足場解体前が「最後のチャンス」である理由
外壁塗装の品質を施主自身の目で確認できる機会は、足場が建っている間だけです。
足場が解体されると、2階以上の外壁に近づく手段がなくなります。もし解体後に施工不良が見つかった場合、修正のために足場を再架設する費用(10〜20万円)が発生します。
業者としては、この追加コストを避けたいため、足場解体後の指摘に対してははしごや脚立を使った簡易補修で済ませようとする傾向があります。しかし、高所でのはしご作業は安全面でも品質面でも十分な作業ができません。
契約時の必須確認事項:
契約書に「施主による完了検査合格まで足場解体を行わない」という条項を明記してもらいましょう。これにより、施主が納得するまで是正作業を求める権利が確保されます。
塗装方程式「品質 = モチベーション × 技術 × 時間」の観点から言えば、この完了検査は施主が「時間」の要素を担保する最終防衛線です。
検査で確認すべき4つの領域
完了検査では、以下の4つの領域を体系的にチェックします。
- 美観検査(色ムラ・艶ムラ・見切り)…重要度★★★
- 機能検査(塗膜欠陥・シーリング硬化)…重要度★★★★★
- 環境検査(飛散・破損・清掃)…重要度★★★★
- 証拠検査(工事写真・保証書・使用缶数)…重要度★★★★
美観検査:色ムラ・艶ムラ・見切りライン
色ムラの確認方法
外壁全体を2〜3メートル離れた距離から俯瞰し、明らかな色ムラがないか確認します。
特に注意すべきポイント:
- 日当たりの異なる面(南面と北面)での色調の違い
- タッチアップ(部分補修)箇所と周囲の色の差
- 入隅・出隅(角)部分の塗り残し
注意:同じ塗料でも、塗る角度や日光の当たり方によって微妙な色差が生じることがあります。近距離で見すぎると許容範囲内のムラまで気になってしまうため、通常の生活距離(2〜3メートル)で確認するのが適切です。
艶ムラの確認
艶あり塗料の場合、光の反射が均一かどうかを確認します。斜めから光を当てるように見ると、艶ムラが発見しやすくなります。
艶ムラの主な原因:
- 下地の吸い込みムラ(下塗り不足)
- 塗布量の不均一
- 乾燥条件の違い(日陰面と日向面)
見切りラインの精度
異なる色や素材が接する境界線(見切りライン)が、直線で美しく仕上がっているかを確認します。
特に確認すべき箇所:
- 外壁と軒裏の境界
- 外壁とサッシ周りの境界
- 1階と2階で色を変えている場合の境界
機能検査:塗膜欠陥とシーリング硬化(最重要)
美観は主観的な要素を含みますが、機能検査は客観的な品質基準に基づいて判定できます。この領域が最も重要です。
塗膜欠陥の発見法
①ピンホール(針穴状の小さな穴)
塗膜表面に針で刺したような微小な穴が点在する状態です。下塗り材の希釈率が不適切な場合や、気温が高すぎる状態で塗装した場合に発生します。
発見法:外壁面に30〜50センチまで顔を近づけ、斜めの角度から光を受ける方向で確認します。ピンホールがあると、光が穴に入り込んで小さな影として視認できます。
②ダレ(塗料が垂れた跡)
塗料を厚く塗りすぎた場合に、重力で垂れて固まった筋状の跡です。特に窓枠の下や軒裏との境界部分に発生しやすい欠陥です。
③膨れ(ブリスター)
塗膜の下に空気や水分が閉じ込められ、泡状に膨らんだ状態です。下地の乾燥不足が主原因であり、放置すると膨れた部分から剥離が進行します。
発見法:手のひらで外壁面を軽くなでるように触診します。膨れがあると、明らかな凹凸として感じ取れます。
④クラック(ひび割れ)
新しい塗膜にひび割れが発生している場合、下地処理の不備や塗料の選定ミスが原因の可能性があります。施工直後のクラックは重大な施工不良であり、即座に是正を求めてください。
シーリング硬化状態の触診検査
シーリング(コーキング)材は、施工後に適切な時間をかけて硬化する必要があります。
触診の方法:
- シーリング表面を指先で軽く押す
- 適度な弾力があり、指紋が残らない状態が正常
- 表面がベタつく場合は硬化不足の可能性あり
特にオートンイクシードを使用している場合は、硬化に7〜10日かかるため、施工からの経過日数を確認してください。冬場は10日以上かかることもあります。
確認すべき箇所:
- サイディングの縦目地・横目地
- 窓サッシ周り
- 換気口・配管周り
- 入隅部分
環境検査:飛散・破損・原状回復
塗料飛散の確認
養生の隙間や養生撤去時のミスにより、塗料が意図しない場所に付着していないか確認します。
確認すべき箇所:
- 窓ガラス・サッシ枠
