この記事の監修者
ヨコイ塗装 代表 横井隆之
愛知県で50年続く塗装店の2代目。200件以上の施工実績を持ち、著書に『外壁塗装の不都合な真実』『塗装方程式』『外壁塗装 工程別チェックポイント21』(Kindle)がある。見積もり診断サービス「ペンキのミカタ」を運営し、全国の施主に中立的なアドバイスを提供している。
はじめに:「3回塗り」は本当に3回塗られているか
外壁塗装の見積書には、ほぼ必ず「3回塗り」と書かれています。
- 下塗り
- 中塗り
- 上塗り
この3工程が基本です。塗料メーカーも3回塗りを前提に製品を設計しています。
しかし、見積書に「3回塗り」と書いてあっても、実際に3回塗られているとは限りません。
塗装工程は、完了後に確認するのが非常に難しい。だからこそ、手抜きされやすいポイントなのです。
この記事では、塗装工程に関する5つの手抜きパターンと、施主が見抜くための方法を解説します。
塗装工程の基本:なぜ3回塗りが必要か
各工程の役割
| 工程 | 役割 |
|---|---|
| 下塗り | 外壁と上塗り塗料を密着させる接着剤 |
| 中塗り | 塗膜の厚みを確保し、ムラをなくす |
| 上塗り | 仕上げ。紫外線・雨から建物を守る |
3回塗ることで、塗膜の厚みと均一性が確保され、塗料本来の性能が発揮されます。
2回塗りではダメな理由
2回塗り(下塗り+上塗り)では、以下の問題が起きます。
- 塗膜が薄い:耐久性が落ち、早期劣化の原因
- ムラが出やすい:見た目の仕上がりが悪い
- 塗料の性能が出ない:メーカーは3回塗りを前提に設計
塗装工程の手抜き5パターン
パターン1:中塗りを省略する
最も多い手抜きがこれです。
見積書には「3回塗り」と書いてあるのに、実際には下塗りと上塗りの2回しか塗らない。
中塗りと上塗りは同じ塗料を使うことが多いため、施主には見分けがつきません。
なぜ省略されるか:
- 塗料代が浮く
- 工期が短縮できる
- 乾燥待ちの時間も省ける
- 見た目では判別不可能
見抜き方:
- 中塗りと上塗りの色を変えてもらう(最も確実)
- 塗装工程ごとの写真を依頼する
- 工程表で中塗り・上塗りが別日になっているか確認
パターン2:中塗りと上塗りを同じ日に塗る
塗料には乾燥時間が定められています。
一般的なシリコン塗料の場合、工程間の乾燥時間は3〜6時間以上。気温や湿度によっては翌日まで待つ必要があります。
しかし、工期を短縮したい業者は、乾燥を待たずに次の工程に進むことがあります。
乾燥不足で起きる問題:
- 塗膜が剥がれやすくなる
- 塗料内部の溶剤が抜けず、密着不良
- 塗膜の変色やひび割れ
見抜き方:
- 工程表で中塗りと上塗りが同日になっていないか確認
- 「中塗り後、何時間で上塗りしますか?」と質問
- 塗料のカタログで乾燥時間を確認
パターン3:塗料を規定以上に薄める
塗料には希釈率が定められています。
水性塗料なら水、溶剤系塗料ならシンナーで薄めますが、その割合はメーカーが指定しています(通常5〜10%程度)。
規定以上に薄めると、塗料代を節約できますが、塗膜が薄くなり性能が落ちます。
薄めすぎのリスク:
- 塗膜が薄い → 耐久性低下
- 隠ぺい力が落ちる → ムラが出る
- 塗料本来の性能が発揮されない
見抜き方:
- 計量器具(秤)を持っているか確認
- 使用する塗料の缶数を見積書で確認
- 施工後に空き缶を見せてもらう
パターン4:塗料の使用量が少ない
塗料には標準使用量が定められています。
例えば、ある塗料の標準使用量が「0.14〜0.17kg/㎡」の場合、100㎡なら14〜17kgの塗料が必要です。
しかし、塗料代を節約するために、規定量より少ない塗料で済ませる業者がいます。
使用量が少ないと:
- 塗膜が薄くなる
- 塗りムラが発生
- 耐用年数が短縮
見抜き方:
- 見積書に塗料の「缶数」が明記されているか
- 塗装面積と塗料の使用量が適正か計算
