「見積書に『水性シリコン塗料』と書いてあるけど、油性の方がいいんじゃないの?」
外壁塗装を検討中の方から、こんな相談をよく受けます。結論から言えば、2026年の外壁塗装においては水性塗料が合理的な選択肢になるケースが大半です。ただし、それは「水性が優れているから」だけではなく、「油性が手に入りにくくなっているから」という事情も含みます。
この記事では、施工歴25年・施工件数250件超の職人への取材をもとに、水性と油性の本質的な違い、2026年の供給状況、そして見積書で確認すべきポイントを正直に解説します。
水性と油性、2026年の外壁塗装で選ぶべきはどちらか
先に結論を述べます。
2026年3月現在、外壁塗装においては水性塗料を第一選択肢とすることを推奨します。
理由は3つあります。
- 水性塗料の性能が油性塗料とほぼ同等まで進化した
- 油性塗料に必要なシンナーの価格が75〜80%高騰し、コストメリットが逆転した
- 油性塗料の納入制限が発生しており、工期リスクが生じている
ただし、すべての部位で水性が最適というわけではありません。鉄部や木部など、油性が適する箇所も存在します。この記事を読めば、見積書の「水性」「油性」の記載を自分で判断できるようになります。
本質的な違いは「希釈剤」だけ——水 vs シンナー
水性塗料と油性塗料の違いを一言で言えば、塗料を薄めるために使う液体が「水」か「シンナー(有機溶剤)」かの違いです。
塗料の基本構造
すべての塗料は、次の3つの成分で構成されています。
- 樹脂(アクリル・シリコン・フッ素・無機など)——塗膜の耐久性を決める主成分
- 顔料——色を付ける成分
- 希釈剤——樹脂と顔料を溶かして塗りやすくする液体
この希釈剤が「水」なら水性塗料、「シンナー」なら油性塗料(溶剤系塗料)です。塗料が乾燥する過程で希釈剤は蒸発し、壁に残るのは樹脂と顔料だけです。
つまり、乾燥後の塗膜に水性・油性の違いはほとんど残らないのです。耐久性を左右するのは希釈剤ではなく、樹脂のグレードです。
「油性の方が長持ち」は過去の話
かつて(2010年代以前)は、水性塗料の樹脂技術が未熟で、油性塗料に耐久性で劣っていたのは事実です。しかし、現在の水性塗料は樹脂の微粒子化技術やハイブリッド技術の進歩により、密着性・耐候性ともに油性に匹敵する性能を実現しています。
「油性の方が高いけど良い」という業者の説明は、2010年代以前の常識に基づいている可能性があります。その説明が現在も正しいかどうかは、塗料のグレード(樹脂の種類)を確認することで判断できます。
2026年3月現在:油性塗料に「納入制限」が発生している
ここからが2026年に特有の重要情報です。
現場の職人への取材によると、2026年3月25日時点で、すべての塗料仕入れ先から溶剤系塗料(油性塗料)の納入制限通知が届いています。
何が起きているのか
- 日本ペイント:塗料用シンナーを3月19日発注分より75%値上げ
- エスケー化研:同シンナーを80%値上げ実施済み
- 強溶剤2液ウレタンは専用シンナーが必要で、調達そのものが困難に
- 一部の油性塗料は発注しても「納期未定」の回答
これは現場で日々塗料を扱う職人にとっても想定外の事態です。塗料の在庫が確保できなければ工期に直接影響し、施主にとっては「契約したのに工事が始まらない」というリスクにもなりかねません。
シンナーの75〜80%値上げは異例の幅です。これにより、油性塗料を使う場合のコストが大幅に上昇しています。
「水性が良いから」ではなく「水性が届くから」
現場では、外壁部分の水性塗料への切り替えを検討する動きが広がっています。これは水性の品質が急に上がったからではなく、油性塗料の供給が不安定になっているためです。
施主の皆さんに知っておいていただきたいのは、2026年の油性は「資源不足で高い」のであって、必ずしも「性能が良くて高い」わけではないということです。
実際、ある現場では屋根塗料の先行発注を行い、油性塗料の在庫を確保してから契約に進むケースも出てきています。契約前にAIカラーシミュレーションで色を決め、発注後の色変更リスクを減らすことも重要です。色変更は塗料の追加発注を意味し、2026年の供給状況ではそれ自体が大きなリスクとなります。
塗料価格の値上がり動向について、より詳しいデータと職人の分析は塗料の値上がり動向と「急ぐべきか」の解説記事をご覧ください。
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耐久性は「水性か油性か」より「樹脂グレード」で決まる
見積書を比較するとき、「水性か油性か」よりも重要なのが樹脂グレードです。以下に、樹脂グレード別の耐久年数をまとめます。
樹脂グレード別の耐久年数(目安)
- アクリル塗料:5〜8年(水性・油性ともに現在はほとんど使われない)
- ウレタン塗料:8〜10年(水性8〜10年 / 油性8〜10年)
- シリコン塗料:10〜15年(水性10〜12年 / 油性12〜15年)
- フッ素塗料:15〜20年(水性15〜18年 / 油性15〜20年)
- 無機塗料:20〜25年(水性で20〜25年——油性シリコンを大幅に上回る)
注目すべきは、水性無機塗料の耐久年数が20〜25年という点です。油性シリコン(12〜15年)を選ぶよりも、水性無機(20〜25年)を選ぶ方が、はるかに長持ちします。
つまり、「油性だから長持ち」ではなく「樹脂グレードが高いから長持ち」が正確な理解です。水性か油性かの違いによる耐久年数の差は、同じ樹脂グレードであれば1〜3年程度にすぎません。
