「契約した後に業者から"塗料が値上がりしたので追加で○万円ください"と言われた。払わないといけないの?」
2026年4月現在、塗料・シンナー・シーリング材の価格が軒並み高騰しています。こうした状況で、契約後に追加請求されるケースが実際に増えています。
この記事では、施工歴25年・250件超の実績を持つ職人が、契約後の値上げにどう対応すべきかを、法的な原則と現場の実態の両面から解説します。
「値上げ分を払ってください」は通るのか?
結論:契約書に「資材高騰による価格変更あり」の条項がなければ、原則として追加請求はできません。
民法の原則では、請負契約は「合意した金額で仕事を完成させる」義務を負います。材料費が上がったからといって、業者が一方的に契約金額を変更することはできません。
ただし「追加請求できない」=「業者がその分を負担する」ということです。これが実は危険な構造を生みます。原価が上がったのに売上が同じであれば、業者はどこかでコストを削るしかありません。
結果として起きるのが、塗料の希釈率を上げる(薄める)、下地処理を省略する、コーキングの打ち直しを打ち増しに変えるといった"見えない手抜き"です。
私がセカンドオピニオンとして相談を受けるケースで最も多いのが、まさにこのパターンです。「追加請求されないから安心」ではなく、「追加請求されないからこそ品質を注視すべき」なのです。
→ 下請け構造で起きる完工リスクの詳細はこちら:下請け構造×2026年完工リスク
契約書の「エスカレーション条項」を確認する
エスカレーション条項とは、「資材価格が一定以上変動した場合、契約金額を改定できる」という趣旨の条文です。公共工事では一般的ですが、個人の住宅塗装では記載がないことが大半です。
エスカレーション条項がある場合
条項がある場合でも、業者が自由に金額を上乗せできるわけではありません。以下の3点を確認してください。
チェック①:上限が設定されているか。「○%を上限とする」等の記載がなければ、青天井になるリスクがあります。
チェック②:対象品目が限定されているか。「塗料本体」のみか、「シーリング材・足場リース費」も含むかで金額が大きく変わります。
チェック③:事前通知義務があるか。「価格変更の○日前までに書面で通知する」義務が明記されていれば、施主に検討の時間が保障されます。
エスカレーション条項がない場合
条項がなければ、業者から「材料が上がったので追加で払ってほしい」と言われても、法的には応じる義務はありません。
ただし、業者が一方的に「払わないなら工事しない」と言ってきた場合は、消費者契約法上の問題になります。住宅リフォーム・紛争処理支援センター(住まいるダイヤル 0570-016-100)や、お住まいの消費生活センターに相談してください。
→ 契約を急ぐべきかの判断基準:外壁塗装の契約、急ぐべき?2026年の判断フロー
追加請求されやすい3つのパターン
2026年4月現在、実際に施主から相談が寄せられている追加請求のパターンを3つ紹介します。
パターン①:シーリング材の値上げ転嫁
オート化学工業が4月9日に全製品の供給制限を発表しました。サンスター技研も5月1日から30%以上の値上げを予告しています。シーリング材の原材料も石油化学系であり、値上がりの波が直撃しています。
見積もり時点のコーキング単価と、施工時の仕入れ単価が乖離し、業者が差額を施主に請求するケースが出ています。
パターン②:シンナー代の別途請求
2026年3月以降、シンナー価格は75〜80%値上がりしました。溶剤系塗料を使う契約では、見積もり段階では想定していなかったシンナー代が「別途」として請求されることがあります。
本来、シンナー代は塗料代に含まれるのが一般的です。「シンナー代○万円」が突然追加されたら、見積もり時の内訳と照合してください。
パターン③:材料入荷待ちによる足場延長料
これが最も金額が大きくなりやすいパターンです。足場を組んだ後に塗料やシーリング材が届かず、工期が延びた場合、足場のリース延長料が発生します。
足場リース費は1日あたり3,000〜5,000円程度。1ヶ月延びれば10〜15万円の追加です。これを施主が負担するのか業者が負担するのかは、契約内容次第です。
→ 塗料・資材不足でできない工事の全体像:塗料・資材不足で今できない工事2026
「契約後の値上げ」より怖いのは「値上げを口実にした手抜き」
追加請求よりも注意すべきなのは、値上げ分を業者が自ら吸収しようとした結果、施工品質が下がるケースです。
現場で実際に起きていること:
塗料の希釈率を上げる(メーカー指定より薄くする)。下地処理の工程を短縮する。コーキングの「打ち直し」を「打ち増し」に変える。2回塗りのはずが1.5回塗りになる。
これらは足場があるうちは確認しづらく、足場を外してからでは手遅れです。
見抜くための3つのチェック
①足場の設置期間:30坪の一般住宅で外壁+屋根塗装なら最低10〜14日。これより短い場合は工程が省略されている可能性があります。
②職人の滞在頻度:毎日来ているか、飛び飛びか。材料待ちで作業が止まっていないか確認してください。
③使用缶数の確認:契約書に記載の塗料缶数と、実際に搬入された缶数を照合してください。缶数が少なければ、薄めている可能性があります。
→ 便乗値上げかどうかを見分ける方法:見積もりが去年より高い?便乗値上げチェックリスト
今すでに契約済みの場合、何をすべきか
すでに契約を済ませていて、工事がまだ始まっていない方は、以下の4点を確認してください。
① 契約書のエスカレーション条項を確認する。「資材高騰」「価格変動」「不可抗力」等のキーワードがあれば、追加請求の根拠になりえます。見つけたら、上限・対象品目・通知義務の3点をチェックしてください。
② 業者に「塗料・シーリング材の在庫は確保済みですか?」と直接確認する。「大丈夫ですよ」だけでなく、具体的なメーカー名・品番・確保済み数量を答えられるかどうかが、信頼できる業者かどうかの分岐点です。
③ 追加請求された場合は「根拠となる仕入れ伝票の提示」を求める。「原材料が上がったので」という口頭説明だけでは不十分です。メーカーからの価格改定通知や、仕入れ伝票の提示を求めてください。正当な業者であれば応じてくれます。
④ 納得できない場合は、工事開始前に消費生活センターへ相談する。「住まいるダイヤル」(0570-016-100)では、住宅リフォームに関する専門相談が無料で受けられます。
→ 塗料値上げの最新情報と今後の見通し:塗料値上げ2026|メーカー7社の最新状況
まとめ
2026年の資材高騰は、過去に例のない規模です。契約後に値上げの話が出ること自体は、この状況では珍しくありません。
大事なのは「追加請求されたから即キャンセル」でも「言われるがまま払う」でもなく、契約書の中身を確認し、根拠を求め、正当性を自分で判断することです。
見積書や契約書の確認が不安な方は、写真を送っていただくだけで診断できます。セカンドオピニオンとして、追加請求の妥当性や契約内容の問題点を第三者の立場からお伝えします。
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この記事を書いた人
横井隆之|ヨコイ塗装2代目・施工歴25年・250件超・著書3冊。外壁塗装のセカンドオピニオンサイト「ペンキのミカタ」を運営。見積書の中身が分からない施主が、自分で判断できる知識を届けることを目指しています。
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