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外壁塗装の手抜き工事を防ぐ施工チェック完全ガイド

監修:横井隆之|塗装業50年・施工500件超・著書3冊

業者を決めて契約を済ませた。あとは工事が終わるのを待つだけ——そう思っていませんか?

実は、外壁塗装のトラブルのほとんどは「契約後」に起きます。見積書が適正でも、施工の現場で手抜きが行われれば、塗膜は数年で劣化します。

手抜き工事は「悪い職人」だけの問題ではありません。予算と工期の制約から構造的に発生する問題です。この記事では、手抜きが起きる構造的原因を理解し、施主自身が工事中にチェックできる具体的な方法を解説します。

「自分の家の工事は自分で守る」——この意識が、手抜き工事を防ぐ最大の武器です。

▶ 動画解説:下塗り材1種類の見積書が危険な理由

外壁塗装の手抜き工事はなぜ起きるのか──人工不足という構造的原因

手抜き工事と聞くと、「悪質な業者が意図的に手を抜く」というイメージがあるかもしれません。もちろんそういうケースもありますが、実態はもう少し複雑です。

多くの手抜きは、予算不足→人工(にんく)不足→時間不足という構造的な連鎖から生まれます。

30坪の外壁塗装をまともに仕上げるには、延べ25人工(職人が25日分働く作業量)が必要です。しかし、安い見積もりで受注すると人件費を圧縮せざるを得ず、15〜20人工で仕上げようとする。足りない5〜10人工分は、どこかの工程を省略するか、時間を短縮するしかありません。

私が50年の現場で辿り着いた品質の公式があります。

Q = Motivation × Technique × Time(品質 = やる気 × 技術 × 時間)

掛け算なので、Time(時間)がゼロに近づけば、いくらMotivation(やる気)やTechnique(技術)があっても品質は崩壊します。手抜き工事の本質は「時間の不足」であり、それは「人工の不足」と同義です。

大切なのは、この構造を理解した上で、施主自身が工事中にチェックする体制を整えることです。業者を信頼しつつも、確認の目を持つ——これが、手抜きを防ぐ最も現実的な方法です。

人工数と品質の関係について詳しくは「人工(ニンク)完全ガイド|工期と品質を見抜く方法」をご覧ください。

施工不良と人工数の関係を数値で確認したい方は「施工不良が起きる人工数の境界線」を参考にしてください。

手抜きの3大パターン:工程省略・時間短縮・材料削減

手抜き工事は大きく3つのパターンに分類できます。

パターン①:工程省略

最も多い手抜きパターンです。本来必要な工程をまるごと飛ばします。

・ケレン(素地調整)の省略:旧塗膜の研磨をせずに上から塗る

・下塗りの省略:下塗り材を塗らずに中塗りから始める

・3回塗りを2回に:中塗りと上塗りを1回で済ませる

施主から見えにくい理由:工程を飛ばしても、仕上がりの見た目はほぼ変わりません。差が出るのは2〜3年後です。

パターン②:時間短縮

工程自体は行うものの、必要な時間を確保しません。

・乾燥時間の無視:下塗りが乾く前に中塗りを重ねる

・高圧洗浄の時間不足:汚れが十分に落ちないまま塗装に入る

・1日に2工程:本来は別日にすべき工程を同日に行う

施主から見えにくい理由:「作業が早い=腕が良い」と誤解されやすく、むしろ好印象になることもあります。

パターン③:材料削減

使用する材料の量や質を落とします。

・塗料の過剰希釈:メーカー指定以上にシンナーで薄める

・コーキングの量を減らす:充填量が不足している

・指定と異なる塗料を使用:見積書と違うグレードの塗料を使う

施主から見えにくい理由:塗料の色は同じに見えるため、希釈率や使用量は外見ではわかりません。

以降のセクションでは、これら3つのパターンの中でも特に重要なポイントを深掘りします。

3回塗りの手抜きパターンを詳しく知りたい方は「塗装工程の手抜き5パターンと見分け方」をご覧ください。

下地処理の手抜きパターンについては「下地処理の手抜き5パターンと対策」も参考にしてください。

ケレン作業の省略──最も見えにくく、最もダメージが大きい手抜き

ケレン(素地調整)とは何か

ケレンとは、塗装前に外壁表面の旧塗膜、サビ、汚れを除去し、新しい塗料が密着しやすい状態にする作業です。サンドペーパーやワイヤーブラシ、電動工具を使って表面を研磨します。

地味な作業ですが、塗膜の密着性を左右する最も重要な工程です。

ケレンを省略するとどうなるか

旧塗膜の上にそのまま新しい塗料を重ねると、新旧の塗膜が密着せず、1〜2年で剥離(はくり)が始まります。

通常の塗膜であれば10年以上持つはずが、ケレン省略により2年で再塗装が必要になる——これは施主にとって最もコストの高い手抜きです。

見積書でケレンを確認する方法

見積書に「ケレン」「素地調整」「研磨」のいずれかの項目があるか確認してください。「下地処理一式」と書かれている場合は、「ケレンは含まれていますか?」と業者に確認しましょう。