一つ具体例を挙げましょう。「水性シリコン(10〜12年)」と「油性シリコン(12〜15年)」で迷っている場合、耐久年数の差は最大5年です。一方、水性無機塗料(20〜25年)に変更すれば、油性シリコンの約1.5〜2倍の耐久性が得られます。しかも2026年現在、水性無機は供給が安定しており、シンナー値上げの影響も受けません。長期的なコストパフォーマンスで考えれば、油性シリコンより水性無機の方が合理的な選択肢になり得ます。
部位別の使い分け——外壁・屋根・鉄部・木部
「全部水性でいい」とも「全部油性でいい」とも言えません。部位ごとに最適な選択は異なります。
外壁(サイディング・モルタル・ALC)
推奨:水性塗料。現在の外壁塗装では約80%以上が水性塗料を採用しています。密着性・耐候性ともに十分な性能があり、臭いが少なく近隣への配慮も容易です。2026年の供給状況を考えても、外壁は水性が合理的です。
屋根(スレート・金属)
推奨:弱溶剤(油性)塗料。屋根は紫外線・雨・温度変化を直接受けるため、外壁より過酷な環境です。特に金属屋根では、油性塗料の方が密着性に優れる場合があります。ただし、供給状況次第では水性の高耐候塗料(水性無機など)への切り替えも選択肢に入ります。
鉄部(手すり・雨樋の金具・シャッター)
推奨:油性(錆止め含む)。鉄部は錆の発生リスクがあるため、錆止め効果の高い油性塗料が適しています。使用量が少ないため、供給制限の影響は限定的です。
木部(破風板・軒天の一部)
推奨:油性または専用の木部塗料。木は呼吸する素材のため、浸透性の高い油性塗料が適するケースがあります。ただし木部の塗装面積は小さいため、全体のコストへの影響は軽微です。
まとめると、外壁は水性、屋根・鉄部・木部は油性が基本線です。「全部油性で」と提案する業者がいたら、外壁まで油性にする理由を確認してください。2026年の供給状況では、外壁に油性を使うことでかえって工期リスクが高まります。
見積書の確認ポイント4つ
見積書に「水性」「油性」と書かれていたら、以下の4点を確認してください。
① 塗料のメーカー名と製品名が記載されているか
「水性シリコン塗料」だけでは不十分です。メーカー名(日本ペイント、エスケー化研、関西ペイントなど)と製品名が明記されていれば、カタログで性能を自分で確認できます。記載がない場合は業者に確認してください。
② 樹脂グレードは何か
水性か油性かよりも、樹脂グレード(シリコン・フッ素・無機など)を確認する方が重要です。「水性だから安い」と言われても、水性無機塗料は油性シリコンより高耐久です。グレードで比較しましょう。
③ 部位ごとに塗料が分かれているか
適切な見積書であれば、外壁・屋根・付帯部(鉄部・木部)で使用する塗料が分けて記載されています。「全部同じ塗料」の場合、部位に合わない塗料が使われるリスクがあります。
④ 油性を提案された場合の「理由」を確認する
2026年の供給状況を踏まえると、あえて外壁に油性を選ぶ場合は明確な理由があるはずです。「油性の方が長持ちだから」という説明だけなら、樹脂グレードの根拠を聞いてみてください。
なお、2026年の供給不安定な状況では、「見積書に書かれた塗料が実際に使用されるか」も重要な確認事項です。契約時と施工時で塗料が変更されるケースも起こり得ます。契約書に「使用塗料の変更時は事前に施主の承諾を得る」という条項があるか確認しておきましょう。
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よくある質問
Q. 水性塗料は雨に弱いのでは?
A. 乾燥前の水性塗料は水で流れますが、乾燥後は耐水性のある塗膜を形成します。施工中に雨が降った場合の対処は油性でも同じで、塗装面が乾いている状態で施工することが大前提です。乾燥後の耐水性に水性・油性の差はありません。
Q. 「油性の方が艶が出る」と言われたのですが?
A. 確かに油性塗料は艶の出方がやや良い傾向がありますが、現在の水性塗料でも十分な艶が出ます。艶の程度は「艶あり・7分艶・5分艶・3分艶・艶消し」から選べるため、水性・油性の差より選択する艶の度合いの方が見た目への影響は大きいです。
Q. 水性塗料は臭いが少ないと聞きましたが、本当ですか?
A. 本当です。油性塗料はシンナーで希釈するため、施工中に有機溶剤の臭いが発生します。水性塗料は水で希釈するため、臭いは大幅に軽減されます。住宅密集地や在宅での施工では、近隣への配慮として水性塗料が選ばれるケースが増えています。
Q. 契約済みで油性の予定ですが、水性に変更すべき?
A. まず施工業者に塗料の発注状況を確認してください。すでに塗料が確保されているなら、無理に変更する必要はありません。塗料がまだ発注されていない場合は、供給状況を踏まえて業者と相談することをおすすめします。色選びはAIカラーシミュレーションで事前に徹底的に決めておくと、発注後の変更リスクを減らせます。
Q. 見積書の塗料が適正かどうか自分で判断できません
A. 見積書の中身に不安がある場合は、第三者の専門家に診断してもらうセカンドオピニオンが有効です。ペンキのミカタでは、全国どこからでもオンラインで見積もり診断を受け付けています。
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この記事の著者
横井隆之
ヨコイ塗装 代表 / 外壁塗装コンサルタント
愛知県扶桑町でヨコイ塗装を経営。塗装業界50年以上の経験と500件を超える施工実績を持つ外壁塗装の専門家。施主の立場に立った公正なアドバイスを提供し、YouTube、ココナラ、MOSHなど複数のプラットフォームでセカンドオピニオンサービスを展開中。
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