外壁塗装の施工管理といえば、これまで「業者に任せるもの」でした。
しかし今、その常識が変わりつつあります。施主自身がスマホで工程を管理し、品質をチェックできる時代が来ているのです。
建設業界ではANDPADや現場ポケットといった施工管理アプリが普及していますが、これらはあくまで「業者のためのツール」。施主が主導権を持って使えるものではありませんでした。
この記事では、なぜ今「施主による施工管理」が可能になったのか、そしてどのようにアプリを活用すれば良いのかを解説します。
この記事で分かること
- 施工管理が「業者任せ」だった理由
- B2B施工管理アプリと施主向けアプリの違い
- 施主が施工管理をするメリット
- アプリ導入のタイミングと具体的な使い方
- 業者との上手なコミュニケーション方法
施工管理は「業者任せ」が当たり前だった
情報の非対称性という壁
外壁塗装において、施主と業者の間には大きな「情報格差」が存在します。
業者は塗料の特性、適切な工程、必要な乾燥時間をすべて把握しています。一方、施主はほとんどの場合、塗装工事は初めての経験。何が正しくて何が間違っているのか、判断する基準を持っていません。
この情報格差が「業者に任せるしかない」という状況を生んでいました。
「見えない工程」の存在
外壁塗装には、仕上がった後では確認できない工程が多く存在します。
- 高圧洗浄でどこまで汚れを落としたか
- 下塗りが適切な厚みで塗られたか
- 中塗りと上塗りの間に十分な乾燥時間を取ったか
- 塗料は規定の希釈率で使われたか
これらは完成後に見ても分かりません。だからこそ「信頼できる業者を選ぶ」ことが最重要とされ、契約後は「祈るしかない」状態でした。
業者向けツールは施主には使えなかった
建設業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)は急速に進んでいます。ANDPADは導入企業数19万社を超え、現場ポケットやKANNAなど多くの施工管理アプリが普及しています。
しかし、これらはすべてB2B(業者間)向けのツールです。
- 導入するのは業者
- 費用を負担するのも業者
- 施主に見せる情報は業者が選別する
つまり、施主がアカウントを持てたとしても、業者が「見せたい情報だけ」を見ることになります。都合の悪い写真や遅延の記録は、施主には共有されません。
施主向け施工管理アプリという新しい選択肢
CtoB(施主→業者)という発想の転換
従来のB2B施工管理アプリとは逆の発想で生まれたのが、施主向けの施工管理アプリです。
B2B施工管理アプリと施主向けアプリの違い:
- 導入者:B2Bは業者、施主向けは施主
- 費用負担:B2Bは業者、施主向けは施主
- 主導権:B2Bは業者、施主向けは施主
- 情報の透明性:B2Bは業者が選別、施主向けは施主が要求
- 目的:B2Bは業務効率化、施主向けは品質担保・自己防衛
施主が自らツールを持ち、業者に対して「このフォーマットで報告してください」「この工程の写真を送ってください」と要求する。これが情報の非対称性を解消する唯一の方法です。
なぜ今、施主が施工管理をできるようになったのか
3つの変化が、施主による施工管理を可能にしました。
1. スマートフォンの普及
LINEを使えれば、施工管理アプリも使えます。新しいアプリをインストールする必要もなく、普段使っているLINEに通知が届く仕組みなら、60代・70代の施主でも無理なく使えます。
2. 情報へのアクセス向上
インターネットの普及により、施主も塗装の基礎知識を学べるようになりました。「3回塗り」「乾燥時間」「シリコン塗料」といった用語を理解している施主が増えています。
3. 消費者意識の変化
「高い買い物だからこそ、自分の目で確認したい」という意識が高まっています。住宅ローン、保険、投資と同様に、外壁塗装も「任せきり」ではなく「理解して判断する」対象になりつつあります。
施主が施工管理をするメリット
1. 手抜き工事の抑止力になる
施主が工程を把握し、写真記録を求めていることが分かれば、業者の意識は変わります。
「この施主は見ている」「記録が残る」
この認識だけで、手抜きの心理的ハードルは大きく上がります。防犯カメラと同じ効果です。
2. 「言った・言わない」のトラブルを防げる
工事中のコミュニケーションは、電話や口頭で行われることが多く、記録が残りません。
「追加工事の説明を受けていない」「完了予定日が違う」
こうしたトラブルは、アプリ上でやり取りを残すことで防止できます。
3. 工事への納得感が高まる
何が行われているか分からない状態で100万円以上を支払うのは、不安なものです。
アプリで日々の進捗を確認し、写真で作業内容を見ることで、「ちゃんとやってもらっている」という実感を得られます。この納得感は、工事後の満足度にも直結します。
4. 将来のメンテナンスに役立つ記録が残る
アプリに蓄積された写真や工程記録は、将来のメンテナンス時に貴重な資料となります。
- 前回どの塗料を使ったか
- どの部分を補修したか
- 工事から何年経過したか
これらの情報があれば、次回の塗り替え時に適切な判断ができます。
施主向け施工管理アプリの機能
カンバンボードで21工程を可視化
外壁塗装の工程を「未着手」「進行中」「完了」の3列で管理します。
どの工程が終わり、今どこにいるのかが一目で分かります。業者が工程を更新するたびに通知が届くので、毎日現場に行く必要はありません。
LINE通知でリアルタイム把握