コーキング(シーリング)の手抜きにも注意

サイディング外壁の場合、目地のコーキングも手抜きが多い箇所です。「打ち増し」(既存の上に重ねる)と「打ち替え」(既存を撤去してから充填)では品質が大きく異なります。見積書に「打ち替え」と記載されているかを確認してください。

コーキングの手抜き5パターンと見分け方は「コーキング手抜きの5パターン」で詳しく解説しています。

乾燥時間の短縮──気温・湿度別の正しい基準を知る

塗料メーカーが定める施工条件

ほぼすべての塗料メーカーが、以下の施工条件を定めています。

気温5℃以下、湿度85%以上では塗装不可

これは塗料の化学反応(硬化)が正常に進まないためです。この条件を無視して施工すると、塗膜の性能が大幅に低下します。

気温別の乾燥時間の目安

気温工程間の乾燥時間目安注意点
25℃以上(夏場)4時間以上直射日光で表面だけ乾き、内部が未硬化になることも
15〜25℃(春秋)6時間以上最も安定した施工条件
5〜15℃(冬場)8時間以上乾燥が遅いため、1日1工程が原則
5℃以下施工不可塗料が正常に硬化しない

コーキングの乾燥時間はさらに長く、打ち替え後24時間以上が必要です。

乾燥不足のリスク

ブリスタリング(膨れ):下層の塗料から揮発する溶剤が上層を押し上げ、水膨れのような状態になります。

密着不良:層間の密着が不十分で、塗膜がシート状に剥がれることがあります。

チョーキング(粉化)の早期発生:本来10年以上持つはずの塗膜が、3〜5年で粉状に劣化します。

乾燥時間の短縮は目に見えない手抜きです。だからこそ、「工事は何日かかりますか?」という質問が重要になります。工期が極端に短い場合は、乾燥時間が確保されていない可能性があります。

下塗り材の選び方と品質への影響については「下塗り材の科学|シーラーとフィラーの違い」をご覧ください。

3回塗りの確認方法──下塗り・中塗り・上塗りで何を見るか

外壁塗装が3回塗りである理由

外壁塗装は原則として3回塗り(下塗り・中塗り・上塗り)で行います。

工程役割省略した場合のリスク
下塗り(シーラー・フィラー)外壁と中塗り塗料の接着剤密着不良→剥離
中塗り(主材1回目)塗膜の厚みを確保膜厚不足→耐久性低下
上塗り(主材2回目)仕上げ・耐候性の確保紫外線・雨に弱くなる

2回塗りに減らされるパターン

最も多いのは「中塗りと上塗りを1回で済ませる」パターンです。同じ色の塗料を使うため、施主には2回塗ったか3回塗ったかの区別がつきません。

対策:中塗りと上塗りで色を変える(もしくは微妙に変える)ことを業者に依頼してください。色が違えば、塗り回数が一目瞭然です。一部のメーカーは中塗り専用の色を用意しています。

写真報告で塗り回数を確認する

各工程の施工前・施工後の写真を撮影し報告してもらうことで、3回塗りが行われたことを確認できます。特に以下のタイミングの写真が重要です。

① 下塗り完了時(外壁がシーラー/フィラーの色になっている)

② 中塗り完了時(主材の色に変わっている)

③ 上塗り完了時(仕上げの色・艶になっている)

外壁の劣化症状と塗装の必要性については「外壁劣化の12症状と緊急度判定」で詳しく解説しています。

施工中にチェックすべき7つのポイント【チェックリスト付き】

このチェックリストを印刷して、工事期間中に活用してください。

☐ 1. 足場設置後の養生確認

窓、サッシ、車、植栽がしっかり養生(ビニール等で保護)されているか確認してください。養生が雑な業者は、塗装作業も雑な傾向があります。

☐ 2. 高圧洗浄の実施確認

外壁全面が高圧洗浄されたか確認します。洗浄後は外壁が濡れて色が変わるので、見た目でわかります。部分的にしか洗浄されていない場合は要注意です。

☐ 3. ケレン・下地処理の実施確認

ケレン作業中は研磨粉が出ます。作業音も聞こえるはずです。見積書に「ケレン」が含まれているのに静かな日が続く場合は、省略されている可能性があります。

☐ 4. 各工程の写真報告の受領

下塗り・中塗り・上塗りのそれぞれについて、施工前と施工後の写真を受け取ってください。これが最も確実な品質証拠になります。

☐ 5. 乾燥時間の確保(工程間の日数)

