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「塗らない」という選択で得する家・損する家|30年で190万円差がつく戦略的先送りの全条件

外壁塗装を「しない」方が得するケースがある。5つの先送り条件+3つのセルフ診断法+30年コスト比較で、あなたの家は「塗るべきか」を科学的に判定します。

著者: 横井隆之

「外壁塗装は10年ごとに必要」——この言葉を疑ったことはありますか?

塗装業者、ポータルサイト、ハウスメーカー。あなたに「塗りましょう」と言う人は大勢います。でも「まだ塗らなくていいですよ」と言う人は、この業界にはほとんどいません。

なぜか? 理由は単純です。「塗らない」と言ったら彼らの売上はゼロだからです。

しかし、本当に今塗る必要がない家は確実に存在します。条件が揃えば、30年間で190万円のコスト差を生む「戦略的先送り」が可能です。

この記事では、先送りが正解になる5つの条件、自分で防水性を確認する3つのセルフ診断法、そして先送りしすぎた場合のデッドラインまで、業者が絶対に教えない「塗らない」の科学的根拠をすべてお渡しします。

この記事は「[外壁劣化診断 完全ガイド](/mitsumori/column/gaiheki-rekka-shindan/)」のクラスター記事②です。

「塗らない」が正解になる5つの条件

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条件①:ガルバリウム鋼板の外壁で築15年以内

ガルバリウム鋼板は、アルミニウム55%+亜鉛43.4%+シリコン1.6%の合金メッキ。2つの保護メカニズムを持ちます。

  • 犠牲防食作用:亜鉛が先に腐食して鉄を守る
  • 不動態皮膜作用:アルミニウムが強固な酸化被膜を形成

大手建材メーカーのデータでは、金属系サイディングの塗り替え推奨時期は約20年。塩害のない内陸地域・直射日光が過度に当たらない立地なら、10年での塗装はオーバーメンテナンスです。

切断面や傷からの「端面腐食」や「もらい錆」は部分的なタッチアップ(1〜3万円)で対応可能。全面塗装を急ぐ根拠にはなりません。

条件②:前回の塗装がフッ素・無機で施工後12年以内

塗料グレード期待耐用年数施工後12年時点
フッ素15〜20年まだ余裕あり
無機20〜25年まだ大幅に余裕あり

フッ素塗料は紫外線によるラジカル反応を抑制する技術が投入されており、施工10年経過時点でも光沢保持率・防水性能ともに高い水準を維持。無機塗料はガラスや石などの無機物が主成分で、有機樹脂の劣化に依存しません。

これらの塗料を使っている家に「10年経ったから塗りましょう」と言うのは、塗料の化学的性能を無視した営業トークです。

条件③:チョーキングが初期段階で、クラックなし

チョーキング(白い粉)は確かに防水低下のサインですが、即座に雨漏りする「故障」ではありません。

初期段階(指に薄く粉がつく程度)で、かつ外壁材にクラックも反りもない場合、あと3〜5年の先送りは十分可能です。

なぜなら、外壁の防水は塗膜だけが担っているわけではなく、その下の防水シート(二次防水)が最終的な雨水の侵入を防いでいるから。塗膜の粉化が進んでいても、基材自体が著しく吸水・脆弱化していない限り、構造的ダメージが生じるまでには猶予があります。

チョーキングの5段階判定方法 →

条件④:10年以内に建て替え・売却予定がある

100〜150万円の全面塗装は、建て替えや更地渡しの売却予定があるなら完全に赤字の投資です。

このケースでは、構造材を腐らせないための「延命処置」に特化すべき。雨漏りの原因になりやすい窓周りのコーキング破断、屋根の棟板金の浮きなど「急所」だけを数万円〜十数万円の部分補修で対応すれば、解体予定時期まで建物を持たせることが可能です。

条件⑤:コーキング打ち替えだけで防水を維持できる

サイディング外壁で最も早く劣化するのは、塗膜ではなくコーキング(シーリング)です。

コーキングの劣化と外壁材の劣化は切り離して考えることができます。 コーキングのみの打ち替え費用は15〜30万円。これで最も浸水リスクの高い「隙間」を埋め、全面塗装を3〜5年先送りできます。

コーキング劣化のすべて →

「塗らない」判定チャート

条件🟢 先送りOK🟡 部分補修推奨🔴 全面塗装推奨
外壁材ガルバリウム(築15年以内)、タイル窯業系(コーキング劣化のみ)モルタル(ひび割れ多)、木質系
前回の塗料フッ素・無機(施工後12年以内)シリコン(施工後10年経過)アクリル・ウレタン(施工後7年経過)
チョーキング指に薄く付着、光沢あり手のひらが真っ白粉が雨で流れ落ちている
クラック0.3mm未満のみ0.3〜1.0mmが数カ所1.0mm以上・爆裂あり
コーキング弾力あり、剥離なし表面に亀裂、一部剥離完全破断、バックアップ材露出
ライフプラン10年以内に建て替え・売却15年以上居住予定20年以上・資産価値重視

