外壁塗装の見積書に「一式」と書かれた項目の裏で、3〜5人工分の作業が消えています。特にシーリング・ケレン・下塗りの3工程で削減されやすく、80万円の見積もりでも工期が7日未満なら品質リスクが潜んでいます。この記事では「一式」の中身を人工で分解する方法をお伝えします。
見積書の「一式」を信じるな!80万円の見積もりから消える3〜5人工の正体
なぜ「一式」と書かれるのか?——業者側の3つの理由
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「一式」は、見積書で最もよく見かける表記です。しかし、消費者にとって便利な表記ではありません。業者にとって便利な表記です。
理由①:事務作業の効率化
工程を一つひとつ分けて見積もりを作ると、項目数が30〜50行になります。営業担当にとって、これは手間です。「塗装工事 一式」と書けば3行で済みます。
理由②:利益配分のブラックボックス化
どの工程にいくら配分しているかを見えにくくするためです。たとえば、足場代を高めに設定し、塗装の人工を削って帳尻を合わせる——このような調整は「一式」でなければ見抜かれます。
理由③:現場の不確定要素へのマージン確保
「想定外の補修が必要だった」と主張する余地を残すためです。工程別に金額を約束すると、追加が発生したときに説明責任が生じます。
業者が一式と書く最大の理由は、人工配分を開示したくないからです。 工程別に人工を明記すると、どの工程に何日かけるかが約束になる。約束すれば、それを守る義務が生じる。一式とは"約束しない見積書"のことです。
住宅リフォーム・紛争処理支援センターの統計によると、リフォーム相談のうち契約トラブルが71.9%を占めています。このトラブルの多くは「一式」表記による仕様の曖昧さに起因しています。
「一式」の裏で消える3つの工程と人工数
外壁塗装全体の適正人工は20〜25人工です(詳しくは見積書の人工診断ガイドで解説)。しかし「一式」表記の見積もりでは、以下の3工程から人工が消えやすいのです。
① シーリング——打ち替えvs増し打ちで3〜5人工の差
| 工法 | 作業内容 | 人工数 | 単価目安(/m) |
|---|---|---|---|
| **打ち替え**(全面撤去→新規充填) | 既存シーリングを完全除去し、新しい材料を充填 | 4〜6人工 | 780〜1,080円 |
| **増し打ち**(上から被せるだけ) | 既存の上に2mm程度を重ね塗り | 1〜2人工 | 450〜480円 |
「シーリング一式」と書かれた瞬間、この差が見えなくなります。
増し打ちは既存材の上に2mm程度しか塗れません。サイディングの目地幅12mmに対して2mmでは、数年で剥離して雨水が侵入します。打ち替えか増し打ちかで3〜5人工の差が出る。この差は5年後の雨漏りとして発現します。
② ケレン——等級の違いで2〜3人工の差
| ケレン種別 | 作業内容 | 単価目安(/㎡) |
|---|---|---|
| **2種ケレン** | 電動工具でサビを完全除去 | 1,000〜2,500円 |
| **4種ケレン** | サンドペーパーで軽く擦るだけ | 300〜500円 |
「下地調整 一式」と書かれると、本来2種が必要な箇所に4種で済まされます。
4種ケレンは清掃に近い作業です。鉄部のサビが残ったまま上塗りすれば、2〜3年で塗膜の下からサビが浮き出します。 ケレンの等級差で全体2〜3人工が消えます。塗装直後は綺麗に見えるため、消費者は数年後まで手抜きに気づけません。
③ 下塗り——部位別指定の省略で1〜2人工の差
外壁塗装では、部位ごとに適した下塗り材が異なります。
| 部位 | 適正な下塗り材 |
|---|---|
| 外壁(窯業系サイディング) | エポキシ系シーラー |
| 破風板 | サビ止め下塗り材 |
| 軒天 | 浸透性シーラー |
| 雨樋(塩ビ) | 密着プライマー |
「下塗り:シーラー 一式」と書かれると、全部同じシーラーで塗られるリスクがあります。
これは『外壁塗装 工程別チェックポイント21』のチェックポイントC-1(下塗り部位別指定)に該当します。下塗り材が全箇所同一なら、破風のサビ止めや軒天の浸透性シーラーが省略されている。これだけで1〜2人工分の作業が消えます。
合計:3工程で3〜5人工が消失
80万円の見積もりのうち、職人日当1.5〜1.8万円×5人工=7.5〜9万円分の作業品質が失われる計算です。金額にすれば1割程度ですが、失われるのは建物を守る「品質」そのものです。
「一式80万円・下塗り1日」——この見積もりの物理的矛盾
30坪の住宅(外壁面積120㎡)を下塗りする場合、職人1人で丁寧に作業すれば最低1.5〜2人工かかります。
さらに、多くの下塗り材は次の中塗りまで3〜16時間の乾燥時間(オープンタイム)が必要です。これは塗料メーカーの仕様書に明記されている数値であり、現場判断で短縮できるものではありません。
「下塗りが1日で完了し、翌日に中塗りと上塗りを一気に」は物理的にありえません。
もし実際にそのスケジュールで進んでいるなら、2つの不正のいずれか、または両方が起きています。
- 塗布量の不足——塗料を薄く伸ばしすぎ(規定量の半分以下)
- 乾燥時間の無視——塗膜内部に溶剤や水分が閉じ込められ、後に膨れ・はがれの原因になる
住宅相談統計年報2024の不具合データでは、はがれ14.8%、雨漏り16.4%が報告されています。これらの多くが下地処理・乾燥時間の簡略化に起因しています。
