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下塗り材が1種類の見積書は、なぜ3年で剥がれるのか|21工程C-1チェックポイント

見積書の下塗り材が「シーラー一式」の1種類だけなら危険信号。住宅は5つの素材で構成され、それぞれに適した下塗り材が必要。21工程C-1チェックポイントで部位別指定の有無を確認する方法を解説。

著者: 横井隆之

見積書の下塗り材が「シーラー」1種類なら、破風のサビ止め・軒天の浸透シーラー・雨樋のプライマーが省略されている可能性が高い。住宅は外壁・鉄部・木部・塩ビが混在する複合体。1種類の下塗りで全部位をカバーすることは、技術的に不可能です。

下塗り材が1種類の見積書は、なぜ3年で剥がれるのか


あなたの家は「5つの素材」でできている

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外壁塗装と聞くと、壁を塗ることだけを想像する方が多いかもしれません。しかし実際には、住宅の外部は最低でも5つの異なる素材で構成されています。

1つ目は外壁本体。窯業系サイディング、モルタル、ALCなど。2つ目は鉄部。水切り、笠木、手すり、バルコニーの柵。3つ目は木部。破風板、鼻隠し、窓枠。4つ目は塩ビ(PVC)。雨樋と幕板。5つ目はケイカル板。軒天井に使われています。

この5つの素材は、吸水率も伸縮率も表面の性質もまったく違います。外壁のサイディングはセメント系で吸水しやすい。鉄部はサビが大敵。木部はヤニを出す。塩ビはツルツルで塗料が乗りにくい。ケイカル板は湿気がこもりやすい。

5つの素材に5つの下塗り材が必要です。見積書に下塗り材が1種類しか書いていなければ、残りの4素材は「間違った接着剤」で塗られることになる。


素材×下塗り材の正解マトリックス──間違えると何が起きるか

『外壁塗装 工程別チェックポイント21』のC-1(下塗り部位別指定)で定義している、素材と下塗り材の正しい組み合わせを一覧にします。

部位素材正しい下塗り材代表製品間違った場合の結果
外壁窯業系サイディングエポキシ系シーラー or サーフェイサーパーフェクトサーフ(日本ペイント)/ マイルドSDサーフ(SK化研)吸い込み過多→艶引け・色ムラ
外壁モルタル微弾性フィラー or カチオン系シーラー水性ミラクシーラーエコ(SK化研)クラック再発→雨水侵入
外壁ALC厚膜型フィラー水性ソフトサーフエポ(SK化研)吸水→凍害→爆裂
破風・鼻隠し木部浸透型木部用シーラー(ヤニ止め付)1液ファインウレタン木部用下塗(日本ペイント)ヤニ染み出し→変色
水切り・手すり鉄部エポキシ防錆プライマー1液ハイポンファインデクロ(日本ペイント)/ SK#8000プライマー(SK化研)サビ再発→2〜3年で塗膜浮き
雨樋塩ビ(PVC)塩ビ専用プライマーパーフェクトプライマー(日本ペイント)可塑剤移行→密着不良→剥離
軒天ケイカル板カチオン系透湿シーラー湿気閉じ込め→膨れ・カビ

この表のポイントは、「間違った場合の結果」がすべて異なることです。外壁の失敗は色ムラ。鉄部の失敗はサビ。雨樋の失敗は剥離。軒天の失敗はカビ。症状が違うということは、原因も違うということ。1種類の下塗りで全部の失敗を防ぐことは、原理的に不可能なのです。

窯業系サイディングに微弾性フィラーを塗る業者がいます。メーカーは明確にNGとしている。理由は熱膨れです。 しかし、フィラーは厚みがあるため「塗った感」が出やすく、手っ取り早い。こういう「正しい手順の手抜き」が最も危険です。


「シーラー一式」の見積書を受け取ったら──3つの確認質問

見積書に「下塗り:シーラー一式」とだけ書かれていたら、業者に3つの質問をぶつけてください。

質問①:「下塗り材は外壁と付帯部で分けますか?」

「全部シーラーです」と即答されたら、部位別指定をしていない可能性が高い。先ほどの表を見れば、外壁と鉄部と木部と塩ビで同じシーラーを使うことが技術的にありえないことがわかるはずです。

質問②:「雨樋には何を塗りますか?」

「外壁と同じです」と言われたら、塩ビ専用プライマーを使わないということです。塩ビ製の雨樋(住宅の90%以上がこれ)は表面がツルツルで、一般的なシーラーでは密着しません。さらに塩ビ特有の可塑剤が移行して、2〜3年で塗膜がベロベロに剥がれます。

質問③:「軒天の下塗りは透湿性ですか?」

軒天は建物の中で最も湿気がこもりやすい場所です。透湿性のないフィラーで塞いでしまうと、内部の水蒸気が逃げ場を失い、塗膜の膨れやカビの原因になります。カチオン系の透湿シーラーが適正です。

