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「外壁塗装で雨漏りは直りません」—— 塗装業者が言わない防水の不都合な真実

外壁塗装で雨漏りは直りません。塗膜0.1mmは表面保護であり、防水層2〜3mmとはまったく別の工事です。50年・500件超の現場経験から、一次防水と二次防水の違い、雨漏り原因ワースト3、人工で見抜く適正価格を解説。

著者: 横井隆之

外壁塗装で雨漏りは直りません。塗膜は外装材の表面保護層であり、すでに建物内部へ浸入している雨水の経路を遮断する機能は、設計思想そのものに含まれていません。雨漏りを止めるには、浸入口を物理的に塞ぐ「防水工事」が別途必要です。

この記事の監修者

ヨコイ塗装 代表 横井隆之

愛知県で50年続く塗装店の2代目。500件以上の施工実績を持ち、著書に『外壁塗装の不都合な真実』『塗装方程式』『外壁塗装 工程別チェックポイント21』(Kindle)がある。見積もり診断サービス「ペンキのミカタ」を運営し、全国の施主に中立的なアドバイスを提供している。

はじめに

「外壁塗装をすれば雨漏りも直る」——この誤解を信じている方は驚くほど多いです。

私は50年間、500件以上の現場を見てきましたが、塗装で雨漏りが止まったケースは一度もありません。正確に言えば、「塗装後に偶然止まったように見えたケースはあるが、数年後に再発した」というのが実態です。

なぜこの誤解が蔓延しているのか。それは一部の塗装業者が「塗装で直る」と言ったほうが契約を取りやすいからです。防水工事は塗装より手間がかかり、専門知識も必要です。つまり、「塗装で直る」と言う業者は、防水工事にかかる人工(にんく)を省きたいだけなのです。

この記事では、塗装と防水の本質的な違いから、雨漏りの正しい対処法、そして見積もりの適正判断まで、業界の人間だからこそ書ける「不都合な真実」をお伝えします。

なぜ外壁塗装で雨漏りは直らないのか?—— 一次防水と二次防水の決定的な違い

塗膜0.1mmと防水層2〜3mmの圧倒的な差

建物を水から守る仕組みは「一次防水」と「二次防水」の二段構えで成り立っています。

一次防水は、外壁材そのものやその表面の塗膜、シーリングなど。雨水の大部分を表面で跳ね返す役割です。外壁塗装はここを保護する工事です。

二次防水は、外装材の内側に施工される透湿防水シートや屋根材の下の防水紙(ルーフィング)。一次防水を突破した微量の雨水を、構造体に触れさせることなく外部へ排出する「最終防衛線」です。

雨漏りが室内に達しているということは、この両方の防御壁が突破されたということ。外壁塗装は一次防水の表面を保護するだけの工事ですから、その内側にある防水シートや防水紙を補修することは物理的に不可能です。下地や防水シートが劣化している場合、塗装を何度繰り返しても雨漏りは止まりません。むしろ張り替えや葺き替えといった構造的なリフォームが必要になります。

しかも塗膜の厚みはわずか0.1mm。一方、FRPやウレタンの防水層は2〜3mm。10倍以上の厚みの差は、まったく別の工事であることの証拠です。

→ 参考:シーリング工事の真実(打ち替えと増し打ちの決定的違い)

→ 参考:直貼りサイディングのリスク

「塗装すれば防水も回復する」と言う業者の本音

私の著書『外壁塗装の不都合な真実』でも書きましたが、塗装と防水はまったく別の工事です。

にもかかわらず「塗装で防水もカバーできます」と言う業者が存在するのは、防水工事の人工を省きたいからです。防水工事を別途計上すると見積もりが高くなり、競合に価格で負ける。だから「塗装一式」に含めたフリをして、実際には防水に必要な人工をかけない。

見積書に「外壁塗装一式」しか書いてない場合、防水工事が含まれていない可能性が極めて高い。防水が別項目で立っていて、かつ人工が計上されていれば信頼できます。

→ 参考:防水下地の処理手順と品質管理

比較項目外壁塗装防水工事
主要目的基材の保護・美化・劣化予防建物内部への雨水浸入の完全遮断
主な施工部位外壁全般・屋根・雨戸・軒天屋上・ベランダ・バルコニー・陸屋根
雨漏り解決力単独では不可能(予防には寄与)原因特定+処置で解決可能
塗膜/層の厚み約0.1mm2〜3mm以上
メンテ周期10〜15年10〜15年(トップコートは5年)

