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塗料グレード別「原価」徹底比較|シリコン・フッ素・無機、30年間で本当にお得なのはどれ?

塗料グレード別の原価構造と30年間のトータルコストを徹底比較。シリコン・ラジカル・フッ素・無機塗料の真の経済性を、足場代・シーリング寿命・屋根との劣化タイミングから解説。最適な組み合わせ戦略を提案します。

「シリコンとフッ素、無機塗料…結局どれが一番お得なんですか?」

外壁塗装の見積もりを取ると、必ず直面するこの質問。業者によって勧める塗料が違い、「無機塗料なら30年持つからトータルで安い」というセールストークもあれば、「シリコンで十分」という意見もあり、多くの方が混乱されています。

結論から言うと、単純に「塗料グレード」だけで比較しても正しい答えは出ません。

なぜなら、外壁塗装の真の経済性は、塗料の耐用年数だけでなく、シーリング材の寿命屋根との劣化タイミング、そして足場代という固定コストを総合的に考慮しなければ見えてこないからです。

この記事では、50年の塗装経験と200件以上の施工実績をもとに、各塗料グレードの本当の原価構造30年間のトータルコストを徹底比較します。業者が教えてくれない「見落としがちな落とし穴」まで解説しますので、ぜひ最後までお読みください。

「原価」の4大構成要素を理解する

塗料代は総費用の20〜25%に過ぎない

まず、塗装工事の「原価」が何で構成されているかを正確に把握しましょう。

一般的な30坪の戸建て住宅の場合:

項目費用構成比特徴
労務費30〜50万円30〜40%塗料グレードが変わっても大きく変動しない
材料費20〜35万円20〜25%グレードによって変動する主要因
足場代15〜20万円15〜20%1回の工事ごとに必ず発生する固定費
諸経費15〜25万円15〜25%管理費、廃棄物処理、業者の利益

ここで重要なのは、材料費(塗料代)が占める割合は意外にも限定的という事実です。

つまり、塗料グレードを上げても総費用に与える影響は限られている一方、足場代は塗料の性能とは無関係に、工事1回ごとに同額発生します。

足場代は「サンクコスト」

足場代約20万円は、塗料が10年で劣化しようが20年持とうが、1回の工事につき同額発生するサンクコスト(埋没費用)です。

したがって、耐用年数が短い塗料を選んで塗り替え回数が増えれば増えるほど、この固定費の支払い回数が増加し、トータルコストを押し上げます。

高耐久塗料への投資は、実質的には「将来の足場代の前払いによる削減」という側面を持っているのです。

→ 原価構造の全体像は「原価完全ガイド」で詳しく解説しています。

塗料グレード別の原価と市場相場(2025年版)

㎡単価の適正範囲

2024〜2025年の市場データに基づく、グレード別の標準的な相場です。

グレード設計単価(材工共)/㎡30坪(120㎡)概算費用期待耐用年数
シリコン2,300〜3,000円60〜90万円10〜15年
ラジカル制御型2,500〜3,500円65〜100万円12〜16年
フッ素3,800〜4,800円80〜110万円15〜20年
無機3,500〜5,000円100〜150万円20〜25年

無機塗料の価格幅が広い理由

無機塗料において価格幅が広い(3,500〜5,000円/㎡)のは、以下の理由によります:

  1. 製品による性能差:無機成分の含有率が製品によって大きく異なる
  2. 施工難易度:職人のスキル要求が高く、技術料が上乗せされる
  3. 品質のばらつき:「無機塗料」には法的な定義規定がない

注意:無機成分が数パーセントしか含まれていない製品でも「無機塗料」として高額で販売されているケースがあります。大手メーカーの製品や、成分開示が明確な製品を選ぶことが重要です。

ラジカル制御技術:市場を変えた「第3の選択肢」

シリコン価格でフッ素に迫る耐久性

近年の塗料市場における最大の技術革新が「ラジカル制御技術」です。

ラジカルとは?