この3つの質問に答えられない業者は、住宅を「1つの素材」として扱っている。それは塗装ではなく、ペンキを塗っているだけです。


下塗り部位別指定で1〜2人工増える──その「手間」が10年を守る

部位別に下塗り材を使い分けると、どれくらい手間が増えるのか。

一律塗装(シーラー1種類)の場合、下塗り工程は1.0〜1.5人工で終わります。材料の入れ替えも道具の洗浄もなく、ローラーで一気に塗れるからです。

部位別最適化の場合、約1.8〜2.0人工かかります。内訳は、外壁の下塗り1.0〜1.2人工、鉄部の防錆プライマー0.3人工、木部の専用シーラー0.3人工、雨樋・付帯部のプライマー0.2人工。材料を入れ替えるたびに刷毛やローラーを洗浄し、乾燥時間の管理も部位ごとに異なるため、一律塗装の約1.5倍の工数になります。

差はわずか0.5〜1人工。日当換算で9,000〜18,000円の差額です。

この9,000〜18,000円で、雨樋の剥離、軒天のカビ、破風のサビを10年間防げます。この差額を「高い」と感じさせてしまうのが、金額で並べる比較の限界です。

C1で解説した「一式表記」の問題が、ここでも起きています。「下塗り一式」と書かれた瞬間、部位別指定は放棄されている。一式表記の見積書で下塗り材が何種類使われるかを確認する方法は、「見積書の『一式』表記に隠れる3〜5人工の消失」で詳しく解説しています。

手元の見積書に不安があれば「見積書チェック完全ガイド【20項目】」で人工理論に基づく判定ができます。


「2〜3年後の剥離」という時限爆弾──なぜ施工直後にはわからないのか

下塗り材の選定ミスによる不具合は、塗装直後には発覚しません。これが消費者にとって最大の脅威です。

メカニズムはこうです。塗装直後の塗膜はまだ柔軟性を保っています。不十分な密着力でも、新しい塗膜の自重を支えることはできる。しかし時間が経つにつれ、塗膜は徐々に硬化していきます。同時に、太陽熱による昼夜の温度差で外壁は膨張と収縮を繰り返す。この伸縮の応力が界面(下地と塗膜の接合面)に蓄積されていく。

そしてある日、突然、塗膜が下地から浮き上がる。

特に危険なのが、窯業系サイディングの劣化が進んだ状態で、安価な水性シーラーを1回塗っただけで済ませるケースです。劣化したサイディングは吸水率が上がっているため、シーラーの樹脂分を全部吸い込んでしまう。その上に塗った上塗り材の樹脂分も下地に引き込まれ、表面に残るのは樹脂不足の脆い塗膜。

15年持つはずのフッ素塗料が3年で剥がれる。「塗料が悪い」のではない。下塗りが間違っていた。30万円高いフッ素を選んでも、下塗りが1種類なら3万円のシリコンと同じ寿命です。

住宅相談統計年報2024のデータでは、リフォーム不具合事象の最多が「はがれ」で17.6%。この数字の背景には、下塗り選定ミスという「見えない原因」が潜んでいます。


人工理論で見ると|下塗りの「0.5人工の差」が品質の分水嶺

塗装方程式 Q=M×T×T のT(時間=人工)の中で、下塗り工程は最も「差がつきやすい」工程です。

理由は単純。上塗りは仕上がりが目に見えるため、手を抜くと施主にバレます。しかし下塗りは、上塗りで完全に隠れてしまう。省略しても、施工直後はわからない。だからこそ、コストカットの標的にされやすい。

部位別指定をするかしないかの差はわずか0.5〜1人工。全体の22〜28人工から見ればわずか数%の差です。

しかし、この0.5人工が全部位の密着性を左右する。上塗りの耐候性、色の美しさ、保護機能——すべてが下塗りの密着の上に成り立っている。基礎のない建物が倒壊するように、下塗りのない塗膜は剥がれる。

「0.5人工をケチったことで、10年後に100万円の塗り直し」。この因果関係を知っていれば、見積書の見方が変わります。

人工理論の全体像は「人工理論完全講義」で詳しく解説しています。


あなたの見積書、下塗り材は何種類書いてありますか?

手元の見積書を開いて、下塗りの欄を見てください。「シーラー」「プライマー」「フィラー」——何種類の下塗り材が記載されていますか?

もし1種類だけなら、AI見積もり診断で確認してみてください。

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※中立性を保つため、愛知県内の方へはサービスを提供しておりません。

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この記事の監修者

横井隆之|愛知県で50年続く塗装店「ヨコイ塗装」2代目。施工実績500件以上。

著書:

  • 『外壁塗装の不都合な真実』
  • 『塗装方程式』
  • 『外壁塗装 工程別チェックポイント21』

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この記事の著者

横井隆之

横井隆之

ヨコイ塗装 代表 / 外壁塗装コンサルタント

業界経験 50著書 3

愛知県扶桑町でヨコイ塗装を経営。塗装業界50年以上の経験と500件を超える施工実績を持つ外壁塗装の専門家。施主の立場に立った公正なアドバイスを提供し、YouTube、ココナラ、MOSHなど複数のプラットフォームでセカンドオピニオンサービスを展開中。

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