外壁塗装の見積書を見ると「鉄部塗装」という項目があります。
雨樋の金具、水切り、手摺り、シャッターボックスなど、住宅には意外と多くの鉄部があります。
実は、鉄部塗装の寿命を決めるのは仕上げの塗料ではありません。完成後には見えなくなる「ケレン」と「サビ止め」という下準備が、塗装の耐久性を左右する最も重要な工程なのです。
この記事では、鉄部塗装で手抜きされやすいポイントと、契約前に確認すべきチェックポイントを解説します。
鉄部塗装の基本4工程
プロによる鉄部塗装は、以下の4つの工程で進みます。
1. 下地処理(ケレン作業)
サビや剥がれかけた古い塗膜、汚れを工具で除去する工程です。新しい塗料を密着させるための土台作りであり、塗装品質に最も大きく影響します。
2. サビ止め塗装
下地処理で表面を清浄にした後、新たなサビの発生を防ぐ専用塗料を塗る工程です。
3. 中塗り
サビ止め塗料の上に塗り重ねる工程です。塗膜に厚みを持たせ、耐久性を高めます。
4. 上塗り
最終的な仕上げ塗装です。美観を整え、紫外線や雨風から鉄部を保護します。
完成後の「上塗り」だけ確認しても、その下のケレンやサビ止めが適切に行われたかは判断できません。
なぜケレンが重要なのか
50年以上塗装業に携わってきたベテラン職人がこう言っていました。
「いい仕上がりかどうかは、塗料のグレードではなくケレンするかしないかにかかっている」
ケレンには3つの重要な役割があります。
1. 塗料の密着性を高める
表面に微細な凹凸をつける「目荒らし」を行うことで、塗料が食いつきやすくなります(アンカー効果)。
2. 塗装の耐久性を向上させる
サビや浮いた旧塗膜を取り除くことで、塗料が本来持つ性能を最大限に引き出します。
3. サビの再発を防ぐ
サビを完全に取り除かずに塗装すると、塗膜の下でサビが進行し、内側から塗膜を押し上げてしまいます。
ケレン作業を怠ると、どれだけ高級な塗料を使っても、数年で塗装が剥がれたりサビが再発したりします。
ケレンの種類(3種・4種)
住宅塗装で使われるケレンは主に2種類です。
- 3種ケレン:電動工具(ディスクサンダー等)+手工具を使用。サビが発生している部分、劣化が激しい箇所に適用
- 4種ケレン:手作業(サンドペーパー、ワイヤーブラシ)。劣化が軽微で、サビもほとんどない状態に適用
住宅の外壁塗装では3種ケレンと4種ケレンが一般的です。
雨風にさらされやすい手摺りや水切りは3種ケレン、比較的状態の良い箇所は4種ケレンというように、部位ごとに使い分けるのが正しい施工です。
サビ止め塗料の種類
サビ止め塗料にも種類があり、耐久性が異なります。
- 1液型:そのまま使える。作業が簡単。耐久性は標準
- 2液型:主剤と硬化剤を混合。手間がかかるが耐久性が高い
一般的に2液型の方が耐久性に優れていますが、現場での正確な混合が必要なため、手間を省きたい業者は1液型を使う傾向があります。
住宅で鉄部塗装が必要な箇所
住宅には意外と多くの鉄部があります。
- 雨樋の金具
- 水切り
- 手摺り
- シャッターボックス・シャッター
- 雨戸
- 換気扇フード
- 庇(ひさし)の金属部分
- フェンス
- 門扉
これらは外壁より劣化が早いため、定期的なメンテナンスが必要です。
見積書での確認ポイント
「ケレン一式」は要注意
見積書に「ケレン一式」「下地処理を含む」と書いてあったら要注意です。このような曖昧な記載では、どの程度の作業が行われるのかわかりません。
確認すべき記載内容
良い見積書には以下が明記されています:
- ケレン:「3種ケレン」「4種ケレン」と部位別に明記(悪い例:「ケレン一式」または記載なし)
- サビ止め:「○○メーカー サビ止め塗料 2液型」と明記(悪い例:「サビ止め」のみ)
- 工程:「ケレン→サビ止め→中塗り→上塗り」と工程明記(悪い例:「鉄部塗装一式」のみ)
業者に聞くべき質問
「ケレンは何種ケレンですか?部位によって違いますか?」
この質問に具体的に答えられる業者は、工程を理解している証拠です。
「サビ止め塗料は1液型ですか?2液型ですか?」
耐久性の高い2液型を使っているか確認しましょう。
「ケレン後の状態を確認させてもらえますか?」
各工程の確認を嫌がる業者は要注意です。
契約書に入れるべき内容
見積書だけでなく、契約書にも明記してもらいましょう。
契約書の記載例
・対象箇所:雨樋金具、水切り、手摺り、シャッターボックス ・ケレン:手摺り・水切り=3種ケレン、その他=4種ケレン ・サビ止め:○○メーカー 2液型エポキシ系サビ止め ・工程:ケレン→サビ止め→中塗り→上塗り(計4工程) ・写真記録:各工程の写真を施主に提出
工程写真の重要性
鉄部塗装は、完成後にはケレンやサビ止めの状態が確認できません。
全工程の写真を含む完工報告書の提出を契約に明記してもらいましょう。
具体的には以下の写真を依頼します。
- ケレン作業前の状態
- ケレン作業後の状態
- サビ止め塗装後の状態
- 中塗り後の状態
- 上塗り完了後の状態
手抜き塗装を見抜く3つのサイン
1. ケレン作業が極端に短い
30坪の住宅でケレン作業が半日で終わっているのは早すぎます。水切り、破風、樋、軒裏など、鉄部のケレンには相応の時間がかかります。
2. サビの上から塗装されている
サビを落とさずに上から塗ると、数ヶ月でサビ汁が流れ出します。茶色い汁が垂れていたら、ケレン不足の証拠です。
3. 工程写真がない
きちんと施工した業者なら、工程ごとの写真を残しています。写真を見せてもらえない場合は確認が必要です。
サビ止めを省略するとどうなるか
サビ止め塗装を省略すると、以下の問題が発生します。
早期の塗膜剥離
サビ止めなしで上塗りしても、塗料が鉄部に密着せず、1〜2年で剥がれてきます。
サビの再発
サビの原因を断たないまま塗装しても、塗膜の下でサビが進行し、内側から塗膜を破壊します。
修繕費用の増大
早期に再塗装が必要になり、結果的に費用がかさみます。
まとめ:見えない工程こそ重要
鉄部塗装の成功は、目に見える仕上げの美しさではなく、その下に隠された「ケレン」と「サビ止め」の品質にかかっています。
✓確認すべきポイント
- 見積書に「何種ケレン」か明記されているか
- サビ止め塗料の種類(1液型か2液型か)
- 工程(ケレン→サビ止め→中塗り→上塗り)が明記されているか
- 全工程の写真記録を依頼する
塗装工事の「仕上がり」と「持ち」を決めるのは、塗る前の下地処理です。信頼できる職人は、外から見えない下地処理にこそ、最も時間と手間をかけます。
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