「外壁塗装、今やらないと値上がりしますよ」
最近こんなセールストークを聞いた方もいるかもしれません。実際、2026年に入って塗料の原材料価格に動きが出ています。しかし、「だから急いで契約すべき」とは限りません。
この記事では、塗料メーカーから届いた一次情報をもとに、いま何が起きているのかを中立的にお伝えし、「急ぐべきか、待つべきか」の判断材料を提供します。
いま何が起きているか——塗料メーカーからの通知内容
2026年3月23日付で、私たちが取引している建築塗料メーカー(国内大手)から、取引先向けの通知が届きました。要点は以下のとおりです。
- ホルムズ海峡の物流停滞・供給不安により、石油化学製品全般の原材料価格が急騰している
- 塗料の主成分である溶剤・樹脂の仕入れ価格が上昇し、調達環境が悪化している
- 4月以降、事前告知なく急な価格改定を行う可能性がある
- 従来の特別価格条件についても、4月以降は維持が困難になる場合がある
重要な補足:この通知は「価格改定が決定した」という内容ではありません。「状況次第で価格改定の案内をする可能性がある」という予告です。
つまり、確定した値上げではなく、値上げの可能性がある段階です。
なぜ塗料が値上がりするのか——原材料と為替のダブルパンチ
塗料の値上がりには、2つの要因が重なっています。
要因①:原油・ナフサ価格の上昇
外壁塗装に使われる塗料(シリコン樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂など)の原材料は、石油由来のナフサから作られます。ホルムズ海峡の物流停滞は、世界の原油供給の約20%に影響を与えるため、ナフサ価格の上昇に直結します。
要因②:円安による輸入コスト増
原材料の多くは海外から輸入されるため、円安が進めば仕入れコストが上がります。2026年に入ってからの為替動向も、塗料メーカーにとっては逆風です。
過去の値上げ実績
実は、塗料の価格改定はこれが初めてではありません。
- 2022年:大手塗料メーカー各社が10〜15%の値上げを実施
- 2023年:一部メーカーがさらに5〜10%の追加値上げ
- 2024〜2025年:原油価格の安定で据え置き
今回は2年ぶりの値上げリスクが浮上しているということです。
塗料代は外壁塗装の総費用の15〜20%——値上げの影響を冷静に計算する
ここが最も大事なポイントです。
外壁塗装の総費用のうち、塗料代が占める割合は15〜20%程度です。残りの80〜85%は、人件費(職人の日当×人工数)、足場代、諸経費です。
つまり、仮に塗料が10%値上がりしたとしても、総費用への影響は以下のとおりです。
100万円の工事の場合:
- 塗料代(20%)=20万円
- 塗料が10%値上げ → 20万円 × 1.1 = 22万円
- 総費用への影響=+2万円(2%増)
塗料が仮に20%上がっても、総費用の増加は3〜4%程度にとどまります。
「値上がりするから今すぐ契約しないと損」という煽りに対して、この数字を知っていれば冷静に判断できます。
「値上がりするから急いで」という業者に注意——焦らされたら警戒すべき理由
値上がりの情報自体は事実です。しかし、それを利用して契約を急がせる業者には注意が必要です。
注意パターン①:「今月中に契約すれば旧価格で」
塗料メーカーからの通知は「4月以降に値上げの可能性」です。3月中に契約しても、実際の施工が4〜5月になれば値上げ後の塗料を使う可能性があります。契約日と塗料の仕入れ日は別です。
注意パターン②:「今だけ特別割引」
値上がりを理由にした「今だけ割引」は、訪問販売や悪質業者の常套手段です。値上がり前だから安いのではなく、もともと適正価格でない可能性があります。
注意パターン③:値上げ分を手抜きで吸収する業者
ここが最も深刻なリスクです。
塗料が値上がりすると、業者の利益が圧迫されます。真っ当な業者は価格転嫁(見積もりへの反映)で対応しますが、悪質な業者は価格を据え置いたまま、見えない部分で手を抜きます。
人工(にんく=職人1人が1日で行う作業量)の視点で見ると:
- 塗料を規定より薄める(希釈過多)→ 塗料代を1〜2万円削減
- 下塗りを1回省略 → 1〜2人工を削減(日当分18,000〜25,000円×1〜2=最大5万円削減)
- 3回塗りを2回塗りで済ませる → 同上
塗料が値上がりした後こそ、「安すぎる見積もり」は手抜きのサインです。見積もりの総額だけでなく、人工数を逆算して適正かどうかを確認してください。
施主が今やるべきこと——3つの選択肢
選択肢A:2026年前半に施工する(値上げ前に確定できる可能性あり)
メリット:
- 現行価格で塗料を調達できる可能性が高い