「点検商法」と悪質業者の手口 —— こんなセールストークに騙されないでください

突然の訪問+無料点検=「点検商法」の入り口

「近所で工事をしているのですが、お宅の屋根瓦がずれているのが見えました」——こんな言葉で突然訪問してくる業者がいます。

これは「点検商法」と呼ばれる典型的な手口です。国民生活センターには外壁塗装を含むリフォームトラブルの相談が絶えず寄せられており、契約当事者の8割超が60歳以上というデータもあります。消費者が普段目にできない屋根や高い位置の外壁を狙い、「雨漏り」という言葉で住居崩壊の恐怖を植え付けるのです。

実際には緊急性のない劣化や、他人の家の写真、あるいはドローンで撮影した不明瞭な画像を「証拠」として見せ、契約を迫る事例が報告されています。

「今日中なら半額」の裏側

「今日中に契約すれば50万円値引きする」「足場代を無料にする」「キャンペーンのモニターになってほしい」——これらは本来の適正価格に多大な利益を上乗せしたうえでの「二重価格表示」の可能性が高いです。

外壁塗装において足場代は工事費全体の約20%を占める重要な経費です。これを安易に「無料」にできるはずがない。大幅な値引きを餌に考える時間を与えず即決を迫るのは、他社の見積もりと比較されることで不適切な価格設定が露呈するのを避けるためです。

悪質業者のセールストーク隠された意図・実態
「今すぐ塗らないと雨漏りして家が倒れます」根拠のない不安を煽り、冷静な判断を妨げる
「今日契約してくれれば半額にします」相見積もりをさせず、不当に高額な契約を結ばせる
「この地域でモニターを募集しています」お得感を演出し、不必要な工事を契約させる
「火災保険を使えば実質無料で直せます」経年劣化を事故と偽る詐欺加担のリスク
「30年以上もつオリジナル塗料を使います」成分不明な安価な塗料を高額で売りつける
「塗装すれば雨漏りも止まります」防水工事の人工を省いて利益を確保したい

鉄則:突然の訪問営業でその場で契約しないこと。必ず複数社の見積もりを取り、人工が適正に計上されているか確認してください。

→ 詳しくは:「火災保険で外壁塗装が0円」は詐欺の入り口

雨漏り原因ワースト3 —— プロはどう特定するのか?

雨漏りは屋根だけの問題ではありません。500件以上の現場経験から、原因箇所の頻度をランキングすると以下の通りです。

原因①:屋根(縁切り不足・谷樋・棟板金)

スレート屋根では縁切り不足による毛細管現象が最多原因です。屋根材の重なり部分に水が留まり、逆流して内部に浸入する。これはタスペーサーの挿入で防げますが、見積もりに含めない業者も多い。

谷樋(たにどい)は雨水が集中する箇所で、錆びや穴あきが発生しやすい。棟板金は強風で浮きが生じ、下の貫板(ぬきいた)が腐ると固定力がゼロになります。

→ 詳しくは:屋根塗装の戦略的アプローチ

→ 詳しくは:縁切りとタスペーサーの真実

→ 詳しくは:谷樋と雨漏り

→ 詳しくは:棟板金の貫板飛び

原因②:サッシ・窓枠周りのシーリング劣化と構造クラック

サッシ枠と外壁のすき間を埋めるシーリング材が経年で剥離すると、そこが直接的な浸入口になります。窓を閉めているのに床が濡れる症状は、ほぼ確実にこのパターンです。

シーリング材は紫外線による劣化が塗膜より早く進みます。ひび割れや肉痩せが生じた時点で、一次防水の機能は消失しています。

もう一つ見落とされがちなのが構造クラックです。地震の影響や建物の歪みによって発生した幅の広いひび割れは、サイディングやモルタルの深部まで達しており、雨水を直接内部へ導きます。これは単純な塗り替えでは埋まりきらず、Uカット補修(クラックをV字またはU字に切り広げてシーリングを充填する工法)といった専門的な処理が必要です。表面を塗っただけでは根本解決になりません。

→ 詳しくは:コーキング手抜き5パターン

原因③:ベランダの防水層劣化

ベランダの床は防水層で覆われていますが、経年でひび割れが発生します。排水口(ドレン)の詰まりによる滞水も劣化を加速させる原因です。

ベランダからの雨漏りは、階下の天井にシミとして現れます。気づいた時には天井裏の断熱材がカビだらけ、木材は腐朽菌に侵されている可能性があります。

散水調査と赤外線カメラ——原因を「科学」で突き止める

雨水は重力だけでなく毛細管現象でも移動します。天井のシミの位置と実際の浸入口が2m以上離れていることも珍しくありません。「おそらくここでしょう」と目視で判断する業者の正答率は、体感で50%以下です。

