「シーリング材が手に入らない」――2026年4月以降、外壁塗装の現場で日常化している言葉です。
私は施工歴25年・250件超の現役塗装職人として、過去2回の不足サイクル(2008年リーマン・ショック後、2021年イソシアネート不足)を経験してきましたが、今回の2026年シーリングショックは質的に違うと判断しています。理由は3つあります。塗料より先にシーリング材が止まる構造、JIS適合品以外への代替が事実上不可能なこと、そして業界の大半が依存していた大手メーカーまで受注を一時停止したという事実です。
この記事では、ホルムズ海峡封鎖からナフサ高騰までの構造、不足はいつまで続くか、自宅の外壁工事を「待つべきか」「今動くべきか」、業者見積もりで必ず確認すべき項目を、一次情報源(国交省・JOGMEC・JETRO・帝国データバンク・日本シーリング材工業会・主要メーカー公式リリース)のみを根拠に解説します。外壁塗装の業界構造を解説した著書3冊を含む取材活動と、第二種無人航空機操縦士による外壁ドローン診断視点から、二代目塗装業として中立第三者の立場でお伝えします。
【3行で結論】シーリング材は2026年9月までに正常化が見え始める
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最初に、いま施主の皆さんが知りたい3つの結論をお伝えします。
第一に、2026年4月、シーリング材は業界全体で受注一時停止・供給制限・30〜50%値上げが連鎖し、業界の大半が依存していた大手メーカーまで動きました。
第二に、原因は中東情勢そのものではなく、「シーリング材の原料が原油→ナフサ→イソシアネートの一本道」という構造です。シーリング材は塗料より先に止まる。原料が原油→ナフサ→イソシアネートの一本道で、変成シリコーンへの代替が物理的に効かないからだ――これが今回の事態を貫く一行の真実です。
第三に、正常化の早期シグナルは2026年9月までに「ホームセンター在庫制限解除」「メーカー通知頻度の低下」「商社納期2週間→3日への短縮」の3つで観測でき、本格回復は2027年Q1〜Q2の見込みです(出典:JBpress 2026年4月26日「早ければ2026年4-6月期、遅くとも7-9月期には生産活動に下振れ圧力」、JOGMEC「原油市場他」2026年4月、時事ドットコム「ホルムズ海峡貿易トラッカー」)。
この3つの結論を、以下の章で順に裏付けていきます。
なぜシーリング材が消えた?ホルムズ→ナフサ→原料一本道の構造
シーリング材が業界全体で消えた理由を、原料サプライチェーンの一次情報からたどります。多くの施主の方が「中東のニュースと外壁工事の遅れがどう繋がるのか」と疑問に思われているはずです。結論から言えば、原油→ナフサ→イソシアネート(MDI/TDI)という化学物質の流れが、ホルムズ海峡を起点に1本のレールで繋がっており、このレールに障害が出ると塗料より先にシーリング材が止まる構造になっているのです。
時系列で何が起きたか
2026年2月28日、米・イスラエルがイランへの大規模攻撃を開始しました。3月2日にはイラン革命防衛隊がホルムズ海峡封鎖を正式宣言。4月7日に米イラン2週間停戦合意が成立しましたが、その後イスラエルのレバノン攻撃を受けてイランが再度封鎖を表明。4月17日にイラン外相が解除を表明したものの、4月22日の停戦期限後も交渉が難航し、海峡通航量は通常時の3〜5%程度に低迷しています(出典:時事ドットコム「ホルムズ海峡貿易トラッカー」、JOGMEC「原油市場他」2026年4月、中東調査会「中東かわら版」No.127)。
なぜ海峡封鎖が国内シーリング材出荷停止に直結するのか
答えは2つの数字にあります。
1つ目、日本の原油中東依存度は2025年実績で約94%(中東調査会)。
2つ目、原油は230日分の国家備蓄を持つ一方で、ナフサは備蓄対象外で民間在庫約20日分しかありません。原油は備蓄でしのげても、その先のナフサは即座に枯渇していくのです。
