「下塗りって、何のためにやるんですか?」
外壁塗装の見積もりを見ても、「下塗り」「中塗り」「上塗り」と書いてあるだけ。それぞれの役割を理解している施主は、ほとんどいません。
しかし、下塗りは外壁塗装で最も重要な工程です。
下塗りが不十分だと、どんなに高級な仕上げ塗料を使っても、数年で剥がれてしまいます。逆に言えば、下塗りさえしっかりしていれば、塗装は長持ちします。
この記事では、塗装業50年の経験から、下塗り完了時に施主が確認すべきポイントと、色を見るだけで分かるチェック法を解説します。
この記事で分かること
- 下塗りの役割と重要性
- 下塗り材の種類と色の違い
- 下塗り完了時に確認すべき5つのポイント
- 色で分かる「下塗りOK」のサイン
- 下塗りの手抜きパターンと見分け方
下塗りの役割と重要性
下塗りは「接着剤」
下塗り材は、外壁(下地)と仕上げ塗料をつなぐ「接着剤」の役割を果たします。
外壁の素材(モルタル、サイディング、ALC等)と仕上げ塗料は、そのままでは密着しにくい組み合わせがあります。下塗り材が両者の間に入ることで、しっかりと密着し、塗膜が長持ちするのです。
下塗りを省くと何が起こる?
下塗りを省略すると、以下の問題が発生します。
- 塗膜の剥がれ(1〜3年後):密着不良が原因
- 塗膜の膨れ(1〜2年後):下地からの水分が原因
- 色ムラ・吸い込みムラ(完成直後):下地の吸い込み差が原因
- チョーキング(白化)の早期発生(2〜5年後):塗膜の劣化が原因
下塗りの省略は、最も発覚しにくい手抜きです。仕上げ塗料を塗ってしまえば、下塗りの有無は分かりません。問題が発覚するのは数年後。その頃には因果関係の証明が困難になります。
下塗り材は「見えなくなる」からこそ重要
外壁塗装の3回塗りのうち、下塗りだけは完全に見えなくなります。
中塗りと上塗りは同じ仕上げ塗料を使いますが、下塗り材は別の塗料です。仕上げ塗料の下に隠れてしまうため、完成後に「下塗りをしたかどうか」を確認する方法はありません。
だからこそ、下塗り完了時に確認することが重要なのです。
下塗り材の種類と色の違い
下塗り材には主に3種類あり、それぞれ色が違います。この色の違いを知っておくと、施主でも下塗りの確認ができます。
シーラー(浸透性下塗り材)
色:透明〜乳白色
シーラーは、下地に浸透して固める役割を持つ下塗り材です。
特徴:
- 透明または薄い乳白色
- サラサラした液状
- 下地に染み込んで固める
- チョーキングした外壁の粉を固定
使用される外壁:
- 状態の良いモルタル外壁
- 状態の良いサイディング外壁
- 軽度のチョーキングがある外壁
見分け方:
塗った直後は濡れた感じに見えますが、乾燥するとほぼ透明になります。下地の色がそのまま見える状態です。
フィラー(厚膜型下塗り材)
色:白〜クリーム色
フィラーは、下地の凹凸を埋めて平滑にする役割を持つ下塗り材です。
特徴:
- 白色またはクリーム色
- ドロドロした粘度の高い液状
- 下地の細かいひび割れを埋める
- 塗膜に厚みがつく
使用される外壁:
- 細かいひび割れがあるモルタル外壁
- 凹凸の多いリシン・スタッコ仕上げ
- 吸い込みの激しい外壁
見分け方:
塗ると外壁が白っぽくなります。乾燥後も白〜クリーム色が残り、下地の色は見えなくなります。
プライマー(密着性向上下塗り材)
色:透明〜灰色(素材による)
プライマーは、特定の素材に対する密着性を高める下塗り材です。
特徴:
- 透明〜灰色(鉄部用は錆止め入りで赤茶色も)
- 素材ごとに専用品がある
- 密着しにくい素材に使用
使用される外壁・部位:
- 金属サイディング
- ALC外壁
- 雨樋・破風などの塩ビ部材
- 鉄部(錆止めプライマー)
見分け方:
塗る素材によって色が異なります。塩ビ用は透明〜薄い色、鉄部用の錆止めは赤茶色やグレーが一般的です。
下塗り材の選定と外壁の関係
下塗り材は、外壁の素材と状態によって選定されます。適切な下塗り材が使われているか、見積書で確認しましょう。
- モルタル(状態良好)→ シーラー → ほぼ透明
- モルタル(ひび割れあり)→ フィラー → 白っぽい
- サイディング(状態良好)→ シーラー → ほぼ透明
- サイディング(チョーキング)→ シーラー → ほぼ透明〜乳白色
- ALC → 専用シーラー → 透明〜薄い色
- 金属サイディング → 金属用プライマー → 透明〜薄い色