塗膜の劣化因子である活性酸素の一種。紫外線が塗料中の酸化チタンに当たると発生し、これが塗膜を破壊して色褪せやチョーキングを引き起こします。

ラジカル制御技術は、酸化チタンの表面処理や光安定剤(HALS)の配合によって、このラジカルの発生を抑制します。

代表製品の比較

項目日本ペイント パーフェクトトップエスケー化研 プレミアムシリコン
耐用年数目安12.5〜17.5年14〜16年
設計単価3,140〜3,640円/㎡同等水準
艶の種類5種類(7分艶あり)4種類
特徴専用下塗り材がシステム化汎用性が高い

パーフェクトトップの7分艶という選択肢は、新築時の風合いに近い微妙な光沢感を再現できる点で、意匠性を重視する施主に好評です。

ラジカル制御型の位置づけ

従来の「シリコン vs フッ素」という二項対立の間に、極めてコストパフォーマンスの高い「第3の極」が形成されています。

シリコンと同等の価格帯(+10%程度)でありながら、フッ素に近い耐久性(12〜16年)を実現しているのです。

フッ素塗料の効果的な活用法:「異種組み合わせ」戦略

なぜC-F結合が強いのか

フッ素塗料の核心は、フッ素樹脂中のC-F結合(炭素-フッ素結合)にあります。

この結合エネルギー(約116kcal/mol)は、紫外線エネルギー(約97kcal/mol)よりも大きいため、理論上、紫外線によって分子鎖が切断されません。これが、フッ素塗料が15〜20年という長寿命を誇る科学的根拠です。

「屋根フッ素・外壁シリコン」の合理性

フッ素塗料の最も効果的な運用方法は、外壁への全面採用ではなく、「屋根」への局所採用です。

屋根は外壁の1.5〜2倍速く劣化する

屋根は外壁と比較して、紫外線や雨の影響を垂直に受けるため、劣化速度が約1.5〜2倍速いと言われます。

もし外壁と屋根に同じシリコン塗料を使用した場合、10年後には外壁はまだ健全でも、屋根だけが劣化して塗り替えが必要になる事態が発生します。これでは足場代の無駄が生じます。

推奨される組み合わせ

部位塗料グレード期待耐用年数
外壁ラジカル制御シリコン12〜15年
屋根フッ素15〜20年

この構成にすることで、外壁と屋根の劣化タイミングを15年前後に同調(シンクロ)させ、次回のメンテナンスを一括で行うことが可能になります。

これは、原価を抑えつつライフサイクルコストを最適化する高度な戦略です。

無機塗料の「光と影」:知らないと危険な2つのリスク

無機塗料の魅力

無機塗料は、ガラスや石などの無機物を主成分としつつ、塗料としての柔軟性を持たせるために有機樹脂を混合した「無機有機ハイブリッド塗料」です。

  • 紫外線による分解が極めて起こりにくい
  • 耐用年数20年以上、25年を謳う製品も
  • 光沢保持率が高い
  • 親水性によるセルフクリーニング効果

リスク①:硬質塗膜による「ひび割れ」

無機塗料は塗膜が非常に硬いため、下地の動きに追従できず、ひび割れ(クラック)が発生しやすいという重大なデメリットがあります。

日本の住宅、特に木造サイディングやモルタル外壁は、気温変化や地震、湿度によって絶えず伸縮しています。柔軟性のない無機塗料でこれらを覆うことは、ガラスで家を包むようなものであり、外壁材が動いた瞬間に塗膜が割れてしまいます。

特に木部への施工は厳禁とされており、木の伸縮に塗料が追従できず、早期剥離を招きます。

リスク②:再塗装時の「難付着」問題

さらに深刻なのが、次回の塗り替え時におけるリスクです。

無機塗料の表面は緻密で汚れを寄せ付けないため、その上から新しい塗料を塗ろうとしても、塗料が密着せずに弾いてしまう「難付着」のトラブルが多発しています。

これを防ぐためには、特殊な下塗り材を使用し、旧塗膜と新塗膜を化学的に結合させる必要があります。しかし、将来の施工業者が前回の塗料が無機であることを知らなければ、汎用のシーラーを使用してしまい、施工後数年で広範囲に剥離する大事故につながる可能性があります。