実際、国産ナフサ価格は2026年1〜3月の62,893円/kLから、4〜6月期には11万円/kL超・前年比約1.75倍へと跳ね上がる見通しです(日本経済新聞「国産ナフサ価格、1〜3月ほぼ横ばい 中東危機で4〜6月は2倍弱上昇へ」2026年4月28日、財務省貿易統計)。帝国データバンクの2026年4月17日分析では、国内製造業の約3割(46,741社)がナフサ関連製品調達リスクに直面しているとされます。
原料一本道のサプライチェーン
ナフサの先には、エチレン・プロピレン・ベンゼンが連なり、そこからMDI・TDI(イソシアネート)、PPG(ポリオール)、DOP・DINP(可塑剤)、カーボンブラック、炭酸カルシウムが作られ、最終的に変成シリコーン系シーリング材/ポリウレタン系シーリング材/シリル化アクリレート系シーリング材になります。
問題は、この流れが逆流路を持たない一本道であることです。
塗料の場合、溶剤系から水性系への切替という代替ルートが存在します。しかし変成シリコーン・ポリウレタン系シーリング材は、イソシアネート(MDI/TDI)を原料とする化学構造そのものに依存しており、他系統への代替が物理的にできません。
25年の現場で見てきて言えるのは、過去2回の不足サイクルでは現場が止まらない「逃げ道」があったということです。2008年リーマン後の不足局面では、私自身は材料手配にとくに問題を感じませんでした。2021年イソシアネート不足のときも、業界全体として水性系への切替で逃げられた局面がありました。しかし今回は、両方の手が同時に塞がっています。だから塗料より先に止まる宿命を負っています。
なお、関連する塗料側の値上げ・欠品については本サイト内の別記事でも扱っていきます。シーリング材と塗料の連動構造を理解しておくことで、外壁工事全体の見通しが立てやすくなります。
業界横断の動き:オート化学・サンスター技研・信越化学・田島ルーフィングほか主要メーカー実態
ナフサが詰まると、シーリング材メーカーが何をするか。2026年4月、業界の動きが一気に出揃いました。社名・実施日・値上げ幅を、各社公式リリースと業界紙報道から整理します。
施主の皆さんに知っていただきたいのは、「これは特定の1社の問題ではない」ということです。業界全体が同時に動いた事実そのものが、構造危機の現れです。
2026年4月 シーリング材・関連メーカー動向一覧
| メーカー | 主要アクション | 実施日 | 値上げ幅 |
|---|---|---|---|
| オート化学工業 | 全製品供給制限(月平均実績上限)→シーリング材受注一時停止 | 4/9・4/15 | 個別 |
| サンスター技研(ペンギンシール) | 建築用シーリング材・接着剤・プライマー値上げ | 5/1出荷〜 | 30%以上 |
| 信越化学工業 | シリコーン全製品(建築用シリコーンシーリング材含む)値上げ | 5/1出荷〜 | 10%以上 |
| アイカ工業 | SE-770シーリング受注一時停止/全製品20%以上値上げ | 4/15・5/1 | 20%以上 |
| アイジー工業 | エコシーリング(一部色)受注一時停止 | 4/24〜 | ― |
| 田島ルーフィング | 防水材・住宅建材新規受注全面停止/値上げ | 4/10〜・5/1納品 | 40〜50% |
| 日新工業 | 防水材料受注停止/値上げ | 4/14・4/21 | 40% |
| シャープ化学工業 | 価格改定 | 4月 | 溶剤系+40%以上、その他+20%以上 |
| 変成シリコーン系大手メーカー(業界最大手の一角) | 全製品出荷数量制限/一部主力製品の受注一時停止/プライマー取扱見直し | 4月中旬 | 個別 |
参考:塗料側の連動値上げ
| メーカー | 主要アクション | 実施日 | 値上げ幅 |
|---|---|---|---|
| 日本ペイント | シンナー75%値上げ/下塗材16品種受注停止(4/17-25) | 3/19・4/16・4/17 | 塗料本体10〜20%・シンナー15〜25% |
| 関西ペイント | シンナー50%以上値上げ・出荷統制 | 4/2〜・4/13 | 50%以上 |
| エスケー化研 | 全塗料値上げ・溶剤系下塗り受注停止 | 4/13・5/11 | 水性15〜25%、溶剤20〜30% |
(出典:各社公式リリース、新建ハウジング「中東情勢」タグ記事群、テイガク2026年5月6日更新「建材資材の値上げと受注停止の影響」、プラスチックパレット社「2026年5月1日値上げ完全版」)
