけて結合が破壊され、ある日突然シート状に剥離します。

あなたの家は難付着か?— 5つの診断ステップ

ステップ1:築年数チェック(2001年以降は「疑え」)

2000年の品確法施行以降、ハウスメーカー各社は「高耐候仕様」を標準化しました。2001年以降に大手ハウスメーカーで建てた住宅は、原則として難付着サイディングと疑ってかかるべきです。

建築年判定
2000年以前一般サイディングの可能性が高い(ただし例外あり)
2001年以降難付着サイディングの可能性が高い

ステップ2:チョーキングテスト(指で擦る)

最も簡単な一次スクリーニングです。外壁を指で擦ってみてください。

結果意味
白い粉がつく一般塗膜。紫外線で樹脂が分解されている。通常の塗装が可能
粉がつかない樹脂が分解されていない=高耐候コーティング。難付着の可能性大

「築15年なのにチョーキングしない」は、きれいなのではなく危険信号です。 「きれいだから塗りやすい」のではなく、「きれいだから塗料が乗らない」。この逆説を理解することが最重要ポイントです。

ステップ3:ラッカーシンナーテスト(確定診断)

現場で実施可能な最も信頼性の高い試験です。

手順:ラッカーシンナーをウエスにたっぷり含ませ、目立たない箇所を強く数回擦る。

結果意味対応
布に色がつく・表面がベタつく従来の有機塗膜(アクリル・ウレタン・シリコン)一般の下塗り材(カチオンシーラー等)が使用可能
布が汚れない・表面がツルツルのまま無機・フッ素・光触媒コート難付着確定。専用プライマー必須

このテストが「ゴールドスタンダード」です。 溶剤に溶けないということは、従来の「塗膜を少し溶かして密着させる」という下塗り材のメカニズムが機能しないことを意味します。

ステップ4:水かけテスト(光触媒の確認)

霧吹きで水をかけて観察します。

結果意味
水玉になってはじくフッ素系の撥水処理
水がべったり広がる(膜状)光触媒の超親水性が効いている

水がべったり広がる場合、光触媒コーティングが生きている可能性が高く、最も危険度の高いタイプです。

ステップ5:仕様書の確認(最終裏付け)

以下のキーワードが建築時の仕様書・図面にあれば確定です。

「光触媒」「ハイドロテクト」「無機塗装」「セラミックコート」「フッ素」「親水性」「高耐候」「KIRARI+」「XEコート」「ハイセラコート」

仕様書がない場合、施主に「新築時に『メンテナンスフリーです』『30年は塗装不要です』と言われませんでしたか?」と聞いてください。このセールストークは難付着サイディングの典型的な販売トークです。

ハウスメーカー別の採用状況

「うちの家は大丈夫?」チェック表

ハウスメーカー製品名タイプ採用時期注意点
一条工務店ハイドロテクトタイル光触媒2000年代初頭〜「メンテナンスフリー」と説明されがち。目地は要補修
パナソニックホームズキラテック / ハイセラコート光触媒 / 無機2000年代中盤〜ハイセラコートは見た目が一般サイディングと同じ。誤診最多
積水ハウスSHウォール等フッ素 / 無機2000年代〜ダイン・ベルバーンは別対応。SHウォールが最注意
ダイワハウスKIRARI+ / XEコート無機 / 光触媒2008年〜2008年以降のxevoは標準で難付着と断定
ミサワホームクラスティング無機 / 親水性2000年代〜OEM品のため外見で判別困難。チョーキングしないのが手がかり
セキスイハイム磁器タイルタイル自体は塗装不要。ガスケット劣化が問題
サンヨーホームズフッ素コートサイディングフッ素2000年代〜築20年超でも色褪せなし。典型的な難付着

→ 各メーカー固有の注意点は個別記事で詳しく解説しています:積水ハウス

ヘーベルハウス

セキスイハイム

ダイワハウス

正しい下塗り材(プライマー) — 3社の比較と選び方

なぜ専用プライマーが必要なのか

従来の下塗り材(シーラー)は、「旧塗膜を少し溶かして染み込む→固まってアンカー効果で密着」という仕組みです。しかし難付着サイディングの表面は、ガラスのように硬く緻密で溶剤を受け付けない。従来の仕組みが根本的に機能しません。

専用プライマーは、「溶かして密着」ではなく「化学結合で密着」するまったく異なるメカニズムを採用しています。無機成分(シランカップリング剤)が難付着表面と化学的に結合し、有機成分が上塗り塗料とつながる。この「両利き」の橋渡し機能が、剥離を防ぐ唯一の解です。