正確な原因特定には科学的な診断手法の組み合わせが不可欠です。

赤外線サーモグラフィは、壁内部の温度差を画像で可視化し、水が浸透している箇所を非破壊で特定できます。水分を含んだ部分は周囲より温度が低くなるため、画像上で「青色」のパターンとして浮かび上がります。足場を組まずに広範囲を調査でき、施主にも視覚的に状態を理解してもらえるメリットがあります。

ただし、温度差が必ずしも漏水によるものとは限りません。結露や建材の熱容量の違いを誤認するリスクがあり、乾いてしまっている箇所は検知できないという限界もあります。

散水調査は、原因と疑われる箇所にホースで水をかけ、室内で漏水を実際に再現させる手法です。最も確実な特定方法ですが、気象条件や建物の構造を考慮したうえでピンポイントに行う必要があり、熟練した技術と時間を要します。

最善の方法はこの2つの組み合わせです。赤外線カメラで「疑わしい広範囲」を絞り込み、散水調査で「実際に漏水するか」を検証する。これにより無駄な破壊調査を避け、最小限の費用で確実な修理計画を立てられます。

費用相場は散水調査単体で3〜5万円(1〜1.5人工)。原因不明のまま30万円の修理をするリスクを考えれば、この費用は「安い保険」です。

→ 散水調査の詳細は:散水調査の重要性|目視で原因を特定する業者を信じてはいけない理由

ベランダ・バルコニー防水の3大工法を「人工」で比較する

ベランダ防水には大きく3つの工法があります。塗料の名前や耐用年数ではなく、「何人工かかるか」で見ると、工事の実態が見えてきます。

FRP防水——硬くて強いが動きに弱い

ガラス繊維マットをポリエステル樹脂で固める工法。新築の木造住宅ベランダで主流です。硬く、歩行に強い反面、建物の動き(地震・熱膨張)には追従できません。RC造にFRPを提案する業者は専門知識を疑ってください。

人工目安:10㎡の一般的なベランダで約3〜4人工(下地処理含む)

→ 参考:防水塗装の工程と品質管理(FRP・ウレタン・シート工法別)

ウレタン防水——柔軟で万能だが膜厚管理が命

液状のウレタン樹脂を塗布し、ゴム状の弾性皮膜を形成する工法。複雑な形状にもシームレスに対応できます。ただし膜厚の均一性は職人の腕と時間次第。規定量の半分しか使わなくても、トップコート後は見た目で区別不可能です。

人工目安:50㎡の屋上で3〜4人工(通気緩衝工法の場合)

コンクリート下地では「通気緩衝工法」が必須。密着工法は安価ですが数年で膨れが発生します。見積書に「通気緩衝シート」「脱気筒」の記載がない場合は要注意です。

シート防水——大面積に有利だが接合部が弱点

塩化ビニルやゴム系のシートを貼る工法。工場生産品なので膜厚が均一。ハウスメーカーの鉄骨造で多く採用されています。弱点は接合部(ジョイント)——シートが経年で収縮すると、継ぎ目が口を開いて浸水します。

人工目安:50㎡の屋上で2〜3人工(機械的固定工法の場合)

→ お住まいがヘーベルハウスの方は:ヘーベルハウスの陸屋根防水事例

→ セキスイハイムの方は:セキスイハイムの塩ビシート防水事例

比較項目FRP防水ウレタン防水シート防水
耐久性(硬度)高(歩行に強い)中(柔軟)中〜高
下地追従性低(割れやすい)高(伸びて追従)高(絶縁)
複雑な形状対応可最適不向き
人工目安(50㎡)4〜5人工3〜4人工2〜3人工
耐用年数10〜15年10〜12年10〜15年
推奨ケース木造ベランダRC造・複雑形状鉄骨造・大面積

防水工事の適正単価は「人工」でしか判断できない

「防水工事一式○○万円」に騙されない逆算法

「ベランダ防水一式 15万円」——この見積もりが適正かどうか、金額だけ見て判断できる人はいません。しかし「人工」で逆算すれば、一発でわかります。

FRP防水の人工分解(10㎡のベランダの場合):

工程人工
下地処理(既存FRP研磨・清掃)0.5人工
プライマー塗布0.3人工
ガラスマット貼り+ポリエステル樹脂1.5人工
トップコート仕上げ0.5人工
合計約3人工

