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なぜ「半額」は数学的に不可能なのか|塗装方程式と人工理論で暴く詐欺の経済構造

この記事の監修者

ヨコイ塗装 代表 横井隆之

愛知県で50年続く塗装店の2代目。200件以上の施工実績を持ち、著書に『外壁塗装の不都合な真実』『塗装方程式』『外壁塗装 工程別チェックポイント21』(Kindle)がある。見積もり診断サービス「ペンキのミカタ」を運営し、全国の施主に中立的なアドバイスを提供している。

はじめに

「通常200万円のところ、モニター価格で100万円にします」

「今日契約してくれれば、足場代を無料にします」

訪問販売業者からこんな提案を受けたことはありませんか?

一見お得に見えるこの「大幅値引き」。しかし、50年間この業界で働いてきた私から見れば、これは詐欺の入り口です。

この記事では、私が著書『塗装方程式』で提唱している理論と、業界で使われる「人工(にんく)」という概念を使って、なぜ「半額」が数学的に不可能なのかを証明します。

塗装方程式:品質を決める3つの変数

私が長年の経験から導き出した公式があります。

品質 = モチベーション × 技術 × 時間

どれだけ良い塗料を使っても、職人のやる気がなければ品質は下がります。腕の良い職人でも、時間が足りなければ丁寧な仕事はできません。

この3つの要素が掛け算で効いてくるのが、塗装工事の本質です。

なぜ「掛け算」なのか

足し算ではなく掛け算である理由は明確です。

要素100点50点結果
モチベーション10050
技術100100
時間100100
品質(掛け算)100万点50万点半減

一つの要素が半分になるだけで、品質は半分になる。これが塗装工事の厳しい現実です。

「時間」を数値化する:人工(にんく)とは

塗装方程式の「時間」を具体的に測る指標が人工(にんく)です。

人工 = 職人1人が1日働く作業量

例えば「20人工」とは、「職人1人が20日かける作業量」または「職人2人が10日かける作業量」を意味します。

一般的な戸建て住宅に必要な人工数

30坪程度の戸建て住宅の外壁塗装に必要な人工数は、15〜25人工が目安です。

工程必要人工数
足場設置・解体2〜3人工
高圧洗浄1人工
下地処理・補修2〜3人工
養生1〜2人工
下塗り2〜3人工
中塗り2〜3人工
上塗り2〜3人工
付帯部塗装2〜3人工
検査・手直し1人工
合計15〜25人工

この人工数を削れば、どこかの工程が省略されるか、手抜きされることになります。

外壁塗装の原価構造を分解する

では、100万円の外壁塗装工事は、何にいくらかかっているのでしょうか。

原価構造の内訳(30坪・100万円の場合)

項目金額目安比率
人件費(人工)33〜50万円33〜50%
材料費(塗料等)20〜30万円20〜30%
足場代15〜20万円15〜20%
諸経費・利益10〜20万円10〜20%
合計約100万円100%

注目してほしいのは、人件費と材料費だけで原価の50〜80%を占めるという事実です。

人件費の計算根拠

国土交通省が公表する「公共工事設計労務単価」によれば、塗装工の単価は1日あたり約20,000〜25,000円です。

仮に20人工で計算すると:

20人工 × 22,000円 = 44万円(人件費のみ)

これに材料費(25万円)、足場代(18万円)、諸経費(13万円)を加えると、合計100万円になります。

「半額」の嘘を数学で証明する

ここからが本題です。

訪問販売業者が「200万円の工事を100万円にします」と言ったとしましょう。本当に可能なのでしょうか?

