「ALC外壁の見積もり、シーリングが『増し打ち』になってるけど大丈夫?」
「下地処理がシーラーだけで、フィラーの記載がない」
結論から言えば、ALC外壁で「シーリング増し打ち」と「下塗りシーラーのみ」は最も危険な見積もりパターンだ。
なぜなら、ALC(軽量気泡コンクリート)は吸水性が非常に高く、一度水が入ると凍結融解で急速に劣化する素材だからだ。シーリングと下地処理の品質が、建物の寿命を大きく左右する。
この記事では、ALC外壁の塗装見積もりで確認すべき「シーリング」と「下地処理」の詳細、そして契約書のチェックポイントを解説する。
なぜALC外壁は下地処理が特に重要なのか
ALCは「硬いスポンジ」─吸水性の高さがリスク
ALCは内部に無数の気泡を持つ「軽量気泡コンクリート」。この気泡構造が断熱性と軽量化をもたらす一方、スポンジのように水を吸い込む性質を持つ。
吸水率はモルタルの約10倍。塗膜が劣化して防水性能が失われると、ALCは急速に水を吸い込み始める。
【モルタル】吸水率 約3〜5% 【ALC】吸水率 約30〜40% ALCは一度水を吸うと、抜けにくい。冬場に凍結すると内部から破壊される「凍害」が進行する。
塗装の寿命の8割は下地処理で決まる
ALC外壁は、モルタル以上に下地処理の良し悪しが寿命を決定する。
理由は明確。ALCの表面は多孔質で塗料を大量に吸い込むため、適切な下塗りで「目止め」をしないと、中塗り・上塗りが吸い込まれて膜厚が確保できない。
また、ALC同士の継ぎ目(目地)には必ずシーリングがあり、このシーリングの劣化が漏水の最大原因となる。
ALC外壁の劣化パターンと危険度
凍結融解による表面劣化
寒冷地でなくても、ALC内部の水分が凍結・融解を繰り返すと表面が「ボソボソ」になる。
【初期】塗膜の剥離、チョーキング 【中期】表面の砂状化(触ると砂が取れる) 【末期】ALC自体の崩壊 → 要打ち替え
爆裂(ばくれつ)─最も深刻な劣化
ALC内部の鉄筋が錆びて膨張し、表面を押し出す現象。放置すると構造体を傷め、張り替え以外の選択肢がなくなる。
・ALC表面のひび割れから赤錆水が流れ出ている ・表面が膨らんでいる、浮いている ・触ると「パコパコ」音がする → これらが見られたら、塗装前に必ず補修が必要
クラック(ひび割れ)の種類
【表面クラック】塗膜のみの割れ。微弾性フィラーで対応可 【貫通クラック】ALC本体を貫通。シーリング充填+Vカット工法が必要 【目地クラック】シーリングの劣化。打ち替えが基本
見積書チェック【シーリング編】
危険信号:「シーリング 一式」
ALC外壁の見積もりで最も警戒すべきは、シーリングが「一式」で片付けられているケース。
シーリング工事 一式 ... 50,000円
シーリング撤去(打ち替え)... 120m × @400円 = 48,000円 シーリング打ち替え(2成分形ポリウレタン)... 120m × @800円 = 96,000円 バックアップ材・ボンドブレーカー... 120m × @100円 = 12,000円
「打ち替え」vs「増し打ち」の判断基準
シーリングの補修には「打ち替え」と「増し打ち」がある。基本的には打ち替えが正解。
【打ち替え】 工法:既存シーリングを完全撤去→新規充填 単価:1,000〜1,500円/m(撤去含む) 耐久性:10〜15年 【増し打ち】 工法:既存の上に重ね打ち 単価:500〜800円/m 耐久性:3〜5年
なぜ「増し打ち」は問題なのか:
・既存シーリングが劣化していれば、上に重ねても密着しない
・見た目は新しくなるが、下から剥がれてくる
・3〜5年後に再工事 → 結果的に費用が2倍以上になる
ALCで増し打ちが許容されるケース
ただし、以下の条件をすべて満たす場合のみ、増し打ちが許容される場合がある。
・既存シーリングに「弾力性」が残っている(指で押して戻る) ・目視でひび割れ・剥離がない ・前回の塗装から10年未満 ・増し打ちの厚みが8mm以上確保できる
これらの判断は専門家でも難しい。迷ったら「打ち替え」を選ぶのが鉄則。
2面接着と3面接着の違い
シーリングの耐久性を左右するのが「接着面」の考え方。