このテーブルから読み取れる構造的事実3点
第一に、シーリング材の主要供給メーカーは平常時で月間平均販売実績を上限とするクォータ制を採用しており、これは2025年4月〜2026年3月の実績ベースで設定されています。施主のご家庭1軒分のシーリング材を作る原料が、メーカー在庫からの「分配」になっていると理解してください。新しい施主の家を1件追加すると、別の現場が止まる――そういう状況です。
第二に、注目すべきは変成シリコーン系シーリング材で大きなシェアを持つ、業界の大半が依存していた大手メーカーの動きです。同社も4月中旬にプライマー・主力シーリング材の受注一時停止を含む供給調整に踏み切りました。多くの代理店・施工現場が、この動きで「業界全体で在庫が回らなくなった」と認識した瞬間です。
業界の大半が依存していた大手メーカーが動いたということは、他社が出荷停止しても同社の在庫があれば現場は回せた、という構造的役割が機能しなくなったことを意味します。シーリング材の業界横断ショックは、ここで決定的になりました。
第三に、シーリング材だけでなく防水材(田島ルーフィング・日新工業)まで連動して受注停止・40〜50%値上げになっている点です。シーリング材と防水材は同じ原料系統(イソシアネート系)に依存しており、シーリング材の不足は防水工事の遅延にも波及します。窓枠周辺・ベランダ立ち上がり部・屋上シート防水――すべてが同じ原料系統で繋がっているのです。
この事態の意味
この3点が示すのは、もはや「どのメーカーから買うか」という選択肢の問題ではなく、業界全体としてのキャパシティ問題だということです。業者を変えても、地域を変えても、メーカーを変えても、根本構造は変わりません。
次の章では、この供給崩壊が過去3サイクル(2008年リーマン後・2021年イソシアネート不足・2023年エコシーリング出荷停止)とどう違うのか、なぜ今回が「いつまで」答えにくいのかを比較します。シーリング材だけでなく外壁塗装工事そのものが連鎖的に止まる構造についても、本サイト内で順次解説していきます。
過去3サイクルとの比較:今回が「いつまで」答えにくい3つの理由
ナフサ枯渇の出口がどこにあるかを考えるために、過去3回のシーリング材不足サイクルを振り返ります。比較から見えてくるのは、今回が「いつまで」を答えにくい3つの構造的理由です。
過去3サイクル整理
| 時期 | 引き金 | 主な動き | 出荷正常化までの期間 |
|---|---|---|---|
| 2008年Q4〜2009年Q2 | リーマン・ショック | 原油急落・需要崩壊での品薄 | 約9か月 |
| 2021年8月〜2022年Q3 | 米中樹脂需要急増・コンテナ不足・PPG/MDI高騰 | オート化学工業など主要メーカーが値上げ・出荷遅延 | 約12〜15か月(2回値上げ) |
| 2023年6月14日〜21日 | 化審法(PCP混入)案件 | アイジー工業エコシーリング・ニチハ屋根材用シーリング出荷停止 | 約7日(個別企業案件) |
| 2026年4月〜(現在進行) | ホルムズ海峡封鎖・ナフサ供給崩壊 | 業界横断の出荷停止・30〜50%値上げ | 早くて2026年9月にシグナル、本格回復2027年Q1〜Q2見込み |
(出典:オート化学工業2021年8月価格改定リリース、化学工業日報「ウレタンMDI アジアのスポット市況は再び高騰」2021年3月、アイジー工業2023年6月14日「エコシーリング出荷停止のご案内」/ 6月21日「出荷再開のご案内」、JBpress 2026年4月26日)
今回が決定的に違う3点
第一に、原料一本道です。原油→ナフサ→イソシアネート(MDI/TDI)の供給がホルムズ海峡封鎖で物理的に詰まり、過去のような「他地域からの代替輸入」ができません。米国・ブラジル・ナイジェリアからの代替調達も検討中ですが、既存量に対して限定的です。
第二に、代替不可です。JIS A 5758適合品(耐久性区分9030/10030)・Fマーク☆☆☆☆・住宅瑕疵担保責任保険3条確認の3条件で、新築・大規模修繕・10年保証物件では特定品質基準のメーカー品しか使えず、変成シリコーン系から他系統への切替が事実上不可能です。