3人工 × 人工単価2.5万円 = 人件費7.5万円

材料費 = 5〜8万円

適正価格帯 = 12〜15万円

この計算を知っていれば、「一式20万円」が高いのか「一式8万円」が危険なのか、判断できるようになります。8万円の見積もりは1.5人工程度しかかけられない計算——つまりどこかの工程を省くしかありません。

私の著書『塗装方程式』で提唱した 品質 = モチベーション × 技術 × 時間 は、防水工事にもそのまま当てはまります。安い見積もり → 時間が削られる → 3年後に漏水するメカニズムは、塗装も防水も同じです。

→ 人工理論の完全解説:外壁塗装の「適正価格」は存在しない?50年の現場が辿り着いた人工理論

→ 参考:工期と品質の関係

→ 参考:工期で品質がわかる理由

あなたの見積もりは大丈夫?今すぐ確認すべき4つの項目

  1. 防水工事が「別項目」として立っているか?——「外壁塗装一式」に含まれている場合、防水に人工が割り当てられていない可能性大
  2. 工法名が明記されているか?——「防水工事一式」ではなく「ウレタン塗膜防水 通気緩衝工法」のように具体的か
  3. 改修ドレンの記載があるか?——ドレン周りは雨漏りの最多発箇所。記載がなければ質問すべき
  4. 「塗装保証」と「雨漏り保証」が区別されているか?——次のセクションで詳しく解説します
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「保証10年」の落とし穴——塗装保証と雨漏り保証はまったく別物

消費者が陥りやすい罠が、「塗装保証」と「雨漏り保証」の混同です。「10年保証付き」と聞くと安心しがちですが、何を保証しているのかを必ず確認してください。

塗装保証——塗膜の剥がれ・膨れだけが対象

塗装工事の保証は、主に「塗膜の剥がれ・膨れ」を対象としたものです。つまり「塗った膜が物理的に剥がれた場合」のみを保証するのであり、雨漏りを止めることは保証の範囲外であることがほとんどです。

雨漏り(防水)保証——止水を目的とした高度な保証

一方、雨漏り保証は建物内部への「止水」を目的とした保証であり、施工箇所に限定されることが多いものの、塗装保証とは次元が異なります。

自然災害免責——知っておくべき「不都合な事実」

どちらの保証にも「自然災害による免責」が含まれていることが一般的です。台風や地震、想定を超える豪雨による漏水は、施工不良ではなく不可抗力と見なされ、無償修理の対象外となるケースがほとんどです。

契約前に「この保証は塗膜の剥がれだけですか?雨漏りも保証対象ですか?」と必ず確認してください。書面で回答を得られない業者は避けるべきです。

雨漏り放置が招く構造的崩壊 —— 木材腐朽・シロアリ・資産価値の暴落

腐朽菌とシロアリの「連携攻撃」

雨漏りは単に天井にシミができるだけの問題ではありません。放置された水分は木材腐朽菌の繁殖を招きます。腐朽菌は木材の成分(セルロースやリグニン)を分解し、柱や梁をスカスカの状態に変質させます。腐朽が進んだ家は耐震性が著しく低下し、大規模な地震の際に倒壊するリスクが飛躍的に高まります。特に壁の内部で進行する腐朽は目視で確認しづらく、気づいた時には手遅れとなっているケースも少なくありません。

さらに恐ろしいのがシロアリとの連携攻撃です。湿った木材はシロアリの最大の好物であり、雨漏りによって供給された水分が床下から建物上部へとシロアリを誘い出す要因になります。シロアリは腐朽菌で柔らかくなった木材を内部から空洞化させ、この二重攻撃により建物の耐震性は文字通り「ゼロ」になる可能性があります。

資産価値への影響——最大30%以上の下落

不動産市場において、雨漏りは「瑕疵(欠陥)」として扱われ、購入希望者からの心理的抵抗も大きい問題です。雨漏りは「再発の恐れがある」「修繕費が不透明」というイメージを持たれるため、たとえ応急処置が済んでいても、適切な調査報告書がなければ買い手からは敬遠されます。

雨漏りの状態資産価値の下落幅市場の反応
小規模・修繕済み(記録あり)▲5〜10%修理記録と保証があれば比較的安心される
中規模・修繕歴あり▲10〜20%内部構造のダメージが懸念される
大規模・未修繕▲30%以上売却自体が困難、更地評価の可能性
構造体に深刻なダメージ価値ゼロ(土地のみ)居住不能、解体費用を差し引かれる