専用アプリをインストールする必要はありません。普段使っているLINEに通知が届きます。
「本日、高圧洗浄が完了しました」「中塗り後、4時間の乾燥時間を確保します」
こうした報告がリアルタイムで届くので、仕事中でも進捗を把握できます。
写真記録で「見えない工程」を保存
各工程で撮影された写真がアプリに記録されます。
特に重要なのは、仕上がった後では確認できない工程の写真です。
- 高圧洗浄前後の比較
- 下地補修の状況
- 下塗り完了時の状態
- 使用した塗料缶の品番
これらの写真は、万が一のトラブル時に証拠となります。
塗料混合計算で適正量をチェック
塗料は適正な量を使用する必要があります。薄めすぎれば耐久性が落ち、少なすぎれば塗膜が薄くなります。
アプリの計算機能を使えば、外壁面積と塗料の種類から「必要な塗料缶数」を算出できます。見積書の缶数と比較することで、塗料の「間引き」を防げます。
乾燥時間の管理
塗料メーカーが指定する乾燥時間は、品質を左右する重要な要素です。
アプリが乾燥時間を管理し、「中塗り後○時間経過。上塗り可能です」といった通知を出します。急いで塗り重ねることによる品質低下を防げます。
アプリ導入のタイミングと流れ
ベストなタイミングは「契約後・着工前」
施工管理アプリは、工事が始まってからでは遅いケースがあります。
契約後、着工前に導入し、業者に「このアプリで進捗を共有してほしい」と伝えるのがベストです。
導入から活用までの流れ
Step 1:契約後すぐにアプリを準備
契約が決まったら、着工前にアプリをセットアップします。工程表の雛形、チェックリストなど、必要な設定を済ませておきます。
Step 2:業者に共有方法を伝える
「写真はこのLINEに送ってください」「工程が進んだら連絡をください」
業者に負担をかけない形で、報告方法を伝えます。多くの業者は、施主からの具体的なリクエストには対応してくれます。
Step 3:工事中は通知で進捗を確認
毎日現場に行く必要はありません。通知で進捗を確認し、気になる点があれば質問します。
特に確認すべきタイミングは以下の3つです。
- 高圧洗浄の翌日(乾燥時間の確保)
- 中塗り完了時(3回塗りの確認)
- 足場解体前(最終チェック)
Step 4:完了後は記録を保存
工事が完了したら、写真記録と工程履歴を保存します。次回のメンテナンス時に役立つ資料になります。
業者に嫌がられない?上手なコミュニケーション方法
「監視」ではなく「共有」のスタンス
施工管理アプリを導入する際、業者に「監視されている」と感じさせないことが大切です。
NG:「手抜きされないか心配なので、全部写真を撮ってください」
OK:「工事の記録を残しておきたいので、進捗を共有していただけますか」
「共有」「記録」という言葉を使い、協力をお願いするスタンスで伝えましょう。
信頼できる業者は歓迎する
実は、まともな業者ほど施主の関心を歓迎します。
「ちゃんと見てくれる施主は、工事後のクレームも少ない」「透明性を求める施主は、品質を理解してくれる」
逆に、施工管理の共有を強く拒否する業者は、何か隠したいことがあるのかもしれません。業者選びの判断材料にもなります。
報告の負担を最小限に
業者に過度な負担をかけると、協力を得にくくなります。
- 報告は1日1回程度
- 写真は工程の区切りごと
- 細かい指示は出さず、進捗報告のみ依頼
このくらいの負担感であれば、ほとんどの業者は対応してくれます。
よくある質問(FAQ)
Q. アプリを使うのにITスキルは必要ですか?
A. LINEが使えれば問題ありません。通知を受け取り、写真を確認するだけなので、特別なスキルは不要です。
Q. 業者がアプリ対応を拒否したらどうすればいいですか?
A. アプリを使わなくても、「LINEで写真を送ってほしい」とお願いする方法があります。それも難しい場合は、業者の姿勢を見直す材料にしてもよいでしょう。
Q. 費用はいくらかかりますか?
A. 施主向け施工管理アプリは月額1,980円〜29,800円程度です。100万円以上の工事に対して、数千円の「品質担保の保険」と考えれば、費用対効果は高いと言えます。
Q. 工事途中からでも導入できますか?
A. 可能ですが、ベストは契約後・着工前です。工事が進んでからだと、すでに終わった工程の記録が残りません。
Q. 業者向けの施工管理アプリを施主が使うことはできますか?
A. 業者が導入していれば、施主用アカウントを発行してもらえる場合があります。ただし、見られる情報は業者が選別したものに限られます。施主が主導権を持つには、施主向けアプリの方が適しています。
まとめ:施主が「見る」ことで品質は変わる
外壁塗装の品質は、塗料のグレードや職人の腕だけで決まるものではありません。
「施主が見ているかどうか」
これが、現場の意識と仕上がりに大きな影響を与えます。
施工管理アプリは、施主が「見る」ための道具です。
- 21工程の進捗を可視化
- 写真記録で「見えない工程」を保存
- LINE通知でリアルタイムに把握
- 塗料計算・乾燥時間管理で品質をチェック
「業者に任せるしかない」時代は終わりました。
契約が決まったら、着工前に施工管理アプリを準備しましょう。あなたの「見ている」という姿勢が、工事の品質を高めます。
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この記事は、塗装業50年の経験を持つ職人監修のもと作成されています。
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