無機塗料を採用する場合の必須対策

  • 施工記録(使用塗料の型番・ロット)を永久保存する
  • 将来の業者に必ず「無機塗料施工済み」と伝える

見落とされがちな「真の寿命決定因子」:シーリング材

塗料とシーリングの寿命ギャップ問題

外壁塗装において最も看過されがちなのが、サイディングの目地を埋める「シーリング(コーキング)材」の品質です。

一般的なシーリング材(変成シリコン等)の耐用年数は7〜10年程度

もし、外壁に耐用年数20年の無機塗料を採用したとしても、シーリング材に汎用品を使用すれば、10年後には目地が破断し、そこから雨水が浸入します。

結果として、塗膜は無事でも防水目的で足場を組んでシーリングを打ち替える必要が生じ、高耐久塗料のメリット(足場回数の削減)が完全に消失します。

これを「耐用年数のミスマッチ」と呼びます。

高耐久シーリング「オートンイクシード」

この問題を解決する唯一の解は、塗料のグレードに合わせてシーリング材も高耐久化することです。

シーリング材施工単価(打替え)/m耐用年数30年間の補修回数
汎用変成シリコン900〜1,200円7〜10年2〜3回
オートンイクシード汎用の1.2〜1.5倍20〜30年1回または0回

オートンイクシードは、特殊な可塑剤を使用しないLSポリマー技術により、20〜30年という圧倒的な耐用年数を実現しています。

材料費の差額は住宅1棟あたり数万円〜10万円程度であり、足場代1回分(約20万円)を節約できることを考えれば、投資対効果(ROI)は極めて高いです。

オートンイクシードの注意点

ただし、オートンイクシードには「乾燥が遅い」という施工上のデメリットがあります。

シーリング材乾燥時間
汎用品2〜3日
オートンイクシード約7日(冬場は10日以上)

乾燥時間が長いということは、次の工程(塗装)に進むまでの待機時間が発生し、工期が延びることを意味します。

工期短縮を焦るあまり乾燥不足のまま塗装を行えば、後々の不具合(汚染、剥離)につながるリスクもあります。余裕を持った工期設定が品質確保の前提条件です。

→ 見積書でシーリング材の種類を確認する方法は「原価完全ガイド」をご覧ください。

30年間のトータルコストシミュレーション

3つのシナリオで徹底比較

築10年の一般的な戸建て住宅(塗装面積120㎡、足場代20万円)をモデルケースに、今後30年間のメンテナンス総額をシミュレーションします。

シナリオA:コスト重視「シリコン塗装(10年周期)」

項目内容
仕様汎用シリコン塗料 + 汎用シーリング
サイクル10年目、20年目、30年目の計3回
1回あたりの費用約80万円(足場20万 + 塗装・シーリング60万)
30年間の総出費240万円

分析:初期費用は最も安いが、足場代を3回払うため、トータルコストは最も高くなる。また、3回の工事対応という施主の手間も発生する。

シナリオB:バランス重視「ラジカル/フッ素塗装(15年周期)」

項目内容
仕様外壁ラジカル制御 + 屋根フッ素 + オートンイクシード
サイクル10年目、25年目の計2回(次は40年目)
1回あたりの費用約105万円(足場20万 + 高機能塗装・高耐久シーリング85万)
30年間の総出費210万円

分析:シナリオAに対し、30万円のコストダウンを実現。工事回数も2回で済み、精神的な負担も軽い。現状の市場における「最適解」と言えるモデル。

シナリオC:理論値重視「無機塗装(20年超周期?)」

項目内容
仕様最高級無機塗料 + オートンイクシード + 専用プライマー
サイクル10年目に実施し、理論上は30年目以降までメンテナンスフリーを目指す
1回あたりの費用約140万円(足場20万 + 最高級資材・技術料120万)