一式表記の見積もりではこの物理的矛盾に気づけません。
「一式」の見積もりを受け取ったら業者に聞くべき3つの質問
手元の見積書に「一式」があった場合、以下の3つの質問をしてみてください。
質問①:「シーリングは打ち替えですか、増し打ちですか?」
打ち替えなら工期に3〜4日はシーリング日が入るはずです。工程表にシーリング日がなければ、増し打ちの可能性が高い。
質問②:「鉄部のケレンは何種ですか?」
「ケレンします」だけでは等級がわかりません。2種か3種かで耐久性が大きく変わります。答えられない業者は、ケレンの等級を意識していないということです。
質問③:「下塗り材は部位ごとに変えますか?」
「シーラーで統一」と言われたら、破風・軒天・雨樋の密着不良リスクがあります。部位別に下塗り材を指定できる業者は、工程設計ができている証拠です。
この3つの質問に即答できない業者は、工程設計をしていない可能性が高い。"お任せください"は回答ではありません。
さらに詳しい質問リストは見積書の人工診断ガイドで解説しています。
法律面から見た「一式」表記のリスク
「一式」表記は、法的にもリスクを伴います。
消費者契約法:「重要事項の不告知」の可能性
「3回塗り」を謳いながら実質2回塗りで済ませた場合、消費者契約法上の「重要事項の不告知」に該当する可能性があります。「一式」表記は、この不告知を曖昧にする手段にもなり得ます。
追加請求トラブル
「一式」だと、「この補修は範囲外です」と主張しやすくなります。一方、内訳が明記されていれば、どこまでが含まれるかの予見可能性が高まります。
クーリングオフとの関係
訪問販売の場合、8日間のクーリングオフ期間で契約の妥当性を判断する必要があります。「一式」では判断材料が足りません。
住宅リフォーム・紛争処理支援センターの統計では、訪問販売に関する相談の46.9%が契約解消を希望しています。契約後に「一式」の不合理に気づくケースが多いのです。
詐欺的な手口の見分け方については詐欺対策ガイドも参考にしてください。
※法的な判断については、必ず弁護士等の専門家にご相談ください。
人工理論で見ると|「一式」を分解する物差し
私が『塗装方程式』で提唱している品質の公式があります。
品質(Q)= モチベーション(M)× 技術(T)× 時間(T)
この公式の「時間(T)=人工」が、見積書の「一式」の中に隠れています。
「一式」を分解するとは、「T(時間)」を可視化することです。80万円のA社と70万円のB社があったとき、金額だけ比べても意味がありません。しかし「A社は22人工、B社は15人工」と分かれば、B社は7人工分の作業を省略していることが一目瞭然です。
人工という物差しを持てば、金額の「安い・高い」ではなく、作業量の「足りる・足りない」で判断できるようになります。
50年間、塗装の現場に立ち続けて辿り着いた結論です。価格で比べるから騙される。人工で比べれば、手抜きは数字に現れます。
人工理論の全体像は「人工理論完全講義」で体系的に解説しています。
あなたの見積もり、「一式」のまま契約しようとしていませんか?
この記事で解説したように、「一式」の裏には3〜5人工分の品質リスクが潜んでいます。
- シーリングは打ち替えか増し打ちか?
- ケレンは何種か?
- 下塗り材は部位別に指定されているか?
これらを自分で確認するのは大変です。だからこそ、プロの目で見積書をチェックする仕組みがあります。
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AI見積もり診断では、見積書の写真をアップロードするだけで20項目をチェック。「一式」の裏に隠れた人工不足を検出し、シーリングの打ち替え/増し打ち判定、ケレン等級確認、下塗り部位別指定(C-1)チェックまで行います。
この記事の監修者
横井隆之(ヨコイ塗装 代表)
塗装歴50年。施工実績500件超。一般社団法人ペンキのミカタ代表理事。
著書:
- 『外壁塗装の不都合な真実』
- 『塗装方程式』
- 『外壁塗装 工程別チェックポイント21』
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FAQ
Q: 「一式」の見積書は全て危険ですか?
A: 全てが危険とは限りません。ただし、「一式」のまま工程別の人工数を確認できない場合は、品質リスクが潜んでいる可能性があります。業者に3つの質問をして、明確に回答できるかを確認してください。
Q: 80万円と70万円の見積もり、安い方を選ぶべきですか?
A: 金額ではなく人工数で比較してください。80万円で22人工と70万円で15人工なら、80万円の方が適正な作業量を確保しています。安い見積もりは人工を削っている可能性があります。
Q: シーリングの増し打ちは絶対にダメですか?
A: 既存シーリングの状態が良好で、劣化が軽微な場合は増し打ちが適切なケースもあります。ただし、サイディングの目地で10年以上経過している場合は打ち替えが基本です。
この記事の著者
横井隆之
ヨコイ塗装 代表 / 外壁塗装コンサルタント
愛知県扶桑町でヨコイ塗装を経営。塗装業界50年以上の経験と500件を超える施工実績を持つ外壁塗装の専門家。施主の立場に立った公正なアドバイスを提供し、YouTube、ココナラ、MOSHなど複数のプラットフォームでセカンドオピニオンサービスを展開中。
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