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塗料の缶数から手抜きを計算する方法|㎡あたり塗布量の検証で不正を暴く

見積書に「シリコン塗装一式」としか書かれていない…その見積もり、手抜きの温床かもしれません。塗料メーカーの基準塗布量から必要缶数を計算し、不正を数学的に見抜く方法を解説します。

「この見積もり、本当に適正なの?」

塗装歴50年、500件以上の現場を見てきた私のもとには、こんな相談が絶えません。そして、見積書を見せていただくと、「シリコン塗装 一式 ○○万円」としか書かれていないケースが実に多い。

断言します。「一式」表記の見積書は、手抜き工事の温床です。

この記事では、塗料メーカーの「基準塗布量」から必要缶数を計算し、見積もりの妥当性を数学的に検証する方法を解説します。専門知識がなくても、電卓一つで手抜きを見抜けるようになります。

なぜ「缶数」で手抜きが分かるのか?

塗料は工業製品です。メーカーは「1㎡あたり何kg塗れば性能を発揮するか」を科学的に定めています。これを「基準塗布量(所要量)」と呼びます。

つまり、塗装面積が分かれば、必要な塗料の重量(=缶数)は自動的に決まるのです。

手抜きの構造

  • 150㎡の住宅に3缶必要なのに、2缶しか搬入しない
  • 足りない1缶分を過剰希釈(水増し)で補う
  • 結果として塗膜が薄くなり、数年で気泡や剥がれが発生

この不正を防ぐには、「理論上何缶必要か」を自分で計算できることが武器になります。

塗装方程式と「材料」の関係

私が提唱する塗装方程式では、品質を決める要素を「モチベーション × 技術 × 時間」と定義しています。

では「材料(塗料)」はどこに位置づけられるのか?

材料は「技術」の前提条件です。

どれだけ腕の良い職人が、どれだけ時間をかけても、塗料が足りなければ規定の膜厚は確保できません。塗装方程式の「技術」変数には、「適正量の材料を使う」という大前提が含まれているのです。

逆に言えば、材料を削る業者は、塗装方程式を最初から崩壊させていることになります。

必要缶数の計算式

計算は驚くほどシンプルです。

ステップ1:塗装面積を確認する

見積書に記載された塗装面積(㎡)を確認します。記載がない場合は、延床面積から概算できます。

塗装面積 ≒ 延床面積(坪)× 3.3 × 係数(1.2〜1.4)

【建物タイプ別の係数(30坪の場合)】

  • 開口部多い・単純形状(係数1.2):約119㎡
  • 標準的な2階建て(係数1.25):約124㎡
  • 複雑形状・開口部少ない(係数1.4):約139㎡

注意点: 係数1.5以上を使っている見積書は、面積を水増ししている可能性があります。逆に、係数が低すぎる(1.1以下)場合は、必要缶数を少なく見せかけるための操作かもしれません。

ステップ2:基準塗布量を確認する

使用予定の塗料のカタログまたは仕様書で「基準塗布量(kg/㎡/回)」を確認します。

主要塗料の基準塗布量(2回塗り完了ベース・15kg缶)

  • 日本ペイント パーフェクトトップ:44〜68㎡/缶
  • エスケー化研 プレミアムシリコン:43〜68㎡/缶
  • 関西ペイント RSシルバーグロスSi:45〜65㎡/缶

この数値は下地の状態によって変動します。

  • 平滑な下地(サイディング、金属):上限値(68㎡)に近い
  • 粗面な下地(リシン、スタッコ):下限値(44㎡)に近い

ステップ3:必要缶数を計算する

計算式:

必要缶数 = 塗装面積 ÷ 1缶あたりの塗布面積

計算例:150㎡の住宅(パーフェクトトップ使用)

  • 平滑面:150㎡ ÷ 68㎡ = 2.2缶 → 3缶必要
  • 粗面:150㎡ ÷ 44㎡ = 3.4缶 → 4缶必要

結論: どちらの場合も「2缶」では足りません。平滑面でも最低3缶、粗面なら4缶が必要です。

見積書のレッドフラグ(危険信号)

缶数計算を武器に、見積書をチェックしましょう。

🚩 危険信号1:「一式」表記で缶数が不明

悪い見積書の例:

「外壁塗装工事(シリコン) 一式 ¥800,000」

これでは塗装面積も缶数も分かりません。業者の「言い値」を信じるしかない状態です。

良い見積書の例:

「外壁塗装(パーフェクトトップ)・塗装面積:150㎡・使用量:15kg缶 × 3缶・単価:2,500円/㎡・計:¥375,000」

🚩 危険信号2:計算上あり得ない缶数

150㎡の住宅に対して「2缶」と記載されていたら、それは数学的に不可能です。

業者が「うちの塗料は延びがいいから」と言っても、それはメーカーの設計仕様を逸脱した施工であり、塗料メーカーの保証対象外となります。

🚩 危険信号3:「オリジナル塗料」で計算できない

「モニター価格で半額」を謳う訪問販売業者が好むのが「自社オリジナル塗料」です。

オリジナル塗料の問題点は、市場価格も基準塗布量も不明なこと。業者が好き勝手に「1缶で100㎡塗れます」と言えてしまい、検証のしようがありません。

原則として、日本ペイント・エスケー化研・関西ペイントなどの大手メーカー品を指定しましょう。

人工と缶数の関係

缶数が足りているかどうかは、工期(人工数)からも逆算できます。

塗装1缶あたりの作業時間

15kg缶1本を規定量で塗り切るには、職人1人で約半日〜1日かかります。

計算例:150㎡の住宅(3缶使用)

  • 下塗り:1日
  • 中塗り:1日(1.5缶)
  • 上塗り:1日(1.5缶)
  • 塗装工程だけで3日(3人工)

もし業者が「塗装は1日で終わります」と言うなら、それは3缶分の塗料を1日で塗り切ることを意味します。物理的に不可能か、過剰希釈で「水のような塗料」を使うかのどちらかです。

出荷証明書で「証拠」を押さえる

計算で「3缶必要」と分かっても、実際に3缶使われたかどうかは現場を見なければ分かりません。

そこで有効なのが「出荷証明書」の請求です。

出荷証明書とは?

塗料メーカーまたは卸問屋が発行する、「いつ、どの現場向けに、何缶出荷したか」を証明する公式書類です。

記載事項:

  • 依頼者情報(施主名・現場住所)
  • 出荷商品(品名、色番、数量)
  • 出荷日

活用方法

  1. 契約時に「工事完了時に出荷証明書を提出すること」を条件に入れる
  2. 完了後に提出された証明書の「数量」と「理論必要缶数」を照合
  3. 不整合があれば説明を求め、納得できなければ支払いを留保

出荷証明書を拒否する業者は、在庫品の使い回しや数量ごまかしを画策している可能性が高いと考えてください。

「色変え工法」で中抜きを防ぐ

缶数と並んで重要なのが、中塗りの省略(中抜き)を防ぐことです。

中抜きの手口

外壁塗装は「下塗り→中塗り→上塗り」の3回塗りが基本ですが、悪質業者は中塗りを省略して2回塗りで済ませます。

中塗りと上塗りが同じ色の場合、乾燥後は見分けがつきません。これを悪用した手口です。

「色変え工法」とは

中塗りと上塗りの色をわずかに変えることで、3回塗りを目視で確認できるようにする工法です。

例:

  • 中塗り:クリーム色
  • 上塗り:ホワイト

上塗りが完了した時点で、中塗りの色が完全に隠れていれば、規定の膜厚が確保されている証拠になります。

費用: 業者によっては追加料金(数千円〜数万円)が発生しますが、3回塗りを確実に担保するための投資としては極めて安い保険です。

施工管理アプリで缶数を「見える化」する

現場に立ち会えない施主でも、缶数を監視する方法があります。

当サイトの施工管理アプリでは、以下の記録を業者に依頼できます。

搬入時:

  • 未開封の塗料缶が並んでいる写真
  • 缶数と品名が確認できるラベルのアップ

施工中:

  • 各工程(下塗り・中塗り・上塗り)の写真
  • 色変え工法を採用している場合、色の違いが分かる写真

完了時:

  • 空になった缶が必要缶数分並んでいる写真
  • 出荷証明書の画像

これらを21工程のカンバンボードで管理することで、缶数の「見える化」が実現します。

まとめ:「缶数」は品質の絶対指標

外壁塗装の品質を左右する要素は多々ありますが、「缶数」は最も客観的で、最も操作しにくい指標です。

チェックリスト

  • 見積書に「塗装面積(㎡)」が明記されているか
  • 見積書に「使用缶数」が明記されているか
  • 自分で計算した必要缶数と一致しているか
  • 出荷証明書の提出を契約条件に入れたか
  • 色変え工法を依頼したか

塗料という化学製品は、規定量を守って初めてその機能を発揮します。「一式」という曖昧な表記ではなく、数字で品質を管理する。それが、100万円近い工事費を無駄にしないための最低限の自衛策です。

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見積書の缶数が適正かどうか不安な方は、見積書診断サービスをご利用ください。塗装面積と基準塗布量から、必要缶数の妥当性を検証いたします。

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