- 施工後に使用した空き缶を確認
【計算例】30坪住宅の場合
- 塗装面積:約120㎡
- 標準使用量:0.15kg/㎡
- 3回塗りの場合:120㎡ × 0.15kg × 2回(中塗り+上塗り)= 36kg
- 15kg缶なら約2.5缶必要
パターン5:養生が雑
養生(ようじょう)とは、塗装しない部分を保護する作業です。
窓、サッシ、玄関ドア、エアコン室外機、植木などをビニールやテープで覆います。
養生が雑だと、以下の問題が起きます。
養生不足のリスク:
- 窓ガラスに塗料が飛散
- サッシに塗料が付着
- 仕上がりのラインがガタガタ
- 境界部分の塗り残し
養生は塗装そのものではありませんが、仕上がりの美しさを左右する重要な工程です。
見抜き方:
- 養生作業の写真を依頼
- 工程表に養生の日が確保されているか
- 過去の施工事例で養生の丁寧さを確認
「中塗りと上塗りの色を変える」が最強の対策
塗装工程の手抜きを防ぐ最も確実な方法は、中塗りと上塗りの色を変えてもらうことです。
なぜ効果的か
- 中塗りと上塗りが別の色なら、2回塗ったことが一目瞭然
- 施主が目視で確認できる
- 業者も手抜きできない
実際のやり方
- 契約前に「中塗りと上塗りの色を変えてほしい」と依頼
- 上塗りの色を基準に、中塗りは1〜2トーン明るい(または暗い)色を選ぶ
- 中塗り完了時に写真を撮ってもらう
- 上塗り完了時に、中塗りが完全に隠れているか確認
注意点:
- 追加費用がかかる場合がある
- 色によっては対応できない場合も
- 事前に相談して了承を得る
人工(にんく)で塗装工程の手抜きを見抜く
30坪住宅の塗装工程・人工の目安
| 工程 | 標準人工 | 手抜き業者 |
|---|---|---|
| 養生 | 1人工 | 0.5人工 |
| 下塗り | 1〜1.5人工 | 0.5人工 |
| 中塗り | 1〜1.5人工 | 省略 |
| 上塗り | 1〜1.5人工 | 0.5人工 |
| 合計 | 4〜5.5人工 | 1.5人工 |
塗装工程だけで最低4人工は必要です。
全体の工期(下地処理含む)が10日未満の場合は、どこかの工程が省略されている可能性を疑ってください。
塗装工程をチェックする5つの質問
見積もり時に以下の質問をしてみてください。
1. 「中塗りと上塗りの色を変えられますか?」
→ 断る業者は手抜きの可能性あり
2. 「中塗りと上塗りは別の日にやりますか?」
→ 同日の場合は乾燥時間不足の可能性
3. 「塗料は何缶使いますか?」
→ 缶数を即答できる業者は信頼できる
4. 「希釈率はどのくらいですか?」
→ メーカー規定を答えられるか確認
5. 「工程ごとの写真を撮ってもらえますか?」
→ 写真を残す業者は手抜きしない
人工(にんく)理論の視点
3回塗りの手抜きを人工の観点で見ると、その深刻さがわかります。下塗り・中塗り・上塗りの各工程には、塗装作業だけでなく「乾燥時間」が含まれます。適正な乾燥時間を確保すると、塗装だけで最低6人工は必要。これに高圧洗浄(2人工)、下地処理(4人工)、養生(2人工)、付帯部(3人工)を加えると、やはり25人工前後になります。各工程の人工数を知っていれば、「3回塗っていない」手抜きも見抜けます。
人工理論の詳しい解説は「人工(にんく)理論 完全講義」をご覧ください。
まとめ
塗装工程に関する手抜き5パターンを解説しました。
- 中塗りを省略する(最多)
- 中塗りと上塗りを同じ日に塗る
- 塗料を規定以上に薄める
- 塗料の使用量が少ない
- 養生が雑
最強の対策:
- 中塗りと上塗りの色を変えてもらう
- 工程ごとの写真を依頼する
- 塗料の缶数を確認する
「3回塗り」と書いてあっても安心せず、実際に3回塗られることを確認する仕組みを作ってください。
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