外壁塗装を検討中の方へ。2026年、もっとも注意すべきなのは「値上がり」だけではありません。
あなたが契約した会社と、実際にあなたの家を塗る会社は、同じですか?
この問いに即答できない場合、この記事を最後まで読んでください。塗装業界の倒産が23年ぶりの高水準に達し、シンナー不足で物理的に工事ができない現場が出てきている今、「下請け構造」のリスクが過去にない深刻さで浮き彫りになっています。
施工歴25年・250件超の現場経験から、冷静に事実をお伝えします。
2026年、「工事が途中で止まる」が現実になっている
2025年度(2025年4月〜2026年3月)の塗装業の倒産件数が143件に達しました(東京商工リサーチ調べ)。前年比22.2%増で、2002年以来23年ぶりの高水準です。
倒産した企業の93%が従業員10人未満の零細企業です。原因の約80%が「販売不振」とされていますが、実態は異なります。仕事の依頼自体はあるのに、材料費の高騰と人件費の上昇で「受けても利益が出ない」──コスト管理の破綻が本質です。
そこにナフサ危機が直撃しました。塗料の原材料であるナフサの価格は1,190ドル/トンと過去最高値を更新。シンナーは各メーカーが50〜80%の値上げを実施し、ホームセンターでは「お一人様1缶まで」の制限が広がっています。
塗料値上げの全体像はこちらの記事でまとめています。
ここで施主として知っておくべきことは、倒産しているのは「下請け」として塗装を請け負っている零細企業が大半だということです。あなたが大手ハウスメーカーや営業専門の塗装会社に依頼した場合、実際の塗装作業を行うのはこうした零細企業です。
「元請け」と「自社施工」は全く違う──下請け構造のしくみ
外壁塗装を依頼するとき、多くの方は「塗装会社に頼んだ」と思っています。しかし、その会社が自分で塗るかどうかは別の問題です。
パターンA:ハウスメーカー経由
施主 → ハウスメーカー → 下請けA(管理会社)→ 下請けB(塗装会社)→ 実際に塗る職人
この構造では、施主が支払う金額の30〜50%が中間マージンとして消えます。リフォーム産業新聞の報道では、1棟あたりの下請け請負額が材料込みで30万円、ひどいケースでは15万円という事例も報告されています。
パターンB:ポータルサイト経由
施主 → ポータルサイト → 紹介された「塗装会社」 → 下請け職人
ポータルサイトは紹介手数料として契約金額の10〜20%を徴収します。100万円の工事なら10〜20万円がポータルの取り分です。残りの金額で営業コスト・材料費・人件費・利益を出すため、「自分では塗らず、安い下請けに出す」構造が生まれやすいのです。
パターンC:地元の「塗装会社」だが営業専門
看板に「塗装」と書いてあっても、社内に職人がいない会社があります。営業マンだけで受注し、施工はすべて外注──これも下請け構造の一種です。
中間マージンの実態──ハウスメーカーと地場業者で異なる
ハウスメーカー系:30〜50%のマージン(リフォーム産業新聞報道)。100万円の工事なら、施工する下請けに届くのは50〜70万円です。ここから材料費・人件費を出さなければなりません。
地場の営業会社系:10〜15%のマージン(横井の業界経験からの肌感覚)。ハウスメーカーほどではありませんが、100万円の工事なら85〜90万円が下請けに渡ります。この金額で材料費高騰に対応しながら利益を出すのは、2026年の環境では極めて厳しい。
見積書に表れる「自社施工」と「丸投げ」の決定的な違い
自社施工でこだわっている会社の見積書は、部位ごとに異なる塗料が指定されています。外壁と軒裏では求められる性能が違い、雨樋には熱による伸び縮みに対応するための弾性用硬化剤を使う──こうした現場の判断が見積書に反映されるのは、自社で施工する職人がいるからです。
一方、下請けに丸投げする会社の見積書は、全部位が同じ塗料で一括指定されていることが多い。軒裏も外壁も雨樋もすべて同じ塗料──これは「部位ごとの最適化を考えていない」証拠です。見積書を見れば、その会社が本当に自分で塗っているかどうかが透けて見えます。
どのパターンでも共通するのは、「施主が支払った金額」と「実際に施工する会社が受け取る金額」に大きな差があるということです。この差が、2026年の危機的状況ではさらに深刻な問題を引き起こします。
リスク①──完工リスク「工事が途中で止まる」
