この記事の監修者
横井隆之|塗装業50年・施工500件超・著書3冊
1975年創業の塗装店三代目。一級建築塗装技能士。「品質 = やる気 × 技術 × 時間」の品質公式を提唱。
はじめに
「見積書に人工(にんく)が書いてない」——これは外壁塗装の見積もりでよくある悩みです。人工数は工事の品質を判断する最も重要な指標ですが、残念ながら多くの業者は見積書に人工数を記載しません。
この記事は「人工(にんく)完全ガイド」の実践編です。人工理論の基礎はピラー記事をご覧ください。
しかし、見積書に人工数が書かれていなくても、工期と職人数から逆算すれば推測できます。この記事では、その具体的な方法を解説します。
なぜ多くの見積書に「人工」が書かれていないのか
見積書に人工数を記載しない理由は、業者側の事情にあります。
- 比較されたくない:人工数が書いてあると他社との比較が容易になり、「この業者は人工が少ない=手抜きでは?」と指摘されるリスクがある
- 一式見積もりの慣習:「外壁塗装一式 ○○万円」と書けば、工程の内訳も人工数も隠せる
- そもそも管理していない:工事を下請けに丸投げしている業者は、実際の人工数を把握していない
逆に言えば、人工数を聞いて明確に答えてくれる業者は、自社施工で品質管理をしている可能性が高いです。「御社の見積もりだと何人工ですか?」と質問するだけで、業者の質を見分けるフィルターになります。
工期と職人数から人工数を逆算する方法
逆算の手順
- 見積書から「工期」を確認する:「工期:約10〜14日」などの記載を探す
- 業者に「何人で来るか」を質問する:「職人は毎日何人来ますか?」と聞く
- 人工数を計算する:工期 × 職人数 = 推定人工数
具体例
- 見積書に「工期:12日間」と記載、業者に聞くと「職人2人で来ます」→ 12日 × 2人 = 24人工
- 「工期:8日間」で「3人で来ます」→ 8日 × 3人 = 24人工(同じ人工数でも工期が短い)
- 「工期:7日間」で「2人」→ 7日 × 2人 = 14人工(30坪なら明らかに少ない)
注意点
- 雨天による延期は工期に含めない(実働日数で計算)
- 足場の組立・解体は別の職人が来ることが多い(塗装人工とは分けて考える)
- 職人数が日によって変わる場合は「平均何人ですか?」と確認する
工程別の適正人工数一覧表(30坪基準)
以下は30坪2階建て住宅の外壁塗装における、工程別の適正人工数です。
【足場関連】
- 足場組立:2〜3人工
- 足場解体:1〜2人工
【下地処理】
- 高圧洗浄:1人工
- 養生(マスキング):1〜2人工
- ケレン(下地処理):2〜3人工
- シーリング打ち替え:5〜7人工(ALC外壁はさらに多い)
【塗装工程】
- 下塗り:2〜3人工(吸い込みが強い外壁は+1人工)
- 中塗り:2〜3人工
- 上塗り:2〜3人工
- 付帯部塗装(雨樋・破風・軒天等):3〜5人工
合計:22〜34人工(30坪の標準的な範囲)
「1日で終わる」と言われた工程──本当に1人工で足りるか?
工期を短縮するために、本来2日以上かかる工程を「1日で終わります」と説明する業者がいます。以下の工程で「1日」と言われたら要注意です。
高圧洗浄(1日はギリギリ)
30坪住宅の高圧洗浄は、丁寧にやれば丸1日かかります。屋根も洗浄する場合は1.5日が理想です。「午前中で終わります」と言われたら、洗浄圧が強すぎるか、範囲を省略している可能性があります。
シーリング打ち替え(1日では絶対に終わらない)
30坪住宅のシーリング全面打ち替えは、最低でも5人工(2.5日×2人)かかります。「シーリングは1日で終わります」と言われたら、打ち替えではなく増し打ち(既存の上に塗るだけ)で済ませようとしている可能性が高いです。
3回塗り(下塗り+中塗り+上塗り)
外壁の3回塗りには最低6人工が必要です。各工程間の乾燥時間も必要なため、3日間(下塗り1日→翌日中塗り→翌日上塗り)が最低ラインです。「塗装は2日で完了」と言われたら、乾燥時間が確保されていない可能性があります。
人工シートで自分の見積書を検算する手順
以下の4ステップで、お手元の見積書の人工数を検算できます。
- 見積書から工期と職人数を確認する(記載がなければ業者に「工期は何日、何人で来るか」を質問)
- 人工数を逆算する:工期 × 職人数 = 推定人工数
- 上記の「工程別適正人工数一覧」と比較する
- 不足している工程を特定する:合計が22人工未満なら、どの工程が削られているかを確認
検算の結果、人工数が明らかに不足している場合は、業者に「この工期で品質は確保できるのか」を質問してください。明確に答えられない業者は、品質への意識が低い可能性があります。
自分で計算しても不安な方は、「AI見積もり診断(無料)」で、プロの目から見積書をチェックできます。
まとめ──人工数がわかると見積書の「本当の価値」が見える
見積書の金額だけで業者を比較するのは、商品のパッケージだけ見て中身を判断するようなものです。人工数がわかれば、同じ金額でも「この業者は丁寧に時間をかけてくれる」「この業者は工期を削って利益を確保している」という違いが見えてきます。
- 金額だけで比較しない → 人工数で品質を比較する
- 見積書に人工が書いてなくても、工期×職人数で逆算できる
- 30坪住宅の適正人工数は22〜34人工
- 22人工を下回る見積もりは、工程省略の可能性を疑う
拙著『外壁塗装の品質公式』では、人工数を使った見積書の読み方を第3章で詳しく解説しています。品質 = やる気 × 技術 × 時間——この公式の「時間」を数値化したものが人工数です。
人工理論の基礎から学びたい方は「人工(にんく)完全ガイド」をご覧ください。
見積もりに不安がある方は「セカンドオピニオン完全ガイド」で第三者の診断をご検討ください。
よくある質問
Q. 見積書に人工数が書いてないのは普通ですか?
A. 残念ながら普通です。人工数を見せると他社との比較が容易になるため、あえて記載しない業者が多いのが実態です。ただし、人工数を聞いて答えてくれる業者は透明性が高く、信頼に値します。
Q. 人工数が少ないと必ず手抜きですか?
A. 必ずしもそうではありません。熟練職人は効率が良いため少ない人工数で高品質な施工ができる場合もあります。ただし、30坪で合計20人工を下回る場合は、何かの工程が省略されている可能性が高いため、工程ごとの内訳を確認してください。
Q. 工期が短い見積もりは危険ですか?
A. 工期が短い=人工が少ない可能性があります。30坪住宅の外壁塗装で工期7日以下の見積もりは要注意です。特に乾燥時間を確保できない短工期は、塗膜の耐久性に直結します。
Q. 人工単価の相場はいくらですか?
A. 一般的な塗装職人の人工単価は2万〜3万円/日が相場です。ただし、これは業者の内部コストであり、施主への見積書に直接記載されることは少ないです。工事総額÷推定人工数で概算の人工単価を計算できます。
Q. 人工シートは無料で使えますか?
A. はい、ペンキのミカタの人工シートは無料でダウンロードいただけます。お手元の見積書の工期・職人数を入力すると、工程別の人工数を自動計算し、適正範囲と比較できます。
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