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外壁塗装の契約に「写真報告」を入れるべき理由|下地処理の証拠を残す方法

外壁塗装の契約書に「写真報告」を盛り込むべき理由を解説。下地処理・シーリング・高圧洗浄など、塗装後は見えなくなる工程の証拠を残す方法と、撮影すべき写真リストを職人目線で紹介。

はじめに:塗装工事には「見えなくなる工程」がある

外壁塗装工事において、施主(発注者)が最終的に目にするのは「仕上がった外観」だけです。

しかし、塗装の耐久性を決定づけるのは、その下層に隠された「下地処理」の品質です。

私は愛知県で50年続く塗装店の2代目として、500件以上の現場を見てきました。その経験から断言できることがあります。

塗装工事における不具合(早期の剥離、膨れ、再ひび割れなど)の大半は、塗料そのものの欠陥ではなく、下地処理の不備に起因しています。

問題は、ひとたび上塗りが施されれば、下地処理が適切に行われたか、あるいは手抜きされたかを非破壊で検査することが不可能になるということです。

この「隠蔽部(いんぺいぶ)」の不可視性こそが、悪質な手抜き工事を誘発する温床となっています。

だからこそ、写真記録という「動かぬ証拠」が不可欠なのです。

第1章:なぜ「写真報告」が必要なのか

塗装方程式で考える「見えない品質」

私が提唱する「塗装方程式」では、品質を次のように定義しています。

品質 = モチベーション × 技術 × 時間

この公式において、「技術」の大部分は下地処理が占めます。しかし、下地処理は塗装後には完全に見えなくなります。

【工程別の可視性と影響度】

  • 上塗り:○見える / 品質への影響度 20%
  • 中塗り:×見えない / 品質への影響度 20%
  • 下塗り:×見えない / 品質への影響度 20%
  • 下地処理(シーリング・補修):×見えない / 品質への影響度 40%

品質への影響度が高い工程ほど、塗装後には見えなくなるという逆説的な構造があります。

「見えない」から手抜きが起きる

私の著書『外壁塗装の不都合な真実』でも触れていますが、塗装は塗ってしまうと下地の状態が見えなくなるため、ごまかしがしやすいという問題があります。

特に下請けが工期を短縮するために工程を省略するような現場では、洗浄や補修、養生が疎かになりがちです。

写真報告を契約条件にすることは、この「見えない手抜き」を未然に防ぐ最も効果的な手段です。

第2章:撮影すべき写真リスト【工程別完全版】

① 高圧洗浄

【撮影対象と確認ポイント】

  • 使用機材:エンジン式等の業務用機材か?→欠落時は塗膜剥離(付着不良)
  • 洗浄状況:チョーキングが除去され素地が見えているか?→欠落時は塗膜剥離
  • 圧力計(あれば):10〜15MPaの適正圧か?→欠落時は洗浄不足

必要な水圧の目安:

  • 業務用エンジン式:12〜15MPa以上 → ◎(脆弱層を除去可能)
  • 家庭用電気式:5〜8MPa → △(表面汚れのみ)
  • 水道ホース:0.2〜0.4MPa → ×(洗浄効果なし)

② 乾燥養生

【撮影対象と確認ポイント】

  • 水分計の表示画面:デジタル表示が10%以下か?→欠落時は塗膜の膨れ、剥がれ
  • 測定日時:洗浄から適切に時間が空いているか?→欠落時は膨れ(ブリスター)

含水率管理の重要性:

高圧洗浄によってサイディングやモルタルは大量の水分を吸収します。十分に乾燥させずに塗料で被覆すると、太陽熱によって内部の水分が気化し、体積膨張を起こします。

水が水蒸気に変わる際、体積は約1700倍にも膨れ上がります。この強大な内圧が塗膜を押し上げ、「膨れ」や「剥がれ」を引き起こします。

契約条件として「塗装開始前の含水率測定写真(数値が10%以下であることを示す画面の接写)」を義務付けることで、乾燥期間短縮による施工不良を物理的に阻止できます。

③ シーリング工事【最重要】

【撮影対象と確認ポイント】

  • 既存撤去後:古いシーリングが完全に除去されているか?→欠落時は早期破断
  • ボンドブレーカー設置:青や緑のテープが目地底に見えるか?(2面接着の証明)→欠落時は目地の早期破断、漏水
  • プライマー塗布:接着剤が十分に塗布されているか?→欠落時は界面剥離
  • 充填・仕上げ:シーリング材が充填され、ヘラで押さえられているか?→欠落時は防水不良

「ボンドブレーカー設置」の写真は、2面接着が物理的に成立していることを証明する唯一の証拠です。この提出を拒む業者は施工品質に対する意識が著しく低いと判断せざるを得ません。

④ クラック(ひび割れ)補修

【撮影対象と確認ポイント】

  • カット状況:V/Uカットされているか?(電動工具の使用)→欠落時はひび割れの再発
  • プライマー塗布:カットされた溝にプライマーが塗られているか?→欠落時は充填材の剥離
  • 充填状況:シーリング材が適切に充填されているか?→欠落時は再発
  • 肌合わせ:周囲の模様(パターン)が復元されているか?→欠落時は美観不良

単にひび割れの上からシーリング材を擦り込む(刷り込み)だけの補修は一時的にひびを隠すだけで、強度は全くありません。

⑤ 鉄部ケレン

【撮影対象と確認ポイント】

  • 研磨後の表面:旧塗膜や錆が除去され、金属光沢や傷(足付け)がついているか?→欠落時は錆の再発、剥離
  • サビ止め塗装前:ケレンが行われた証拠→欠落時は早期の錆汁発生