2026年に固有の深刻な問題があります。シンナーが手に入らないのです。
大手塗料メーカーですら出荷制限をかけている中、下請けの零細企業に資材確保力はありません。「4缶発注して1缶しか届かない」──これが今の現場の実態です。
元請け会社は通常、資材の調達を下請けに任せています。下請けが調達できなければ工事は中断します。
最悪のシナリオ
足場を組んだ状態で下請けが倒産する──これは架空の話ではありません。倒産143件という数字は、今まさに起きていることです。
足場は組んだまま、外壁は一部だけ塗られた状態、養生シートで家が覆われたまま放置──施主にとってこれほど困る状況はありません。
法的には、契約は元請けとの間にあるため完工義務は元請けにあります。しかし、代わりの下請けを見つけるまで工期は大幅に延長されます。塗装業の人手不足は深刻で、建設業就業者数はピーク時の685万人から479万人に30%減少しています。代わりの職人はすぐには見つかりません。
横井が2026年4月に直面している現実
私自身、シンナーの確保に苦労しています。ここに具体的な事実を3つ挙げます。
事実①:溶剤塗料を発注する時にしかシンナーを買えない。かつてはシンナーだけ単独で購入できましたが、今は塗料本体とセットでないと売ってもらえない状況です。在庫を確保しようにも、手段が限られています。
事実②:日本ペイント系列の販売店で購入を断られた。メーカーの系列販売店ですら、シンナーの販売を断るケースが出ています。「在庫がない」のではなく「出せない」──出荷制限がそこまで厳しくなっているということです。
事実③:一部でシンナーの買い占めが発生している。資金力のある会社が先行して大量確保に走り、零細企業にはシンナーが回らない構造が生まれています。フリマサイトでは1缶2万円超の転売も報道されています(毎日新聞4/3報道)。
私は自社施工で、長年の仕入れルートを持っています。それでもこの状況です。仕入れルートを持たない下請けの零細企業が、資材を確保できる見込みはさらに低い──これが「完工リスク」の実態です。
自社施工なら何が違うか
自社施工の会社は、自社の仕入れルートで資材を確保します。メーカーとの直接取引があれば、出荷制限の中でも優先的に供給を受けられる可能性が高い。社内に職人がいるため、工事の中断リスクは構造的に低くなります。
リスク②──品質リスク「手抜きで帳尻を合わせる」
上の図は、塗装業者の利益がどのように圧縮されるかを示しています。理想の粗利益率20〜30%が、資材高騰・中間マージン・工期延長・制度対応コストで段階的に削られ、最終的に0〜15%まで落ちる──この構造では、品質を維持しながら経営を続けることが物理的に困難です。
手抜き施工は「一部の悪質業者」だけの問題ではありません。この利益率圧縮構造が生み出した、構造的な問題です。だからこそ、中間マージンが少ない(または存在しない)自社施工の会社を選ぶことが、品質リスクを下げる最も確実な方法なのです。
中間マージンを差し引かれた下請けが利益を確保する方法は、限られています。
削られるもの①:工程
外壁塗装の基本は「下塗り・中塗り・上塗り」の3回塗りです。しかし、中塗りを省略して2回塗りにする業者がいます。下地処理(ケレン)を大幅に短縮するケースも後を絶ちません。
削られるもの②:塗料の希釈率
塗料には、メーカーが定めた適正な希釈率があります。これを超えてシンナーや水で薄めると、初期の見た目は同じでも、塗膜の厚みが不足し、耐久年数が大幅に短くなります。施主が足場の上に登って確認することはできません。
2026年はシンナー不足で「代替シンナー」の使用や、安易な水性塗料への切り替えが品質リスクを高める可能性もあります。
削られるもの③:職人の質
人件費を抑えるために、経験の浅い職人に任せるケースがあります。塗装は一人前になるまで10〜15年の経験が必要とされる技術職です。
値上げ局面での手抜きパターンと見抜き方は、便乗値上げチェックリストでも解説しています。
※ 手抜き施工の実物写真は、セカンドオピニオン案件が発生し次第、この記事に追加します。現時点では写真なしで「起こり得るケース」として記載しています。
リスク③──保証リスク「10年保証が紙切れになる」
「うちは10年保証です」──営業トークでよく聞く言葉です。しかし、その保証は誰が実行するのでしょうか?
