軒裏は建物の「健康状態」を映し出す最も敏感なバロメーター
- 屋根や外壁に比して軽視されがちな部位
50年の現場経験から断言:軒裏の劣化は単なる美観の問題ではない
- 構造躯体の腐朽や雨漏りの前兆を示す重大なシグナル
軒裏の三つの重要な機能
- 延焼防止機能:隣家の火災時、炎が軒を伝って小屋裏に侵入するのを防ぐ「防火帯」
- 小屋裏換気機能:有孔ボードや換気口から湿気・熱気を排出し、構造材の腐朽を防ぐ
- 美観形成機能:建物の輪郭を強調し、外観の完成度を高める
「軒裏のシミ」が示す構造的危機
物理的法則から読み解く
- 軒裏(庇の下側)に雨が直接当たることは稀
シミの存在=水が「外部から飛来」ではなく「内部または上部から移動してきた」証拠
- 放置して表面だけ塗装=内部で進行する腐食を隠蔽し建物の寿命を縮める行為
雨漏りの原因箇所
- 屋根の谷板金の破損:酸性雨による銅の腐食や経年劣化で穴→雨水が垂木を伝って軒先へ
- 広小舞・鼻隠しの腐朽:防水紙の立ち上げ不十分→毛細管現象で水が裏側に回り込む
- 雨樋のオーバーフロー:落ち葉や土砂で詰まり→大雨時に鼻隠し板の裏側へ大量浸水
結露による内部からの劣化
- 冬季に室内の暖かく湿った空気が小屋裏に漏れ出し、冷やされて結露
- 換気不良:軒裏換気口が不十分、断熱材が換気経路を塞いでいる
- 黒ずんだシミが全体的に広がる特徴
小動物の侵入による汚染
- ハクビシン、コウモリ、ネズミの排泄物が軒裏に染み出す
- 独特の悪臭を伴うシミ
塗装では封じ込め不可能→ボード全交換と消毒、侵入経路の遮断が必須
高圧洗浄が「絶対NG」な科学的理由
構造力学と流体力学を無視した暴挙
多くの業者が「外壁と一緒に丸洗いします」と言うが、これは暴挙
断熱材の水浸しリスク
- 軒裏には換気口(有孔ボード・換気金物)がある
- 下から15MPaの高圧水流を当てれば、水は容易に小屋裏に侵入
- グラスウール断熱材が水を吸うと断熱性能を失い、カビの温床に
- 乾燥まで数ヶ月を要することも
基材の破壊とアスベスト飛散
- 劣化して脆くなった建材に高圧水=表面が削れて毛羽立ち、最悪は割れて落下
削れた粉塵にアスベストが含まれていれば近隣への健康被害リスク
乾燥不足による塗膜剥離
- ケイカル板が大量の水を吸い込んだ状態で塗装→内部の水分が逃げ場を失う
- 気温上昇で水蒸気となり、塗膜を内側から押し上げ「膨れ」「剥がれ」
正しい下地処理(ドライ施工)
- 蜘蛛の巣やホコリは箒やブラシで除去
- 固着した汚れは固く絞ったウエスで拭き取る程度
- カビや藻は防カビ剤を塗布して死滅させてから拭き取る
塗料選定の科学:AEP vs NAD
| 塗料種類 | 特徴 | 適正素材 |
|---|---|---|
| AEP(水性アクリルエマルション) | 水性で臭いが少なく透湿性が高い。つや消し仕上げが基本 | モルタル・ケイカル板 |
| NAD(弱溶剤系アクリル/ウレタン) | 浸透力が高く粉っぽい下地を固める効果。防カビ・防藻性が高い | ケイカル板・ベニヤ・金属(リフォームの王道) |
| 弾性塗料 | ゴムのように伸びる | 軒裏使用禁止(湿気を閉じ込めて膨れの原因) |
見積書チェックポイント
「軒裏塗装工事 一式」は危険信号
- 塗装回数、使用塗料名、ケレンの有無が明記されているべき
正しい見積もり例:
- 面積:35.0㎡
- 下地処理:手作業による清掃・ケレン含む
- 使用塗料:日本ペイント ケンエースG-II(NADアクリル)
- 仕様:2回塗り
- 単価:1,200円/㎡
契約前最終チェックリスト
- 軒裏の洗浄方法は?
- NG:「高圧洗浄します」
- OK:「手作業で拭き取り、ケレンします」
- 軒裏の塗料名は?
- 要注意:「外壁と同じシリコンです」
- OK:「軒天専用の透湿塗料(NADなど)を使います」
- 換気口(ガラリ)はどう処理するか?
- NG:「一緒に塗りつぶします」
- OK:「養生して塗らないか、専用の黒などで塗り分けます」
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