第三に、需要先行確保(在庫の積み増し競争)です。工務店・施工会社が「いつ入るか分からない」前提で先行発注を増やし、需給ギャップが自己増殖しています。帝国データバンクの推計では国内製造業の約3割(46,741社)にナフサ関連調達リスクが波及し、流通の「目詰まり」が解消しにくい構造になっています。
参考までに、Google Trendsで「コーキング 不足」「シーリング材 出荷停止」のクエリは、2021年8月にスパイクしたあと2022年Q3にベースラインへ戻りました。しかし2026年4月のスパイクは2021年比で2倍超の水準にあります(Google Trends 2026年5月8日時点)。
我が家の工事は「待つべき」か「今動くべき」か:5つの判定軸
「不足解消は2027年春」と聞くと、「ではそれまで待てばいいのか」と思われるかもしれません。しかし答えは「待っていい工事」と「待てない工事」で分かれます。施主の方が自分のケースを当てはめられるよう、5つの判定軸でまとめました。
「待てない工事」5判定軸
- 既存劣化度:シーリング表面のひび割れ・剥離・肉やせが目視で判別できる(紫外線当たる南面で5mm以上の隙間がある場合)→ 待てない
- 雨漏りリスク:直近1年以内に室内側で雨染み・カビ発生がある/窓回り・ベランダ立ち上がり部のシーリングが破断 → 待てない
- 10年保証要件:新築から10年目の住宅瑕疵担保責任保険更新/大規模修繕積立金の使途タイミング → 保険空白を作るくらいなら今動く
- 住宅ローン控除リフォーム要件:性能向上リフォーム減税・先進的窓リノベ2026・みらいエコ住宅2026などの補助金活用条件で年内施工が要件 → 今動く
- 次回足場のタイミング:屋根塗装・外壁塗装と同時に行えば足場費用15〜25万円が1回で済む。シーリングだけ後回しにすると足場代が二重 → 外壁・屋根メンテナンス時期に重なるなら今
「待てる工事」
上記5項目すべて該当しない/既存シーリングが施工後5年以内で劣化なし/2026年5月中旬〜6月以降に改めて見積もり比較したい場合。
業界全体の見通しガイダンス
業界俯瞰サイトのテイガクが2026年5月6日に発表した一次情報集計でも、「雨漏りや破損など緊急性の高い工事を除き、新築・リフォーム検討者は2026年5月のGW明け〜5月中旬まで様子見」を推奨しています(出典:テイガク yanekabeya.com/201086/)。
私自身も、25年の現場経験から「劣化のない時期に焦って工事するより、本当に必要なタイミングで適正価格で工事する」ことを施主の皆さんにお勧めしています。今回のシーリングショックも、雨漏りリスクのない物件であれば数か月単位で様子見できる性質のものです。
ただし、「待つ」を選ぶ場合は2点だけ準備してください。
- 見積もりは複数社から取り、有効期限・スライド条項を確認:今の見積もり額は2か月後に通用しません
- 業者との連絡継続:調達状況をリアルタイムで共有してくれる業者かどうかが、不足長期化局面では決定的に重要
業者選びの具体的な質問項目は次の章で詳しく解説します。
業者見積もりで必ず確認すべき5項目チェックリスト
ここからは、シーリング工事を発注する前に業者へ投げるべき具体的な質問を5項目に絞ります。
業者見積もりで必ず確認すべき5項目──メーカー名・JIS適合区分・確保状況・スライド条項・人工数。これだけで2026年のシーリング工事の8割は失敗を回避できる。
実は、外壁塗装の業界には恒久的な真実があります。
外壁塗装の適正額は「坪単価」では出ない。職人が何日入るかという人工数で決まる。
これは2026年4月時点の業界動向に左右されない、構造的な原則です。だからこそ、5項目目に「使用人工数」を入れることで、業者の透明性が一目で見えるのです。
業者に聞くべき5項目(2026年シーリング工事限定版)
- 1. 使用するシーリング材のメーカー名と製品グレード:JIS A 5758 タイプF クラス25LM 耐久性区分9030(変成シリコーン系の最高ランク。シリコーン系の場合は最上位の10030)か?(業界最大手のオートンイクシード・コニシボンド・サンスター技研ペンギンシール・セメダインなど明示を求める)