計算してみる

仮に200万円の見積もりの原価構造が以下だとします:

項目200万円の場合100万円にすると
人件費(40%)80万円40万円
材料費(25%)50万円25万円
足場代(15%)30万円15万円
諸経費・利益(20%)40万円20万円

何が起こるか

利益をゼロにしても足りないのです。

利益20万円を削っても、残り80万円の削減が必要。その80万円は「人件費」「材料費」「足場代」から削るしかありません。

パターン①:人件費を削る場合

人件費80万円→40万円にするには、人工数を半分にするしかない。

・20人工 → 10人工

・20日の工事 → 10日で終わらせる

これは何を意味するか。

・乾燥時間を無視して次の工程に進む

・3回塗りを2回、または1回で済ませる

・下地処理を省略する

結果:数年で塗膜が剥がれる施工不良

パターン②:材料費を削る場合

材料費50万円→25万円にするには:

・塗料を規定以上に薄める(シンナーで希釈)

・グレードの低い塗料に無断変更する

・必要な缶数を減らす(塗膜が薄くなる)

結果:耐用年数が半分以下になる

パターン③:足場代を削る場合

「足場代無料」は、どこかで帳尻を合わせている証拠。

自社足場を持っていない業者がレンタル費用を削ることはできません。無料にする分、人件費か材料費が削られています。

図解:適正業者と詐欺業者の価格構造比較

言葉だけではわかりにくいので、比較してみましょう。

【適正業者の100万円】

・材料費 30%

・人件費(人工)40%

・足場代 20%

・利益 10%

→ 適正な工期(15〜20日)で高品質・長持ち

【詐欺業者の50万円(半額)】

・材料費 15%(薄める・グレードダウン)

・人件費(人工)15%(工期短縮・手抜き)

・足場代 20%

・利益 50%(中抜き)

→ 5〜7日で終了、数年で剥がれる施工不良

お分かりでしょうか。

「半額」にしても業者は利益を取っています。削られるのはあなたの家の品質なのです。

多重下請け構造が「手抜き」を必然にする

なぜこんなことが起こるのか。それは建設業界の構造に原因があります。

訪問販売業者のビジネスモデル

1. 営業会社(元請け)が契約を取る

2. 契約額の40〜50%を中抜き

3. 残りの50〜60%で下請けに丸投げ

100万円で契約しても、実際に施工する下請け業者には50〜60万円しか渡りません。

下請け業者の現実

私が著書『塗装方程式』で書いた通り、下請け業者には2つの選択肢しかありません。

「ひとつひとつの工事に時間をかけられない」

1. 赤字覚悟で丁寧にやる → 会社が潰れる

2. 手を抜いて利益を出す → 品質が犠牲になる

多くの下請け業者は、生き残るために後者を選ばざるを得ないのです。

人工理論で見抜く「危険な見積もり」

では、どうすれば詐欺を見抜けるのか。人工の視点で見積もりをチェックしてください。

チェックポイント

項目危険サイン
工期30坪で7日以下は短すぎる
人工数の記載「工事一式」のみで人工数がない
塗料缶数記載がない、または少なすぎる
足場代無料、または異常に安い
値引き幅30%以上の値引きは要注意

適正な人工数の目安

外壁面積適正人工数適正工期
〜100㎡(20坪)12〜18人工10〜14日
〜150㎡(30坪)15〜25人工12〜18日
〜200㎡(40坪)20〜30人工15〜22日

見積もりに記載された工期や人工数が、この目安を大きく下回っていたら危険信号です。

なぜ「時間をかけられる会社」が優良なのか

私が著書で繰り返し強調しているのは、経営努力で作業時間を確保できる会社を選ぶべきということです。

時間を確保できる会社の特徴

特徴理由
元請け・直請け中間マージンがなく、工期に余裕を持てる
自社足場を保有レンタル費を気にせず長期間設置できる
地域密着移動時間が少なく、現場に時間をかけられる
自社職人外注費がなく、丁寧な作業に時間を割ける

逆に言えば、訪問販売で全国を回っている業者は、この条件をすべて満たさないのです。

まとめ:「安さ」の正体を見抜く

この記事のポイントを整理します。

1. 塗装方程式:品質 = モチベーション × 技術 × 時間

2. 人工:職人1人が1日働く作業量。30坪で15〜25人工が目安

3. 原価構造:人件費+材料費で50〜80%を占める

4. 半額の嘘:利益をゼロにしても足りない→人件費・材料費が削られる

5. 多重下請け:40〜50%の中抜きが手抜きを必然にする

「安い」には必ず理由があります。その理由が「あなたの家の品質」だとしたら、本当に安いと言えるでしょうか?

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この記事の解説動画

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