「見積もりの塗料代が前より高いんですが、本当に値上がりしたんですか?」
2026年に入り、このような問い合わせが急増しています。結論から言えば、塗料は確かに値上がりしています。しかも、ほぼすべての主要メーカーが一斉にです。
この記事では、施工歴25年・施工件数250件超の職人への取材と各メーカーの公表情報をもとに、2026年の塗料値上げの実態をメーカー別に整理します。「業者の言い値を鵜呑みにしない」ための判断材料としてお使いください。
2026年、塗料メーカーは一斉に値上げした
2026年1月〜3月にかけて、外壁塗装で使用される塗料の主要メーカーが相次いで価格改定を実施しました。特に衝撃的だったのは、塗料の希釈に使うシンナー(有機溶剤)の75〜80%という異例の値上げ幅です。
塗料そのものの値上げに加え、シンナーの急騰が重なったことで、油性塗料(溶剤系塗料)を使う工事のコストが大きく跳ね上がっています。水性塗料への影響は相対的に小さいものの、樹脂原料の高騰により水性塗料も無傷ではありません。
以下、メーカー別に値上げの実態をまとめます。
メーカー別の値上げ幅一覧(2026年1月〜3月)
日本ペイント
- 対象:塗料用シンナー類
- 値上げ幅:75%
- 適用時期:2026年3月19日発注分より
- 備考:塗料本体の価格改定も段階的に進行中
国内最大手の日本ペイントがシンナーを75%値上げしたことは、業界に大きなインパクトを与えました。シンナーは油性塗料の施工に不可欠な材料であり、この値上げは油性塗料を使うすべての工事に影響します。
エスケー化研
- 対象:溶剤系資材(シンナー等)
- 値上げ幅:80%
- 適用時期:2026年3月時点で実施済み
- 備考:外壁塗装用塗料のシェアが高く、影響範囲が広い
エスケー化研は外壁塗装用塗料で高いシェアを持つメーカーです。80%という値上げ幅は日本ペイントを上回り、溶剤系塗料を主力とする施工業者への影響は深刻です。
関西ペイント
- 対象:塗料製品全般
- 値上げ幅:2025年9月に5〜20%値上げ実施済み、2026年春に追加改定予定
- 備考:段階的な値上げを実施しており、今後さらなる改定の可能性あり
関西ペイントは2025年秋から段階的に値上げを進めています。2026年春の追加改定で、他社と同水準まで引き上げられる可能性があります。
スズカファイン
- 対象:塗料製品
- 値上げ幅:3〜10%
- 適用時期:2026年2月に公表
- 備考:値上げ幅は相対的に小さいが、今後の追加改定の可能性あり
アトミクス
- 対象:塗料製品
- 値上げ幅:価格改定実施(具体的な幅は製品により異なる)
- 適用時期:2026年3月
まとめると、2026年3月時点で主要メーカーのすべてが何らかの価格改定を実施済みまたは予定しています。「値上がりした」という業者の説明は、事実に基づいています。
現場の職人への取材によると、2026年3月25日時点ですべての仕入れ先から溶剤系塗料の納入制限通知が届いています。価格だけでなく「そもそも入手できるか」が問題になっているのが、今回の値上げの深刻さを物語っています。
なぜこれほど値上がりしたのか——背景と構造
「75%値上げ」「80%値上げ」と聞くと異常に感じますが、これには明確な構造的背景があります。
ホルムズ海峡問題からシンナー急騰へ
塗料用シンナーの原料は石油化学製品(ナフサ)です。2025年後半からのホルムズ海峡の地政学リスクの高まりにより、ナフサの供給が不安定化しました。これが国内のシンナー価格を直撃し、75〜80%という異例の値上げにつながっています。
シンナーの値上げは、油性塗料(溶剤系塗料)のコストに直接影響します。一方、水性塗料は希釈に水を使うため、シンナー値上げの直接的な影響は受けません。ただし、樹脂原料もナフサ由来のものが多いため、水性塗料も間接的にコストが上昇しています。
この構造を理解すると、「なぜ水性塗料への切り替えが進んでいるか」が見えてきます。水性塗料はシンナーではなく水で希釈するため、シンナー急騰の直接的な影響を受けません。現場では外壁の塗装に水性塗料を採用し、シンナーが不可欠な鉄部や木部にのみ油性塗料を使うという合理的な使い分けが広がっています。
水性と油性で値上がり幅が異なる理由
- 油性塗料:シンナー価格の直撃+樹脂原料の高騰=大幅な値上がり
- 水性塗料:樹脂原料の高騰のみ=相対的に値上がり幅が小さい
この差が、現場で水性塗料への切り替えが進んでいる理由のひとつです。詳しくは水性と油性の違いを職人が解説した記事をご覧ください。
塗料値上げは「一方通行」——過去に下がったことは一度もない