- 2. 2026年4月以降の入荷状況・在庫確保状況:「現時点で○リットル確保済み/追加調達は△月見込み」と書面で出せるか
- 3. 代替材切替条項:原料供給が間に合わない場合、同等以上の他社JIS適合品に切り替える権限が業者にあるか/施主の同意が必要か
- 4. スライド条項:契約後に資材費が上昇した場合の請負代金変更ルール(上限・分担割合・協議義務)。推奨ひな型:
「本契約締結後、法令の制定・改廃、経済事情の変動による工事材料もしくは労務の調達の困難等、又は労務・建材等の価格高騰等により、請負代金が適当でないと認められるときは、甲乙協議のうえ、請負代金額を変更することができる」
(出典:匠総合法律事務所秋野卓生弁護士寄稿、新建ハウジング 2026年4月、国土交通省 公共工事標準請負契約約款 工事請負契約書第26条第5項「単品スライド条項」)
- 5. 使用人工数(職人がかかる延べ日数 × 人数)と労務費の妥当性:「うちの場合、何人工で施工していただけますか?」と聞き、答えに対して労務費の妥当性を検証する。
国土交通省 令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価では、全国全職種加重平均が25,834円(前年度比+4.5%、14年連続引上げ・初の25,000円突破)となっています(出典:国土交通省 令和8年2月17日報道発表)。この水準が業界全体の労務費基準として参考にできます。「使用人工数 × 労務単価」が見積もり総額の中で何割を占めているかを把握すれば、業者の見積もりが「材料費だけ」で組まれていないか、適正な労務費が計上されているかが判断できます。
「打ち替え」を「増し打ち」に変えるリスク判定基準
シーリング材不足で業者から「打ち替えではなく増し打ちで」と提案された場合、以下の基準で判断してください。
- サイディング厚15mm以上:メーカー推奨深さ10mmを既存5mm+新規5mmで確保できる → 増し打ち可
- サイディング厚12mm以下(2008年以前の住宅に多い):増し打ちでは推奨深さ確保不可、瑕疵保険対象外リスクあり → 打ち替えを推奨
- 窓枠・サッシ周辺:防水テープ損傷回避のため、もともと業界一般で増し打ち推奨
(出典:日本シーリング材工業会「建築用シーリング材ハンドブック」2023年版、YKK AP「シーリング技術基準」、コニシ・サンスター技研施工指針)
中国製シーリング材の使用可否
中国は世界最大級のシーリング材生産国で、ECサイト・ホームセンターでの流通は2026年4月以降増加しています。しかしJIS A 5758適合認証はサンスター技研・コニシ・セメダイン等の日本シーリング材工業会正会員17社(2021年11月時点)が中心で、中国製品は同認証フィルターをクリアしないものが大半です。
→ 新築・大規模修繕・10年瑕疵保険物件では使用不可、DIY補修等の自己責任範囲に限定推奨
25年現場視点:3つの調達ルートと「不足解消の3つの先行指標」
シーリング材を、業者がどのルートで仕入れているか――これが2026年の不足局面では、業者選びの決定的な要素になります。25年現場で見てきた3つのルートを業界一般構造として整理します。
シーリング材の3つの調達ルート
- 一次代理店からの長期取引枠:メーカー直結代理店との年間取引枠で、過去実績ベースの優先供給枠を持つ施工会社のみアクセス可能。シーリング材の場合、平常時の月間平均販売実績を上限とするクォータ制が業界全体で導入されています(オート化学工業4月9日リリースが代表例)。
- 二次代理店ネットワーク:地場の塗料商社・建材卸を経由したルート。一次より調達単価は高いが在庫の融通が効きやすい。2026年4月時点では「2缶までの数量制限」を設ける販売店が出現しています。
- 関連業界(建材ホームセンター・リフォーム会社系列)からのスポット調達:カインズ・コーナン・ナフコ・DCMオンライン等のプロ向け販売チャネル、リフォーム会社系列の社内在庫融通。緊急避難的には機能しますが、施主向け新築・大規模修繕には不向きです。