- 鉄部(雨戸・手すり等)→ 錆止めプライマー → 赤茶色・グレー
見積書のチェックポイント:
- 下塗り材の製品名が明記されているか
- 「下塗り一式」ではなく、具体的な塗料名があるか
- 外壁の素材に適した下塗り材か
下塗り完了時に確認すべき5つのポイント
ポイント1:色が変わっているか
最も簡単なチェック法は、下塗り後の色の変化を見ることです。
シーラーの場合:
- 塗った直後:濡れたような光沢
- 乾燥後:ほぼ透明だが、わずかに光沢が出る
- 未塗装部分との違い:光の反射具合が違う
フィラーの場合:
- 塗った直後:白っぽい
- 乾燥後:白〜クリーム色
- 未塗装部分との違い:明らかに色が違う
確認方法:
下塗り前の写真と比較すると、変化が分かりやすいです。業者に「下塗り前」と「下塗り後」の写真を撮ってもらいましょう。
ポイント2:塗り残しがないか
下塗りは全面に均一に塗られている必要があります。
塗り残しが発生しやすい箇所:
- 入隅(内側の角)
- 出隅(外側の角)
- エアコン配管の裏側
- 給湯器・室外機の裏側
- 雨樋の裏側
- 窓枠まわり
確認方法:
足場があるうちに、これらの箇所を重点的に確認しましょう。シーラーは透明なので見分けにくいですが、塗った部分はわずかに光沢があります。
ポイント3:吸い込みムラがないか
外壁の状態によっては、下塗り材の吸い込みにムラが出ることがあります。
吸い込みムラとは:
外壁の一部だけ下塗り材を多く吸い込み、その部分だけ色や光沢が違って見える現象です。
吸い込みムラがある場合:
- 2回目の下塗り(増し塗り)が必要
- 吸い込みが激しい部分はフィラーに変更
確認方法:
下塗り完了後、外壁全体を見渡して、色や光沢に大きな差がないか確認します。ムラがある場合は、業者に相談しましょう。
ポイント4:乾燥時間は確保されているか
下塗り後は、規定の乾燥時間を置いてから中塗りに進む必要があります。
一般的な乾燥時間の目安:
- シーラー:2〜4時間以上
- フィラー:4〜8時間以上
- 冬季・曇天:上記の1.5〜2倍
確認方法:
工程表を確認し、下塗りと中塗りが同じ日に行われていないかチェックします。同じ日の場合、乾燥時間が不十分な可能性があります。
ポイント5:下塗り材の缶を確認する
最も確実な確認方法は、使用した下塗り材の缶を見せてもらうことです。
確認すべき点:
- 見積書に記載された製品名と一致しているか
- 使用量は適正か(缶の数)
- 有効期限内の製品か
お願いの仕方:
「使用した下塗り材の缶を見せていただけますか?」
「見積書に書いてある製品と同じか確認させてください」
色で分かる「下塗りOK」のサイン
シーラー塗装後のOKサイン
シーラーは透明なので確認が難しいですが、以下のサインを見ましょう。
OKのサイン:
- 外壁全体にわずかな光沢がある
- チョーキング(白い粉)が固まっている
- 触っても粉が手につかない
- 乾燥後、外壁が「締まった」感じになる
NGのサイン:
- 部分的に光沢がない(塗り残し)
- 触るとまだ粉っぽい
- 吸い込みムラが激しい
フィラー塗装後のOKサイン
フィラーは白色なので、確認しやすいです。
OKのサイン:
- 外壁全体が白〜クリーム色に変わっている
- 細かいひび割れが埋まっている
- 塗膜に厚みが感じられる
- 色が均一
NGのサイン:
- 部分的に下地の色が見えている(塗り残し)
- ひび割れが埋まっていない
- 色ムラがひどい
錆止めプライマー塗装後のOKサイン
鉄部の錆止めは赤茶色やグレーなので、最も確認しやすいです。
OKのサイン:
- 鉄部全体が赤茶色(またはグレー)に変わっている
- 錆が見えなくなっている
- 塗膜が均一
NGのサイン:
- 錆がまだ見えている
- 部分的に鉄の色が見えている
- 塗りムラがひどい
下塗りの手抜きパターンと見分け方
パターン1:下塗りの省略
最も悪質な手抜きは、下塗り自体を省略することです。
見分け方:
- 下塗り完了時の写真がない
- 工程表に「下塗り」の日がない
- 足場設置後すぐに仕上げ塗料を塗っている
対策:
下塗り完了時に連絡をもらい、現場を確認する。または写真を送ってもらう。
パターン2:下塗りの薄塗り
下塗り材を規定より薄く塗って、材料費を浮かせる手抜きです。
見分け方:
- シーラー後も吸い込みムラがひどい
- フィラー後も下地の色が透けて見える
- 使用した缶の数が計算より少ない
対策:
