「近くで工事をしている者ですが、お宅の屋根の板金が浮いていますよ」
この言葉を聞いたら、絶対にドアを開けないでください。
2025年、この「親切な指摘」を装った点検商法の被害が急増しています。塗装業界50年の経験から断言します——本当に親切な職人は、突然訪問して屋根の指摘などしません。
この記事では、点検商法の最新手口を徹底解剖し、「人工(にんく)」の視点から彼らの利益構造を暴き、100%撃退する方法をお伝えします。
なぜ「屋根が浮いてますよ」が詐欺の合言葉なのか
まず、この手口が詐欺師にとって「完璧なスクリプト」である理由を理解しましょう。
屋根は居住者が日常的に見えない場所です。
あなたは自分の家の屋根を、最後にいつ見ましたか?おそらく、ほとんどの方が「見たことがない」と答えるでしょう。詐欺師はこの「情報の非対称性」を利用します。
さらに、「浮いている」という表現が巧妙です。
- 「壊れている」→ 確認したくなる
- 「浮いている」→ 専門的で、反論しにくい
実際、屋根の棟板金(頂点を覆う金属部分)は、熱膨張により多少浮くのは物理的に当然の現象です。築10年以上であれば、釘が1〜2mm浮いていることは珍しくありません。
しかし詐欺師は、この「許容範囲内の経年変化」を「即時の倒壊リスク」にすり替えます。
2025年の点検商法|最新手口5パターン
パターン1:「近所で工事の挨拶」商法
最も多いパターンです。
「近所で工事をすることになったので、騒音のご挨拶に来ました」
この導入で警戒心を解いた後、「あ、ついでなんですが…お宅の屋根、ちょっと気になるところがありまして」と切り出します。
ポイントは「営業マン」ではなく「現場の職人」を演じていること。 作業着にヘルメット姿で、技術的な権威を装います。
パターン2:ドローン点検詐欺
「最新のドローンで無料点検します」
一見、テクノロジーを活用した信頼できる業者に見えます。しかし、ドローンで撮影した高解像度画像は、素人には判別がつかない微細な影や汚れを「重大な欠陥」として提示することが容易です。
さらに悪質なケースでは、別の家の損傷写真を「あなたの屋根です」と偽って見せる手口も確認されています。
パターン3:災害便乗型
「先日の台風で屋根がずれています」
台風や地震の直後は、地域全体の不安レベルが高まっています。「台風」という言葉が、虚偽の話にリアリティを与えてしまいます。
パターン4:保険金詐欺併用型
「火災保険を使えば自己負担ゼロで修理できます」
これはあなた自身が詐欺の片棒を担ぐことになる最悪のパターンです。
経年劣化は火災保険の対象外です。これを「台風被害」と偽って申請すれば、保険会社への詐欺行為となります。最悪の場合、保険契約の解除や刑事告訴の対象になりえます。
パターン5:屋根破壊型(最悪)
「無料で見てあげますよ」と屋根に上がり、自ら屋根材を破損させて「証拠写真」を撮る手口です。
2025年に関東地方で摘発されたグループは、この手口で1億2千万円を荒稼ぎしていました。これは詐欺罪に加え、器物損壊罪にも該当する明白な犯罪です。
なぜ彼らは「屋根に上がりたがる」のか
答えはシンプルです。屋根の上は「密室」だからです。
屋根に上がらせた瞬間、あなたは情報の主導権を完全に失います。屋根の上で何が行われているか、下からは一切見えません。
- 問題のない屋根を「浮いている」と報告できる
- 撮影した画像を加工できる
- 最悪の場合、わざと破損させられる
だから、絶対に屋根に上げてはいけないのです。
「人工」で見る点検商法業者の利益構造
ここからは、塗装業界の「人工(にんく)」という概念で、彼らがなぜこの商法を続けるのか、その利益構造を暴きます。
人工とは、職人1人が1日でできる作業量の単位です。
まっとうな塗装業者の場合、一般的な戸建て住宅の屋根塗装には:
- 高圧洗浄:0.5人工
- 下地処理:1〜2人工
- 下塗り:1人工
- 中塗り:1人工
- 上塗り:1人工
- 合計:4.5〜5.5人工
職人の日当を2万円とすると、人件費だけで9〜11万円。これに材料費、足場代、諸経費を加えると、適正価格は30〜50万円程度になります。
点検商法業者の「人工」
一方、点検商法業者はどうでしょうか?