施主の皆さんは「どのルートで在庫を確保している業者か」を直接質問してOKです。回答できない業者は、不足長期化局面では遅延リスクが高いと判断できます。
不足解消の3つの先行指標
2026年9月までに見える正常化の兆しは3つ──ホームセンター在庫制限解除、メーカー通知の頻度低下、商社納期2週間→3日への短縮。
これは私自身が25年の現場で観察してきたシグナルです。業界紙でも公的統計でも追えない実務職人視点の指標で、3つが同時に揃えば、約3か月以内の正常化が見込めます。
- ホームセンター在庫制限解除:2026年5月時点で「業者1社につきシンナー1缶まで」の制限が解除され、シーリング材も同様に複数本購入可能になる
- メーカーFAX/メール頻度の減少:4月15日のオート化学工業3通同日着のような異常通知が止まり、月1〜2通のペースに戻る
- 塗料商社の納期回答の短縮:「2週間→1週間→3日」と段階的に短縮されたら、約3か月以内の正常化が見込める
25年で経験した過去2回の不足サイクル(2008年リーマン後、2021年イソシアネート不足)と比較して、今回の2026年シーリングショックは「代替が利かない」点で質的に違います。外壁塗装の業界構造を3冊の著書にまとめてきた取材視点、そして第二種無人航空機操縦士の資格による外壁ドローン診断視点から見ても、過去のような「他社品で逃げる」調達戦略は機能しにくいと判断しています。だからこそ施主の皆さんには、業者がどのルートで在庫を確保しているかを必ず確認してほしいのです。
なぜ大手ポータルサイトはこの構造を書けないのか(25年現場視点)
「外壁塗装 不足」「シーリング材 出荷停止」で検索すると、大手紹介ポータルサイトの記事が上位に並びます。しかし、それらの記事に「使用人工数を聞け」というアドバイスは、ほとんど見当たりません。なぜでしょうか。構造的な3つの理由があります。
第一に、加盟店モデルの構造的制約:登録業者間の相互比較を煽る設計のため、「人工数で聞け」という業者に手の内を晒させる質問は、加盟店ビジネスモデルとしては推奨しにくいのです。
第二に、広告主が値上げ当事者:紹介料を払っているメーカー・施工会社がリアルタイムの値上げ当事者であり、批判的視点での記事化は構造的に困難です。
第三に、「相場いくら?」への素朴回答圧力:訪問者の検索意図が「結局いくら?」のため、前提崩しの解説(坪単価ではなく人工数で決まる)が機能しにくいのです。
なお、国土交通省は令和8年2月17日の労務単価発表で、「下請代金に必要経費分を計上しない、又は下請代金から値引くことは不当行為です」と明記しています(出典:国土交通省 令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について)。これは元請けが下請けの労務費を不当に値引く構造への警鐘でもあります。
→ だからこそ、第三者の現役職人が一次情報のみで書く本記事に意味があります。坪単価の比較ではなく、人工数と労務単価の理解こそが、不足局面で施主を守る最大の盾になります。
よくある質問(FAQ):中国製は使える?打ち替え vs 増し打ち?工期延長の足場費用は誰が払う?
Q1:中国製シーリング材は使えますか?
新築・大規模修繕・10年瑕疵保険物件では原則使用不可です。JIS A 5758適合認証・住宅保証機構3条確認・Fマーク☆☆☆☆の3つの認証フィルターをクリアしないものが大半のため、施工後の保証対象外になるリスクがあります。DIY補修・小規模個人工事の自己責任範囲に限定して使用することを推奨します。
Q2:「増し打ち」で済ませてOKですか?
サイディング厚15mm以上で推奨深さ10mmが確保できる場合のみOK。窓枠・サッシ周辺は防水テープ損傷回避のため、もともと業界一般で増し打ちを推奨されています。サイディング厚14mm以下では増し打ちは瑕疵保険対象外リスクがあるため、打ち替えを推奨します。
Q3:工期延長になった場合、足場費用は誰が負担する?
契約書のスライド条項・工期延長免責条項の有無で決まります。明記がない場合は「経済事情の激変」を理由に協議事項です。匠総合法律事務所の推奨文言は「労務・建材等の価格高騰等」を含めることです。契約前に必ず確認してください。
Q4:工事はいつまで待つべきですか?