「いずれ値下がりするのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、過去の実績を見る限り、その期待は現実的ではありません。
塗料値上げの歴史(2021年〜2026年)
- 2022年:大手各社が10〜15%の値上げを実施(原油価格高騰・物流コスト増)
- 2023年:さらに5〜10%の追加値上げ(円安・原材料の継続的な高騰)
- 2024〜2025年:据え置き期間(ただし値下げは一切なし)
- 2026年1〜3月:シンナー75〜80%値上げ、塗料本体も3〜20%値上げ——新たなステージへ
この5年間で、一度値上げされた塗料が値下がりした事例はゼロです。塗料価格は「上がったり下がったりする波」ではなく、「一段ずつ上がる階段」のような構造です。
原材料費、輸送コスト、人件費——値上げの要因となる複数のコストが同時に「元に戻る」ことは、現実的にはほぼあり得ません。「下がるまで待つ」という戦略は、結果として次の値上げステージに巻き込まれるリスクを高めます。
値上がりを受けて「今すぐ契約すべきか」の判断基準は契約タイミングの判断基準を解説した記事で詳しく紹介しています。
施主が今すぐ確認すべきこと
塗料の値上がりを知った上で、施主が今すべきことは「焦って契約する」ことではありません。以下の3点を確認してください。
- 手元の見積書に塗料のメーカー名・製品名が記載されているか確認する。記載があれば、この記事の値上げ情報と照合して、見積もり金額が合理的かどうか判断できます。
- 複数の業者から見積もりを取り、塗料の単価を比較する。同じメーカー・同じ製品で金額に大きな差がある場合は、業者のマージン設定に違いがある可能性があります。
- 見積書の内容に不安がある場合は、第三者のセカンドオピニオンを活用する。値上がり後の相場観がわからないときこそ、専門家の診断が有効です。
見積書の診断方法やセカンドオピニオンの活用法はセカンドオピニオン完全ガイドをご覧ください。
塗料価格の総費用への影響や、値上がり後に注意すべき「安すぎる見積もり」のリスクは塗料の値上がり動向を解説した記事で詳しく分析しています。
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よくある質問
Q. 値上げはシンナーだけですか?塗料本体は上がっていない?
A. シンナーの値上げが最も目立ちますが、塗料本体もメーカーにより3〜20%の値上げが実施されています。シンナーの値上げは油性塗料のコストに直接影響し、塗料本体の値上げは水性・油性を問わずすべての塗料に影響します。
Q. 水性塗料なら値上がりの影響を受けない?
A. シンナーの値上げの直接的な影響は受けませんが、樹脂原料の高騰により水性塗料も間接的に値上がりしています。ただし、油性塗料と比較すると値上がり幅は小さく、供給も安定しています。
Q. 塗料の値段はいつ下がりますか?
A. 2021年以降、一度値上げされた塗料が値下がりした事例はありません。原材料・輸送・人件費の複合的なコスト上昇が背景にあり、これらが同時に元に戻る可能性は極めて低いです。「下がるまで待つ」という戦略は現実的ではないと考えた方がよいでしょう。
Q. 業者が「塗料が値上がりした」と言っています。嘘ではない?
A. 2026年3月時点で主要メーカーのすべてが価格改定を実施済みです。業者の説明は事実に基づいています。ただし、値上がりを理由に過剰な上乗せをしていないかどうかは、メーカーのカタログ価格や複数見積もりの比較で確認できます。
Q. どのメーカーの塗料が一番安いですか?
A. メーカー間の価格差よりも、塗料のグレード(シリコン・フッ素・無機)による価格差の方がはるかに大きいです。同じシリコングレードであれば、主要メーカー間の価格差は限定的です。「どのメーカーか」より「どのグレードか」で比較する方が有意義です。
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この記事の著者
横井隆之
ヨコイ塗装 代表 / 外壁塗装コンサルタント
愛知県扶桑町でヨコイ塗装を経営。塗装業界50年以上の経験と500件を超える施工実績を持つ外壁塗装の専門家。施主の立場に立った公正なアドバイスを提供し、YouTube、ココナラ、MOSHなど複数のプラットフォームでセカンドオピニオンサービスを展開中。
プロフィールを見る →HM見積もりの「高い理由」、分解できます
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