30年間のリスク要因

ケース総費用
成功ケース140万円(圧倒的にお得)
失敗ケース140万円 + 部分補修(足場20万+α) = 180万円〜

失敗ケースの例

  • 15年目に外壁のひび割れ発生
  • 屋根の予期せぬ劣化
  • 台風被害での部分補修
  • 再塗装時の難付着対応で割高な工事費

分析ハイリスク・ハイリターンな投資。建物の構造が安定しており(RC造など)、かつ施工品質が完璧であれば最強だが、不確定要素が多い。

シミュレーション結果まとめ

シナリオ30年間総費用工事回数リスク
A:シリコン240万円3回
B:ラジカル/フッ素210万円2回
C:無機140〜180万円1〜2回

塗装方程式の観点から

私が提唱する「塗装方程式:品質 = モチベーション × 技術 × 時間」の観点からも、シナリオBが最も安定した品質を期待できます

無機塗料は施工難易度が高く、職人の技術力に大きく依存します。また、乾燥時間が長いオートンイクシードとの組み合わせは工期管理が難しく、「時間」の要素が満たされないリスクがあります。

ユーザータイプ別・最終推奨マトリクス

あなたに最適な塗料の選び方

タイプ推奨仕様理由
永住志向・LCC最適化(築10〜20年)外壁ラジカル + 屋根フッ素 + オートンイクシード15年周期を確立し、足場代を最小化。無機のリスクを負わず安定した品質を享受
美観至上・資産価値維持(RC造・高級住宅)外壁・屋根とも無機 + オートンイクシード建物の動きが少ないRC造なら無機のメリットを最大化できる。ただし認定施工店に限定
コスト抑制・短期保有(売却予定・高齢世帯)汎用シリコン + 汎用シーリングあと10年持てば良いなら、高耐久塗料は過剰投資。必要十分な機能で初期費用を抑える

最終的な判断基準

塗料選びで迷ったら、以下の質問を自分に問いかけてください:

  1. この家にあと何年住む予定か?
  2. 次の塗替え時、自分は何歳か?
  3. 建物の構造は木造か、RC造か?
  4. 見積書にシーリング材の種類は明記されているか?

これらの答えによって、最適な選択肢は変わります。

人工(にんく)理論の視点

塗料のグレードを上げても、総工事費への影響は実は限定的です。塗料代は全体の15〜20%程度。シリコンからフッ素に変えても増額は10〜15万円程度です。一方、人工数を5人工削ると人件費で10万円以上のコスト削減になり、下地処理の省略→3年後の剥離という致命的な品質低下を招きます。塗料のグレードより、投入人工数の方が品質への影響は圧倒的に大きい。「高い塗料を使っているから安心」ではなく「十分な人工を確保しているか」で判断してください。

人工理論の詳しい解説は「人工(にんく)理論 完全講義」をご覧ください。

まとめ

外壁塗装における「本当にお得」な選択とは、単にカタログスペック上の耐用年数が長い塗料を選ぶことではありません。

真の経済性を左右する3つの要素:

  1. 足場代(固定費)の発生回数:塗り替え回数を減らすことが最大のコスト削減
  2. シーリング材の寿命:塗料と同等以上の耐久性が必要(オートンイクシード推奨)
  3. 屋根と外壁の劣化タイミング:同調させることで足場の無駄を防ぐ

グレード別おすすめ度:

グレードコスパ耐久性リスクおすすめ度
シリコン短期保有向け
ラジカル最もバランス良い
フッ素屋根に最適
無機RC造・認定施工店限定

最終結論

大多数の木造住宅においては、「外壁ラジカル制御+屋根フッ素+オートンイクシード」の組み合わせが最適解です。

見積書を受け取ったら、塗料グレードだけでなく、シーリング材の種類下塗り材の選定根拠まで踏み込んで業者と対話することが、真の原価低減を実現する唯一の道です。

関連リンク

- 人工(にんく)理論 完全講義|原価から適正品質を見極める →

▶ この記事は「見積もり・費用」カテゴリのガイド記事です。見積書の総合的な判断基準は外壁塗装の見積書は「金額」で比べるな|人工で読む適正価格の判断基準をご覧ください。

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