雨漏り・破損など緊急性の高い工事以外は、2026年5月中旬まで様子見で問題ありません。シーリング材の正常化シグナルは2026年9月までに見える可能性が高く、本格回復は2027年Q1〜Q2の見込みです。テイガクの一次情報集計(2026年5月6日更新)でも同様のガイダンスが示されています。
Q5:見積もりが2026年初頭より高くなっています。妥当ですか?
2026年4-6月期のナフサ価格は前年比1.75倍、シーリング材主要メーカーは30〜50%値上げです。工事総額に対する影響は通常5%程度で、2倍3倍にはならないのが業界一般動向です。「うちの場合、何人工で施工してもらえますか?」と質問し、人工数と労務費の妥当性を確認することを強く推奨します。「人工」とは職人がかかる延べ日数 × 人数のことで、これに国交省の労務単価(令和8年度 全国全職種加重平均25,834円)を掛けた額が、見積もり総額に占める労務費部分の妥当な目安になります。
まとめ
シーリング材の供給危機は、施主のご家族が外壁工事の判断を迫られる重要な局面です。本記事の要点を3行で整理します。
- 2026年シーリングショックは原料一本道の構造危機で、本格回復は2027年Q1〜Q2の見込み。雨漏りリスクのない物件は数か月単位の様子見が可能。
- 業者見積もりでは「メーカー名・JIS適合区分・確保状況・スライド条項・人工数」の5項目を必ず確認する。
- 国交省の労務単価(25,834円・14年連続引上げ)が業界全体の労務費基準。「人工数 × 労務単価」で見積もりの妥当性を判断できる。
シーリング材の供給危機についてのご質問・セカンドオピニオンのご依頼は、penki-mikata.com のお問い合わせフォームからお寄せください。
著者プロフィール
横井 隆之(YOKOI Takayuki)
- ヨコイ塗装 二代目社長/施工歴25年・250件超の現役塗装職人
- 著書3冊:外壁塗装の業界構造に関する書籍
- 取得資格:第二種無人航空機操縦士(外壁ドローン診断対応)
- penki-mikata.com セカンドオピニオン主宰
参考文献・出典
- 国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」(令和8年2月17日報道発表)
- 国土交通省 公共工事標準請負契約約款 工事請負契約書第26条第5項「単品スライド条項」運用マニュアル
- JOGMEC「原油市場他」(2026年4月)
- JBpress「早ければ2026年4-6月期、遅くとも7-9月期には生産活動に下振れ圧力」(2026年4月26日)
- 日本経済新聞「国産ナフサ価格、1〜3月ほぼ横ばい 中東危機で4〜6月は2倍弱上昇へ」(2026年4月28日)
- 帝国データバンク「ナフサ関連製品サプライチェーン動向分析」(2026年4月17日)
- 中東調査会「中東:イラン情勢の緊迫化を受け、ホルムズ海峡が通航不可」かわら版No.127
- 時事ドットコム「ホルムズ海峡貿易トラッカー」
- オート化学工業 公式リリース(2026年4月)
- サンスター技研(ペンギンシール)公式リリース
- 信越化学工業 シリコーン製品値上げリリース
- アイカ工業・アイジー工業・田島ルーフィング・日新工業・シャープ化学工業 各公式リリース
- 日本ペイント・関西ペイント・エスケー化研 各公式リリース
- 日本シーリング材工業会「建築用シーリング材ハンドブック」2023年版
- JIS A 5758:2022 建築用シーリング材
- テイガク 2026年5月6日更新「建材資材の値上げと受注停止の影響」
- プラスチックパレット社「2026年5月1日値上げ完全版」
- 匠総合法律事務所(秋野卓生弁護士)寄稿 新建ハウジング 2026年4月
- オート化学工業 2021年8月価格改定リリース/化学工業日報「ウレタンMDI アジアのスポット市況は再び高騰」(2021年3月)
- アイジー工業 2023年6月14日「エコシーリング出荷停止のご案内」/ 6月21日「出荷再開のご案内」
- Google Trends(2026年5月8日時点)
本記事は2026年5月9日時点の一次情報・業界紙報道・公式リリースに基づき執筆しています。最新情報は各メーカー公式リリース・国土交通省発表をご参照ください。
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