30年で190万円の差:損益分岐シミュレーション

10年サイクル vs 戦略的先送り

パターンA:10年ごとにシリコン塗装(標準サイクル)

  • 10年目:120万円
  • 20年目:120万円
  • 30年目:120万円
  • 30年総額:360万円

パターンB:戦略的先送り(高耐久・20年サイクル)

  • 10年目:20万円(コーキング部分補修+点検)
  • 20年目:150万円(無機塗料で全面塗装)
  • 30年目:0円(経過観察)
  • 30年総額:170万円

差額:190万円。

コーキング部分補修25万円で全面塗装120万円を5年先送りした場合、節約額に加えて120万円を5年間運用(年利3%)した複利効果は約19万円。25万円の部分投資のROIは投資額の数倍に達します。

先送りのデッドライン

ただし、先送りが合理的なのは「基材の健全性」が保たれている範囲に限られます。

シナリオ施工費追加修繕費判定
築10年で実施100〜120万0円基準
築15年で実施(推奨先送り)110〜130万0〜10万最もコスパが高い
築20年まで放置150〜200万100〜300万❌ 損失

デッドライン: 標準的なサイディング住宅で築15〜18年。これを超えると、サイディングの反り・割れによる張替え(200〜400万円)や、構造材の腐食修繕(300〜500万円)のリスクが急上昇します。

3つのセルフ診断法:業者に頼らず判断する

①霧吹きテスト(防水性の可視化)

準備: 家庭用の霧吹きに水を入れる

手順: 南面と北面の2カ所以上で、壁から30cmの距離で3回強めに吹きかける

結果判定
水が玉状に転がり落ちる。色の変化なし🟢 塗装不要(健全)
水が弾かれず薄く広がる。色がわずかに濃くなるがすぐ乾く🟡 経過観察
水をかけた瞬間に色が変わり、壁が吸い込む🔴 塗装推奨

②指触テスト(チョーキングの等級判定)

JIS K 5600-8-6に準拠した簡略判定法。乾いた指で外壁を軽く撫でてください。

レベル状態判定
Lv1指に何もつかない🟢 まったく問題なし
Lv2指先にわずかに粉🟢 まだ余裕あり
Lv3指がはっきり白くなる。撫でた跡が見える🟡 防水低下。ここから2〜3年の猶予
Lv4軽く触るだけで指が真っ白。雨の日に白い筋🔴 塗装推奨

③コーキング弾力テスト

目地のコーキング部分を指の腹で押し込む。

結果判定
ゴムのような弾力。押すと戻る🟢 合格
弾力あるが、表面に無数の亀裂🟡 注意。1〜2年以内に打ち替え検討
カチカチに硬化。押しても沈まない。パキッと割れる🔴 不合格。打ち替えが必要

セルフ診断の限界

これらのテストは地上から届く範囲での判断です。屋根付近の破風板や2階の窓サッシ下など高所の劣化は先行することが多い。

セルフ点検で「まだ大丈夫」と判断しても、3年に一度はドローンや高所カメラを用いた第三者機関の点検を併用してください。

部分補修メニュー:全面塗装の前にできること

補修内容費用目安効果持続全面塗装の先送り特徴
コーキング打ち替え15〜45万円10〜20年5〜10年サイディングの防水の要
クラックVカット補修1.5〜3万円/箇所5〜10年3〜5年0.3mm以上の構造クラック必須
高圧洗浄のみ3〜8万円1〜3年1〜2年苔・カビ除去で塗膜寿命を延長
タッチアップ塗装1〜3万円2〜3年1〜2年釘頭の錆・飛来物の剥がれ
板金カバー工法(付帯部)10〜30万円20〜30年10〜15年破風板等をガルバで覆う恒久対策

コーキング打ち替えのコスパ: 全面塗装120万円を5年先送りするための25万円の投資。ROIは投資額の数倍。

高耐久シーリング: オートンイクシード等の30年耐久製品を使えば、次の全面塗装まで打ち替え不要。初期費用は高いが、ライフサイクルコストでは最安です。

なぜ業者は「まだ早い」と言えないのか:業界構造分析

塗装業者(フロー型ビジネス)

工事完工で初めて売上が立つモデル。広告費で獲得した見込み客に「まだ早い」と回答すれば、数万円の顧客獲得コストが無駄に。本来15年目でも問題ない現場でも「今すぐ塗らないと雨漏りする」と言わざるを得ない力学が働きます。