自社保証の落とし穴
元請け会社の自社保証は、その会社が存続していることが前提です。国税庁の統計によれば、起業して10年後に存続している企業はわずか6%です。
塗装業界は年間約2,000社が新規参入し、143件が倒産する「多産多死」の構造です。10年保証を発行した会社が、10年後に存在している保証はどこにもありません。
下請けへの責任転嫁
元請けが保証対応を下請けに任せているケースもあります。その下請けが倒産すれば、元請けは「対応できる業者がいない」と回答するだけです。
保証書はあるが、直してくれる会社がない──これが「紙切れの保証」の実態です。
対策:リフォーム瑕疵保険という選択肢
第三者機関が保証する「リフォーム瑕疵保険」があります。保証期間は1〜5年、費用は約5万円です。施工会社が倒産しても、保険法人が補修費用を負担します。万全ではありませんが、自社保証だけに頼るよりは安全です。
ハウスメーカー経由の見積もりが高い理由と構造については、こちらの記事で詳しく解説しています。
見分け方──見積書と質問で「自社施工か下請けか」を判別する
では、どうやって「自社施工の会社」と「下請けに出す会社」を見分ければよいのでしょうか。見積書と、いくつかの質問で判別できます。
見積書チェックポイント
①「施工管理費」「現場管理費」が独立項目になっている──自社施工なら施工管理は社内業務です。独立した費用項目として計上されている場合、外部の施工管理を使っている=下請け構造の可能性があります。
②人工(にんく)の記載がない──自社施工の会社は、自社の職人が何日かかるかを把握しています。人工の記載がなく「一式」で済ませている見積書は、下請けへの丸投げを疑ってください。
③塗料名がオリジナルブランド名──日本ペイントやエスケー化研など大手メーカーの塗料を、自社ブランド名に変えて1.5〜2倍の価格で販売しているケースがあります。ハウスメーカー系に多い手法です。
④見積もり金額が相場より異常に安い──紹介手数料10〜20%+中間マージンを差し引くと、現場に残る金額は極端に少なくなります。相場より安い見積もりは「品質を削って帳尻を合わせる」前提である可能性があります。
⑤全部位が同じ塗料で一括指定されている──外壁・軒裏・雨樋はそれぞれ求められる性能が異なります。すべて同じ塗料で「一式」になっている見積書は、部位ごとの最適化を考えていない=現場を知らない会社の可能性が高い。自社施工の会社は、雨樋に弾性用硬化剤を使ったり、軒裏と外壁で異なる塗料を選定するなど、細部にこだわりが見えます。
人工(にんく)の読み方と適正価格の考え方は、人工ガイドをご覧ください。
業者への4つの質問
質問1:「実際に塗るのは御社の職人さんですか?」──もっとも直接的な質問です。「うちの職人です」と即答できない会社は要注意です。
質問2:「職人さんは社会保険に加入していますか?」──社会保険未加入の一人親方に外注している可能性を確認できます。インボイス制度の影響で、未登録の一人親方との取引は今後さらに不安定になります。
質問3:「今、シンナーの在庫は確保できていますか?」──2026年限定の極めて有効な質問です。自社で仕入れルートを持つ会社なら具体的に答えられます。下請けに任せている会社は答えに窮するはずです。
質問4:「工事中に問題が起きたら、現場に来るのは営業の方ですか、職人の方ですか?」──自社施工なら職人か現場監督が来ます。「営業担当が対応します」は、現場と契約窓口が分離していることを意味します。
まとめ──2026年は「誰が塗るか」が最も重要な年
2026年は、外壁塗装にとって異例の年です。
塗料が値上がりしている──それは事実です。しかし、それ以上に深刻なのは「塗料が手に入らない」「下請けが倒産する」「工事が途中で止まる」という、完工そのもののリスクです。
このリスクを避けるもっとも確実な方法は、自社施工の会社を選ぶことです。
自社に職人がいて、自社の仕入れルートで資材を確保し、自社で品質を管理する──このシンプルな構造が、完工・品質・保証のすべてを守ります。
見積書を見れば、下請け構造は判別できます。迷ったときは、セカンドオピニオンを活用してください。
著者について
横井隆之(ヨコイ塗装2代目)。施工歴25年・250件超。著書3冊(「塗装方程式」「外壁塗装の不都合な真実」「工程別チェックポイント21」)。
この記事の著者
横井隆之
ヨコイ塗装 代表 / 外壁塗装コンサルタント
愛知県扶桑町でヨコイ塗装を経営。塗装業界50年以上の経験と500件を超える施工実績を持つ外壁塗装の専門家。施主の立場に立った公正なアドバイスを提供し、YouTube、ココナラ、MOSHなど複数のプラットフォームでセカンドオピニオンサービスを展開中。
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