資産価値を守るための3つの武器

資産価値を下げないためには、早期発見・早期修繕に加え、修繕記録の保全が極めて重要です。

  1. 修繕履歴の記録——「いつ、どこを、どのような方法で修理したか」という記録が残っている物件は、買主からの信頼を得やすい。施工管理アプリで工事記録を写真付きで残しておくことは、将来の資産保全にも直結します
  2. ホームインスペクション(住宅診断)の活用——第三者の専門家による診断を受け、修繕済みであることを証明することで、売却時の価格下落を最小限に抑えられます
  3. 瑕疵保険の付帯——万一の再発に備えた保険を加入することで、中古物件としての競争力を高められます
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トップコートを放置するとどうなる?—— 防水層を守る最後の砦

5年放置で防水層が直射日光を浴びる

トップコートは、紫外線から防水層を守る「フィルター」です。ベランダの防水層(FRPやウレタン)は紫外線に弱く、直射を浴び続けると急速に劣化します。

放置した場合のシナリオ:

  • 5年放置:トップコートが消耗し、防水層が直接紫外線を浴びる
  • 10年放置:防水層にひび割れが発生 → 雨水が浸入開始
  • 15年放置:防水層が崩壊 → 全面やり直し(費用5〜10倍)

トップコートの塗り替え費用は50㎡で5〜8万円(0.5〜1人工)。全面防水やり直しは30〜80万円。つまりトップコート塗り替えは「世界一安い保険」です。

国交省ガイドラインが示す「12〜15年周期」の合理的根拠

国土交通省の「長期修繕計画ガイドライン」では、大規模修繕を概ね12〜15年周期で行うことが推奨されています。令和3年9月の改訂では、材料の高耐久化を反映し、外壁塗装の周期目安が12年から15年に延伸されるなど、より実態に即した計画策定が促されました。

この12〜15年周期には明確な合理性があります。外壁の浮きや塗装、防水層の耐久性が一般的に10〜15年であること。そして10年ごとの全面打診調査義務に合わせて足場を組むことで、足場代を共有しコストを最適化できることです。

防水層は「一度施工したら終わり」ではなく、建物のライフサイクルの一部として定期的にメンテナンスすべきものです。10〜15年という節目ごとに、単なる塗り替えではなく「建物全体の健康診断」を行う。この発想を持てるかどうかが、家の寿命と資産価値を大きく左右します。

→ 参考:防水塗装の工程(トップコート塗り替え手順)

→ 参考:築年数別メンテナンスタイミング

年1回のセルフチェックで早期発見

以下の3点を年に一度確認するだけで、大きなトラブルを防げます。

  1. 排水口(ドレン)の詰まり——落ち葉や土の堆積を取り除く
  2. 防水層の膨れ・ひび割れ——靴を脱いで歩いてみて、ブヨブヨする箇所がないか
  3. 笠木(かさぎ)周りのシーリング——手すり壁の頂部。ここからの浸水が見落とされがち

まとめ——塗装は「化粧」、防水は「治療」

「外壁塗装で雨漏りは直りません」——これは業界の良識ある専門家にとっては常識ですが、消費者にはまだ十分に伝わっていません。

覚えておいてほしい5つの原則:

  1. 塗装は予防、防水は治療——雨漏りしている状態で塗装するのは、傷口を洗浄せずに絆創膏を貼る行為
  2. 見積書で「防水」が別項目になっているか確認——「一式」に含まれている場合は人工が不足している可能性大
  3. 「塗装保証」と「雨漏り保証」は別物——「10年保証」が何を保証しているのか書面で確認する
  4. トップコートの5年塗り替えが最強の予防策——5万円の投資で数十万円の全面やり直しを防げる
  5. 突然の訪問営業でその場で契約しない——必ず複数社の見積もりを取り、人工を比較する

業者に「この防水工事、全部で何人工見てますか?」と聞いてください。答えられない業者は、工程を管理していない証拠です。

10〜15年の節目ごとに「塗り替え」ではなく「建物全体の健康診断」を行い、その記録を住宅履歴として保管していく。この姿勢こそが、家族の安全と大切な資産を守る最善の戦略です。

💡 人工理論で見積もりの適正を判断する方法を詳しく知りたい方は
人工理論の完全解説:50年の現場が辿り着いた適正価格の見抜き方

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この記事の著者

横井隆之

横井隆之

ヨコイ塗装 代表 / 外壁塗装コンサルタント

業界経験 50著書 3

愛知県扶桑町でヨコイ塗装を経営。塗装業界50年以上の経験と500件を超える施工実績を持つ外壁塗装の専門家。施主の立場に立った公正なアドバイスを提供し、YouTube、ココナラ、MOSHなど複数のプラットフォームでセカンドオピニオンサービスを展開中。

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