工程表と照合して、下塗り→中塗り→上塗りの間に適切な日数が空いているか確認します。同日に2工程が進んでいたら、乾燥時間が不足しています。

☐ 6. 塗料缶の確認(メーカー・品番・数量)

使用済みの塗料缶を見せてもらってください。見積書に記載されたメーカー・品番と一致しているか、数量は外壁面積に対して適切かを確認します。空き缶チェックは施主ができる最も簡単な品質確認方法の一つです。

☐ 7. 完了検査の立ち会い

足場解体前に必ず完了検査に立ち会ってください。足場がなくなると、2階部分の確認が困難になります。塗りムラ、塗り残し、養生の剥がし忘れなどを目視でチェックします。

このチェックリストをPDFでダウンロードし、印刷して現場に持参してください。

手抜き防止のための5つの具体的ステップは「手抜き防止5ステップ」で詳しく解説しています。

写真報告を契約条件にする方法は「写真報告を契約条件にする具体的手順」をご覧ください。

写真報告を「契約条件」にする──トラブルを未然に防ぐ最強の方法

写真報告とは

写真報告とは、各工程の施工状況を写真付きで施主に報告することです。下塗り完了、中塗り完了、上塗り完了など、工程ごとの写真が時系列で記録されます。

なぜ写真報告が「最強の抑止力」なのか

写真報告が契約条件に入っていると、職人は「この工程は写真に残る」と意識します。記録される工事と記録されない工事では、緊張感が全く違います。

写真報告は「監視」ではなく「品質保証の仕組み」です。まともな業者であれば、写真報告を嫌がることはありません。むしろ「自社の品質を証明する手段」として歓迎します。

契約書に入れる具体的な文言例

契約書または注文書の特記事項欄に、以下の文言を追加してもらいましょう。

「各工程(下塗り・中塗り・上塗り等)の施工前後の写真を撮影し、工程完了ごとにLINEまたはメールで施主に報告すること」

この一文があるだけで、手抜きのリスクは大幅に低減します。

写真報告を断る業者への対応

写真報告を断る業者には、以下のように伝えてみてください。

「記録を残すことで、保証期間内に何かあったときにお互い安心できると思うのですが、いかがでしょうか?」

それでも断られる場合は、その業者に工事を任せること自体を再検討すべきです。

契約前に確認すべきチェックポイントは「見積書チェック完全ガイド|20項目のチェックリスト」で網羅的にまとめています。

施工記録の残し方と管理方法は「施工記録の残し方ガイド」をご覧ください。

施工管理アプリで工事の「見える化」を実現する

ここまでのチェックリストと写真報告の仕組みを、すべてデジタルで自動化したのが、ペンキのミカタの施工管理アプリです。

施工管理アプリでできること

・21工程の進捗をタイムラインで管理

・各工程の完了時にLINE通知が届く

・写真報告がアプリ上で時系列に記録される

・工事完了後もデータが残り、保証期間内のトラブル時に証拠として活用できる

アプリを使うと何が変わるか

透明性:工事の進捗がリアルタイムで見える。「今日は何の工程が行われたか」がLINEで届く。

記録:各工程の写真が自動的に保存される。「言った・言わない」のトラブルを防げる。

抑止力:記録されていることを業者も知っている。手抜きのハードルが格段に上がる。

利用料金と費用対効果

施工管理アプリ:月額1,980円〜

100万円の塗装工事に対して、月額1,980円の投資で品質管理ができると考えれば、費用対効果は圧倒的です。手抜き工事による再塗装の費用(50万〜100万円)を防げる可能性があることを考えてください。

チェックリストだけでは不安な方へ

この記事のチェックリストを使えば、施主自身でかなりの手抜きを防ぐことができます。しかし「毎日工事を見に行けない」「自分の目だけでは不安」という方は、施工管理アプリの力を借りてください。

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まとめ──自分の家の工事は、自分で守る

この記事でお伝えした要点を整理します。

1. 手抜きは「悪意」ではなく「人工不足」から構造的に発生する

2. 3大パターン(工程省略・時間短縮・材料削減)を知っておく

3. ケレン省略は最もダメージが大きく、最も見えにくい手抜き

4. 乾燥時間には気温別の明確な基準がある

5. 3回塗りは写真報告で確認できる

6. 7つのチェックポイントを工事中に確認する

7. 写真報告を契約条件にするだけで手抜きの抑止力になる

8. 施工管理アプリでチェック体制をデジタル化できる

そもそも業者選びの段階で不安がある方は「セカンドオピニオン完全ガイド」で第三者の意見を活用する方法をご確認ください。

業者を選ぶところまではP1・P2・P4の完全ガイドでカバーしました。この記事は、「選んだ後」の品質を守るためのガイドです。

不安を感じたまま工事を見守るのではなく、知識と仕組みで工事の品質を「見える化」する。それが、100万円の投資を30年守る最善の方法です。

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