【3面接着】 状態:シーリングが左右の壁+底面(バックアップ材なし)に接着 問題:建物の動きに追従できず、早期にひび割れる 【2面接着】 状態:シーリングが左右の壁のみに接着(底面はボンドブレーカーで絶縁) 効果:建物の動きに追従し、長寿命
見積書で確認すべきこと:
・「バックアップ材」または「ボンドブレーカー」の記載があるか
・これがない場合、3面接着になるリスク大
シーリング単価の目安
【撤去】300〜500円/m 【プライマー塗布】含む場合が多い 【打ち替え(変成シリコン)】700〜1,000円/m 【打ち替え(ポリウレタン)】800〜1,200円/m 【増し打ち】400〜600円/m 【バックアップ材】50〜100円/m
見積書チェック【下地処理編】
危険信号:「下塗り シーラー」だけの記載
ALC外壁で「下塗り:浸透性シーラー」だけの見積もりは、下地処理の手抜きを疑うべき。
下塗り(浸透性シーラー)... 150㎡ × @300円 = 45,000円 中塗り(シリコン塗料)... 150㎡ × @800円 = 120,000円 上塗り(シリコン塗料)... 150㎡ × @800円 = 120,000円
なぜ問題か:
・ALCの表面には無数の「ピンホール」(気泡穴)がある
・シーラーだけでは穴が埋まらず、仕上がりがボコボコになる
・下地の凹凸を平滑にする「フィラー」が必要
微弾性フィラーが必須な理由
ALCには微弾性フィラー(サーフェーサー)による下地調整が必須。
・ピンホールの充填(目止め効果) ・表面の平滑化 ・微細クラックへの追従性 ・上塗り塗料の吸い込み防止
推奨製品と単価目安
【浸透性シーラー】単価:200〜400円/㎡ 役割:素地固め、密着性向上 ※単体では不十分 【微弾性フィラー】単価:400〜800円/㎡ 役割:ピンホール充填、クラック追従 ※ALCには必須 【サーフェーサー】単価:500〜900円/㎡ 役割:厚膜形成、下地調整 ※フィラーと同等の効果
下塗り①(浸透性シーラー)... 150㎡ × @300円 = 45,000円 下塗り②(微弾性フィラー)... 150㎡ × @600円 = 90,000円 中塗り(シリコン塗料)... 150㎡ × @800円 = 120,000円 上塗り(シリコン塗料)... 150㎡ × @800円 = 120,000円
Uカット・Vカット工法の確認
ALCの貫通クラックには、モルタルと同様にVカット工法またはUカット工法が必要。
1. カット:サンダーでV字型に溝を掘る(幅5〜10mm、深さ5〜10mm) 2. 清掃:粉塵を除去 3. プライマー塗布:密着剤を塗る 4. シーリング充填:弾性シーリング材を充填 5. フィラー塗布:表面を平滑に 単価目安:800〜1,500円/m
爆裂補修の工程と単価
ALC内部の鉄筋が錆びて爆裂を起こした場合、単なる埋め戻しでは再発する。
1. 脆弱部除去:浮いたALCをハツリ除去 2. 鉄筋処理:露出した鉄筋をケレン(錆落とし) 3. 防錆処理:エポキシ系錆止めを塗布 4. 欠損部充填:ALC用補修材(エポキシ樹脂モルタル等)で埋め戻し 5. 下地調整:微弾性フィラーで平滑化 単価目安:5,000〜10,000円/箇所
「爆裂補修 一式」で「防錆処理」の記載がない → 錆止めを省略すると、内部から再度錆が進行し、数年で再発
見積書チェック【塗装編】
ALC外壁に適した塗料システム
【下塗り①】浸透性シーラー → 素地固め 【下塗り②】微弾性フィラー → ピンホール充填、平滑化 【中塗り・上塗り】透湿性塗料 → 雨水遮断+水蒸気透過
ALCに「透湿性」が重要な理由:
・ALCは内部に水分を含みやすい
・透湿性のない塗料を塗ると、内部の水分が抜けず「膨れ」「剥離」の原因に
・特に北面や日陰の壁は要注意
3回塗りの工程確認
ALCの場合、シーラー→フィラー→中塗り→上塗りの4回塗りが理想。最低でもフィラーを含む3回塗りが必要。
ALC外壁で「下塗り→上塗り」の2回塗りは、ピンホール処理と膜厚確保の両面で不十分。必ず「下塗り(フィラー含む)→中塗り→上塗り」の3回以上を確認する。
乾燥時間の重要性
ALCは吸水性が高いため、工程間の乾燥時間が特に重要。
【高圧洗浄後】最低24時間(できれば48時間) 【シーラー乾燥】3〜4時間以上 【フィラー乾燥】4〜8時間以上 【中塗り乾燥】4時間以上 ※湿度が高い日、北面は乾燥時間を延長
