この記事の監修者
ヨコイ塗装 代表 横井隆之
愛知県で50年続く塗装店の2代目。200件以上の施工実績を持ち、著書に『外壁塗装の不都合な真実』『塗装方程式』『外壁塗装 工程別チェックポイント21』(Kindle)がある。見積もり診断サービス「ペンキのミカタ」を運営し、全国の施主に中立的なアドバイスを提供している。
はじめに:下地処理が品質の8割を決める
「塗装は3回塗りだから安心」と思っていませんか?
実は、外壁塗装の品質を決めるのは塗装そのものではなく、その前の下地処理です。私の経験上、塗装の仕上がりと耐久性の8割は下地処理で決まります。
下地処理とは、塗装前に外壁を整える工程のこと。高圧洗浄、ケレン、クラック補修、下塗りなどが含まれます。
ところが、下地処理は塗装後に見えなくなる工程です。だからこそ、手抜きされやすいポイントでもあります。
この記事では、下地処理に関する5つの手抜きパターンと、施主が見抜くための確認方法を解説します。
なぜ下地処理が重要なのか
塗装方程式で考える
私は著書『塗装方程式』で、塗装の品質を決める要素を次の式で表しています。
品質 = モチベーション × 技術 × 時間
下地処理は、この中の「時間」に大きく関わります。
下地処理を丁寧にやると、当然時間がかかります。時間がかかれば人件費がかさむ。だから、利益を優先する業者は下地処理を省略しがちなのです。
下地処理を省略するとどうなるか
下地処理が不十分だと、以下の問題が起きます。
- 塗膜の剥がれ:汚れや古い塗膜の上に塗ると、密着せず数年で剥がれる
- 塗料の性能低下:下塗りが不十分だと、上塗り塗料の性能が発揮されない
- 耐用年数の短縮:10年持つはずの塗装が5〜6年で劣化する
つまり、見た目は綺麗でも、数年後に必ず差が出るのが下地処理です。
下地処理の手抜き5パターン
パターン1:高圧洗浄が不十分
最も基本的な下地処理が高圧洗浄です。
外壁には、ホコリ、カビ、コケ、排気ガスの汚れ、そしてチョーキング(古い塗膜の粉化)が付着しています。これらを完全に除去しないと、塗料が外壁に密着しません。
手抜きのパターン:
- 汚れがひどい箇所を飛ばす
- 水圧が弱く、チョーキングが残る
- 半日で終わらせる(30坪なら最低1日必要)
見抜き方:
- 洗浄後、白い手袋で外壁を触る → 粉が付いたらチョーキングが残っている
- 洗浄前後の写真を依頼する
- 工程表で洗浄に1日確保されているか確認
パターン2:ケレン作業の省略
ケレンとは、サビや古い塗膜を削り落とす作業です。
特に鉄部(雨戸、手すり、鉄骨階段など)では必須の工程。ケレンをせずに塗装すると、サビの上に塗ることになり、内部からサビが進行して塗膜が剥がれます。
手抜きのパターン:
- サビの上から直接塗装
- 電動工具を使わず、手作業で軽く擦るだけ
- 見えにくい裏側や高所を省略
見抜き方:
- 見積書に「ケレン」の項目があるか確認
- ケレン作業中の写真を依頼する
- 鉄部の錆止め塗料の有無を確認
パターン3:クラック補修の省略・手抜き
外壁のひび割れ(クラック)は、補修してから塗装するのが基本です。
ひび割れをそのまま塗装しても、塗膜でカバーできるのはごく表面だけ。すぐにひび割れが再発し、そこから雨水が侵入します。
手抜きのパターン:
- ひび割れを無視してそのまま塗装
- シーリング材を薄く塗るだけ(深いひび割れにはVカット・Uカット工法が必要)
- 構造クラック(0.3mm以上)を軽微なひび割れとして処理
見抜き方:
- 見積書に「クラック補修」の項目と箇所数が明記されているか
- 補修方法(シール充填、Vカット、Uカットなど)が記載されているか
- 補修前後の写真を依頼する
パターン4:下塗りの省略・不適切な選択
下塗りは、外壁と上塗り塗料を密着させる接着剤の役割を果たします。
下塗りを省略したり、外壁の状態に合わない下塗り材を使うと、上塗り塗料がいくら高性能でもその性能を発揮できません。
手抜きのパターン:
- 下塗りを省略して中塗りから始める
- 劣化がひどい外壁にシーラーだけで済ませる(本来はフィラーが必要)
- 下塗り材を規定以上に薄める
外壁の状態と適切な下塗り材:
【外壁の状態と適切な下塗り材】
・劣化が軽微 → シーラー
・劣化が中程度 → 微弾性フィラー
・劣化がひどい → 厚膜フィラー
・ALC外壁 → 微弾性フィラー以上
見抜き方:
- 見積書に下塗り材の製品名が記載されているか
- 「下塗り」と「中塗り」が別工程として記載されているか