- 春〜初夏は塗装に適した季節
デメリット:
- 急いで契約すると業者選びが雑になるリスク
- 焦りで判断を誤る方が、塗料代2〜3万円の差より遥かに高くつく
選択肢B:じっくり業者選びをして2026年後半〜2027年に施工する
メリット:
- 十分な比較検討ができる
- 値上げが小幅で済む可能性もある
デメリット:
- 値上げが実施されれば総費用が2〜4%上がる
選択肢C:補助金との組み合わせでタイミングを最適化する
2026年度は外壁塗装に使える補助金・助成金の制度も変化しています。補助金の申請時期と施工時期を合わせることで、値上げ分を相殺できる可能性もあります。
結論:塗料の値上がりだけを理由に急ぐ必要はありません。
2〜4%の費用増と、業者選びを間違えるリスクを天秤にかければ、冷静に業者を選ぶことの方が圧倒的に大事です。
値上げ後の見積もりが適正かを判断する方法
値上げが実施された場合、「これは値上げ分が乗っている適正な見積もりなのか、それとも便乗値上げなのか」を判断する必要があります。
方法①:人工逆算チェック
見積もりの総額から職人の日当を逆算します。
見積総額 × 0.4(人件費率)÷ 20人工(30坪標準)= 推定職人日当
この推定日当が18,000円以上であれば適正範囲。15,000円未満なら手抜きリスクが高い。これは人工理論の基本です。
方法②:塗料代の内訳を確認
見積書に塗料のメーカー名・品番・使用缶数が記載されていれば、メーカーの公開カタログ価格と照合できます。「塗料一式」表記で内訳がない見積もりは、値上げ前でも後でも要注意です。
方法③:セカンドオピニオンを活用
値上げ後は「相場がわからない」という不安が増します。そんなときこそ、第三者の視点で見積もりの適正性を確認するセカンドオピニオンが有効です。
まとめ——「値上がりするから急げ」ではなく「値上がりするからこそ冷静に」
この記事の要点を3つにまとめます。
- 塗料メーカーから価格改定の可能性を示す通知が届いている。ただし現時点では「確定」ではなく「可能性」の段階
- 塗料代は総費用の15〜20%。仮に10%値上がりしても総費用への影響は2%程度。焦る必要はない
- 値上がり後こそ「安すぎる見積もり」に注意。手抜きで吸収する業者が増えるリスクがある
「値上がりするから急いで」ではなく、「値上がりするからこそ、見積もりの中身を冷静に確認しましょう」——これが現場で毎日塗料を使っている職人としての正直なアドバイスです。
Level 0:人工チェックシート(無料)→ https://penki-mikata.com/check-sheet Level 1:AI見積もり診断(500円)→ https://penki-mikata.com/ai-shindan Level 2:プロ診断(3,000円)→ https://penki-mikata.com/pro-shindan 値上げ後の見積もりが適正かどうか不安な方は、まず無料の人工チェックシートで逆算してみてください。
よくある質問
Q. 2026年に外壁塗装の塗料は確実に値上がりする?
A. 現時点では「値上がりの可能性がある」段階です。塗料メーカーからは4月以降の価格改定の可能性を示す通知が届いていますが、確定ではありません。
Q. 値上がり前に契約した方がお得?
A. 塗料代は総費用の15〜20%で、10%の値上げでも総額への影響は2%程度(100万円の工事で約2万円)です。急いで業者選びを誤る方がはるかに大きなリスクです。
Q. 値上がりを理由に「今すぐ契約を」と言われたら?
A. 冷静に判断してください。値上がりの影響は限定的です。「今月中なら旧価格」は契約日と塗料仕入れ日が別なので根拠がないケースもあります。
Q. 値上がり後の見積もりが適正かどうか判断するには?
A. 見積総額から人工逆算で職人日当を計算し、18,000円以上か確認する方法が有効です。不安な場合はセカンドオピニオンを活用してください。
Q. 塗料の値上がりは過去にもあった?
A. 2022年に大手各社が10〜15%、2023年にさらに5〜10%の値上げを実施しています。今回は2年ぶりの値上げリスクです。
この記事の著者
横井隆之
ヨコイ塗装 代表 / 外壁塗装コンサルタント
愛知県扶桑町でヨコイ塗装を経営。塗装業界50年以上の経験と500件を超える施工実績を持つ外壁塗装の専門家。施主の立場に立った公正なアドバイスを提供し、YouTube、ココナラ、MOSHなど複数のプラットフォームでセカンドオピニオンサービスを展開中。
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