確認方法: 工期が極端に短い(例:3階建て100㎡を3日で完工)場合、乾燥時間の短縮を疑う
契約書チェック【法的リスク管理編】
契約不適合責任と4つの権利
2020年の民法改正で、「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に変わった。
1. 追完請求権:やり直し・補修を求める 2. 代金減額請求権:補修不能なら代金減額 3. 損害賠償請求権:損害の賠償を求める 4. 契約解除権:重大な不適合なら契約解除
重要ポイント: 見積書の仕様どおりに施工されていなければ「契約不適合」となる。だから見積書の詳細な記載が重要。
保証内容の確認ポイント
・保証期間:塗膜保証は何年か(一般的にシリコンで7〜10年) ・起算日:「完工日」からか「引渡日」からか ・免責事項:「下地の挙動による剥離は免責」等の範囲 ・シーリング保証:塗膜とは別に保証があるか
「ALCの吸水による不具合は保証対象外」 → これでは下地処理の手抜きを全て免責される。交渉して限定的にする
クーリング・オフの適用条件
訪問販売で契約した場合、8日以内であれば無条件で解約できる。
・契約書に赤枠・赤字でクーリング・オフの説明があるか ・説明がなければ、8日を過ぎても解除可能な場合がある ・「材料を発注した」「違約金がかかる」は業者の妨害行為
施工中のチェックポイント
工程写真の提出を契約条件に
契約時に「以下の工程写真を撮影し、報告すること」を条件にする。
【高圧洗浄後】乾燥状態の確認 【シーリング撤去】古いシーリングの除去状況 【シーリング打ち替え】バックアップ材・充填状況 【爆裂補修】防錆処理の状況 【下塗り(シーラー)】完了全景 【下塗り(フィラー)】ピンホール充填の状況 【中塗り完了】全景(色変えの確認) 【上塗り完了】全景 【塗料缶】空き缶の写真(使用量の証明)
塗料缶数の確認方法
塗料の使用量が適正かを確認する方法。
塗装面積 ÷ 塗料の塗布面積(缶に記載)= 必要缶数 例:150㎡の外壁、塗料の塗布面積が40〜50㎡/缶の場合 150 ÷ 45 ≒ 3.3缶 → 最低4缶必要 ※中塗り・上塗りで計8缶以上が目安
契約時に缶数を明記してもらい、施工後に空き缶の写真で確認する。
見積書・契約書チェックシート(まとめ)
✓シーリングチェックリスト
- シーリングは「打ち替え」か「増し打ち」か明記されているか
- 増し打ちの場合、既存シーリングの状態確認がされているか
- バックアップ材またはボンドブレーカーの記載があるか
- シーリング材の種類(変成シリコン/ポリウレタン等)が明記されているか
- メートル数と単価が記載されているか
✓下地処理チェックリスト
- 高圧洗浄の水圧(MPa)が記載されているか
- 下塗りに「微弾性フィラー」または「サーフェーサー」が含まれているか
- クラック補修の工法(Vカット等)とメートル数が記載されているか
- 爆裂補修に「防錆処理」が含まれているか
✓塗装チェックリスト
- 塗料名(メーカー・商品名)が具体的に記載されているか
- 下塗り→中塗り→上塗りの3回以上の工程か
- 透湿性塗料が選定されているか(カタログで確認)
- 使用缶数の記載があるか
✓契約書チェックリスト
- 見積書番号と仕様が紐付けられているか
- 工期(着工日・完工日)が明記されているか
- 保証期間・起算日・免責事項が明記されているか
- 支払条件(前払い50%以下を推奨)
- クーリング・オフの赤枠説明があるか(訪問販売の場合)
まとめ
ALC外壁の塗装見積もりで最も重要なのはシーリングと下地処理の詳細。
・シーリングは原則「打ち替え」 ・「増し打ち」は既存の状態確認が必須 ・下塗りには「微弾性フィラー」が必須 ・爆裂補修には「防錆処理」が必須 ・塗料は「透湿性」を確認
・見積書の仕様を契約書に紐付ける(契約不適合責任対策) ・工程写真の提出を条件にする ・保証の免責範囲を確認・交渉 ・缶数を明記させる
ALCは「下地処理にお金をかける」が正解。高価なフッ素塗料よりも、シーリング打ち替え+微弾性フィラーにコストをかけた方が、建物の寿命延長に寄与する。
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