ポータルサイト(紹介手数料モデル)

  • 成約手数料:工事金額の10〜20%。100万円の工事なら10〜20万円がサイト運営者に
  • 紹介料:見積もり依頼の情報を渡すだけで1件1.5万円程度

「塗装をしない」という結論は収益ゼロ。中立を装いつつも契約に至るよう誘導するインセンティブがあります。

訪問販売業者(完全歩合制)

契約が個人の給与に直結。「まだ早い」は絶対に言えません。

ハウスメーカー(囲い込みモデル)

有償メンテナンスを条件に保証延長。他社で施工すると保証打ち切りを示唆。実際にはHM経由の工事は市場相場より30〜50%高い

プレイヤー収益モデル「塗るな」と言えるか構造的理由
地元塗装業者施工利益(フロー型)極めて言いにくい稼働率維持と広告費回収
ポータルサイト成約手数料10-20%言わない契約成立が唯一の収益源
訪問販売完全歩合制絶対に言わない契約=個人の給与
ハウスメーカー仲介マージン+囲い込み言わないグループ利益+保証ビジネス
第三者インスペクター診断料(定額)言える工事の有無で報酬不変

唯一「塗らなくていい」と言えるのは、工事の有無で報酬が変わらない第三者だけです。

人工理論ガイド →

海外ではどうなっている?

オーストラリア:洗浄文化

塗装工にライセンス(登録制度)が必要。内陸部では10〜15年が一般的な再塗装周期。特徴的なのは毎年1回の洗浄で塗膜寿命を延ばす管理手法。日本の「塗る or 放置」の二択よりはるかに合理的です。

ニュージーランド:直貼りの悲劇

1990〜2000年代に、直貼り工法+メンテナンス不足で数万戸が腐朽する「Leaky Homes Crisis」が発生。1戸あたり1,000万円以上の修繕費。日本の1990〜2000年代前半の直貼り住宅にとって、他人事ではない教訓です。

北米:メンテナンス履歴が資産価値

中古住宅売買で「ホームインスペクション」が不可欠。外壁の状態は直接的に住宅ローン審査・物件価格に影響。「管理の記録」そのものが資産価値を支える文化です。

2026年の「賢い先送り」:補助金との同期

外壁塗装の助成金のホントの話

2026年、国は住宅の省エネ化に多額の補助金を投じています。塗装単体ではなく、窓の断熱改修・外張り断熱とセットで実施すれば、数十万円の補助金を受け取れます。

つまり、今あえて塗装を2〜3年先送りして、断熱リフォームと同時に実施することでトータルの住居費(光熱費+修繕費)を最小化する戦略が成り立つのです。

**「直貼り工法」だけは例外** 自分の家が「外壁通気工法」なら先送りリスクは低い。しかし「直貼り工法」(通気層がない)の場合、内部結露と木材腐食のリスクが飛躍的に高まります。1990〜2000年代前半の家は要注意。先送りする場合でも、コーキングの健全性を最優先に確保してください。

あなたの家のアクションプランを決める

STEP 1:5条件チェック

上の「塗らない判定チャート」で自分の家がどこに位置するか確認。

STEP 2:3つのセルフ診断

霧吹きテスト・指触テスト・コーキング弾力テストを実施。

STEP 3:判定

  • 全項目🟢 → 先送りOK。 年1回のセルフ診断+3年に1回の第三者点検で経過観察
  • 🟡が1つ以上 → 部分補修検討。 コーキング打ち替えやクラック補修で延命
  • 🔴が1つ以上 → 全面塗装へ見積書チェック完全ガイド
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*この記事は、愛知県で50年続く塗装店「ヨコイ塗装」2代目・横井隆之が、500件以上の施工経験と著書(📕『外壁塗装の不都合な真実』📗『塗装方程式 Q=M×T×T』📘『工程別チェックポイント21』)に基づいて執筆しています。外壁塗装の先送り判断は、外壁材の種類・塗料グレード・立地条件により異なります。本記事は一般的な判断基準を提供するものであり、個別の住宅については専門家の診断を推奨します。*

この記事の著者

横井隆之

横井隆之

ヨコイ塗装 代表 / 外壁塗装コンサルタント

業界経験 50著書 3

愛知県扶桑町でヨコイ塗装を経営。塗装業界50年以上の経験と500件を超える施工実績を持つ外壁塗装の専門家。施主の立場に立った公正なアドバイスを提供し、YouTube、ココナラ、MOSHなど複数のプラットフォームでセカンドオピニオンサービスを展開中。

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