- 営業(訪問):1日10〜20件回る
- 契約率:5〜10%(10件に1件)
- 契約単価:80〜150万円(相場の2〜3倍)
- 実際の施工:下請けに丸投げ(中間マージン50%)
つまり、営業1人工(2万円)で、1件80万円の契約を取り、そのうち40万円が利益になる構造です。
まっとうな業者が汗を流して30万円の仕事をする間に、詐欺業者は口先だけで40万円を稼ぐ——これが点検商法が蔓延する経済的理由です。
→ 詳しくは「人工(にんく)とは?」「中間マージンの闇」をご覧ください。
点検商法を100%撃退する方法
第一防衛線:インターホンで断る
最も確実な方法は「対面しない」ことです。
玄関ドアを開けた時点で、プロの詐欺師との心理戦が始まります。インターホン越しに、以下のスクリプトで断ってください:
- 「結構です」(曖昧さを残さない)
- 「懇意にしている工務店があるので、そちらに相談します」(管理されている家だと思わせる)
- 「帰ってください」(法律上の退去要請。居座れば不退去罪)
第二防衛線:絶対に屋根に上げない
万が一対面してしまった場合でも、絶対に屋根に登らせてはいけません。
「無料で見てあげますよ」と言われても、こう返してください:
- 「プライバシーの問題があるので、撮影は許可しません」
- 「家族と相談してから連絡します」
- 「相見積もりを取るので、名刺だけください」
「今日決めないと危険」と急かす業者は、100%詐欺です。 本当に緊急なら、自治体の無料相談窓口を案内するはずです。
第三防衛線:契約してしまった場合
万が一契約してしまっても、8日以内ならクーリング・オフで無条件解約できます。
2022年の法改正以降、電子メールでも有効です。送信したメールのスクリーンショットを必ず保存してください。
→ 詳しくは「クーリング・オフ完全ガイド2025」をご覧ください。
相談窓口リスト
不安な場合は、迷わず公的機関に相談してください:
- 消費者ホットライン:188 — 最寄りの消費生活センターへ転送。土日も対応
- 住まいるダイヤル:0570-016-100 — 建築士が技術的な相談に対応
- 警察相談専用電話:#9110 — 詐欺の疑いがある場合
まとめ:知識が最強の盾
「屋根が浮いてますよ」という言葉は、2025年において高度に洗練された犯罪のトリガーワードです。
しかし、その手口の根幹にあるのは「見えないものへの不安」と「緊急性の演出」という古典的な心理操作に過ぎません。
屋根の構造的真実を知り、詐欺のスクリプトを予習し、法的な権利を理解しておけば、この脅威は無効化できます。
悪徳業者を撃退する最強の言葉は、専門知識に裏打ちされた冷静な「結構です」です。
見積もりに不安がある方へ
「すでに見積もりをもらったけど、本当に必要な工事なのかわからない」
そんな方のために、塗装歴50年の職人が見積書を診断するセカンドオピニオンサービスを提供しています。
提示された見積もりが適正か、第三者の目でチェックします。
関連記事
見積書、このままで大丈夫?
50年の現場経験を持つ診断アドバイザーが、あなたの見積書をチェックします。 適正価格か、工程に問題はないか、第三者の目で確認してみませんか?
無料で相談する※ 営業目的の連絡は一切いたしません
プロが使う人工数比較シートを無料プレゼント
見積書の「人工数」を比較して、手抜き業者を見抜く
※ 個人情報は厳重に管理し、第三者に提供することはありません