3社の代表製品比較

項目日本ペイントエスケー化研関西ペイント
製品名ファインパーフェクトシーラープレミアムSSシーラープライマーアレスダイナミックシーラーマイルド
タイプ弱溶剤2液エポキシ弱溶剤2液エポキシ弱溶剤2液エポキシ
光触媒対応◎(カタログ明記)
フッ素対応
無機対応
強み適用下地の範囲が最も広い。金属・樹脂にも対応。迷ったらこれ水性ラインナップもあり。コスト競争力湿潤面への許容度が高い。技術資料が充実

3社とも「シラン変性エポキシ」をベースにしており、性能差は紙一重です。 製品選びで最も重要なルールは以下の2つです。

選定の鉄則

鉄則①:上塗りと同じメーカーで揃える

上塗りが日本ペイント「パーフェクトトップ」なら、下塗りは「ファインパーフェクトシーラー」。メーカーは自社製品同士の組み合わせでしか性能試験を行っていません。異メーカーの組み合わせで不具合が起きた場合、製品保証の対象外になります。

鉄則②:必ず「弱溶剤・2液型」を選ぶ

水性1液タイプでも「難付着対応」を謳う製品はありますが、溶解力と架橋密度の観点から、リスク回避のためには必ず「弱溶剤(油性)」かつ「2液型(主剤+硬化剤)」を選んでください。2液型は現場で化学反応して硬化するため、1液型より格段に強靭な塗膜を形成します。

施工事故の実例 — なぜプロでも失敗するのか

事例①:パナホーム築13年・光触媒サイディング

経緯:外壁の汚れを気にした施主が地元の塗装店に依頼。業者は「パナホーム=光触媒」の認識がなく、チョーキングしていなかったので「状態が良い」と判断。一般的な水性カチオンシーラー+水性シリコン塗料で施工。

結果:

・施工直後:美しい仕上がり。施主も満足

・6ヶ月後:北面に水ぶくれのような膨れが発生

・1年後:南面の塗膜が壁紙のようにシート状にベロリと剥離

原因:水性カチオンシーラーは光触媒層に全く浸透せず、塗膜は化学結合していなかった。外壁の上に「乗っかっているだけ」の状態で、熱収縮や風圧で界面が破断。

事例②:クリヤー塗装の白化と剥離

経緯:意匠性の高い多色刷りサイディングの風合いを残すため、施主がクリヤー塗装を希望。業者は難付着対応でない通常のクリヤーを塗布。

結果:数ヶ月で塗膜と基材の間に微細な隙間が発生→水分が浸入→光が乱反射して全体が白く濁る(白化)→さらにパリパリと剥離。

プロでも失敗する3つの理由

①「きれい=塗りやすい」バイアス:従来の常識では「チョーキングしていない=劣化していない=施工が楽」。難付着ではこの常識が完全に逆転します。

②知識の断絶:ハウスメーカーの下請け経験がない「町の塗装屋さん」は、光触媒や無機コートの情報を持っていない。営業がリスクを認識していても、現場職人に「専用シーラーを使え」と指示が伝わらなければ、職人は使い慣れた安価な汎用シーラーを使います。

③コスト圧力:難付着対応の2液型プライマーは、汎用の水性シーラーの2〜3倍の材料費。相見積もりで安値を出そうとして、「たぶん大丈夫だろう」と安価な仕様を選んでしまう。

「人工」で考える — なぜ下塗りをケチると全額失うのか

私の著書『塗装方程式』の品質公式——品質=モチベーション×技術×時間

難付着サイディングの施工では、「時間」の配分が通常とまったく違います。

一般サイディングなら、下塗り→中塗り→上塗りの3工程に均等に時間をかければよい。しかし難付着サイディングでは、下塗り(プライマー)工程に全体の40%以上の時間を投入すべきです。

なぜか。2液型プライマーは混合→塗布→化学反応による硬化に十分な時間が必要で、「乾いたから次」では不十分。メーカー推奨の乾燥時間(24時間以上)を守り、密着テストで確認してから次の工程に進む。この「待ち」の時間こそが品質を決めます。

人工(にんく)で見れば、下塗りのプライマー代は塗装費全体の10〜15%にすぎません。しかし、ここをケチって汎用品を使えば、残り85〜90%の工事費が丸ごとパーになる。下塗り材は「保険」ではなく「基礎」です。