- 外壁の劣化状態に対して適切な下塗り材が選ばれているか
パターン5:乾燥時間の無視
各工程の間には、塗料メーカーが指定する乾燥時間が必要です。
下地処理でも同様。高圧洗浄後、外壁が乾く前に塗装を始めると、水分が閉じ込められて塗膜の剥がれや膨れの原因になります。
手抜きのパターン:
- 高圧洗浄した翌日に塗装開始(本来は2〜3日乾燥が必要な場合も)
- 雨の翌日にすぐ作業再開
- クラック補修のシーリング材が乾く前に塗装
見抜き方:
- 工程表で洗浄後に乾燥日が確保されているか
- 「雨天時の対応」を事前に確認する
- 天候不良が続いた場合の工期延長について契約書に記載があるか
人工(にんく)で下地処理の手抜きを見抜く
人工(にんく)とは、職人1人が1日働く作業量のこと。
見積書の金額だけでなく、下地処理にどれだけの人工が割かれているかを確認することで、手抜きを見抜けます。
30坪住宅の下地処理・人工の目安
【30坪住宅の下地処理・人工の目安】
・高圧洗浄:標準1人工 / 手抜き業者0.5人工
・ケレン・目荒らし:標準1〜2人工 / 手抜き業者は省略
・クラック補修:標準0.5〜1人工 / 手抜き業者は省略
・下塗り:標準1〜1.5人工 / 手抜き業者0.5人工
・合計:標準3.5〜5.5人工 / 手抜き業者1人工以下
下地処理だけで3〜5人工は必要です。全体の工期が短すぎる業者は、下地処理を省略している可能性が高いと言えます。
適正工期の目安
30坪の住宅で外壁塗装を行う場合の適正工期:
- 標準:10〜14日
- 高品質:15〜20日
- 要注意:10日未満
10日未満で完了する見積もりは、下地処理が省略されている可能性を疑ってください。
下地処理をチェックする5つの質問
見積もり時に以下の質問をしてみてください。業者の対応で信頼性がわかります。
- 「高圧洗浄は何日かけますか?」
→ 30坪なら最低1日は必要 - 「下塗り材は何を使いますか?」
→ 製品名を即答できる業者は信頼できる - 「クラック補修の方法を教えてください」
→ 補修方法と箇所数を説明できるか - 「下地処理と塗装、それぞれ何人工かかりますか?」
→ 人工を意識している業者は品質重視 - 「工程写真は撮ってもらえますか?」
→ 下地処理の写真を残す業者は手抜きしない
人工(にんく)理論の視点
下地処理の手抜き5パターンに共通する原因は、下地処理に割り当てる人工の不足です。30坪の住宅の下地処理には、クラック補修・ケレン・シーリング処理を含めて最低4〜5人工が必要。全体25人工のうち約2割を占める重要工程です。しかし工期を短縮したい業者は、真っ先に下地処理の人工を削ります。見えない工程だから施主にバレにくい。見積もり時に「下地処理は何人工ですか?」と聞くことが、最も有効な防御策です。
人工理論の詳しい解説は「人工(にんく)理論 完全講義」をご覧ください。
まとめ
下地処理に関する手抜き5パターンを解説しました。
- 高圧洗浄が不十分
- ケレン作業の省略
- クラック補修の省略・手抜き
- 下塗りの省略・不適切な選択
- 乾燥時間の無視
見抜くポイント:
- 見積書に各工程が明記されているか
- 工程表で十分な日数が確保されているか
- 人工(にんく)で作業量を確認
- 下地処理の写真を依頼する
下地処理は塗装後に見えなくなります。だからこそ、契約前に確認することが重要です。
関連リンク
- 人工(にんく)理論 完全講義|原価から適正品質を見極める →
- 外壁塗装の手抜き工事|27の手口と防止術 →
- コーキング手抜き5パターン →
- 見守り塗装(ペイント)の詳細はこちら →
- 見積もり診断サービス(セカンドオピニオン)はこちら →
- Kindle本『外壁塗装 工程別チェックポイント21』はこちら →
---
関連記事
- 外壁塗装の予行演習|100万円の工事を『ぶっつけ本番』にしない21工程ガイド
---
手抜き工事シリーズ
この記事の解説動画
品質の8割を決める下地処理の手抜き5パターン
見積書、このままで大丈夫?
50年の現場経験を持つ診断アドバイザーが、あなたの見積書をチェックします。 適正価格か、工程に問題はないか、第三者の目で確認してみませんか?
無料で相談する※ 営業目的の連絡は一切いたしません
プロが使う人工数比較シートを無料プレゼント
見積書の「人工数」を比較して、手抜き業者を見抜く
※ 個人情報は厳重に管理し、第三者に提供することはありません