下塗り材の缶数を事前に計算し、空き缶の数と照合する。
パターン3:不適切な下塗り材の使用
外壁の素材や状態に合わない下塗り材を使う手抜きです。
見分け方:
- 見積書の下塗り材と実際に使った製品が違う
- 外壁の状態に対して明らかに薄い下塗り材(本来フィラーが必要なのにシーラーを使う等)
対策:
見積書に記載された下塗り材の缶を確認する。製品名が一致しているか照合する。
パターン4:乾燥時間の無視
下塗り後、規定の乾燥時間を置かずに中塗りに進む手抜きです。
見分け方:
- 下塗りと中塗りが同じ日
- 工期が極端に短い
- 乾燥前に中塗り塗料を重ねると、内部に水分が閉じ込められる
対策:
工程表を確認し、各工程の間に適切な間隔があるか確認する。
下塗り完了時のチェックリスト
下塗り完了時に確認すべきポイントをリストにまとめました。
確認チェックリスト
- 下塗り前と後で色・光沢に変化があるか
- 塗り残しがないか(特に入隅・裏側)
- 吸い込みムラがないか
- 見積書に記載された下塗り材と同じ製品が使われているか
- 下塗り材の缶を確認したか
- 下塗り完了の写真を撮ってもらったか
- 乾燥時間は確保されているか(同日に中塗りしていないか)
写真記録のポイント
下塗り完了時に以下の写真を撮ってもらいましょう。
- 外壁全景(四方から)
- 近景(塗り具合が分かる距離)
- 入隅・出隅(塗り残しやすい箇所)
- 使用した下塗り材の缶(ラベルが見えるように)
- 缶の数(計算通りの使用量か確認)
よくある質問(FAQ)
Q. シーラーは透明なので、塗ったかどうか分からないのですが…
A. 確かにシーラーは透明で分かりにくいですが、以下の方法で確認できます。
- 塗った直後は「濡れた」ような光沢がある
- 乾燥後も、未塗装部分と比べると光沢が違う
- チョーキングがあった外壁は、触っても粉がつかなくなる
- 下塗り材の空き缶を確認する
Q. フィラーを塗った後、白っぽいままで大丈夫ですか?
A. 大丈夫です。フィラーは白〜クリーム色なので、塗った後は白っぽくなります。この上に中塗り・上塗りを重ねると、最終的な仕上げ色になります。
Q. 下塗りは1回で十分ですか?
A. 外壁の状態によります。吸い込みが激しい場合や、チョーキングがひどい場合は、2回塗り(増し塗り)が必要なこともあります。下塗り完了後に吸い込みムラがある場合は、業者に相談しましょう。
Q. 下塗りと中塗りが同じ日でも大丈夫ですか?
A. 基本的にはNGです。下塗り材には「塗り重ね可能時間」が設定されており、最低でも2〜4時間以上の乾燥が必要です。ただし、夏場の好天であれば、午前に下塗り→午後に中塗りという段取りは可能な場合もあります。重要なのは、乾燥状態を確認してから次の工程に進むことです。
Q. 鉄部の錆止めが赤茶色なのですが、上から塗っても色は透けませんか?
A. 透けません。錆止めプライマーの上に中塗り・上塗りを重ねれば、仕上げ色で完全に覆われます。むしろ、錆止めの赤茶色が見えるということは、しっかり下塗りされている証拠です。
まとめ:下塗りは「色」で確認できる
下塗りは外壁塗装で最も重要な工程ですが、仕上げ塗料の下に隠れてしまうため、完了時に確認しないと手遅れになります。
下塗り材の色を知っておきましょう:
- シーラー:透明〜乳白色
- フィラー:白〜クリーム色
- 錆止めプライマー:赤茶色・グレー
下塗り完了時の確認ポイント:
- 色・光沢の変化を確認
- 塗り残しがないか確認
- 吸い込みムラがないか確認
- 下塗り材の缶を確認
- 乾燥時間が確保されているか確認
「見えなくなる」工程だからこそ、下塗り完了時が唯一のチェックチャンスです。業者に写真を送ってもらうか、可能であれば現場を訪問して確認しましょう。
施工管理アプリで下塗りを確認
施工管理アプリでは、下塗り完了時の記録と確認が自動化されています。
- 下塗り完了時にLINEで通知
- 写真記録がクラウドに保存
- 使用塗料の缶数を自動計算
- 乾燥時間のチェック機能
「下塗りをちゃんとやってくれたかな…」という不安を解消できます。
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この記事は、塗装業50年の経験を持つ職人監修のもと作成されています。
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