→ 人工理論の詳細は人工(にんく)という視点で解説しています。

業者を見抜く「踏み絵」質問3選

質問①:「うちの家は難付着サイディングの可能性がありますが、どう確認しますか?」

回答判定
「ラッカーシンナーで溶解テストをします。仕様書も確認させてください。確定できない場合はパッチテストを行います」合格 — 体系的な診断プロトコルを持っている
「見ればわかります」「経験でわかります」不合格 — 目視と経験則は難付着で最も危険

質問②:「下塗り材は何を使いますか?商品名で教えてください」

回答判定
「ファインパーフェクトシーラー(日本ペイント)」等の具体的な製品名合格 — 難付着を理解し、対応製品を把握している
「強力なシーラーを使います」「密着の良いやつを使います」不合格 — 具体的な製品名が出ないのは知識不足

質問③:「2液型ですか?水性ですか?」

回答判定
「弱溶剤の2液型です。主剤と硬化剤を現場で混合します」合格 — 最もリスクの低い選択
「水性の1液で十分です」不合格 — 重度の難付着に対して水性1液は信頼性が不足

3問すべてに合格回答ができる業者を選んでください。 特に質問②で具体的な製品名が出るかどうかが最大の判断基準です。

→ 業者選定の総合的な基準は良い業者の見分け方ガイドで解説しています。

難付着でも安全に塗れる推奨仕様

塗りつぶし(エナメル仕上げ)の場合

工程推奨製品(日本ペイントの場合)ポイント
下塗りファインパーフェクトシーラー弱溶剤2液型。乾燥24時間以上
中塗り・上塗りパーフェクトトップ(ラジカル制御)コスパ重視。期待耐用年数12〜15年
中塗り・上塗りアプラウドシェラスターⅡ(無機)耐久性重視。期待耐用年数20年以上
シーリングオートンイクシード期待耐用年数20〜30年

クリヤー塗装(透明保護)の場合

難付着サイディングへのクリヤー塗装は剥離リスクが極めて高いため、以下の条件をすべて満たす場合に限り検討してください。

条件内容
① 劣化が軽微チョーキング・色褪せ・ツヤ引けがほぼない
② 専用クリヤー使用難付着対応の2液型クリヤー(各メーカーの専用品)
③ パッチテスト実施施工前に外壁の一部で試験塗布→乾燥→密着テスト

条件を満たさない場合は、リスクを避けて塗りつぶし仕上げを選択する勇気を持つことが重要です。

まとめ — 難付着サイディング5つの鉄則

#鉄則理由
12001年以降のHM住宅は「難付着」と疑え品確法以降、高耐候仕様が標準化
2チョーキングしない=危険信号「きれい=塗りやすい」は逆。きれい=塗料が乗らない
3ラッカーシンナーテストで確定診断溶けなければ難付着。目視や経験則を信じるな
4必ず弱溶剤2液型プライマーを使用水性1液は重度の難付着に対して不十分
5上塗りと同じメーカーで揃える異メーカー組み合わせは製品保証対象外

難付着サイディングの施工事故は、知識があれば100%防げます。逆に言えば、知識がない業者に任せれば100%失敗します。

「うちの家は難付着?」「この見積もりの下塗り材は適切?」と不安なら、見積もり診断サービスをご利用ください。見積書に記載された下塗り材があなたの外壁に適合しているか、50年の経験を持つ職人の目でチェックいたします。

関連リンク

- 人工(にんく)理論 完全講義|原価から適正品質を見極める →

ハウスメーカー別メンテナンスガイド(親記事)→

ハウスメーカーの外壁塗装はなぜ高い?→

築10年の定期点検で「塗装が必要」と言われたら →

積水ハウスの外壁塗装ガイド →

ヘーベルハウスの外壁塗装ガイド →

セキスイハイムの外壁メンテナンスガイド →

ダイワハウスの外壁塗装ガイド →

施工管理アプリの詳細はこちら →

見積もり診断サービス(セカンドオピニオン)はこちら →

Kindle本『外壁塗装 工程別チェックポイント21』はこちら →

この記事の解説動画

ハウスメーカーの外壁に塗れない塗料がある|難付着サイディング

- ハウスメーカーの外壁をDIYで補修してはいけない理由|タッチアップ・コーキングの落とし穴 →

見積書、このままで大丈夫?

50年の現場経験を持つ診断アドバイザーが、あなたの見積書をチェックします。 適正価格か、工程に問題はないか、第三者の目で確認してみませんか?

無料で相談する

※ 営業目的の連絡は一切いたしません

プロが使う人工数比較シートを無料プレゼント

見積書の「人工数」を比較して、手抜き業者を見抜く

※ 個人情報は厳重に管理し、第三者に提供することはありません

この記事に関連するステップ

住まいを知ろう

詳しく見る →