⑥ 材料管理

【撮影対象と確認ポイント】

  • 搬入時の塗料缶(全量):指定されたメーカー・品番か?→欠落時は不正流用
  • 空き缶(全量):搬入数と空き缶数が整合しているか?→欠落時は塗料の薄めすぎ

使用材料については、搬入時の全量写真および空き缶の全量写真を撮影し、所定の使用量が遵守されたことを証明させることが重要です。

第3章:写真報告の品質基準【黒板・5W1H】

単に「写真を撮る」という契約条項だけでは不十分です。証拠能力を持たないピンボケ写真や、何が写っているか不明な遠景写真を大量に提出されても意味がありません。

黒板(電子小黒板)の必須化

すべての工程写真には「小黒板(または電子小黒板)」の写し込みを義務付けるべきです。

黒板には以下の5W1H情報が記載されている必要があります。

  • 工事名:どの現場か
  • 撮影日:いつ行われたか(乾燥期間の証明)
  • 施工箇所:建物のどの方角、どの部分か(例:東面2階 窓周り)
  • 作業内容:何をしているか(例:シーリング充填、プライマー塗布)
  • 使用材料・規格:何を使っているか(例:オートンイクシード、JIS A 6021)
  • 立会人・施工者:誰が行ったか

電子小黒板アプリの活用

近年ではスマートフォンやタブレットで撮影と同時に黒板情報を埋め込める「電子小黒板」アプリが普及しています。

これらを使用することで改ざん防止と業務効率化が両立できます。手書き黒板の書き換えや読み間違いのリスクを排除するためにも、電子小黒板の利用を推奨します。

第4章:法的観点【契約不適合責任と写真台帳】

2020年民法改正の影響

2020年4月の民法改正により、従来の「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」へと改められました。

新法下における責任の核心は、「引き渡された目的物が、種類、品質又は数量に関して契約の内容と適合しない」かどうかにあります。

契約書や見積書に「下地処理:ひび割れUカット補修」「シーリング:撤去打ち替え(2面接着)」と明記されているにもかかわらず、実際にはその工法がとられていなかった場合、それは明白な「契約不適合」となります。

写真台帳は「法的保険」

工事完了後に不具合が発生し、法的紛争に発展した場合、施主側が「施工不良」を立証する必要があります。

しかし、塗装の剥離が「経年劣化」なのか「施工不良(下地処理不足)」なのかを、数年後に証明することは極めて困難です。

この時、詳細な工程写真(工事写真台帳)が存在すれば、それが裁判における強力な証拠となります。

逆に、写真がなければ「言った言わない」の水掛け論となり、施主は不利な立場に置かれます。

写真報告を契約条件にすることは、万が一の際の「法的保険」をかけることに他なりません。

第5章:契約書への記載例【推奨条項】

以下の条項を、仕様書または特約事項として盛り込むことを強く推奨します。

推奨契約条項案

第○条(施工記録及び報告)

1. 受注者は、本工事の施工に際し、各工程の施工状況を証する写真を撮影し、工事完了時に「工事写真台帳」として発注者に提出しなければならない。

2. 前項の写真には、工事名、撮影日時、施工箇所、作業内容を記載した黒板(電子小黒板を含む)を写し込むものとする。

3. 特に以下の「下地処理」工程については、詳細な記録を行うものとする。

  • 高圧洗浄:使用機材及び洗浄状況、洗浄後の清掃状態
  • 含水率測定:塗装工程開始前の下地含水率が10%以下であることを示す測定器の表示画面
  • ひび割れ補修:Uカット等の処理状況、プライマー塗布、充填状況
  • シーリング工事:旧材撤去確認、ボンドブレーカー設置確認(2面接着の証明)、プライマー塗布、充填状況
  • 鉄部ケレン:錆落とし完了後の表面状態

4. 使用材料については、搬入時の全量写真および空き缶の全量写真を撮影し、所定の使用量が遵守されたことを証明しなければならない。

5. 写真データの改ざん、捏造が発覚した場合、発注者は契約不適合として無償でのやり直し、または損害賠償を請求できるものとする。

第6章:優良業者のスクリーニング機能

写真報告を契約条件にすることは、業者の質を見極める「リトマス試験紙」としても機能します。

業者の反応で分かること

【業者タイプと反応】

  • 優良業者:自社の施工品質に自信があり、普段から適正な管理を行っているため拒まない。むしろアピールの機会として歓迎 → ◎契約推奨
  • 悪質・低レベル業者:「職人の手が止まる」「信用していないのか」と感情的に反論、または法外な追加料金を要求 → ×契約対象から除外

写真報告を拒む業者は、何かを隠したいと考えている可能性が高いです。

まとめ:「プロセスの可視化」が最大の投資

私が50年の経験から学んだ最も重要な教訓があります。

塗装は「塗るまでの下地処理」が命。そして、その下地処理は塗ったら見えなくなる。

だからこそ、「写真報告」という形で証拠を残すことが、施主にとって最大の防衛策なのです。

写真報告を契約条件にする3つのメリット

  1. 技術的メリット:下地処理の品質を可視化し、手抜きを物理的に防止
  2. 法的メリット:契約不適合責任を問う際の証拠を確保
  3. 選別メリット:優良業者と悪質業者を契約前にスクリーニング

施主は、見積もりの安さだけに目を奪われることなく、「プロセスの可視化」にコストと契約上の重きを置くべきです。

それこそが、10年、20年先まで資産価値を守るための最も確実な投資となります。

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