- カーポート・車
- エアコン室外機
- 植栽・花壇
- 隣家の外壁・車(近接している場合は特に重要)
塗料飛散を発見した場合:足場解体前であれば、業者の責任で原状回復してもらうのが原則です。塗料が乾燥して固まる前に対処するほうが容易なので、発見したら即座に伝えましょう。
足場による破損確認
足場の設置・解体作業により、建物や周辺に破損が生じていないか確認します。
- 雨樋の変形・破損
- 外壁のキズ・凹み
- 屋根材のズレ・破損
- 地面のタイル・コンクリートの割れ
- フェンス・門扉の変形
清掃状態の確認
工事完了後の清掃は業者の基本的な義務です。
- 敷地内のゴミ・資材の残留物がないか
- 排水溝に塗料カスが詰まっていないか
- 養生テープの糊残りがないか
- 金属片(ビス・番線の切れ端)が残っていないか→錆びて「もらい錆」の原因になる
証拠検査:工事写真・保証書・空缶確認
工事写真台帳による中塗り確認
外壁塗装の3回塗り(下塗り・中塗り・上塗り)のうち、中塗りは上塗りで完全に覆い隠されるため、完了後に中塗りの実施を目視で確認することは不可能です。
そこで重要になるのが工事写真台帳です。
確認すべき写真:
- 各工程の施工中写真(下塗り・中塗り・上塗りそれぞれ)
- 日付入りの写真(各工程の施工日が確認できること)
- 下地処理(ケレン・補修)の施工前後の写真
- シーリング施工の写真(撤去→充填→ヘラ仕上げ)
写真が用意されていない場合、中塗りを省略している(2回塗り手抜き)可能性を否定できません。写真提出を契約条件に含めておくことを強く推奨します。
空缶検査(使用缶数の確認)
もう一つの客観的な品質証拠が、使用済み塗料の空缶です。
塗料メーカーは各製品に「基準塗布量」を設定しています。塗装面積から必要缶数を計算し、実際の使用缶数と照合することで、規定量の塗料が使われたかを検証できます。
確認手順:
- 見積書に記載された塗料名・型番を確認
- メーカーカタログから基準塗布量を調べる
- 塗装面積 ÷ 基準塗布量 = 必要缶数を計算
- 空缶の本数と照合
空缶の提示を拒む業者は要注意です。空缶は産業廃棄物として処理されるため、提示できない正当な理由はありません。
保証書の受け取りと確認
工事完了時に必ず受け取るべき書類:
- 保証書(保証期間・対象範囲・免責事項を確認)
- 工事完了報告書(施工内容・使用材料の記録)
- 工事写真台帳(全工程の記録写真)
保証書の確認ポイント:
- 保証期間は何年か
- 「自然災害」「経年劣化」が免責事項に含まれていないか
- 保証の対象範囲(塗膜剥離のみか、変色・退色も含むか)
- 連絡先・担当者名が明記されているか
不具合を発見したときの是正交渉術
冷静かつ具体的に指摘する
感情的にクレームを伝えるのではなく、客観的事実を具体的に伝えることが効果的です。
効果的な伝え方:
- 「南面の2階窓の右下、約30cm四方にピンホールが10箇所程度あります」…具体的な場所と状態を伝える
- 「写真を撮ってありますので確認してください」…証拠を提示する
書面で記録を残す
口頭での指摘だけでなく、是正箇所と合意内容を書面に残すことが重要です。
- 指摘箇所の写真を撮影(日付入り)
- 是正内容と完了予定日を書面で合意
- 是正完了後に再検査を行い、合格を確認
是正完了まで足場解体を認めない
最も重要な交渉カードは、「是正が完了するまで足場を解体しないでください」という要求です。
足場が建っている限り、業者は適切な修正作業を行わざるを得ません。この権利を行使するためにも、契約書への明記が不可欠です。
完了検査チェックリスト(まとめ)
美観検査:
- ☐ 色ムラがないか(2〜3m離れて確認)
- ☐ 艶ムラがないか(斜めから確認)
- ☐ 見切りラインが直線で美しいか
- ☐ 塗り残し箇所がないか
機能検査:
- ☐ ピンホールがないか(30〜50cmから斜め確認)
- ☐ ダレがないか(窓枠下を重点確認)
- ☐ 膨れがないか(手のひらで触診)
- ☐ クラックがないか
- ☐ シーリングに適度な弾力があるか(指押し確認)
環境検査:
- ☐ 塗料飛散がないか(窓・車・隣家)
- ☐ 足場による破損がないか(雨樋・外壁・地面)
- ☐ 金属片・ゴミが残っていないか
- ☐ 養生テープの糊残りがないか
証拠検査:
- ☐ 工事写真台帳を受け取ったか(全工程分)
- ☐ 空缶の数は必要缶数と一致しているか
- ☐ 保証書を受け取ったか(内容確認済み)
- ☐ 工事完了報告書を受け取ったか